遺伝子改変動物モデルから探る多形型横紋筋肉腫のオリジン

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遺伝子改変動物モデルから探る多形型横紋筋肉腫のオリジン
○鈴木昇、斉藤浩充
(三重大学生命科学研究支援センター・機能ゲノミクス分野・動物機能ゲノミク
ス部門)
「はじめに」
ヒト多形型横紋筋肉腫(pleomorphic rhabdomyosarcomas, pRMS と略記)は、
成人の骨格筋に原発し極めて予後不良を呈する希少癌である。希少性ゆえに、こ
れまで、pRMS の発生メカニズムや有効な治療法も未解明である。これまで、私
たちは、Cre/Lox システムを応用して pRMS 動物モデルの開発し、癌型 K-ras 遺
伝子発現とp53遺伝子機能欠損との協調によって、マウスの大腿骨格筋に
pRMS が発生することを示し、病態を解析してきた。今回は、細胞株を樹立し
pRMS オリジンについて考察を試みた。
「方法と結果」
floxK-rasG12Vp53-/-マウスの大腿骨格筋に Cre 発現プラスミドをエレクトロポレ
ーションで導入し、約 10 週後に pRMS を得た。これをトリプシン処理して、DMEM
+10%FCS 培地で培養し、細胞株 RMS3 を得た。RMS3 は、皮下移植により pRMS
を形成し、また、静脈経由の移植によって肺に転移性コロニーを形成した。この
転移性コロニーを培養し、限界希釈法によって、細胞株 RMS310 を得た。さらに、
GFP 発現レトロウィルスをトランスデュースした RMS3 の肺転移性コロニーを株
化した細胞株 RMS3g2 を得た。各細胞株の RNA を抽出し、これまでに報告され
ている筋再生をつかさどる細胞集団に特異的なマーカー遺伝子の発現組み合わせ
を RT-PCR 法にて調べた。結果、幹細胞抗原 Sca1、CD34、PDGF 受容体α型、メ
タロプロテアーゼ Adam12、間質細胞マーカーTCF4 の組み合わせの遺伝子が発現
していた。正常な筋再生の主役であるサテライト細胞のマーカーPax7 および
Myf5 はいずれも発現を認めなかった。また、CD45 も陰性であった。
「考察」
したがって、floxK-rasG12Vp53-/-マウスに誘導さえる pRMS のオリジンは非骨
髄由来の間葉系幹細胞である可能性が示唆された。