GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit による 毒性関連遺伝子の発現

Rat MultitoxPlex Kit 応用例:Benzo[a]pyrene を使用した実験
Benzo[a]pyrene 処置プライマリー肝細胞において薬物代謝に関与する遺伝子に
有意な発現上昇が認められた。
GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit による
毒性関連遺伝子の発現定量解析
ABSTRUCT
その他の Rat MultitoxPlex Kit 応用例
遺伝子機能を解明する上で遺伝子発現解析はもっとも頻繁に使
用される解析方法のひとつである。遺伝子発現定量解析システ
ム GenomeLab GeXP(GeXP)は、キメラプライマーとユニバー
サルプライマーを使用して、複数の遺伝子発現定量を同時にで
きるシステムである。GeXP 付属のプライマーデザインツールで作
成された Rat MultitoxPlex には様々な毒性パスウエイに関与す
る 23 のターゲット遺伝子が含まれている。今回の実験では薬物
処理、未処理のラット肝細胞から得られた 20-25ng のトータル
RNA を用いて毒性に関与する遺伝子の発現解析を行い、肝毒性
があると知られている薬物処置群でこれらの発現の変動を検出で
きるか否かを検討した。GeXP と Rat MultitoxPlex は肝毒性が知
られている薬物投与された RNA で複数の遺伝子発現変動が同時
に検出されたが毒性のない薬物での遺伝子の発現挙動はコント
ロールと同等であった。この結果から Rat MultitoxPlex kit は発
現解析により毒性の有無のスクリーニングに使用できる可能性が
示唆された。
様々な Compound による遺伝子発現プロファイルの検出
・ Benzo[a]pyrene: genotoxic carcinogen, toxic pollutant from cigarette smoke
・ Clofibrate: hypolipodemic drug, PPAR-a agonist
・ Emetine: protein synthesis inhibitor
・ Mitomycin C: alkylating, antineoplastic agent
・ 2,4 Diaminotoluene: genotoxic, dye synthesis intermediate
・ Glitazones (Pioglitazone, Rosiglitazone and Troglitazone)
INTRODUCTION
Rat C9 cells
ベックマン・コールターは新たなアプローチで複数遺伝子の発現
解析を同時に行うことができる GenomeLab GeXP を開発した。
このシステムはマルチプレックス PCR 用のプライマーデザイン
ソ フ ト (eXpress Designer) 、 発 現 定 量 解 析 用 ソ フ ト (eXpress
Profiler)とキャピラリー電気泳動装置からなる。
発現プロファイルマップ
Rat primary hepatocytes
遺伝子発現解析は遺伝子機能を解明する上で重要な役割を
担っている。数万の遺伝子発現を同時に解析できるマイクロアレ
イテクノロジーは数個から数百の機能解析に有用な遺伝子を選
出し、機能解明する上で重要な遺伝子パネルの構築に役立って
いる。しかし研究をさらに発展させる上でより多くのサンプルの発
現プロファイルを見る必要があることから、ハイスループットで克
明な解析を行えるテクノロジーが必要となっている。
今回使用した Rat MultitoxPlex は eXpress Designer によっ
て設計され、異なる毒性パスウエイである細胞毒性、アポトーシ
ス、DNA ダメージ反応、ストレス反応、解毒などの機能が誘発さ
れる際に発現変動が起こると知られている遺伝子が含まれてい
る。本実験では Glitazone 系薬物投与によっておこる毒性関連
遺伝子の発現変動が MultitoxPlex キットで検出可能であるかを
評価した。市場にある Glitazone 系の薬物と比較し、肝障害を起
こす Troglitazone で複数遺伝子の発現変動が確認された。今回
示した結果より、Rat MultitoxPlex と GenomeLab GeXP は薬
物処理によって変動する遺伝子発現定量を行うことができること
が示唆された。
XP-PCR ストラテジー
XP-PCR の基本は遺伝子特異的なキメラプライマーから始まる
RT-PCR(逆転写 PCR)であり、ユニバーサル配列プライマーを利
用することによりマルチプレックス PCR をたった 1 セットのプライ
マーでの PCR 反応に変換させる PCR ストラテジーである。
CONCLUSIONS
z GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit は様々な薬物処置によって起こる発現変動を正確に把握でき、毒性発生機序の
解明に応用できることが示唆された。
z GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit は初期の毒性スクリーニング用遺伝子パネルとして利用でき、様々な毒性発生
モデルにおいてどのような毒性発生機序が作用しているか確認することができる。
結果として遺伝子の発現比は、PCR 反応の間維持されることにな
る。このストラテジーは一般的なマルチプレックス PCR で起こる遺
伝子ごとの増幅効率のバリエーションを克服するだけでなく、高い
検出感度を維持することができる PCR 増幅方法である。
ターゲット RNA はリバー
スキメラプライマーの配
列特異的部分によって認
識され、逆転写反応が行わ
れる。
PCR 反応の初期段階では
フォワード/リバースキメ
ラプライマーの配列特異
部分によって増幅が行わ
れる。
マルチプレックスユニバーサルプライマー
ストラテジー
1 セットのユニバー
サルプライマーを使
用して複数遺伝子を
同時増幅
ユニバーサル配列がテン
プレート上に組み込まれ
た後、優先的にユニバーサ
ルプライマーによって増
幅が行われる。
サイズが異なる
PCR 産物
METHODS
RESULTS
eXpress Designer ソフトウエアでのプライマーデザイン
GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit 遺伝子リスト
ターゲット遺伝子のアクセッションナン
バーを入力(公共データベースからの
ダウンロード可能)
マルチプレックスプライマー
デザインの結果
サンプル調整
ラットプライマリー
肝細胞
ラット肝株化
細胞(C9)
Rat MultitoxPlex Kit 応用例:Glitazone 系薬物を使用した実験
薬物処置
トータル RNA の抽出
早期スクリーニング段階での薬物毒性予測
使用した薬物:
Glitazon 系薬物について
Pioglitazone (Actos)
Rosiglitazone (Acadia)
Troglitazone (Rezulin)
Type ⅡDiabetes, PPARg activators
Modulation of adipogenesis and carbohydrate metabolism
薬物間における肝毒性の相違
・
・
・
Pioglitazone :肝毒性なし, ALT レベルの上昇を認めず
Rosiglitazone :肝毒性なし, ALT レベルの上昇を認めず
Troglitazone :体質依存的に肝毒性あり、ALT レベルの上昇
GeXP Rat MultitoxPlex kit を使用して RT-PCR
Glitazone 処置ラットプライマリー肝細胞での
遺伝子発現プロファイル
データコレクション/プロセス
遺伝子発現解析システム GeXP
でのサンプル泳動・分離
Glitazone 処置ラットプライマリー肝細胞、C9 細胞
において Nqo1 は用量依存的に発現上昇を示した。
フラグメントデータ解析
Glitazone 処置ラット肝株化細胞(C9)での
遺伝子発現プロファイル
Summary
RNA サンプルとマルチプレックス
解析パラメータとの関連付け
z プライマリー肝細胞と C9細胞において Troglitazone
は Nqo1, Gadd45, Gadd153, p21, Ho1 に強い
発現上昇(*)を示した。
実験データと遺伝子
情報とのリンク
ノーマライズした遺伝子
発現結果
z プライマリー肝細胞で Troglitazone は CyclinD1 の
発現を抑制した。