私の仕事 私の思い

アットホームな施設づくりを
当施設は、別名称で運営されてい
用者の状態や施設の状況がより的確
た老健施設を当法人が引き継ぎ、リ
に把握できるようになりました。ご
ニューアル後、平成16年12月に開設
家族との相談業務、信頼関係の構築
しました。
に大いに役立ちました。
ご家族から信頼を得ると、施設内
小規模で建物も古いこの施設で、
いったい我々には何ができるのか?
に醸し出される雰囲気も変わります。
特徴は?と悩みぬき、職員間で協議
職員も積極的にご家族へ声を掛けら
を重ねた結果、ハード面から提供で
きるサービスには限界があり、だか
らこそソフト面で、処遇の向上やアッ
れるようになり、より家庭的な、アッ
オキドキ(東京都)
吉井健二
よ し
ケアマネ(RM)
トホームな施設づくりに取り組むこ
い
け ん
じ
トホームな雰囲気になりました。こ
れはすべて「人と人のつながり」か
らであると私は思います。
施設とご家族やご利用者の橋渡し役を、私のよ
とになりました。
ケアマネ兼相談員の私は、介護職・看護職の毎
うなケアマネや相談員は担っているのです。リス
朝の申し送りに参加することにしました。そこで、
クマネジャー資格取得後は、客観的に状況を判断
タイムリーに、直接ケアを提供している職員の意
しなければならない場面が増えましたが、リスク
見を収集します。会議や委員会では、他職種が意
管理の面からも、この「人と人のつながり」は非
見を表出しやすいような環境づくりに努め、ご利
常に重要なことだと改めて実感しています。
食べる幸せをお手伝いしたい
リーケアを実施しています。
老健施設での歯科衛生士の役割は、
平成23 〜 26年度の当苑の入所者の
ご利用者の口腔内の清潔はもちろん、
熱発率と抗生剤投与状況の統計による
口腔内および口腔周囲の機能の維持・
と、いずれも減少傾向がみられました。
向上のお手伝いをすることです。口腔
私が入職した平成24年度を境に、職員
ケアの先に食べる幸せがあることを見
の口腔ケア技術がレベルアップしてい
据えると「食べる・食べ続けるための
ることも一要因として考えることがで
支援」と考えています。
きます。
高齢者は、歯牙や義歯や歯肉に何ら
湧心苑(熊本県)
私は今春、
「摂食嚥下リハビリテー
かの問題があり、食べられない、噛め
し が き る
み
ない、飲み込めないといった問題を抱 歯科衛生士 志垣留美 ション認定歯科衛生士」の資格を取得
しました。当苑では私が入職してから
えています。
2 名の方をPEG(経皮内視鏡的胃瘻造
当苑では協力歯科医との連携のもと、
設術)から経口へ完全移行した実績があります。
全入所者の口腔衛生の評価・口腔機能のアセスメ
口から食べることの喜びは、入所者ご自身はもち
ントを実施しています。そして、歯科治療の必要
ろん、ご家族も喜ばれている姿に私も深く感銘を
性の有無や個別的なケアの指導・実施の指標にし
受けました。今後も口腔ケアだけでなく、入所者
ます。
の食べる幸せをお手伝いできるよう多職種と協力
これらをもとに、看護・介護職員が口腔ケアの
しながら取り組んでいきたいと思っています。
方法・注意点などをケアプランに立案して、デイ
私の 仕 事 私 の 思 い
私の 仕 事 私 の 思 い
昨今、香りを使ったアロマ療法には、脳を刺激
率の向上、独語が減った、夜間の寝つきが良く、
老健施設で働き始め今年で17年目になります。
気になって、明日も来なかったら、誰かに聞こう
する効果とリラックスさせる鎮静効果があり、初
深い眠りができるようになった等の、効果的な反
病院勤務の経験しかない私が面接時、
「お年寄りは
と思ってたよ」
「看護師さんの声がしないと寂しい
期の認知症予防にも働きかけるといわれています。
応が得られました。
好きですか?」と聞かれ、思わず「はい」と返事
よ。声聞くだけで痛いところも治った気がする」
と、
をしたことをいまでも鮮明におぼえています。
思いがけないうれしい言葉にふと我に返ります。
当施設では、問題行動のある中等度の認知症の
また、日中の生活も意欲的となり、ご利用者ど
方にも効果が出るのか、3 か月間を通して実施
うしの交流も、匂い袋を通して見られるようにな
してみることにしました。
りました。
先日、ケアマネ研修に行ったときのことです。
実際、現場はいままで経験したこともない、本
で学ぶこととはまったく違う、予想もしないこと
「高齢者には長い人生という歴史があり、その人生
が毎日のように起きます。その大変さ
のなかに入り込むことは容易なことで
いじり等の問題行動に対しては、明
は正直言葉では伝えきれません。日々、
はない。何か問題があるとすれば、そ
果のあるレモン+ローズマリー、夜
ら か な 効 果 は 得 ら れ ま せ ん で し た。
そのリスク(事故、ひやりはっと)に
の人生のなかに解決する策がある。そ
間は鎮静効果のあるラベンダーの香
これに関しては、今後も個別的な対
おびえ、困惑し、働いているのも現状
の人とどう向き合い接するか。そのよ
りを選びました。それぞれ匂い袋を
応やかかわりが必要だと思われます。
です。
うな場面にいられるあなたは幸せで
作成し、認知症の方の車いすやベッ
このように、目の前にはまだまだ
ド柵にかけ、香りを感じてもらうよ
課題はたくさんありますが、これか
と思うときさえあります。でも、こん
れました。これは、この仕事をしてい
うにしました。
らもアロマ療法を通して、ご利用者
な私のことを待っていてくれるご利用
く上での永遠の課題です。
年齢は77歳から96歳までの、女性
ただ残念なことに、徘徊やオシメ
11名。香りは、午前中は脳活性に効
評価は、HDS-Rや作業効率のテス
ト、日中の行動評価等の観察を行い
ました。その結果、記憶力や作業効
くじば苑(岡山県)
やま もと さと
こ
山本智子
PT の生活や精神面での支えとなれるよ
者もいます。連休明け仕事に行くと
うに、よりいっそうがんばりたいと
「しばらく顔っこ見えなかったけど、
思います。
認知症の方のためのアロマ療法
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す」との講師の言葉に、深く心を打た
「もう無理。限界。今月で辞めよう」
元気でしたか? 辞めたかと思った。
ユートピア白滝(岩手県)
つ ぶ ら い ゆ う
こ
粒来裕子
看護 これからも、よりいっそうご利用者
1 人ひとりに寄り添い、私自身も人生
の歴史を歩んでいければと思います。
ご利用者の人生の歴史に寄り添う
老健 2015.5 ● 57
2015/04/15 12:16