<「校長室便り」54> 交 流 寒くなってきた。木々も大分色づいてきた。今まで私が気づ かなかったのか、あるいは今年が特別なのか、ケヤキの木々が 美しい。黄色から赤、またその間の様々な色が、1本の木の中 でも、またそれぞれの木の間でも見られる。しかもそれは虹の ようなきれいなグラデーションを描くのではなく、まったく統 一がない。ところが、それが却って美しく感じられる。 学校でもイチョウやケヤキが色づいているが、大変なのは用 務員さんだ。紅葉あるいは黄葉した木々が葉を落とし始めたか らだ。毎日枯れ葉を掃くのが一仕事だ。私はいつも、この用務 員さんの仕事ぶりに感心しているが、話してみると葉が落ち切ってしまうまでのひと月 半くらいは大変なようだ。尤も用務員さんはそんなことはまったくそぶりにも見せない。 ところで、先日静岡県にいる友人から一冊の冊子が送られてきた。彼は元々は中学校 の保健体育教員だが、退職後短大で幼児教育に関わり、現在は保育園の園長さんのアド バイザーのような仕事をしている。冊子は保育士さん向けに書いていた通信をまとめた ものだ。冊子の名前は『ほいくえん、大すき』。サブタイトルにはこうある。「保育園・ こども園の訪問で、 “すごい♪”と思ったこと」。タイトルもサブタイトルにも感心した。 前書きに通信を冊子にまとめた意図が書かれているが、様々な現場をみて自分が「す ごい!」と思った取り組みなどを他の園の保育士さんに情報として伝えることを一つの 目的としたとある。原文には「紹介する内容は『情報交流』であり、紹介内容を推奨す ることを目的としない。」とある。これにも感心した。こんなことをやれと上から目線で 言うのではなく、保育士さんがいいと思えばやればいいとの考えだろう。 中を見てみると、私が幼児教育にまったく疎いためかなる ほどと思うことが多い。たとえばある人の引用だが、子供た ちに対して、 ○子どもをバカにするような言葉を使ってはいけません。 ○子どもを試すような言い方をしてはいけません。 ○子どもを傷つけるような言葉を使ってはいけません。 とある。そういえばどこかで、子どものプライドを傷つける ようなことを言ってはいけない、と聞いたこともある。幼児 だって、中高生並のプライドがあるのだ。 また、いも掘りに関して、これは総合的な食育活動であるという。 「一つの食育活動は、 単なる『食の学び』ではなく、子ども達の全感覚と結びついた活動(学び)であると考 えられます。」とあり、具体的な説明がなされている。 1 ○「いも堀り」をしながら、・・・ ミミズやムカデを発見し、自然や土・生き物を知る。 ○お友達と協力し、さつまいもを掘り出す・・・ 活動の中で、子ども同士の協力が行われる。 ○「大物がとれた~」と大興奮・・・ 収穫の喜び、達成感を感ずる。 なるほど、いも掘りもこのような総合的な活動であった のだ。 そういえば本校の小学校でもいも堀りが行われていた。付属小学校では屋上にそれぞ れの学年の畑がある。たまたま私は1年生のいも掘りを見た。田舎生まれなのに、私は さつまいもがどんな具合に生えているか正確には知らなかった。また、どんなふうに地 中に潜っているのかも知らなかった。その日は1年生と一緒に自然観察の勉強をしてし まった。また、担任の先生の指示で、いも掘りの終わった子ども達はいもの蔓でリース を作っていたが、なかなかいいものができていた。 その後、日を置いてだが、やはり小学校を回っていると、特別棟の家庭科室で、お母 さん方も手伝って、にぎやかに収穫したさつまいもをふかしていた。ちょうどお昼に近 い頃で、子ども達は期待感でいっぱいという感じだった。私も空腹を感じた。 さっきの『ほいくえん、大すき』にならって言えば、 「付属小、大好き!」という感じ で、いも堀りはそれだけにとどまらず、自然観察や図工、また家庭の授業・活動につな がっていたのだ。恐らく本校の先生方もこのようなことを意識してやっているのだろう。 そこにはベテランから若手への経験の伝達があり、相互の情報交換もあるにちがいない。 中高では先週、先々週と行事が多く、生徒達が修学旅行 や学年遠足に行くだけでなく、先生方でも遠く四国まで研 修に出かけた者もいた。関東等近い地域にとどまらず、広 く全国の学校を見て、それを本校の学校運営の参考にしよ うというものだ。視察先は実際行く者たちで決める。今月 末には職員会議で、その報告がある。 このように職員会議や学年会議で報告・研修が行われるだけでなく、日常の私的レベ ルでも多くの情報交換が行われることが好ましい。最近小学校と中高の連絡連携も密に して連絡会はもとより相互の授業見学も行っている。校外に目を向けると同時に自分た ちの身近な所でも、他の人の実践を自分のものとして、それを膨らませていければ、自 分自身がどんどん豊かになっていくにちがいない。私はそれを期待している。 (2015.11.17) <パリ同時テロ事件の犠牲者に対し哀悼の意を表します。> 2
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