幸谷 愛

TOKAI UNIVERSITY
THE
INSTITUTE OF MEDICAL SCIENCES
「難治性造血腫瘍に対する新規治療開発を目指した基礎的研究」
山川奈津子
Yamakawa Natsuko
血液・腫瘍内科学 奨励研究員
奥山一生
Okuyama Kazuo
血液・腫瘍内科学 奨励研究員
図3
緒方 洵
Ogata Jun
血液・腫瘍内科学 大学院生
ASR はアポトーシスが強く誘導される条件で劇的に
上昇する
プロジェクトリーダー:幸谷 愛
Koutani Ai
EBV 陽性細胞(Akata 細胞株)で溶解感染期を誘導し、
ASR の発言をリアルタイム PCR により定量した。
その結果、ASR は劇的に発現が上昇した。
内科学系 血液・腫瘍内科学 准教授
【研究目的】
【結果と考察】
難治性 EBV 感染リンパ腫細胞における治療標的になり得る小分子 RNA の同定、機能解析の過程で、以下の手法で新規小分子 RNA
ASR の前駆体は Y-RNA という非コード RNA であった。Y-RNA は細胞増殖に必須の非コード RNA であり、癌細胞においてその発現
を同定した。
が著明に更新する。
小分子 RNA が転写後制御をする上で必須蛋白である AGO1 と AGO2 に結合する小分子 RNA は哺乳類では、その種類には差がないと
興味深いことに、ASR は miRNA のプロセッシングに必須とされる DROSHA と DICER によるプロセッシングを受けずに成熟することが明
されてきた。しかし、大量の小分子 RNA をそのゲノムから転写合成される、EBV 潜伏感染においては、それぞれに結合する小分子
らかとなり、ASR 独自のプロセッシング機構の存在が示唆された。
RNA について選択圧のかかる条件である。このような条件下においては、Ago1, Ago2 に小分子 RNA の選択性が認められる可能性が
ASR は MEF2B などの標的 mRNA に結合しその発現を抑制し、小分子 RNA としては最も研究のすすんでいる miRNA と同様の作用機
あると考え、両者の網羅的な解析の結果、AGO1 選択的な 25nt 前後の新規小分子 RNA 群を発見し、Agotaxis Small RNA (ASR) と名
序で標的 mRNA の転写後抑制を示した。よって、機能性小分子 RNA であることが明らかとなった。
づけた。これらの生合成系、機能を解析することを目的とした。(図1・図2)
更に、ASR は EBV 感染リンパ腫細胞において溶解期、つまりアポトーシスが亢進すると発現が劇的に上昇する。(図 3)よって、その機
能はアポトーシスに密接に関わることが示唆されたが、実際、生合成は Caspase の活性化に依存していることが明らかとなった。
Caspase 依存的に DNase は古くに Nagata らによって同定され、アポトーシス経路における重要な位置づけにあるが、Caspase 依存的
図1 図2
RNase は未だ同定されていない。今後はその ASR の生物学的な意義を明らかにするために、上記 Caspase 依存的 RNase による ASR
の生合成システムについて解明する予定である。
Selected Papers.
1. Kotani A. Genomic mutator Activation-induced cytidine deaminase (AID) as a therapeutic target.
Rinsho Ketsueki. 2014 Jul;55(7):780-4. Japanese. No abstract available.
2. Kotani A. Guest editorial: noncoding RNA in hematopoietic system.
Int J Hematol. 2014;99(5):529-30. doi: 10.1007/s12185-014-1574-2. Epub 2014 Apr 4. No abstract available.
3. Okuyama K, Ogata J, Yamakawa N, Chanda B, Kotani A. Small RNA as a regulator of hematopoietic development, immune response in infection and
tumorigenesis. Int J Hematol. 2014;99(5):553-60. doi: 10.1007/s12185-014-1564-4. Epub 2014 Apr 1. Review.
4. Yamakawa N, Okuyama K, Ogata J, Kanai A, Helwak A, Takamatsu M, Imadome K, Takakura K, Chanda B, Kurosaki N, Yamamoto H, Ando K, Matsui H,
Inaba T, Kotani A. Novel functional small RNAs are selectively loaded onto mammalian Ago1. Nucleic Acids Res. 2014 Apr;42(8):5289-301. doi:
10.1093/nar/gku137. Epub 2014 Mar 13.
5. Kotani A [The role of tumor-derived secretary small RNAs in EBV related lymphoma] Uirusu. 2014;64(1):43-8.
21
再生医学部門
Regenerative Medicine
22