STUDIES ON THE INDUCTION OF SEXUAL

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Title
STUDIES ON THE INDUCTION OF SEXUAL REPRODUCTION IN
DESMIDS : 内容の要旨及び審査の結果の要旨
Author(s)
今泉, 眞知子; 野口, 哲子; 鈴木, 孝仁; 鍵和田, 聡; 池原, 健二
Citation
博士学位論文 内容の要旨及び審査の結果の要旨, Vol. 24, pp. 139-143
Issue Date
2007-08
Description
博士(理学), 博課第346号, 平成19年3月23日授与
URL
http://hdl.handle.net/10935/1760
Textversion
publisher
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氏 名 (
本 籍)
今 泉 真知子
学 位 の 種 類
博士 (
理学)
学 位 記 番 号
博諜第 3
4
6
号
学位授与年月 日
平成 1
9
年 3月2
3日
学位授与 の要件
学 位規則第
(
岩手県)
4条第 1項該当
人間文化研究科
論
文
題
目
STUDI
ESONTHEI
NDUCTT
ONOFS
EXUAL
REPRODUCTI
ONI
NDES
MI
DS
(
接 合 藻 に お け る有 性 生 殖 の誘 発 に関 す る研 究 )
論文審査委員
(
委員長) 教授
助教授
野 口 哲 子
教授
鈴 木
鍵和 田
教授
池 原
聡
論文 内容 の要 旨
緑藻の接合藻 は単細胞生物で、通常 は二分裂の無性生殖で増殖するが、環境条件によ り接合子 を形
成する有性生殖を行 う.多細胞生物の榎雑な生活環 に比べ、単純な生活環の接合薮は有性生姥の訴発
や生殖過程の解析に適 し、古 くか ら研究対象にされてきた。本研究では、接合蕗に属する ミ/
)ラステ
リアス (
M 〝l
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c
na
s)のホモ接合株 とクロスチ リウム (C
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y
J
u
m)のヘテロ接合株を用 い、有
性生殖 の誘発に窒素源一サイク リックAMP、核 ・細胞質 DNA合成の三要因がどのよ うに関与 して
いるかを解析 した。 また、 クロステ リウムの有性生殖過程で機能する二つの性 フェロモンの分泌経路
を免疫電子頚微鼓法で解析 した。
第-章 では、 ミクラスチ リ7ス ・トマ シ7-ナ変種 /クー タ (
MJ
C
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aVar
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a)のホモ接合株を用 い、その有性生殖誘発 における窒素澱の関与 について解析 した。本株は、
著者 白身が フィール ドか ら採集 ・単離 し、研究室での培養条件を確立 した株である。 ます、培地を窒
素欠乏 にす ることにより、接合子形成 (
有性生殖) を高頻度に誇発する実験系を確立 した。 この美醜
メチオニ ンスルホキ
系を使 って、細胞内の窒素代謝経路の阻害剤である 4つの丁 ミノ酸 丁ナログ (Lシイ ミン、 DL-6-ヒドロキ ソリソ /t L-β2- (
チエニル)-DL一
アラニ ンー DL-7-7サ トリブ トフ7ン)、
及び、L
J/ルタ ミノが接合子形成 に及ぼす影響を網べた.窒素澱を加 えた培地でも、 4つの丁 ミノ酸
アナログは接合子形成 を妨発 した。 しか し、培地 を窒索欠乏に した場合 と比べて、接合子の形成率は
低 く、栄養細胞が配偶子へ分化する時期 も遅 らせたことか ら、両者 の接合子形成を決発する機構は真
」
ニ
ー
なっていると陪論づけた。
第二章では、細胞内の浅能調節物質 として知 られるサイク リックA
MPの有性生殖誘発への関与に
MPを
ついて、 ミクラステ リアス ・トマシアーナ変種 ノタ一夕で検討 した。高濃度のサイク リック A
培地 に加えると、接合子形成を抑制 し、二分裂 (
無性生殖)による緬胞増殖 を促進 した。 また、細胞
内サイク リックA
MP蔑度を高めるカフェインやテオフィリンなどのメチルキサ ンチ ン、 7アニ レMPの7ナログである8
プロモサイク
トシクラーゼの活性剤であるフiルスコリンやサイク・
リックA
リI
yク A
MPは、 いずれも高濃度のサイク リ・
y クA
MPと同様 に、接合子形成 を的刺 し、細胞増殖を
促進 した。一方、サイク リックAMPのアナログの一つであるジブチ リルサイク リック A
MPは配偶
子形成 に先立っ細胞分裂を特異的に阻害 したが、細胞増軌 ま促進 しなか った。 これ らの結果は、高濃
度の細胞内サイクリックAMPが接合子形成を抑制す ると同時 に無性生殖 による細胞増殖を引き起こ
す シグナルとして働 くことを示唆 した。
第三葺では、鞍D
NAまたは細胞質 DNAの合成阻害が接合子形成の務発 に関与 している可能性に
つ いて、 クロステ リウム ・エー レンベルギイ (Cy
o
st
e
rJu
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・
e
nb
e
/
由 ) を用 いて検討 した。著者
は、 クc
I
ステ リウム ・エーレンベルギイで、配偶子形成 に伴 って ビレノイ ドが鼓 を減少 し、その体gE
を増大 させ る現象を発見 したO ピレ/イ ドは淋規特有 の細胞内横着で、光合成の炭敢固定での第一反
応 を触媒す る重要な酵素であるリブロース二 リン磯脱炭敢酵素 (
ル ビスコ)を擬集 し、周間に光合成
Aも含む ことに注 目 し、 ビレ/イ ド
産物のデ ンプ ンを醤榎 している。水実験では、 ビレノイ ドが DN
の数 と体構変化を指槙 として、D
NA合成の阻書が接合子形成に及ぼす影響を解析 した。尊兼源を加
えた培地で も、細胞質 D
NA合成の阻害剤 は、接合子形成率を高め、 ビレ/イ ド数 の減少 とビレ/イ
ドサイズの増大を もた らした。核 D
NA合成の阻害剤 は、窒紫蘇の有無 に関わ らず接合子形成率を高
めたが、 ビレノイ ド数 には影響 せず、 サ イズの増大 のみを もた らした。 これ らの結果 は、細胞質
DNA合成の阻書が前配偶子分化の初期 シグナルであることを示唆 した。
第四章では、 クロステ J
)ウム ・バ ーアセローサム ・ス トリj'
-サム ・リトラ-レ ・コンプ レックス
(aagね〃L
LL
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Z PeTadm
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Dhuo
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al
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ompl
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x)のヘテロ接合株を用 い、有性生殖過程で
U
重要 な二つの性 フェロモ ンを免疫電子顕微鏡法で検出 した。電子顕敏鏡像では、 一型 と+型の細胞を
区別で きないため、 この様な研究の例 は皆瀬だ ったが、著者 は-型 と+型の細胞を混合せずに、各撃
の細胞を有性生殖過程 に誘導する系を用いることによ り、難問を打破 した。 -壁細胞か ら分泌 され+
PRI
P) と、 +型細胞か ら分
型の配侠子 に作用 して十型原形質を細胞壁外 に故H
lさゼ るフ ェロモン (
泌 され る PRI
P誘起 フェロモ ン (
PRI
Pl
nduc
e
r
) は、 どちらも トランスーj'
ル ジ網 か ら形成 され
る特定の小胞によって原形質膜へ運ばれ、 エクソサイ トー ンスによって細胞外へ放出されることを明
らかに した。 また、ェクソサイ トー シスは細胞の全表面で起 こっていることを示 した。本研究は、接
合藻で牲 フ Lロモ ンの細胞内局在を初めて明 らかに しただけではな く、敏丑で横地するフェロモ ンを
止
詐煩で初 めて形態学的に検出 した研究であ る。
最後 にー第 1苛か ら第 4葺 までの結果 につ いて、酵母の牲分化を釈尊す る シグナル トランスダクショ
ン経絡に関す る分子i
t伝学的研究の成果、 モデル緑藻 クラ ミドモナスの蛙分化を誘導す る寮素飢餓 と
光 シグナル伝達経路に関する研究の成果を引用 しなが ら、拾合的な考察 を行 った。
_
正
論 文 審 査 の結 果 の要 旨
緑藻の接合漢は単細胞生物で、常 は二分裂の無性生殖で増殖するが、環境条件により荏合子を形成
す る有性生殖 を行 う。多細胞生物の複雑な生活環に比べ、単純 な生活環の接合藻 は有性生殖 の所発や
生産過程の解析に適 し、古 くか ら研究対象にされてきた。本研究では、接合藻に属す る ミクラステ リ
アス (
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4
h ua
skT7
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5)のd
.
モ接合株 とクロスチ リウム (a o
sE
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J
u
Dl
) のへテt
)接合株を用い、有性
生殖の誘発に、窒素瀕、サイク リック AMP、核 ・細胞質 DNA合成の三要因が どのよ うに関与 して
いるかを解析 しているo また, クロステ リウムの有性生殖過程で捜能する二つの性 フェロモ ンの分泌
経路を解析 しているC
第-草では、 ミクラステ リアス (
MJ
C
r
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j
:
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5
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D7
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J
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t nO由由)のホモ接合株 を用 い、
有性生殖誘発における窒素源の関与 について解析 しているC本棟 は、論文授山名 白身が フィール ドか
ら採集 ・申難 し、研究室での培養灸件を確立 した株である。 まず、培地を窒素欠乏にす ることにより、
接合子形成 (
有性生殖)を高頻度 に訴発する実巌系を確立 した。 この実額系を使 って、細胞内の窒素
代謝経略の阻害剤である 4つの7 ミノ散 7ナログが接合子形成 に及ぼす彩管を笥べた。 その結果、窒
素源を加えた培地で も、 4つのア ミノ敢 アナログは接合子形成を統覚 した。窒素欠乏が有性生殖の誘
発要因であることは接合藻 クロスチ リウムの-テロ接合株で報告 されていたが、 ミクラスチ リTスの
ホモ接合株で も同様の結果を得 られたことは、窒素欠乏が接合藻の有性生殖の添乗に普遍的な要因で
あることを示唆 している。 また、本研究 は、藻類の有性生殖誘発 に関与す る窒素代謝経路を槙討 した
初めての研究 と して も高 く評価で きる。
第二葦 では、細胞内の機能調節物質 として知 られるサイク リ yクAMPの有性生殖商発への関与に
Mz
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a
Pa T
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0由L
a) で換討 している。高濃度の
ついて、 ミクラステ リアス (
サイク リック AMP を培地に加えると、接合子形成を抑制 し、二分裂 (
無性生殖) による細胞増殖を
促進 した。 また、細胞内サイク リック AMP濃度を高めるカフェイ ンやテオフィリン、 アデニ レー ト
プロモサイクリッ
シクラーゼの活性剤であるフォルスコリンやサイク リック AMPのアナログである8
ク AMPは、いずれ も接合子形成を抑制 し、細胞増殖を促進 した。一方、サイク リックAMPの丁ナ
ログであるジブチ リルサイク リック AMPは配偶子形成に先立っ細胞分裂を阻害 したが、細胞増殖 は
促進 しなか った。つまり、サイク リノク AMPが窒素飢敗と柏反する方向で有性生殖の誘発を制御 し
ていることを明 らかに している。 この結果は、分裂辞母型の情相伝連経路と同様 r
i経絡が本藻の有性
生殖 の新発に関与 している可能性を示唆 し、捷合藻の有性生積誘発の分子i
8伝学的解析 に対 し、基礎
的データを提供するものとして高 く評価 される。
_
良
第三者では、核 DNA または細胞質 DNA の合成阻書が凄合子形成の誘発に関与 している可能性に
me
Ar
e
Dbc
J
.
gフ
)) を用 い て検 討 して い る。 論 文 提 出者 は、
つ いて ク ロ スチ リウム (CyostcrJLL
C
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L
Db
e
r
gi
Jの配偶子形成に伴 って、 リブロース二 リン酸脱炭酸酵素 (ル ビスコ) を有す る ピレ
由 z
/イ ドの数が転宅
少 し、その体積 を増大 させ る現象を見出 した。そ して、 ビレノイ ドが DNA も含む こ
とに注 目し、 ビレノイ ドの数 と体槙変 化を指億 として、DNA合成の阻害が接合子形成 に及ぼす影響
を解析 した. その結果、細胞質 DNA合成の阻害が前配偶子分化の初期 シグナルであり、細胞質 DNA
合成の少畳の阻害によって引き起 こされる核 DNA 合成の部分的阻害が有性生殖 を誘発することを示
唆 している。有性生殖の誘発 において、転写以降の精妙 な調節の他 に、DNA レベルでの制御が関与
するとの報告 はまだ熊 いが、高等植物の細胞分化過程で同様な制御機構の存在が見出されてお り、本
研究の発廉性が期待 され る。
第 四章では、 クロスチ リウム (ao
s
E
e
r
J
u
m pc
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o
mpl
e
x)のヘテ
ロ接合株を用い、有性生貢を過程で重要 な二つの性 フェロモ ンを免疫電子顕微鏡法で検出 している。電
子顕微鏡俊では一一型 と+型の細胞を区別できf
j
:
いため、 この様1
3
:
研究の例は皆無だったが、著者は一
塾 と+型の細胞 を混合せずに、各型の細胞を有性生蒐過程 に誘導 する系を用 いることにより、 この難
問を解決 した。一型細胞から分泌され+型の配偶子 に作用 して十型原形質を細胞壁外に放出させるフェ
ロを ン (
PRJP) と、 +型細胞 か ら分泌 される PRI
P済起 フェロモ ン (
PRt
Pl
n
duc
e
r
)は, どち
らも トランス-ゴル ジ網か ら形成 される特定の小胞 によって原形質膜へ運ばれ、 エクソサイ トー ンス
によ って細胞外へ放出されることを明 らかに した。本研究 は、接合藻で性 フェロモンの細胞内局在を
初めて明 らかに しただけではな く、微量で機能するフェロモ ンを藻類で初めて形態学的に検出 した研
究 として高 く評価 されるC
最後 に、第 1輩か ら第 4章 までの結果について、酵母の性分化を誘導す る情報伝達経絡 に関す る分
子遺伝学的研究の成果、モデル緑藻 クラミドモナスの性分化を誘導する窒素飢餓 と光 シグナル伝達経
路 に関す る研究の成果を引用 しなが ら、総合的な考察を行 っている。
以上、本研究 は、接合轟の有佐生殖 の誘発に窒素飢餓、サイク ■
トツタ AMP、核 ・細胞質 DNA 合
成が関与 していることを明 らかにす ると共 に、その作用経路を考察 し、更 に、性 フェロモ ンの分泌経
路を形態学的に初めて明 らかに したものであるO有性生殖機構 は多様 な生物で研究 され続 けているが、
本論文 は藻類 に関する重要 な知見を提供す る論文 と して高 く評価で きる。本研究の策 L章∼第 4葺 は
それぞれ-論文 にまとめ られ、計四論文 と して国際的な学術雑誌に公表 されている。
よ って、本論文は、奈良女子大学博士 (
理学)の学位を授与するに十分1
1内容を備 えていると判断
される。
1
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