統計データに基づく都市の特性に着目した放火火災の分析 Analysis of Arson Fires Focused on the connection of Urban Characters using Statistical Data 榎本 慶介(K112603) Keisuke Enomoto (K112603) 1.序論 1.1 研究の背景 全国で発生する火災の出火原因は、1997 年から 2012 年まで 16 年連続で“放火”が最も多く、“放火の 疑い”を含めると、出火原因で 2 番目に多い“たばこ” の約 2 倍の出火件数を占め、毎年、全体の約 2 割を 占めている。(図 1 参照) しかしながら、放火および放火の疑い(以下、放 火火災)の出火件数は、2004 年頃から減少傾向にあ り、2011 年には 9,563 件と、2002 年のピーク時の 14,553 件の 34%減となっている。 80000 40 放火(疑いを含む)火災件数 60000 ( ) 火 災 件 40000 数 件 0 放火以外の火災件数 放火火災件数の割合 放 火 火 災 件 20 数 の 割 合 10 % 30 ( ) 20000 除き、経過が“放火”および“放火の疑い”に分類され る火災の件数であり、以降では「放火件数」と記す こととする。 2.2 本研究における放火火災の枠組 放火火災は、刑法における犯罪の中の一つと定義 でき、また、様々な関連要素が存在するとともに、 心理的要素や空間的要因も関係して発生していると 考えられる。 0 図1 総火災件数と放火件数の割合と経年変化 (消防白書より作成) 1.2 研究の目的 火災件数に占める放火火災の割合は最も高く 2 割 であるため、総火災件数を減少させるために、施す 余地のある効果的な対策を明らかにすることは有意 義である。そこで、放火火災を減らすことに繋がる 効果的な対策を調査するため、放火火災が発生して いる場所、その都市の環境、季節や時間帯など、要 素を明確にする。 よって、本研究では、放火火災を対象に、放火火 災件数の大小と相関関係が高い都市の特性との関係 に基づいて類型化を試み、総合的に放火火災の現状 を把握することを目的とする。 2.放火火災について 2.1 放火件数の定義 本研究の放火火災の出火件数は、消防庁が発行す る火災報告を基に、放火自殺(自損)による火災を 図2 本研究における放火火災の枠組 2.3 放火対策の現状 消防庁では、1999 年に “放火火災予防対策マニュ アル”を作成し、全国の消防機関等に配布した。本マ ニュアルは、各種防犯・防災設備機器等の活用、住 民自身の自衛意識の高揚と注意心の喚起を図るため の具体的方策が記載されていた。 また、インターネットの普及に伴い、全国の地域 住民が容易にかつ主体的に取り組むことができる仕 組みとして、消防庁が 2004 年に“放火火災防止対策 戦略プラン”を作成し、過去の検討経緯、消防機関お よび地域の取組みを参考に「放火火災に対する危険 度評価」と「評価を踏まえた必要な対応策」を提示 すことにより、PDCA(Plan〔計画〕-Do〔実施・ 運用〕-Check〔点検・是正〕-Action〔行動〕)サ イクルに沿って、常に継続的な改善を図りつつ対策 に取り組み続けることを意図していた。 3.研究の方法 1) 放火件数の経年変化について、社会的要素や地域 的要素に関わるパラメータの経年変化と比較し、 同様の傾向にあるものを調査し、放火火災の発生 に関係するパラメータを抽出する。 2) 政令指定都市の中から選定した 12 都市(東京都 区部、札幌市、仙台市、千葉市、横浜市、川崎市、 名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、北九州市、 熊本市)に対して、1995~2008 年までの放火件数 の経年変化を調べ、その増減傾向を都市ごとに示 す。 3) 火災報告の出火原因が放火である火災 1 件ごとの データおよび諸都市の都市データを対象に数量化 Ⅲ類およびクラスター分析を行ない、類型化する。 4) 12 都市の消防局を対象に、現在と過去に実施され た対策の調査およびその対策の考え方について、 アンケート調査を実施した。 アンケート調査 各都市の放火対策の現状 国勢調査等 考 抽出 都市の特性データ 数量化Ⅲ類による統計的分析 察 火災報告 4.2 諸都市における放火件数の経年変化 12 都市の放火件数の経年変化について、放火火災 予防対策マニュアルを発行した 1999 年、放火火災防 止対策戦略プランを発行した 2004 年で区切り、3 つ の期間に分けて経年変化を確認した。各期間で放火 件数の線形近似曲線の傾きから増加傾向(傾き>0) の都市と減少傾向(傾き<0)の都市に振り分けた。 まず、1995~1999 年にかけて、3 都市(仙台市、 千葉市、北九州市)は放火件数が減少傾向にあった が、残りの 9 都市は増加傾向にあった。 2000~2004 年にかけて、2 都市(横浜市、川崎市) 以外は減少傾向であった。 2005~2008 年にかけて、2 都市(札幌市、神戸市) 以外は減少傾向にあった。 1995~2008 年の全体を通して増加傾向であった のは 3 都市(横浜市、川崎市、北九州市)であった。 また、各都市の人口と放火件数の時系列変化をみ ると、総人口と放火件数の多さは比例関係にあるこ とが分かるが、1995~2008 年にかけて、東京都区部 など 9 都市は人口増加に伴い、放火件数が減少傾向 であった。北九州市に限っては人口が減少している ものの、放火件数が増加傾向であった。このように、 人口の増減は必ずしも放火の増減要因とはならない と考える。 抽出 放火データ 各要素の経年変化との比較 数量化Ⅲ類による統計的 分析 図3 フローチャート 4.放火火災に関する分析結果 4.1 社会的要素および地域的要素との関連性 放火件数と各関連要素の経年変化を比較するた め、以下の式により各数値を標準化した。 標準化した数値 X’=(X-μ)/σ X:各年の数値 μ:平均値 σ:標準偏差 経年変化で見た限りでは、「侵入窃盗件数(主に 空き巣など)」と「失業率(雇用環境)」は放火火 災と同様の傾向を示しており、放火火災との関連性 が高いと考えられる。 侵 入 窃 盗 件 数 2 2 1 1 0 0 -1 -1 -2 侵入窃盗件数 GDP 放火件数 図4 失業率 警備員数 喫煙人口 高齢者率 侵入窃盗件数との比較 -2 放 火 件 数 4.3 火災報告に基づく放火火災データの分析 1995 年~2008 年の火災報告を基に、放火火災のデ ータのカテゴリを設定(表 1)し、数量化Ⅲ類およ びクラスター分析により類型化を試みた。 量的データの死者や負傷者に対しては、あり/な しの 2 つに分け、焼損面積や損害額については 1 ㎡ 未満のぼや(小火)や、損害額千円未満を表す「0」 の区分と、各々の平均値(μ)より大きい数値範囲と 小さい数値範囲の 3 つに分けた。 図 5 は、放火件数がピークであった 2002 年を対象 に数量化Ⅲ類の分析を実行したものであり、第 1 軸 が山林、道路、市街地の指定のない場所の寄与が大 きいことから「人通りの少なさ」の尺度を表し、第 2 軸は損害額や焼損面積の大きさに対する寄与が大 きいことから「火災の規模」の尺度を表すと解釈で きると考えた。また、空家等で発生と損害額、焼損 面積の大きいものが同カテゴリとなった。さらに細 かいカテゴリでみていくと、ぼやは 18 時~5 時まで の夕方から夜中の発生と比較的関係があるという結 果となった。 また、全ての年を通して、放火火災の発生要因に ついて、出火時刻や発火源との関係はあまりないと いう結果となった。ごみ集積場や空家等での発生は 市街地との関係があまりないという結果となった。 4.4 都市の特性データと放火件数との相関分析 各都市の特性データのカテゴリを設定(表 2)し、 2008 年に発生した人口および面積あたりの放火件 数を含め、数量化Ⅲ類およびクラスター分析により 類型化を試みた。(熊本市を除く) 人口・面積あたりの放火件数が少ない地域は失業 率が高いものと同じカテゴリ C であり、6 都市(札 幌市、仙台市、千葉市、京都市、神戸市、北九州市) も同じであった。窃盗犯の認知件数の多いものと面 積あたりの放火件数の多いものが東京都区部と同カ テゴリとなった。 表 1 放火火災データのカテゴリ設定 0時~5時 表記 記号 A1 建築物・建具 表記 記号 G1 6時~11時 A2 建築物内収容物 G2 12時~17時 A3 山林 G3 18時~23時 A4 車両 G4 大分類 小分類 出火時刻 最寄り消防機関 までの距離 大分類 小分類 着火物 時刻不明 A5 その他の着火物 G5 近い(1.1㎞未満) 中程度(1.1㎞以上5㎞未満) B1 B2 着火物不明 建物 G6 H1 遠い(5㎞以上) B3 林野 H2 防火地域 C1 車両 H3 準防火地域 C2 空家等 H4 防火指定のない地域 C3 ごみ集積場 H5 防火地域の区分 市街地の区分 大 分類 人口 密 度 中 程度 ( 396 8人 /k㎡ 以 上 500 0人 / k㎡ 未 満 ) A2 高い ( 500 0人 /k㎡ 以上 ) A3 低 い( 20 %未 満 ) B1 高齢 者 率 中 程 度 ( 20 %以 上 22. 5%未 満 B2 高い ( 22. 5%以 上 ) B3 低 い( 6%未 満 ) C1 失業 者 率 中程 度 (6 %以 上 7%未 満 ) 昼 夜間 人 口 比 10 k㎡ あた り の 警 察署 等 の 数 10 k㎡ あた り の 消 防署 等 の 数 高 い( 7%以 上 ) C3 D1 中 程 度 ( 10 0以 上 120 未満 ) D2 高 い( 12 0以 上 ) D3 少な い ( 4. 6未 満 ) E1 中 程 度 ( 4. 6以 上 6.0 未満 ) E2 多 い( 6. 0以 上 ) E3 少な い ( 1. 0未 満 ) F1 中 程 度 ( 1. 0以 上 3.0 未満 ) F2 多 い( 3. 0以 上 ) F3 H6 H7 I1 人口密度低い(A1) 居住用途 E1 狭い(6㎡未満) I2 産業用途 E2 広い(6㎡以上) I3 失業者率高い(C3) なし J1 あり J2 なし K1 あり 0円 K2 L1 少ない(883千円未満) L2 多い(883千円以上) L3 たばこ、ライター、マッチ F1 その他の発火源 F2 死者数 負傷者数 損害額 12 H2 G1 G2 広 い (0 .9以 上 ) G3 少 な い (1 714 未 満 ) H1 中 程 度 ( 17 14以 上 25 00未 満 ) H2 多 い ( 25 00以 上 ) H3 低 い ( 15 ℃ 未 満 ) I1 高 い ( 15 ℃ 以 上 ) I2 少 な い ( 74. 7件 未満 ) J1 多 い ( 74. 7件 以 上 ) J2 少 な い (1 0件 未 満 ) K1 中 程 度 ( 10 件以 上 15 件未 満 ) K2 多 い ( 15 件以 上 ) K3 少 な い (0 .5件 未満 ) L1 中 程度 ( 0.5 件以 上 0. 8件 未満 ) L2 多 い( 0. 8件 以 上 ) L3 1k ㎡あ た り の 建 築物 の 棟 数 1k ㎡あ た り の 窃盗 犯 の 認知 件 数 10万 人 あ た りの 放火 件 数 ( 20 08年 ) 1k ㎡あ た り の 放火 件 数 ( 20 08年 ) 人口密度は高い(A3) カテゴリ B 少ない(K1,L1) 道路 E4 記号 中 程 度 (0 .56 以上 0. 9未 満 ) 総面 積 あ た りの 市街 地 区 域面 積 3 人口・面積あたりの放火件数 その他の出火箇所 ぼや(1㎡未満) E3 表記 小分 類 狭 い ( 0. 56未 満 ) C2 低 い( 10 0未 満 ) D2 D3 社寺用途 大分類 平均 気 温 D1 その他の用途 記号 A1 市街地 焼損面積 表記 小分類 低い ( 396 8人 /k㎡ 未満 ) 準市街地 市街地の指定なし 火元用途 発火源 出火箇所 表 2 都市の特性データのカテゴリ設定 2 千葉市 B1 K1 A1 C2 H1 J1 D2 札幌市 L1 I1 仙台市 京都市 E1 F1 G1 0 北九州市 -1.5 -1 -0.5 0 神戸市 L2 林野で発生(H2) A3 川崎市 K2 B2 1 失業者率は低い(C1) F2 C1 D1 カテゴリ C カテゴリ C 横浜市 G2 名古屋市 H2 E2 窃盗犯の認知件数多い (J2) 面積あたりの放火件数多い(L3) L3 カテゴリ A I2 0.5 1 1.5 J2 東京都区部 2 2.5 G3H3 C3 B3 -1 10 E3 D3 -2 損害額、焼損面積が大きい(L3,I3) 市街地の指定なし(D3) 空家等で発生(H4) 最寄り消防機関までの距離が遠い(B3) K3 8 B3 着火物不明(G6) -3 カテゴリ B 6 カテゴリ D カテゴリ D D3 I3 4 H3 L3 K2 H4 E1 -4 H1 -2E2E3 -3 B2 A3 A4 F1 J1 F2 A1 K1 I1 A2 0D1 C2 L2 G2 B1 0 -1 C1 A5 G1 -5 -4 消防署や警察署が多い(E3,F3) C3 図7 D2 2 I2 カテゴリ A H5 G5 G4H7 L1E4 1 H6 0 2 3 -2 -4 市街地(D1)や建物物内収容物(G2)が多い 各カテゴリの布置図(2002 年) 0 出火時刻:0~5時:A1 死者なし:J1 その他の発火源:F2 負傷者なし :K1 出火時刻 :18~23時:A4 ぼや (焼損面積:1㎡未満) :I1 出火時刻 :12~17時:A3 発火源:たばこ 、ライター、マッチ:F1 出火時刻:6~11時:A2 最寄 りの消防機関 までの距離:1.1km未満:B1 着火物 :建築物内収容物:G2 損害額:1千円以上883千円未満:L2 準防火地域:C2 市街地:D1 出火時刻不明:A5 防火地域:C1 出火箇所:道路:H6 最寄 りの消防機関 までの距離:1.1km以上~ 5km未満:B2 その他の着火物:G5 準市街地:D2 着火物:山林:G3 出火箇所:ごみ集積場:H5 その他の用途 :E4 着火物:車両:G4 その他の出火箇所:H7 損害額:1千円未満:L1 居住用途:E1 着火物 :建築物・建具:G1 産業用途:E2 社寺用途:E3 出火箇所:建物:H1 焼損面積 :1㎡以上6㎡未満:I2 最寄りの消防機関 までの距離:5km以上:B3 市街地の指定なし:D3 防火指定のない地域:C3 出火箇所:車両:H3 出火箇所:林野:H2 着火物不明:G6 死者あり:J2 出火箇所:空家等:H4 焼損面積:6㎡以上:I3 損害額:883千円以上:L3 負傷者あり :K2 図6 5 10 各カテゴリの布置図(都市の特性データ) G3 出火時刻(A)は全て同カテゴリ 図5 A2 F3大阪市 人口あたりの放火件数多い(K3) J2 G6 15 カテゴリ A 20 25 東京都区部 1km2あたりの放火件数:多い:L3 面積あたりの人口集中地区:広い:G3 1km2あたりの建築物数:多い:H3 10万人あたりの窃盗犯認知件数:多い:J2 横浜市 面積あたりの人口集中地区:中程度:G2 名古屋市 1km2あたりの建築物数:中程度:H2 10km2あたり警察署の数:中程度:E2 人口密度:高い:A3 失業者率:低い:C1 10km2あたり消防署の数:中程度:F2 川崎市 10万人あたりの放火件数:中程度:K2 高齢者率:中程度:B2 昼夜間人口比率:低い:D1 平均気温:高い:I2 札幌市 平均気温:低い:I1 仙台市 失業者率:中程度:C2 1km2あたりの放火件数:少ない:L1 京都市 10km2あたり警察署の数:少ない:E1 10km2あたり消防署の数:少ない:F1 面積あたりの人口集中地区:狭い:G1 北九州市 千葉市 人口密度:低い:A1 10万人あたりの窃盗犯認知件数:少ない:J1 昼夜間人口比率:中程度:D2 1km2あたりの建築物数:少ない:H1 10万人あたりの放火件数:少ない:K1 高齢者率:低い:B1 神戸市 1km2あたりの放火件数:中程度:L2 高齢者率:高い:B3 失業者率:高い:C3 大阪市 人口密度:中程度:A2 10km2あたり消防署の数:多い:F3 昼夜間人口比率:高い:D3 10km2あたり警察署の数:多い:E3 10万人あたりの放火件数:多い:K3 図8 カテゴリ B カテゴリ C カテゴリ D クラスター分析による樹形図 2 4 6 8 10 12 14 カテゴリ A カテゴリ B カテゴリ C カテゴリ D クラスター分析による樹形図 4.5 アンケート結果 まちづくりにおける犯罪予防では防犯環境設計の 考え方が用いられる。これは、表 3 の 4 つの視点か ら建築物の防犯性を向上させる手法である。この 4 つの手法の内、“より効果が高い”、“より実施しやす い”ものについて、オフィス街、住宅街、繁華街の 3 つの場所ごとに消防職員を対象に調査したところ、 図 9 に示すように「被害対象の強化・回避」の手法 が全ての場所で実施しやすく、住宅街では最も効果 が高いと考えていることが分かった。オフィス街と 繁華街では「接近の制御」の手法が実施しにくいも のの、効果があると考えていることが分かった。 表3 防犯環境設計における 4 つの視点 内容 指標 監 視 性の確 保 多く の 人 の 目を 確 保 し、見 通 し を確 保 す る 例) 見 通 し を良 く し て 死角 を 除 去 する な ど 領 域 性の強 化 周辺 の 利 用 を活 発 に す るこ と で市民 の 防 犯 活動 を 推 進 する 例) 地 域 内 を美 し く 保 つ、 地 域のコ ミ ュ ニ ティ の 活 発 化 な ど 接 近の 制 御 被 害 対 象 の強 化・ 回避 特定の時期の消防団による見回り強化 消防団による見回り強化(常時) 警察によるパトロール強化 ゴミ出しの時間指定 近隣住民とのコミュニティ強化 窓の戸締り強化 玄関の戸締り強化 門扉の戸締り強化 看板・ステッカーのみの設置推奨 看板・ステッカーの設置推奨 周辺の街灯の設置または増設の推奨 消火器の設置または増設の推奨 放火監視機器の設置奨励 セキュリティ機器の強化の奨励 監視カメラの設置奨励 住民への放火防止策についての教示 ホームページ上へ放火防止対策の掲載 放火の発生マップの配布 ポスターの提示 チラシの配布 増加 増加 0 犯罪 企 画 者 が被 害 対 象 (物) に 接近 し に く くす る 例) 監 視 カ メラ 、看 板 の設 置 な ど 事業所向け 犯罪 の 誘 発 要因 を 除 去 した り、 対象 物 を 強 化す る 例) ゴ ミ を 決ま っ た 時 間に出 す 、可 燃 物 の 除去 な ど 自治会・住宅向け 10 20 30 公共空間向け 図 11 現在の放火対策 35 30 25 20 15 10 5 0 より効果が高い より実施しやすい より効果が高い より実施しやすい より効果が高い より実施しやすい オフィス街 監視性の確保 住宅街 領域性の強化 繁華街 接近の制御 被害対象の強化・回避 図 9 防犯環境設計を考慮した放火予防対策について 現在の消防機関における放火対策と 1999 年まで に実施していた放火対策について、事業所向け、自 治会・住宅向け、公共空間向けの 3 つに分けて比較 したところ、図 10,11 に示すように、現在ではホー ムページに放火対策を提示している消防局が増加し ており、社会の変化により広報媒体が変化したこと が確認された。 また、自治会・住宅向けのごみ出しの時間指定や 近隣住民とのコミュニティ強化も 1999 年に比べて 増加した。 特定の時期の消防団による見回り強化 消防団による見回り強化(常時) 警察によるパトロール 強化 ゴミ出しの時間指定 近隣住民とのコミュニティ 強化 窓の戸締り強化 玄関の戸締り強化 門扉の戸締り強化 看板・ステッカーのみの 設置推奨 看板・ステッカーの 設置推奨 周辺の街灯の設置または増設の推奨 消火器の設置または増設の推奨 放火監視機器の設置奨励 セキュリティ機器の強化の奨励 監視カメラの設置奨励 住民への放火防止策 についての教示 ホームページ上へ放火防止対策の掲載 放火の発生マップの配布 ポスターの提示 チラシの配布 6.今後の課題 各都市の様々な対策の中にも、住民の協力を必要 としているものが多く、住民の協力による対策の効 果が、どの程度、表れているかを調査することも有 効と考える。 また、本研究で得られたデータを基に、更に小さ な地域に絞って類型化することで、地域ごとの放火 の実態と、それに対する有効な対策を検討すること が今後の課題である。 <参考文献> 1) 樋村恭一:特集 2) 樋村恭一:放火火災の統計的空間分析(3), 放火火災と防犯環境設計(2) 放火と空き巣,月刊消防,pp.11-19,2003 0 事業所向け 5.まとめ 本研究により、以下のことが確認できた。 1) 1995~2008 年の放火件数と侵入窃盗件数の経年 変化を比較したところ、同様の増減傾向が見られ た。また、都市の特性としての窃盗犯の認知件数 が高い都市と面積あたりの放火件数が多い都市が 同カテゴリとなり、両者の関係が強いことが確認 された。 2) 放火火災データを数量化Ⅲ類で分析した結果、各 年で出火時刻による特徴は表れず、出火時刻によ る出火場所や火災規模の偏りは見られなかった。 また、ごみ集積場や空家等で発生する放火火災に ついては市街地以外のカテゴリと同じになること が多く、オフィス街、繁華街、住宅街などの市街 地ではなく、人の目がまばらな地域で多く発生し ていると考えられる。 3) 消防機関の放火対策として、防犯環境設計の手法 でいう「被害対象の強化・回避」や「領域性の強 化」を重視して実施していると考える。また、消 防局と自治会や住民が協力をして取り組んでいく 対策が多く見られた。 自治会・住宅向 け 10 20 30 公共空間向け 図 10 1999 年までの放火対策 月刊消防,pp.11-15,2001 3) 総務省消防庁:放火火災予防対策マニュアル,1999 4) 総務省消防庁:放火火災防止対策戦略プラン,2004
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