平成26年12月 - 公益社団法人日本技術士会登録グループ 生体・環境

26年12月度
日本技術士会登録グループ
第 158 回「生体・環境、保全交流会」月例会
●公益社団法人
日 時:26 年 12 月 19 日 (金) 17:30~20:30
会 場:技術士会第二葺手ビル会議室
参加者:15 名
演 題 「地球に優しい空飛ぶグライダー(滑空機)
その魅力とは」
講 師
公社)日本グライダークラブ板倉滑空場長
3ダイヤモンドパイロット
KK ジュエル技術顧問 吉瀬はるか 先生
愛機 PW-5 で飛行の講師
はじめに
空を見上げるとカリフラワーを思わせる純白の積雲が浮
かびソット近づいてみたくなる。グライダーを始めるキッ
カケは?と聞かれる。
日本に翼が戻った3年後の昭和30年に新橋の飛行館
(現・航空会館)で、時の婦人航空協会理事長、西原こ
まつ女史を訪ね空飛ぶ醍醐味を聞き、すっかり魅了さ
れたことに始まる。 個人加入を受け入れていた読売学
生航空連盟の門戸を叩いて、二子玉川のR/Wで練習
が始まる。滑空機(グライダー)は数あるスカイスポーツ
の中でも唯一、航空法の規定に基づいて運用されてい
る。他に飛行機、回転翼航空機、飛行船がある。しかし、
幸運にも施行の殆どが但し書で飛べ、例えば安全な何
処に不時着しても良く、書類はコクピットに積むことにな
っているが、オフィスの分かりやすい所で良いなどであ
る。 実地試験は民間に移譲されているものの、学科試
験は国家試験になる。
日本グライダークラブ板倉滑空場には、離陸帯 1 本/着
陸帯 2 本を持つ 1,000m のグラスランウェイがあり、パワ
フルな曳航機とともに、グライダーパイロットにアクティブ
な活動の場を提供しています。
板倉の地は、北に向かって日光から那須、西に向かっ
て赤城、武尊、榛名など、北関東の山間部へのアプロ
ーチが行いやすい位置にあり、北西の季節風が卓越す
る時期には、赤城山からのウェーブが期待できます。一
方、男体山から筑波山にかけて出来るコンバージェンス
へも比較的近く、八溝山系へのアプローチのチャンスに
も恵まれます。(JapanSoaringClub HP)
グライダーの世界 歴史背景と現況
国際航空連盟(FAI) 本部はスイスのローザンヌにあり、
世界中のスポーツ航空を統括する団体と同時に航空・
宇宙運行に関する世界記録を公認する機関とし1905
年10月14日にフランスのパリに設立された。グライダー
の国際滑空記章 銀・金・3ダイヤモンド章・距離750K
以上賞等の認定もする。
(公社)日本滑空協会(JSA)NACの傘下にあり、グライ
ダーや他のスカイスポーツに身近な存在で、国内記章
A・B・C・銅賞の申請受理認定等を行う。1981年(昭和
56年)10月26~30日迄の日程で、東京で開催された
最初の国際航空連盟(FAI)第74回総会(以後ない)に
出席、グライダーの著書でも著名なAnnWelch会長夫
妻とパーティー等で歓談できて光栄であった。
グライダーの楽しみ方
グライダー飛行の楽しみ方には5種類あると思います。
①操縦士、無線、整備等のライセンス取得、
②滑空記章(国内A、B、C、銅章、国際銀、金、ダイヤ
モンド章の他、更に上の750Kmや1000Km等距離章
③2年毎の世界選手権も含め競技会への挑戦
④アクロバット飛行の挑戦と世界選手権への挑戦、
⑤速度、高度、距離など多種記録に挑戦する醍醐味。
エンジンの無いグライダーが何故、高く、遠くへ、長時
間飛べるのか?
太陽からの熱射が地球の表面を温め幾筋もの上昇気
流(サーマル)が発生。サーマルは筒状になっているの
で中に出来るだけ留まるよう旋回を繰り返す。高度の位
置エネルギーを距離エネルギーに変えることで長距離
を飛べます。
オーストラリアのナロマインで8時間900Kmクロスカント
リーを飛んだ時は、まさに毎秒8mもある強力なサーマ
ル中を200k以上出して達成できました。モミクチャにさ
れながらの飛行は「操縦は空飛ぶ格闘技」と笑いなが
ら・・・。他に最近みなが利用する上昇気流には、風と風
がぶつかりあって生ずるコンバージェンス風が大きな積
雲に当たって出来る上昇風等々がある。
今、ドイツのクラウス・オールマンさんの距離・世界新記
録は3009kmです。上昇気流には熱上昇気流の他に
山肌を駆け上るウェーブ(長波・山岳波)があり、まさに
オールマン氏は15時間以上かけてアルゼンチンアルプ
スの雪山の山岳波を利用して飛んだのである。熱上昇
気流では不可能である。私がアメリカ・ミンデンのシラネ
バタ山脈上空で獲得5000mが取れたのもやはりこのウ
エーブで3個目のダイヤモンド賞達成はこの時です。
貴重な事績の抜粋
第6回日本滑空選手権大会 in 滝川滑空場
アクロバット飛行で高名なハッケン・ミューラー氏・欧州
から日本までモーターグライダーを運んだ加藤高司氏
が紹介。紅一点吉瀬は日本国内唯一の愛機ミニ・ニ
ンバスで出場。
1976年 PiratasB4
日本女性として初の記録オーストラリアワイケリー⇔ロッ
クストン67km 飛行後シャンパンかけでフレッドさんの祝
福を受ける。
ワイケリー滑空場にて世界チャンピオン Mr.Grosse 世界
選手権出場小田勇さんと吉瀬はるか
モーニンググローリーへの挑戦
NHKや不思議大発見でもTV放映されて皆さんの関心
は高まったロール雲で、その少し前に日本人グライダー
パイロットでは初めて私たちは挑戦していた。世界気象
3大スペクタクルで東の半島から豪州北のカンタペリア
湾のはずれバークタウン上空に1000K海苔巻状のロ
ール雲が時速60Kでやって来る。あたり一面暗くなり雨
も降る時もあり、異様な雰囲気を求めて人々は集まる。
前夜から当日朝にかけて機体等がびしょ濡れになるの
が発生の目安である。翼上面の水滴を払いのけ、早朝
6時に離陸、北の海岸へむけ40K飛行して待つ。12日
間で10月28日一日だけグローリー雲に遭遇、大感激。
競技の現状と課題
国内のグライダー人口は減少傾向
日本のグライダー人口は推計で3.000人(ライセンス保
有者30.000人)、マイナーの競技である。歴史があり
文化として定着しているグライダー発祥の国ドイツは1ケ
タ違う。スウエーデンの競技人口は約5.000人(総人口
700万人)、スカイスポーツ先進国との明白な違いを以
下考えてみたい。
滑空活動の対面している問題点
1.参加する人(若者にとって)の余暇時間の制約
2.広報性の不足
3.活動にかかる費用の高騰
日本滑空選手権が行われなくなったのは残念。祭り的
要素がないので淋しいが当事者は・・・。それより世界選
手権に送り込む選手が4名とは淋しい。各団体で養成、
応援、援助する必要があると思う。
まとめと今後の展望
あくまで趣味のグライダーのお話でしたが、楽しめました
でしょうか。グライダーの魅力は飛ぶ前の期待感と飛ん
だ後の余韻にあります。最近は日本でも長距離XC飛行
に挑戦する若者が出てきています。競技取り分け世界
選手権への出場選手増に繋がる応援をしたい。
私事ですが年一回の航空身体検査が合格するかぎり
は飛びたい。
航空機産業を我が国の基幹産業として位置付けようと
動きがある。前理事長・日向美智子氏はいち早くFRPグ
ライダーを日本に輸入、FRPでボートを作っていたヤマ
ハに開発製造を打診したことがある。
日本が翼をもがれている間にドイツはグライダーの開発
製造一筋。先を越されて無理を承知であるが物づくり日
本でも挑戦して欲しい。 (原稿提供は講師)
【所感】
貴重な事績の懇切なスピーチから壮大な夢を実現され
た志に感服、グライダー競技の知見を深めました。
(廣瀬益宏 記)