平成27年度事業計画 Ⅰ 基本方針 我が国経済は、アベノミクスにより、株価の上昇等、経済の回復の兆しは見られるもの の、急速な高齢化を背景とした社会保障経費の増加、リーマンショック後の経済危機へ の対応、名目経済成長率の低迷等もあり、厳しい状況にあります。 政府は、 「経済の好循環」を確かなものとし、全国津々浦々にまで景気回復の実感を行 き渡らせたいとし、また、若者が、将来夢や希望を持つことができる魅力あふれる「ま ち・ひと・しごと創生総合戦略」を進めることにより元気で豊かな地方の創生に全力を 挙げることとしております。 こうした経済環境等の変化の中で、肉用牛経営は、担い手の高齢化、後継者不足、さら には、ここ数年、米国の天候不順、円安等から配合飼料価格が高値で推移するなどの外 部要因に加え、急速な国際化の進展に伴う日豪EPA協定などの経済連携協定、さらに は、大詰めと言われているTPP交渉による不安の拡大などを背景として、飼養戸数・ 頭数の減少が続き、生産基盤の脆弱化が危惧されているところであります。 農林水産省の平成27年度予算では、畜産生産基盤の強化を政策目標に、畜産農家や地 域の関係者が連携し、地域ぐるみで高収益型の畜産を実現する「畜産クラスター事業」 が主要な事業と位置付けられております。 このような情勢を踏まえ、本協会は、繁殖雌牛の増頭など国等が行う施策の推進に積極 的に取り組んでいくとともに、肉用牛生産のセーフティネットとして機能している肉用 子牛生産者補給金制度の円滑な実施に資するための各種事業の適正な実施に努めていく こととします。また、各種情報提供の拡充・強化と会員団体との組織的な連携を強化し、 肉用牛生産振興活動を推進することとし、以下の事業を行う。 Ⅱ 事業計画 1 肉用牛振興推進活動 肉用牛生産の振興のため、農政推進協議会、畜産関係諸団体等と連携を保ちつつ 政府等に対し次の要請活動を行う。 1)畜産物価格や関連対策の適切な決定 2)肉用牛生産基盤・自給飼料生産基盤強化のための対策の充実強化 3)TPP交渉やEPA・FTA交渉等における適切な国境措置の堅持 2 組織的連携強化と情報活動 会員団体との連携を密にし、本協会の運営並びに機能の強化を図るとともに、ホ ームページ等により家畜市場取引情報等の各種情報提供活動を的確、迅速に行う。 3 組織運営 公益法人制度改革に基づく、新たな一般社団法人への移行が完了したが、移行後 の業務事務を円滑かつ適正に進める。 また、引き続き、重複する会員が多い(公社)中央畜産会と「組織運営連絡協議 会」を定期的に開催し、情報交換を行うとともに共通する課題について協議・検討 を行う。 4 財務管理 本協会が保有する資金を安全・確実に管理し、事業の安定的な推進を確保するた めに、日常の会計処理に関する指導等について公認会計士に依頼し、適正に行う。 5 肉用牛生産振興のための事業 1) 肉用牛経営安定対策補完事業(27年度公募/機構事業) (1)肉用牛生産基盤強化等対策事業 ①肉用牛生産基盤強化推進事業 ア 肉用牛ヘルパー組織等強化推進 肉用牛ヘルパー組織等の体制強化を図るための検討会の開催及び普及 啓発資料の作成・配布を行う。 イ 肉用牛振興推進指導 生産基盤強化を図るため、全国・ブロック会議の開催、事業効果の評価 指導を行う。 ②地域の特色ある肉用牛振興推進事業 地域の特色ある肉用牛生産の推進を図るための全国会議の開催、実態調査 の実施、推進指導を行う。 2) 食肉流通改善合理化支援事業(うち国産食肉等新需要創出緊急対策事業) (H27年度・公募/機構事業) 生産から販売業者までが一体となり、脂肪交雑以外の品質に着目した国産牛 肉のバリューチェーンを構築するため、顧客視点に立った新需要を創出し、消 費者の嗜好の多様性に対応した国産牛肉(地方特定品種牛肉)の生産を進める ことを目的として、商品性創出事業において協議会・検討部会を開催するとと もに、消費者ニーズ調査、訴求ポイントの科学的検証(一般成分組成、物理的・ 理化学的分析、呈味成分の分析等)、地方特定品種牛肉のバリューポイントを 活かした商品提案等のPR活動による国内販路の開拓等を行う。 また、実証事業において、実需者に対する調理法の開発・提案、レシピ集の 作成・配布、低需要部位を使った加工品の試作・展示、商談会への出展による PR活動等を行う。 3) 肉用牛の多様な遺伝的経済形質活用調査研究事業 (H26~28年度・公募/JRA事業) 牛肉の美味しさ評価の新たなアプローチとして成熟度を示す「柔らかさ」の指 標化や消費者ニーズに応えた多様な牛肉生産を図るための系統の再構築を目的 として、検討委員会・検討部会を開催するとともに、牛肉の成熟度の指標化のた めの光センサー装置での測定、サンプルの収集・理化学分析(一般成分・コラー ゲン含量)を実施する。併せて、特長ある系統集団の特長類型別の集団化(グル ーピング)等による遺伝的多様性の確保と安定した牛肉生産に向けた系統再構 築のため、SNPを活用した遺伝的情報分析等を実施する。 また、牛肉の脂肪の質(オレイン酸)を指標化した基準により、関係団体・消 費者団体及び流通・販売業者等と共催し、オレイン酸認定和牛の普及啓発のため の取組を行うとともに、オレイン酸の全国統一検量線の補正や精度確認を行う。 4) 草牛の飼養管理技術体系確立調査研究事業 (H25~27年度・公募/JRA事業) 草牛の優れた特長を最大限に活かし、放牧等粗飼料生産基盤に立脚した飼養 体系への転換と生産コストの削減に向けた取組を推進するため、子牛から肥育 までの一貫した飼養管理技術を実証・確立することを目的として、検討委員会・ 検討部会等を開催し、出荷月齢の早期化と斉一性のある草牛の生産を確保する ため、草子牛モデル農家での飼養管理体系の見直し・改善や別飼い設備の改善・ 改修を実施する。併せて、肥育期間短縮と肥育コストの低減を図るため、モデル 肥育農場での実証・展示を実施し、草子牛の早期出荷や草牛の肥育期間短縮技術 の確立に向けた取組を実施する。 また、草牛の評価向上や生産振興等を図るため、父方・母方の血統が肥育期間 短縮型肥育の産肉能力に及ぼす影響・効果等について分析を行うとともに、事業 成果をマニュアルやDVDとして取りまとめを行うための企画検討会を開催す る。 5) 牛肉のおいしさ分析・評価事業(牛肉のうま味成分解析指標化調査研究事業) (H27~29年度・公募/JRA事業) 脂肪の少ない赤身牛肉への関心の高まりなど、最近における多様化する消費 者ニーズに即応し、牛肉の美味しさ要素のうち消費者が食べて美味しいと感じ る「牛肉のうま味(牛肉の味)」に最も関与している主要成分要素の総合的な評 価、牛肉のうま味の指標化に向けた簡易測定手法の確立等に関する取組を実施 する。 6) 「肉用牛改良情報活用協議会事業」と事務局 肉用牛の改良増殖の強化を図るため、(公社)全国和牛登録協会、(一社)日 本あか牛登録協会、(一社)日本短角種登録協会、(公社)日本食肉格付協会、 (一社)家畜改良事業団、 (公社)畜産技術協会及び(一社)全国肉用牛振興基 金協会を構成員とする「肉用牛改良情報活用協議会」は、相互に共同連携し、 下記の事業を行うこととしている。 ア 家畜改良推進事業(肉用牛改良基盤の強化) (H27年度・公募/国) ①遺伝的能力評価情報の活用・指導 肉用牛の遺伝的能力評価情報を活用した牛群の改良を推進するため、全 国的な取組の推進や地域への指導活動を行う。 ②産肉情報基盤の強化・活用 産肉情報の収集、分析を行い、分析結果を産肉情報提供者にフィードバ ックするとともに、遺伝的能力評価に必要な情報を家畜改良センターに提 供する。 ③生産性情報基盤の強化・活用 生産性情報(繁殖性情報、SNP情報)の収集、分析を行い、生産性に 関する遺伝的能力評価の指標化に向けた取組を行う. ④血統・登録情報基盤の強化・活用 血統・登記情報の収集、分析を行い、遺伝的能力評価に必要な情報を家 畜改良センターに提供する。 ⑤遺伝資源情報の収集・活用 国内における肉用牛遺伝資源基盤の優位性を強化するため、海外の動向 についての収集・分析を行う。 本協会は、①及び③の事業並びに協議会の事務局を担当する。 イ 畜産・酪農生産力強化緊急対策事業(肉用牛繁殖性向上緊急対策) (H26年度補正予算・公募/国) (1)肉用牛の繁殖性向上システムの構築 ①繁殖性システムの構築支援 繁殖成績の向上に資するために必要となる発情発見装置、分娩監視 装置等及び附帯機器の整備、牛群管理情報を発情発見装置又は分娩監 視装置と連携しているクラウドシステムに移行するために必要な経費 の助成を行う。 ②牛群の健康管理の高度化支援 牛群の血液検査や飼料分析の実施、その結果等を活用した飼養管理 の改善指導の実施、これら分析結果や指導内容をクラウドシステムを 介して関係者との共有に必要な経費の助成を行う。 ③牛群管理情報を利活用するための体制整備 牛群管理情報の利活用推進のための検討会の開催、ICTを活用し た牛群管理に関する実態調査及び牛群管理情報の収集・分析体制の整 備を行う。 (2)繁殖性向上に資する情報の測定・分析技術の実証 ①繁殖性情報の測定・分析技術実証推進 繁殖性の向上に資する情報の測定・分析に関する技術実証計画の策 定や技術実証の評価、技術実証の現地調査等を行う。 ②新たな測定・分析技術の実証 繁殖成績の向上、繁殖管理の効率化に資するために必要となる発育・ 栄養度等の形質や発情周期等の指標を測定・分析する新たな技術の実 証に必要な経費の助成を行う。 本協会は、(1)の①~③の事業及び協議会の事務局を担当する。 7) 肉用子牛生産者補給金制度運営適正化事業 肉用子牛生産者補給金制度に係る業務の円滑な実施等を図るため、補給金制 度業務推進全国会議の開催、業務効率化検討会及び作業部会、業務推進円滑化 のためのブロック研修会の開催、都道府県指定協会に対する調査指導等を行う。 8) 生産者積立金融資事業(H2~27年度) 肉用子牛生産者補給金制度の健全な運営を図り、肉用牛の生産及び経営の発 展に資するため、大幅な子牛価格の低落により都道府県指定協会に積み立てて いる生産者積立金が不足した場合に、融資準備財産を財源として資金を無利子、 8年以内の償還期間で融資する。 9) 都道府県指定協会運営資金融資事業 指定協会の業務の円滑な推進に資するため、業務運営のための経費に一時的 な不足を来した場合に、1,000万円(1件当たり)を限度に短期の無利子 融資を行う。 6 肉用牛生産振興のための協力事業 1)関東東北肉用牛枝肉共励会の開催 2)その他
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