(5) 理科-長い資料文と戦う 大問は5問構成です。大問1は全分野からの比較的平易な独立小問です。大問2は地学分野 ( 天気、 天体等 )、大問3は生物分野、大問4は化学分野、大問5は物理分野からの出題で、中学校3年間 の広い範囲からまんべんなく出題されています。 膨大な資料文を読み解く必要もあり、他の教科同様、40 分で解くことを考えるとやはり時間が厳 しい内容になっています。 尚、昨年までと大問ごとの配点が少々変更され、各大問の配点が 20 点ずつになりました。理科の 全体平均点は、近年では5教科の中で最も年度差があり、易しいときと難しめのときの差が激しかっ たのですが、今年はほぼ昨年と同様の難易度だったようです。 【出題内容と小問ごとの難易度-理科】 ( H27年 理科 出題内容 大問 小問 配点 3 [選択]4つの天気図を日付の早い順に並べる 問1 3 [選択]きれいな水に住む水生生物を選ぶ 問2 小 3 [記述]「ヘモグロビン」の語句記述 問3 問 2 [選択]実験結果からわかるアンモニアの性質を選ぶ 1 問4 集 3 [記述]「塩」の語句記述 問5 合 3 [選択]火力発電におけるエネルギーの移り変わり 問6 3 [記述]光の反射(反射角の大きさを求める) 問7 問1 3 [記述]「恒星」の語句記述 地 問2 3 [選択]星座の年周運動と、見える方角の変化 学 3 [図示]条件から判断できる地球の位置を図示する問題 (1) 問3 2 3 [選択]日時と方角から見える星座を判断する(年周運動と日周運動) 天 (2) 4 [記述]グラフからわかる昼の長さと南中高度の変化を記述する 体 (1) 問4 4 [記述]南中高度と昼の長さが変化する理由を記述する (2) 3 [記述]根のつくり(「根毛」の語句記述) (1) 生 問1 4 [記述]根毛の役割を記述する (2) 物 3 [記述]茎のつくり(「道管」の語句記述) 問2 3 植 4 [選択+記述]双子葉類の葉脈を判断する 問3 物 3 [記述]葉のつくり(「気孔」の語句記述) 問4 3 [記述]減数分裂 問5 問1 3 [選択]ガスバーナーの使い方 問2 3 [選択]金属に共通する性質でないものを選ぶ 3 [計算]銅と酸素の化合における質量の関係を計算する 化 (1) 問3 4 学 4 [計算]同原子と酸素分子の質量比を求める(何倍か答える) (2) 3 [記述]酸化銅の還元に関する化学反応式をかく (1) 問4 4 [計算]複数の条件を整理して物質の質量を計算する (2) 5 [図示]絵を見て回路図を完成させる 問1 4 [計算]水が電熱線から得た熱量を計算する 問2 物 5 3 [計算]水の温度変化を計算する 問3 理 4 [計算]並列回路に流れる電流の大きさを計算 (1) 問4 4 [計算+記述]条件に提示された温度変化を得るためのスイッチを切りかえる時間を計算する (2) ) ( ) (酸 化 と 還 元 ) (電 流 と 発 熱 量 ) 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 全県 全県 正答率 通過率 27.3 27.3 64.3 64.3 72.3 72.3 66.0 66.0 47.1 47.2 68.9 77.8 38.2 38.2 80.9 81.2 65.1 65.1 18.9 40.3 26.5 26.5 69.3 73.2 45.0 49.3 56.5 56.5 63.0 64.1 66.8 66.9 52.9 62.9 84.0 84.0 38.2 38.2 71.0 71.0 73.3 73.3 52.7 52.8 6.3 16.0 37.0 37.3 4.0 10.2 35.1 42.4 40.1 40.1 66.6 66.9 35.7 35.7 2.5 4.2 ①大問1は基礎的な独立小問題 大問1は、地学、生物、化学、物理の各分野から、合計7問からなる独立小問題となっていま す。昨年までは8問で配点は 24 点でしたが、今年は7問で配点が 20 点に変更されました。基 礎的な内容が中心ですが、正答率の低い問題もあり注意が必要です。今年は問1と問7が少々難 しかったようです。 問1は4つの天気図を日付の早い順に並び替える問題です。よく見かける問題ですが、細か な点で判断に迷う内容となっています。基礎的な問題ならば、“一つの低気圧の移動状況を確認” すれば難なく並び替えは可能です。しかし、この問題は、4日間すべて枠内に収まっている同一 の低気圧はなく、途中でフレームアウトしたり、途中から登場したりします。そのため、正確に 判断するには、より細かな点を注意深く見ていく必要があります。まず、ウの下にある低気圧 (1008hp) が発達して東に少し移動したのがイと考えられます。また、ウの真ん中あたりの低気 圧 (1014hp) が発達して前線がともなったのがイの真ん中あたりの低気圧 (1012hp) だと考えま す。ウ→イは確定。次に、エの右の低気圧 (972hp) が東方に移動したのがアの低気圧 (974hp) で、 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 前線の大部分は右端からはみ出てしまいました。つまりエ→アとなります。さて、問題は ( ウ→ イ ) と ( エ→ア ) はどっちが先かということです。イの下の低気圧 (1008hp) がさらに北東に移 動して発達したのがエの右の低気圧 (972hp) に見えなくもありません。しかし、発達の仕方が 急すぎるように見えるし、イの真ん中の低気圧 (1012hp) や右の高気圧 (1028hp) の動きがつな がりません。したがって、アの次にウになったと考える方が妥当です。アの右の低気圧 (972hp) がウの右端の低気圧 (980hp) に、アの左下の、停滞前線をともなった低気圧 (1008hp) が東方 に移動し、温暖前線と寒冷前線がはっきり現れるようになったのがウの下の低気圧 (1008hp) と 考えられます。正解は、エ→ア→ウ→イとなります。正答率は 27.3%と、大問1の問1として はきわめて低い結果になっています。 実は、昨年の大問1の問1も正答率 26.3%の難易度の高い問題でした。これも紹介しましょう。 地震に関する問題です。 6秒 「初期微動継続時間」をもとにして、震源からの距離を求める問題です。求め方は計算ではあ りません。グラフの読み取りです。図1の①から②までが初期微動継続時間 ( 初期微動が到着し てから主要動が到着するまでの時間 ) を表しています。つまり、この地点の初期微動継続時間は 6秒であることが図1からわかることです。次に、図2のグラフを見て、P 波と S 波が横に6秒 分離れているところを探します。そこから震源からの距離 50km を得ます。 これは教科書にも出ている基礎的なグラフです。しっかりと求め方を習得しておきたいもので す。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 今年の問題に戻ります。 問2はきわめて基本的な四択問題でした。 「きれいな水」の手がかりとなる水生生物を、ヒメタニ シ、アメリカザリガニ、カワニナ、サワガニから選ぶ問題で正解はサワガニなのでエです。簡単な問 題にもかかわらず、正答率が 64.3%にとどまってしまった原因は、おそらく学習時期の問題でしょう。 中3の一番最後の単元なのです。そのため、計画的に問題演習を積んでいないと、単純に“知らない” ということになりかねません。埼玉県の場合は、どの教科も中3の最後の単元まで出題されます。中 3の最後の方の単元は、一般的な模擬試験における試験範囲から外れているので、客観的に定着度 を確認しづらいのが現状です。 問3は「ヘモグロビン」を答える語句記述、問4は、ある実験の仕組みが、アンモニアの性質のど れを利用したものかを選択する問題、問5は「塩」を答える語句記述、問6はエネルギーの移り変わ りに関する文の穴埋め、問7は図から「反射角」を計算する問題でした。いずれも単純な知識を問う、 知っているかどうかが試される基本的な出題でしたが、 「塩」の記述 ( 問5) と「反射角」の知識 ( 問7) は正答率が 50%を下回る結果となりました。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 ②大問2の地学分野 次に大問2ですが、今年の地学は「天体 ( 地球と宇宙 )」をテーマとした出題でした。 2 A さんは,埼玉県のある場所で,星座,太陽の南中高度,日の出と日の入りをそれぞ れ観測しました。また,日の入り後の西の空のようすを調べ,地球の公転と季節による星 座の位置の移り変わりを説明する模式図を作成しました。問1~問4に答えなさい (20 点 ) 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 問1は、 “自ら光を出して輝く天体は何か”という問題で、正解は「恒星」です。これは易しく、正 答率は 80%を超えました。問2は、年周運動に関する問題で、 「同じ時刻でさそり座を観察した場合、 その位置は日を追うごとにどちらの方向に動くかを4つの選択肢から選ぶ問題でした。[ 観察1の図 1] から読み取ることもできますが、これは単純な知識問題と考えることも出来ます。日周運動におい て、天体は東から西へ回転するように動きます。1ヶ月後の同じ時刻では、30°進んだ位置に見えます。 これが年周運動です。つまり、東から西なので正解はウとなります。 次の問3が難しかったようで、(1) は正答率が 18.9%、通過率が 40.3%、(2) は正答率が 26.5% という結果でした。 問3 調べてわかったことの1と2について,次の (1),(2) に答えなさい。 (1) 図4から考えられる7月1日の地球の位置を○ ×,9月1日の地球の位置を●で,解答 欄の図の適切な位置にかき加えなさい。なお,かき加える○ ×,●の大きさは,解答欄 の図の太陽 ( ○ ) の大きさ程度とします。また,地球の公転の向きは図5のア,イのど ちらですか。その記号を書きなさい。 (2) 9月1日の明け方の南の空に見える星座として最も適切なのもを,次のア~エの中から 一つ選び、その記号を書きなさい。 ア みずがめ座 イ てんびん座 ウ かに座 エ おうし座 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 まず (1) を確認します。日の入りの頃太陽と同じ方向に見えるということは、地球の位置から 見て、太陽とその星座がほぼ直線上にある ( 太陽の向こうにその星座がある ) ということです。 したがって解答は図5に示したようになります。地球の公転軌道の向きはイで、こちらは単純な 知識問題です。 次に (2) ですが、9月1日の地球の位置は●の位置です。このとき“明け方”の“南の空”は どの方角かを判断することになります。 左図で、地球上で明け方の位置は ● の位置です。その位置から太陽 の方角が東、右の方角が南となります。したがって、おうし座が見え る方向なので正解はエとなります。この問題は4つの選択肢から選ぶ 太陽 形式にもかかわらず、正答率が 26.5%ということは、無作為に選んだ 東 4 4 ときの率とさして変わりません。つまり、ほとんどの受験生が、正確 南 西 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 に解くことができていなかった、と考えられます。確かにこの問題は、 いくつかの段階を経て判断し、答えに至るので、単純知識を問われる 問題にくらべれば難易度は高いといえます。しかし、出題のされ方は とてもオーソドックスで、しかも、典型的なものです。多少難易度は高いのですが典型的な問題 は、繰り返し練習してできるようにしたいものです。このような問題がとれると大きなアドバン テージを得ることにつながります。 問4は基礎的な出題でしょう。(1) はただ単純に グラフを読み取るだけで、南中高度は「低くなっ ている」、昼の長さは「短くなっている」と答えれ ば OK。(2) は表現 ( 記述 ) 問題ですが、典型的な 出題です。「地球は地軸が傾いたまま太陽の周りを 公転しているから。」でよいでしょう。しかし、こ の問題の通過率は 49.3%と決して高くはありませ ん。「天体」の単元は、12 月までの北辰テスト等 の模試では試験範囲になっていないのでしっかり とこの単元の定着学習や問題演習をしておいたか どうかで差がついた可能性があります。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 問 4 観察2について,次の(1), (2) に答えなさい。 (1) 7 月から9月にかけて,太陽の 南中高度と昼の長さはそれぞれど のように変化しているか書きなさ い。 (4点) (2) 太陽の南中高度と,日の出と日 の入りの時刻が 1 年を通して変化 する理由を書きなさい。 (4点) ③生物分野は年度による難易度差が大きい! 大問3は生物分野の問題です。昨年は「消化 ・ 吸収」をテーマにした出題で、少々難易度の高 い小問も含まれていましたが、今年は「植物」をテーマにした出題で、平易な問題が中心でした。 問4まではストレスなく進めたのではないでしょうか。単純な知識を問われる問題だったからで す。問1は「根毛」を答える語句記述と、根毛の吸収効率がよい理由である「表面積が大きいか ら」を記述する問題、問2は「道管」の語句記述、問3は「双子葉類」の語句記述と葉脈の判断、 問4は「気孔」の語句記述で、ここまでは中1で学習する内容です。 問 5 調べてわかったことの2について,胚の細胞の核 1 個にふくまれる染色体の数はいく つか書きなさい。 (3点) 2 ホウセンカの生殖についてインターネットで調べたところ,次の(1)~(3)がわかった。 (1) 受粉すると,花粉からめしべの中に花粉管がのび,花粉管の中を精細胞が移動する。 はいしゅ (2) 花粉管が 胚 珠に達すると,卵細胞の核と精細胞の核が合体する。この過程を受精 はい といい,受精によって卵細胞は受精卵となる。その後,受精卵は分裂を繰り返して胚 となる。 (3) ホウセンカの精細胞の核 1 個にふくまれる染色体の数は7本である。 問5は生殖をテーマにした問題で、同じ生物分野でも中3で学習する内容です。細胞分裂の種 類と特徴、生殖の種類と特徴をしっかりと整理しておきましょう。 まず、 「精細胞と卵細胞の核が合体」なので有性生殖です。そして、 「子をつくるため」なので、 体細胞分裂ではなく“減数分裂”です。精細胞と卵細胞の染色体の数は減数分裂前の半分になっ ています。それが「7本」と書かれているので、受精卵の染色体の数は 14 本となります。問わ はい れているのは胚の細胞の核1個に含まれている染色体の数なので 14 本となります。大問3では、 この問題だけ正答率が低く 38.2%にとどまりました。これも、中3に学習しているだけに、演 習不足の受験生が多かったからかもしれません。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 ④計算で差がついた化学分野 次は大問4です。今年の化学分野は「酸化と還元」が主テーマの問題でした。先の大問3は、 資料文の細かいところまで慎重にならなくても正確に問には答えられたのですが、化学分野の資 料文は、実験手順や、各種データ ( 質量その他の数値 ) 等々を正確に把握していかなければなら なりません。そうしないと計算ができないからです。しかし、たっぷりと時間をかけるわけには いきません。大問4は全体を 10 分程度で処理したいものです。そのための有効な工夫を2つ紹 介します。 資料文の読み方 ① 数値条件 ( ○○ g や△△㎤等 ) に線を引きながら読む。 ② 文章で書かれたことを必要に応じて横にメモしていく。 必要以上に時間をかけてしまう最大の原因は、“問に答えるたびに、必要な条件がどこに書か れていたかを探す作業を繰り返してしまう”ことです。資料文は主に“文”で書かれているため 一通り確認するだけでも時間がかかります。それを何度も読み返すようなことになると、時間が 足りなくなるのは当然のことでしょう。あとで使うであろう「数値」や、「起こった結果」等を、 ぱっと見てすぐに探せるように工夫しておくということです。国語の文章読解問題の本文の読み 方と同じ原理です。次ページに具体例を示してみたので参考にしてください。尚、ここではわか りやすくするために色をつけていますが、本番では鉛筆しか使えないので注意しましょう。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 4 銅を加熱したときの質量の変化を調べる実験と,酸化銅と炭素の粉末を混ぜて加 熱したときの反応を調べる実験を行いました。問 1 ∼問4に答えなさい。 メモ ↓ Cu CuO + O2 → Cu CuO CuO 2Cu + O2 → 2CuO 1.6g 0.4g 2.0g Cu 二酸化炭素発生 2 班ちょうど反応 酸化銅 8.0g,炭素 0.6g 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 問に答えていきます。問1と問2は単純な知識を問う問題で易しく、正答率も高くなりました。 埼玉県は実験器具の具体的な使い方を問題にすることがよくあるので、中学校での実験の内容と 教科書の内容を確認しておくことが重要です。 問 3 実験 1 について,次の(1), (2)に答えなさい。 (1) 実験1で,銅の粉末を 2.8 gにして同様の実験を行うと,加熱後の物質の質量の 変化がなくなるのは,加熱後の物質の質量が何gになったときか求めなさい。 (3 点) (2) 実験1の結果から,銅原子 1 個の質量は酸素分子 1 個の質量の何倍か求めなさ い。また,考え方も書きなさい。 (4 点) 問3の (1) はよくある典型的な問題で、計算が必要ですがそれほど苦労なく解答できるでしょう。 図2から銅と酸素は 4:1 の質量比で結びつくので、銅 2.8g と結びつく酸素の量は 0.7g です。答え るのは「加熱後の物質 ( =酸化銅 ) の質量」なので、(2.8+0.7)g = 3.5g となります。 (2) はいきなり難易度が上がったようです。銅と酸素は 4:1 の質量比で結びつくということは知識 でも持っているでしょうし、グラフからも容易に読み取れます。しかし、この問題の正答率は、わず か 6.3% ( 通過率は 16.0% ) という低い数値になってしまっています。答えるべきことを正確に読み 取れなかったと考えられます。答えることは、 “銅原子1個と酸素分子1個の質量比”です。酸化銅1 つは、銅原子1個と酸素原子1個が結びつきます。つまり、銅原子1個と酸素原子1個の質量比が 4: 1ということです。酸素分子1個は酸素原子2個分になるので、銅原子1個と酸素分子1個の質量比は4: 2、すなわち 2:1 となります。何倍か、と問われているので2倍と答えます。考え方も記述する形式 なので、時間がかかりがちなところも注意点でしょう。 問 4 実験 2 について,次の(1), (2)に答えなさい。ただし,試験管 A 内では酸化銅と 炭素の粉末の反応以外はおこらないものとします。 (1) 実験 2 の(3)でおこった化学変化を,化学反応式で表しなさい。 (3 点) (2) 実験 2 の(5)で,1班と3班のそれぞれの試験管 A から取り出した物質の質量 は何gか求めなさい。 (4 点) 問4の (1) は、酸化銅の炭素による還元を化学反応式で書く問題です。教科書にも実験の様子と ともにデカデカと掲載されているので基礎的な出題といえるはずです。 「酸化銅+炭素→銅+二酸化 炭素」という反応になります。酸化銅は還元され、炭素が酸化されます。 化学反応式は「2CuO + C → 2Cu + CO2 」となります。 問4の (2) は厳しい問題でした。正解したのはわずか 4.0%でした。 “試験管 A から取り出した物 質の質量”といっても、この物質が何なのかは書かれていません。まず、実験2の結果、試験管内に残っ た物質が何なのかを考察しましょう。実験2は酸化銅の炭素による還元です。 「調べてわかったことの 2」により、2班の実験 ( 炭素 0.6g 使用 ) のみ、酸化銅と炭素がちょうど反応する量だったことが 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 わかります。1班は炭素が少ないので反応後酸化銅が余ります。一方、3班は炭素が過剰なため反 応後炭素が余ります。これを、酸化銅の量は3つの班とも 8.0g で同じ量であることを踏まえて整理 すると次の表のようになります。 1班 ・・・ 酸化銅+炭素 → 銅+二酸化炭素+酸化銅 ( 酸化銅が余った ) 8.0g 0.3g 3.2g A の外へ 4.0g 2班 ・・・ 酸化銅+炭素 → 銅+二酸化炭素 ( 過不足なく反応 ) 8.0g 0.6g 6.4g A の外へ 3班 ・・・ 酸化銅+炭素 → 銅+二酸化炭素+炭素 8.0g 0.9g 6.4g A の外へ ( 炭素が余った ) 0.3g 1班について → 8.0g の酸化銅とちょうど反応する炭素は 0.6g なのに対して、1班の使用した炭素 は 0.3g である。よって、酸化銅は、8.0g の半分が還元され、半分の 4.0g が酸 化銅のまま残る。そして、反応によって得られた銅は2班の場合の半分なので 3.2g となる。よって、試験管 A に残るのは、反応によって得られた銅 3.2g と、反応せ ず余った酸化銅 4.0g の合計 7.2g である。 3班について →炭素が過剰なため、酸化銅の 8.0g はすべて還元される。これにより、2班同様 銅が 6.4g できる。炭素は 0.9g のうち 0.6g が反応に使われたので、0.3g の炭素 が残ることになる。よって、試験管 A に残るのは、反応によって得られた銅 6.4g と、 反応せず余った炭素 0.3g の合計 6.7g である。 この問題の難しさ ( 落とし穴? ) がもうひとつ。計算そのものは単純な足し算、引き算ですが、計 算するための数値、条件が、資料文の広範囲に散りばめられているということです。どこに何が書い てあったかを素早く確認できるようにしておかなければ、答えを出せたとしても、問1、問2が短時間 でできても、タイムオーバーとなってしまう可能性が極めて高いのです。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 ⑤ 例年計算を必要とする手強い問題が出題される! 最後は大問5です。物理分野から、「電流と発熱」をテーマにした出題で、問3以外はすべて 正答率が 50%未満で、最後の問4の (2) が特に難しい問題でした。 5 電熱線に電圧を加えたときの水温の変化を調べる実験を行いました。問1∼問4 に答えなさい。ただし,電熱線の抵抗の大きさは温度によって変化しないものとし,電 熱線から発生した熱はすべて水の温度上昇に使われるものとします。(20 点) 並列回路 a…6Ω b…3Ω 5分ごとに 0.9℃ずつ上昇 5分ごとに 3.6℃ずつ上昇 まず、時間短縮を図るために、 “作業”をしながら実験の資料文を確認していきます。( 上記赤字 ) 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 問1は図1に示された実験装置を“回路図に表す” (解答例) スイッチⅠ という図示問題でした。2本の電熱線が並列につな がれていることを素早く読み取りたいところです。 あとは、電圧計は回路に並列に、電流計は回路に直 V 列に接続するというルール通りに回路図を完成させ A 電熱線 a 6Ω れば OK です。 電熱線b 3Ω スイッチⅡ 問 2 実験の4で,電圧計の値が 6.0V になるように調整して電流を流したとき,2分間で 電熱線 a から水が得た熱量は何 J か求めなさい。 (4 点) 問2は「水が得た熱量」が問われています。電熱線による発熱で水の温度を上昇させる場合、 “熱 量”の計算は2通りのアプローチがあります。 電熱線からの発熱量=水が得た熱量という条件の場合 ★電熱線の立場から計算する場合 ・・・ 発熱量 (J) =電力 (w) ×時間 ( 秒 ) ( =電流 (A) ×電圧 (V) ×時間 ( 秒 ) ) ★水の立場で計算する場合 ・・・ 水が得た熱量 (J) = 4.2 ×水の質量 (g) ×上昇温度 (℃ ) その問で与えられた条件で計算可能なのがどちらなのかを判断した上で計算すればよいのです。 問2は電熱線の立場 ( 表の上 ) から計算します。 ■電圧が 6.0V ・ 抵抗 6 Ω → 電流= 6.0 ÷ 6 = 1A → 電力=電流×電圧= 1 × 6.0 = 6W ■電流を流した時間→ 2 分間= 2 × 60( 秒 ) = 120 秒 よって、電熱線 a からの発熱量= 6W × 120 秒= 720J ( 答 )720(J) となります。 この問題は、水の温度上昇から計算しようとしても、カップ内の水の量が示されていないため計 算できないのです。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 問 3 実験の5の表から,実験の3を開始してから 25 分間電流を流したときの水温は何℃ になると考えられるか求めなさい。 (3点) 逆に、問3は水の立場でのアプローチが必要な問題になっています。25 分間で電熱線から発 生した熱量は計算できますが、やはり水の量が示されていないため、その熱量で何℃上昇したか は計算できません。水の温度上昇を記録した表からダイレクトに読み取ります。「実験3」なの で、3.0V の電圧をかけた場合です。開始時の水温は 14.0℃で、5分ごとに 0.9℃上昇しています。 求めるのは「25 分後の水温」なので、20 分後の水温 17.6℃に 0.9℃を加えて 18.5℃となります。 問4に進みます。(1) は並列回路の電流の大きさを 求める問題で、典型的な電流回路の計算問題ですが、 通過率は 35.7%でした。 スイッチⅠ 6.0V V 電熱線 a 6.0V 6Ω 1A 電熱線b6.0V 3Ω 2A A ➡ ➡ 問4 実験の6について,次の(1), (2)に答えなさい。 (1) スイッチⅠとスイッチⅡの両方を入れたときの回路全体を流れる電流の大きさは何A か求めなさい。 (4点) (2) 実験開始から 30 分後の水温が 50.0℃になるようにスイッチⅡを入れます。実験開 始から何分後にスイッチⅡを入れればよいか求めなさい。また,計算の過程や考え方 も書きなさい。 (4点) 並列につながれた両方の電熱線に 6.0 Vの電圧がかかるので、電熱線 a に流れる電流は 6.0 V÷ 6 Ω= 1A、電熱線 b に流れる電流は 6.0 V÷ 3 Ω= 2A となります。回路全体の電流は 1A + 2A = 3A となります。 (2) は難しい問題です。求めるものは、時間です。条件提示されているのは時間と上昇温度で す。何 J かではありません。ということは、水の温度上昇をまとめた実験5の表をもとに求める ことになりそうです。実験6では電圧計が常に 6.0 Vになるように調整されています。というこ とは、“スイッチⅠのみを入れた”ときは、実験4の状態と同じです。このことから、スイッチ Ⅰのみを入れた状態の水の温度上昇は、表の下段 (6.0V) からわかります。しかし、両方のスイッ チを入れた場合の水の温度上昇は調べていません。これをどうするか。電熱線からの発熱量を比 較します。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 スイッチⅠのみ スイッチⅠ・Ⅱ両方 スイッチⅠ 6.0V スイッチⅠ 6.0V 電熱線の電力は 6W V 電熱線 a の電力は 6W 電熱線 b の電力は 12W V A A ↓ 電熱線 a 6.0V 回路全体の電力は 18W 6W 6Ω 1A 電熱線b6.0V 12W 3Ω 2A スイッチⅡ ➡ 電熱線 a 6.0V 6W 6Ω 1A 電熱線b 3Ω ➡ ➡ スイッチⅠのみを入れたときの回路全体の電力は 6W です。スイッチⅠとⅡの両方を入れた ときの回路全体の電力は 18W。つまり、両方のスイッチを入れたときは、それまでにくらべて 電力が3倍になることがわかります。電力が3倍になれば水の温度の上がり方も3倍になります。 表 開始時の水温 5分後の水温 10 分後の水温 15 分後の水温 20 分後の水温 電圧 3.0V(実験3) 14.0℃ 14.9℃ 15.8℃ 16.7℃ 17.6℃ 6.0V(実験4) 14.0℃ 17.6℃ 21.2℃ 24.8℃ 28.4℃ ←5分間で 3.6℃上昇 スイッチⅠのみを入れたときの水の温度上昇は表の下段から“5分ごとに 3.6℃ずつ上昇”し ます。つまり、1分あたり 3.6 ÷ 5 = 0.72℃上昇します。これが 6W の電力のときの温度上昇 の仕方です。そして、両方のスイッチを入れたときには電力が3倍になるので水の温度上昇も3 倍、つまり1分あたり 2.16℃上昇します。14.0℃から 50.0℃に上昇させるので、36.0℃上昇さ せます。30 分を何分と何分に分ければ良いかということになります。そこで、方程式を立てる ことにしましょう。スイッチⅠのみを入れている時間を t 分とすると、両方のスイッチを入れて いる時間は (30 -t ) 分と表せます。これで方程式を立てる準備が整いましたた。 0.72t + 2.16(30 - t) = 36.0 これを解いて t = 20 となります。よって、20 分後にスイッチⅡを入れればよいことになります。 この問題は計算の過程や考え方を記述する問題です。解答例を次のページに示しておきますので、 参考にしてください。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016 ( 解答例 ) 実験5の表より、スイッチⅠのみ入れたときの水の温度上昇は5分で 3.6℃、すなわ ち1分あたり 0.72℃である。このときの電熱線 a の電力は 6W である。 また、スイッチⅠとⅡを両方入れたときの電力は,電熱線 a が 6W,電熱線 b が 12W で, 合計で 18W となり,スイッチⅠのみを入れたときの3倍である。よって水の温度上昇 の仕方も3倍になるので,1分あたり 2.16℃上昇する。 30 分で水温が 14.0℃から 50.0℃へと 36.0℃上昇することから,スイッチⅠのみを入 れている時間を t 分,スイッチⅠとⅡの両方を入れている時間を (30 -t ) 分として方 程式を立てると,0.72t + 2.16(30 - t) = 36.0 が成り立つ。 これを解いて t = 20 となる。 よって 20 分後にスイッチⅡを入れればよい。 埼玉県公立高校受験必勝マニュアルⅡ 2016
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