GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kitによる 毒性関連遺伝子の発現

遺伝子発現定量解析システム
GenomeLab GeXP
Application Note No.10
GenomeLab
GeXP Rat MultitoxPlex kitによる
毒性関連遺伝子の発現定量解析
Abstract
Introduction
遺伝子機能を解明する上で遺伝子発現解析はもっとも頻繁に
使用される解析方法のひとつである。遺伝子発現定量解析シ
ステム GenomeLab GeXP(GeXP)は、キメラプライマーとユ
ニバーサルプライマーを使用して、複数の遺伝子発現定量を
同時にできるシステムである。GeXP 付属のプライマーデザイ
ンツールで作成された Rat MultitoxPlex には様々な毒性パス
ウエイに関与する 23 のターゲット遺伝子が含まれている。
遺伝子発現解析は遺伝子機能を解明する上で重要な役割を
担っている。数万の遺伝子発現を同時に解析できるマイクロ
アレイテクノロジーは数個から数百の機能解析に有用な遺伝
子を選出し、機能解明する上で重要な遺伝子パネルの構築
に役立っている。しかし研究をさらに発展させる上でより多く
のサンプルの発現プロファイルを見る必要があることから、ハ
イスループットで克明な解析を行えるテクノロジーが必要と
なっている。
今回の実験では薬物処理、未処理のラット肝細胞から得られ
た 20-25ng のトータル RNA を用いて毒性に関与する遺伝子
の発現解析を行い、肝毒性があると知られている薬物処置群
で こ れ ら の 発 現 の 変 動 を 検 出 で き る か 否 か を 検 討 し た。
GeXP と Rat MultitoxPlex は肝毒性が知られている薬物投与
された RNA で複数の遺伝子発現変動が同時に検出されたが
毒性のない薬物での遺伝子の発現挙動はコントロールと同等
であった。この結果から Rat MultitoxPlex kit は発現解析によ
り毒性の有無のスクリーニングに使用できる可能性が示唆さ
れた。
ベックマン・コールターは新たなアプローチで複数遺伝子の発
現解析を同時に行うことができる GenomeLab GeXP を開発
した。このシステムはマルチプレックス PCR 用のプライマーデ
ザ イ ン ソ フ ト (eXpress Designer) 、 発 現 定 量 解 析 用 ソ フ ト
(eXpress Profiler)とキャピラリー電気泳動装置からなる。今
回使用した Rat MultitoxPlex は eXpress Designer によって
設計され、異なる毒性パスウエイである細胞毒性、アポトーシ
ス、DNA ダメージ反応、ストレス反応、解毒などの機能が誘
発される際に発現変動が起こると知られている遺伝子が含ま
れている。本実験では Glitazone 系薬物投与によっておこる
毒性関連遺伝子の発現変動が MultitoxPlex キットで検出可
能であるかを評価した。市場にある Glitazone 系の薬物と比
較し、肝障害を起こす Troglitazone で複数遺伝子の発現変動
が確認された。今回示した結果より、Rat MultitoxPlex と
GenomeLab GeXP は薬物処理によって変動する遺伝子発
現定量を行うことができることが示唆された。
XP-PCR ストラテジー
リバースキメラプライマー
フォワードキメラプライマー
リバースキメラプライマー
蛍光標識フォワードユニバーサルプライマー
リバースユニバーサルプライマー
タ ー ゲ ッ ト RNA は リ
バースキメラプライマー
の配列特異的部分によっ
て認識され、逆転写反応
が行われる。
PCR 反応の初期段階で
はフォワード/リバース
キメラプライマーの配列
特異部分によって増幅が
行われる。
ユニバーサル配列がテン
プレート上に組み込まれ
た後、優先的にユニバーサ
ルプライマーによって増幅
が行われる。
XP-PCR の基本は遺伝子特異的なキメラプライマーから始まる
RT-PCR(逆転写 PCR)であり、ユニバーサル配列プライマーを
利用することによりマルチプレックス PCR をたった 1 セットのプ
ライマーでの PCR 反応に変換させる PCR ストラテジーである。
結果として遺伝子の発現比は、PCR 反応の間維持されること
になる。このストラテジーは一般的なマルチプレックス PCR で
起こる遺伝子ごとの増幅効率のバリエーションを克服するだけ
でなく、高い検出感度を維持することができる PCR 増幅方法で
ある。
マルチプレックスユニバーサルプライマーストラテジー
1 セットのユニバーサルプライマーを
使用して複数遺伝子を同時増幅
蛍光標識された PCR 産物
サイズが異なる
PCR 産物
Methods
eXpress Designer ソフトウエアでのプライマーデザイン
マルチプレックスプライマー
デザインの結果
ターゲット遺伝子のアクセッションナ
ンバーを入力(公共データベース
からのダウンロード可能)
サンプル調整
ラットプライマリー
肝細胞
薬物処置
トータル RNA の抽出
GeXP Rat MultitoxPlex kit を使用して RT-PCR
データコレクション/プロセス
遺伝子発現解析システム GeXP
でのサンプル泳動・分離
RNA サンプルとマルチプレックス解
析パラメータとの関連付け
フラグメントデータ解析
実験データと遺伝子
情報とのリンク
ノーマライズした遺伝子発
現結果
ラット肝株化
細胞(C9)
Results
GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit 遺伝子リスト
Rat MultitoxPlex Kit 応用例:Glitazone 系薬物を使用した実験
早期スクリーニング段階での薬物毒性予測
使用した薬物:
Glitazon 系薬物について
Pioglitazone (Actos)
Rosiglitazone (Acadia)
Troglitazone (Rezulin)
Type ⅡDiabetes, PPARg activators
Modulation of adipogenesis and carbohydrate metabolism
Glitazone 処置ラットプライマリー肝細胞での
遺伝子発現プロファイル
薬物間における肝毒性の相違
・
・
・
Pioglitazone :肝毒性なし, ALT レベルの上昇を認めず
Rosiglitazone :肝毒性なし, ALT レベルの上昇を認めず
Troglitazone :体質依存的に肝毒性あり、ALT レベルの上昇
Glitazone 処置ラットプライマリー肝細胞、C9 細胞に
おいて Nqo1 は用量依存的に発現上昇を示した。
Glitazone 処置ラット肝株化細胞(C9)での
遺伝子発現プロファイル
Summary
z プライマリー肝細胞と C9細胞において Troglitazone は
Nqo1, Gadd45, Gadd153, p21, Ho1 に強い 発現上
昇(*)を示した。
z プライマリー肝細胞で Troglitazone は CyclinD1 の発現
を抑制した。
Rat MultitoxPlex Kit 応用例:Benzo[a]pyrene を使用した実験
Benzo[a]pyrene 処置プライマリー肝細胞において薬物代謝に関与する遺伝子に有
意な発現上昇が認められた。
その他の Rat MultitoxPlex Kit 応用例
様々な Compound による遺伝子発現プロファイルの検出
・ Benzo[a]pyrene: genotoxic carcinogen, toxic pollutant from cigarette smoke
・ Clofibrate: hypolipodemic drug, PPAR-a agonist
・ Emetine: protein synthesis inhibitor
・ Mitomycin C: alkylating, antineoplastic agent
・ 2,4 Diaminotoluene: genotoxic, dye synthesis intermediate
・ Glitazones (Pioglitazone, Rosiglitazone and Troglitazone)
発現プロファイルマップ
Rat primary hepatocytes
Rat C9 cells
Conclusions
z GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit は様々な薬物処置によって起こる発現変動を正確に把握でき、毒性発生機序の解明に
応用できることが示唆された。
z GenomeLab GeXP Rat MultitoxPlex kit は初期の毒性スクリーニング用遺伝子パネルとして利用でき、様々な毒性発生モデル
においてどのような毒性発生機序が作用しているか確認することができる。