強震動記録を用いた震源インバージョンに基づいた国内の内陸 地殻内

強震動記録を用いた震源インバージョンに基づいた国内の内陸
地殻内地震の断層長さと地震モーメントのスケーリング則の再
検討
#宮腰研(地盤研)・入倉孝次郎(愛工大)・釜江克宏(京大原子炉)
Re-examination of scaling relationships between source fault
length and seismic moment of the inland crustal earthquakes in
Japan based on the waveform inversion of strong motion data
#K. Miyakoshi(GRI), K. Irikura(AIT) and K. Kamae (RRI)
活断層調査等に基づき、震源断層を特定し、信頼性ある強震動予測を行う
には、調査データから推定される震源断層の長さ(L)と断層幅(W)より震源
断層の面積(S)を推定し、S–Mo の経験的関係式(3 stage scaling model)によ
り 、 地 震 モ ー メ ン ト (Mo) を 設 定 す る 必 要 が あ る ( 例 え ば 、 Somerville et
al.,1999;入倉・三宅, 2001;田島・他, 2013;Murotani et al., 2014) 。た
だし、これらのスケーリング則の検討で利用された地震は、米国カルフォル
ニアの地震が多く、日本周辺で発生した地震は限られている。一方、地震本
部の長期評価では活断層の長さから松田(1975)の経験式を用いて気象庁マグ
ニチュード(Mj)を評価している。それに武村(1990)の Mj-Mo の経験的関係
式を用いると、地震モーメント(Mo)に変換でき、結果として、L-Mo の経験
的 関 係 式 が 求 め ら れ る 。 こ の よ う に し て 得 ら れ る 松 田 (1975) お よ び 武 村
(1990) ) に基づいた L-Mo 関係式は、断層幅(W)を約 18km に設定すると、入
倉・三宅(2001)の S-Mo の経験的関係式にほぼ一致することが認められてい
る(橋本、2007)。
一方、武村(1998)は 1995 年以前の国内の内陸地殻内地震(M w 4.1~7.4)を
対象に L-Mo の関係を提案している。武村(1998)の提案する L-Mo の関係は、
Mw6.5 以上で上述の松田(1975)および武村(1990) ) に基づいたスケーリング
則と一致せず、その相違の原因として、断層長さの定義の違い、あるいは国
内と国外のテクトニックな違いが可能性として指摘されていた。
そこで本研究では、国内と国外の地震の違いによるスケーリング則への影
響を検証するため、1995 年以降に発生した国内の 18 個の内陸地殻内地震
(M w 5.4~6.9)を対象に震源インバージョン結果を収集し,L-Mo のスケーリ
ング則の再評価を行った。なお、ここでのスケーリング則の検討は stage1~
2 の範囲に相当する。再評価の結果、震源断層の長さは、M w 6.5 以下では武
村 (1998) の ス ケ ー リ ン グ 則 と 調 和 的 で あ る 一 方 、 M w 6.5 以 上 で は 、 武 村
(1998)ではなく、入倉・三宅(2001)のスケーリング則とよく一致することを
確認した(図 1 の□、△、〇)。次に、武村(1998)の収集・整理した M w 6.5
以上の 10 個の地震(図 1 の◇)を対象に、改めて震源インバージョン解析
から得られる震源断層長さについて収集・整理を行った。その結果、震源イ
ンバージョン結果(6 地震)による震源断層長さは、武村(1998)に比べて長
くなることが認められた(図中の矢印)。遠田(2013)や Murotani et al.(2014)
によれば、地表に現れる断層長さ(L surf )と地中の震源断層の長さ(L sub )の関係
において、L surf <L sub が認められる。このため、武村(1998)の収集・整理し
たデータの中に、震源断層長(L sub )ではなく、地表断層長(L surf )が含まれてい
る可能性が示唆される。
謝辞:京都大学防災研究所・浅野博士、関口准教授、岩田教授、(独)産業技術総合
研 究 所 ・ 堀 川 博 士 、( 独 ) 防 災 科 学 技 術 研 究 所 ・ 鈴 木 博 士 、 青 井 博 士 、 東 京 電 力
(株)・引間博士に震源インバージョン結果をご提供頂きました。また、気象庁の震
源 イ ン バ ー ジ ョ ン 結 果 、( 独 ) 防 災 科 学 技 術 研 究 所 ( F-net ), Prof. P. Martin Mai
(SRCMOD)による震源情報を利用しました。記して感謝致します。
図1 震源断層長さ(L s u b )と地震モーメント(Mo)の関係(武村(1998)のMw6.5
以上の地震(◇)で修正前と修正後の関係を矢印で示す)