「海外ビジネスコラム(第64回)」 (公財)富山県新世紀産機構 環日本海経済交流センター 鹿野健・海外販路開拓支援マネージャー 第 64 回 ミャンマーの経済特区について(ダウェー経済特区への日本参加予定 の記事に関連して) 2015 年 6 月 21 日付日本経済新聞の一面に、 「日本、ミヤンマー特区参加」と題して ダウェー経済特区への日本政府の予定される出資に関する記事が大きく掲載された。 この機会に同国の経済特区についてレビューすることとしたい。 1) 「新経済特区法」について ミャンマー政府は 2014 年 1 月に、チャウピー(北東部) 、ティラワ(ヤンゴン南約 20km) 、ダウェー(南西部)の三つの経済特区(SEZ=Special Economic Zone)を対象 とした「新経済特区法」を成立させた。 これら三つの特区の位置関係は下図のとおり。 この法律の特徴的なポイントは、 ① 既存の投資法に縛られずに「治 外法権地域」としての SEZ にのみ 適用される法律としての意義が大 きい。 ② 各特区の「管理委員会」 (Management Committee)によ る申請窓口の一本化(ワンストップ サービス)が義務付けられた。 各省庁からの責任と権限を与え られたスタッフがそれぞれの MC に常駐し、申請・許認可窓口を一本 化して対応するため、個別の官庁と の折衝は不要。 政府官庁は首都のネピドーに集中しているため、ほとんどの外資が事務所を構えるヤ ンゴンとの間で飛行機による頻繁な往復が必要であった。 因みに、開発が先行しているティラワ SEZ の管理委員会委員長は建設省のキャリア ウーマンである Dr.Ing-Than Than Thwe であり、筆者は昨年(2014)6 月にヤンゴンで 同氏と面談し、MC の機能に関する説明を受けた。 ③ SEZ 内に Free Zone と Promotion Zone を設け、製造業は Free Zone, 非製造業 は Promotion Zone のルールを適用して各々の事業でメリットを享受できるシステムに なっている。同国としては製造業 60%、非製造業 40%というイメージを持っている。 2)各 SEZ の概要。 ① ダウェー タイのバンコクの西約 300km に位置し、工業団地に港湾を併設する計画でタイの民 間企業主導で開発が進められてきたが、総面積約 2 万 ha という規模の大きさ及び地理 的な戦略性からタイ、ミヤンマー両政府の国家プロジェクトと位置付けられた。 そのような重要性が故に、両国からの働き掛けで日本は開発計画に参加する意向を固 め、今年 7 月4日に安倍首相が東京でミャンマーのテイン・セイン大統領及びタイのプ ラユット暫定首相との間で日本の出資を含む合意書に調印予定というものである。 更に、日経によれば、「ダウェーはベトナムのホーチミンを東端とする南部経済回廊 の西端であり、同地域の約 130km が難所で未整備なままであり、これがこの開発計画 で整備されれば、東南アジアの太平洋側(ホーチミン)からインド洋に抜ける重要な陸 路が完成することになる。 この特区の整備には総額 8,000 億円超が必要との経済産業省の調査結果であるが、在 タイの約 1,600 社の日系企業にとっては、インド・中東・アフリカへの販路拡大や物流 コスト削減への期待度が高く、政府は日系企業の事業拡大に資すると判断した。」との ことである。 また今後、新規工業団地の開発が進むと思われ、注目すべき SEZ である。 ② ティラワ 約 2,400ha のティラワ SEZ では、既に日本の ODA によるインフラ整備工事が進め られており、日本 3 商社合弁の MJTD(Myanmar Japan Thilawa Development Ltd.) が総面積約 396ha のティラワ工業団地を開発中である。 大手ではスズキ、富山県企業ではあつみファッション等が第 1 期のテナントとして公 表されている。 ③ チャウピー 北部のチャオピーでは中国につながる石油・天然ガスのパイプラインの拠点として中 国主導での開発が進み、2013 年 7 月にはそのパイプラインが完成し、中国に対して輸 出を開始している。 中国にとっては、チャオピーはインド洋への直接的なアクセスという意味で重要であ り、同地の深海港の開発が大きな目的であるため工業団地の建設などは未定である。 以上 ←63 64 65→ 目次へ→
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