(1) 長期暴露したコンクリートにおけるセメント水和物の 化学分析と炭酸化機構に関する検討 新潟大学 工学部 建設学科 高市 大輔 氏 - 90 - 研究背景 建設コンサルタンツ協会北陸支部 業務・研究発表会 8月7日(金) 長期暴露したコンクリートにおける セメント水和物の化学分析と 炭酸化機構に関する検討 新潟大学大学院自然科学研究科 ○高市大輔 須藤俊幸 工学部建設学科 斎藤豪 佐伯竜彦 コンクリート構造物の長期供用 セメント水和物の変質 性能低下 骨材の影響で分析が困難 長期供用データが必要 2 1 - 91 - 研究目的 分析サンプル コンクリート構造物の長期供 用のための基礎資料を得る 鉄道橋コア(1923~) 長期供用されたコンクリートについて セメント水和物に着目し、化学分析を行う 骨材分離の手法 3 大河津分水旧可動堰コア(1931~) 4 測定項目 骨材分離 XRD/Rietveld解析 粉末X線回折/Rietveld解析 熱分析(TGA) 相組成 フーリエ変換赤外分光光度測定 (FT-IR) 空隙率試験 空隙構造 水蒸気吸脱着試験 結晶質を測定 コンクリートにおいて 骨材の影響 測定精度が低下 測定精度の向上が必要 5 6 - 92 - 粗砕して粗骨材を 取り除く 重液(2.3g/cm3) を加え、 遠心分離機で 分離 ボールミルで90μmに 粉砕 粗砕 セメント水和物 (2.2g/cm3程度) 粉砕 細骨材(2.7g/cm3程度) 7 解析後、質量比で重みをつけて補正値を合算 8 簡便 沈殿物 100 問題点 浮遊物 沈殿物 作業工程が多く煩雑 TGA ・ XRD TGA Ca等の溶解を最小限に抑 Ca(OH)2,CaCO3の定量 ・ 生成物同定 アルコールを用いた溶解処理 Ca(OH)2,CaCO3の定量 えられる ⇒ 水和物からCa等の溶解 アルカリ溶融 ⇒ コロイダルシリカの生成 CaO,SiO2,Al2O3,Fe2O3の定量 XRD/Rietveld解析 沈殿分も解析 80 60 3S、高C2Sのため 低C 含有量(%) 利点 浮遊物 セメント鉱物量の比較 本研究の手法 鈴木らの手法 Ca(OH)2生成が少ない 40 と推測 生成物定量 ⇒沈殿した水和物も考慮 サリチル酸メタノール抽出 できる CaCO ,ケイ酸ゲルの定量 C₄AF C₃A C₂S C₃S 20 3 0 エチレングリコールメタノール抽出 大正 昭和初期 1921年 1926年 AFtの定量、AFmの分離 DSC アルミナゲルの定量 9 OPC LPC 長瀧重義:コンクリートの長期耐久性[小樽港百年耐久性試験に学ぶ]技報堂出版 pp68‐69(1995) 日本コンクリート工学会:コンクリート技術の要点12,p.6(2012) 10 - 93 - 実験結果‐Ca(OH)2生成量(%)の比較 現代のOPCは56dで全体の20%程度*だが… 30 25 19‐20cm 0.38 1.57 空隙率(%) 鉄道橋 大河津 22‐24cm 20 15 0‐2cmの全空隙率の低下 10 5 Ca(OH)2生成量が少ない 0 セメント組成からの推測と一致 *コンクリートからの成分溶出を対象とした千年レベルの長期耐久性設計に関する研究 東京工業大学学位論文(2004) 実験結果‐空隙率の 深さ方向変化 11 0‐2 2‐4 4‐6 6‐8 22‐24 (㎝) 毛細管空隙率(%) 毛細管空隙率(%) ゲル空隙率(%) 12 実験結果‐Ca(OH)2, CaCO3生成量の 深さ方向変化 15 CaCO3 10 6cmまで炭酸化 Transmittance 生成量(%) 20 実験結果 シリカガラス カルサイト C‐S‐H FT‐IR シリカゲル等の 非晶質シリカを確認 OPC(56d)の Ca(OH)2生成量は20%程度 0-2cm 2-4cm 4-6cm 6-8cm 1200 1100 1000 900 Wave number(cm -1) 5 Ca(OH)2 C‐S‐H中のCaとCO 2が反応 0 Cn‐S‐H0‐2 m + nCO2 → nCaCO3 + SiO2 + mH(cm) 2‐4 4‐6 6‐8 8‐10 22‐24 2O 13 800 14 - 94 - 実験結果‐水蒸気吸脱着 吸着量(g/g) 0.06 0.05 0-2cm 2-4cm 4-6cm 6-8cm 22-24cm 0.08 比表面積が 吸着量が 小さい 少ない SUN 0.04 CO2CO2 0.03 H2O 2 SiO2 H2O 2 H2O 0.02 0.06 3 CaCO3 H2OCaCO 大きい 多い 小さい 少ない C‐S‐H HC‐S‐H C‐S‐H H O SiO2 O SiO2 H2O H2O 0-2cm 2-4cm 4-6cm 6-8cm 22-24cm 0.07 表面 0‐2cm 2‐4、4‐6cm 6‐8、22‐24cm 吸着量(g/g) 0.07 C‐S‐Hの深さ方向による変質の違い 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 00 0.2 25 0.4 0.6 相対湿度 0.8 1 20 CaCO3 生成量(%) 0.08 15 10 0.01 00 5 0.2 0.4 0.6 相対湿度 0.8 0 1 0‐2 15 2‐4 4‐6 6‐8 8‐10 22‐24 深さ方向(cm) 16 研究目的 まとめ 本鉄道橋は低C3S、高C2Sの配合であったと 考えられ、水酸化カルシウム生成量が少なく、 主にC‐S‐Hの炭酸化が生じた 骨材分離 サンプル サンプル 大河津分水 本鉄道橋 分析サンプル サンプル 長期供用されたことによって、表層部では、 炭酸化および乾燥の影響が生じ、 炭酸カルシウムと脱水縮合した非晶質シリカ の生成により、比表面積の低下が生じた コンクリート構造物の長期供 用のための基礎資料を得る ・・・・・ 17 18 - 95 - 今後の研究② 今後の研究① 長期暴露したコンクリートの分析 骨材分離による分析の精度検証 発破屋 ・1913 (大正2)年に建設 同じW/Cのコンクリートとペースト供試体 で相組成を比較 ・沖縄のコンクリート ・セメントが入荷される以前の構造物 解析手順の見直し EPMA、XRDによる相組成分析 19 20 大河津分水堰表面部分 29Si‐NMRスペクトル 比表面積の深さ方向変化 100 BET(m²/g) 80 60 40 20 0 21 0‐2cm 2‐4cm 4‐6cm 6‐8cm 22‐24cm 22 - 96 -
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