広レンジ・高分解能の非接触式表面形状測定装置による人工関節の 摩耗動態計測 ○大塚 宏一*・中西 義孝*・日垣 秀彦** 大分大学工学部福祉環境工学科,**九州産業大学工学部機械工学科 * Non-contact profile monitor extended capabilities of range and resolution to characterize wear of artificial joint Kouichi OTUSKA*, Yoshitaka NAKANISHI*and Hidehiko HIGAKI** Dept.of Assistive Technology, Faculty of Eng., Oita University, Oita, Japan ** Dept.of Mechanical Engineering, Faculty of Eng., Kyushu Sangyo University, Fukuoka, Japan * 1. まえがき 人工関節の軸受け部は複雑な 6 自由度運動や荷重変 動などに曝されるので各部位において摩耗状態が異な る.そのため,各摩耗部位の摩耗体積などを評価パラ メータとすることは摩耗現象の解明に役立つものと思 われる. 組織工学を含むバイオエンジニアリング分野では表 面粗さを評価パラメータの一つとして採用することが 多い.触針式の表面粗さ測定器では触針が Artifact とな り本来の表面粗さを反映しない.また,高分解能は峡 レンジを招くため,直径 20mm以上を有する人工関節 摺動面状態の面計測は事実上制約を受けている. 本稿では高精度のリニアアクチュエータとレーザ変 位計をメカトロニクス技術により連携させ,広レン ジ・高分解能の非接触式表面形状測定装置を開発した. そして,人工関節の摩耗動態計測への応用に関する基 礎研究を行ったので報告する. Fig.1 Non-contact profile monitor . 2. 実験方法 非接触式表面形状測定装置を図 1 に示す.レーザ変 位計の測定範囲は狭いために,z軸方向の測定は制限 される.本測定装置はリニアアクチュエータによりz 軸方向のレーザ変位計を測定物の輪郭に合わせ上下運 動させる.これにより広レンジでの 3 次元表面形状測 定が行えるばかりか,低コストにて設計・製作するこ とが可能となった.本稿で設計したシステムの解像度 は約 5μmである. 本測定装置の性能評価実験を行った.測定対象は超 高分子量ポリエチレン(密度:0.89g/ml )とし,直径 10mm のボールエンドミルによる切削痕を測定した. 人工関節の摩耗状態計測に対する可能性を調査する ために,脛骨コンポーネントの測定を行った. Fig.2 Effectiveness of cubage by non-contact profile monitor. 3. 実験結果と考察 図 2 に示すように本測定装置により切削痕は的確に 示された.形状データより求めた切削体積は重量測定 から求めた切削体積と比べて約 4%の誤差であった. 脛骨コンポーネントの測定結果を図 3 に示す.これ まで触針式表面粗さ計などでは測定不可能であった 脛骨コンポーネントの摩耗状態を的確にとらえる Fig.3 Measurement of tibial component by non-contact profile monitor. ことができた. この研究は,財団法人生産技術研究奨励会 平成 14 年度研究グループ運営費の援助を受けて実施した.
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