異常度の分類を試みた脳波検査結果報告書のデータベース、―客観性の

異常度の分類を試みた脳波検査結果報告書のデータベース、―客観性のある判定を目指して―
○ 根路銘 国政, 太田 千亜紀, 金城 民子, 琉球大学医学部附属病院検査部
【はじめに】
近年の脳波計は波形をデジタル保存できるものが多い。しかし、単に波形を保存しただけではデータ
が蓄積するだけで、再度見直すことも少なく臨床的有益性はほとんどないと思われる。臨床で活用する
ためには、一度レビューし、重要波形を選択し、客観性のある検査結果報告書として保存することが望
まれる。今回、汎用性ソフトで異常度の自動判定を加えた、サマリーのデータベースを作製したので報
告する。
【器機の構成】サーバー:OS は Windows2000 Professional.プロセッサーは Pentium II 800MHz,内蔵
HD(ハードディスク)は 20GB,デジタルカメラ DSC-P50 を使用した。 クライアントは,学内 LAN 上
の既存の Macintosh と Windows マシン。ソフトはファイルメーカ pro5.0、Photoshop5.0 を使用した。
【システムの概要】
検査室で判読結果をパソコンに入力する。入力データが評価マスターファイルと照合され自動判定さ
れる。つぎに、代表波形を取り込みサマリーとしてデータベース化する。それを院内 LAN を通して臨床
側へ提供し、医師はその結果をレビューし必要があれば書き換える。データは技師へフィードバックさ
れ最適化される。
【判定ロジック】「サマリーの項目入力」をすると、それを照合フィールドとして、リ
レーションをなしている「評価マスターファイル」の「異常度の点数」を参照する。なお、その点数は、
Saunders の異常度の分類と当院精神科の評価基準に基づきあらかじめ数値化しておいた。
「基礎波」に
ついては年齢と周波数、混在する徐波の3つの要素で異常度が決まるようにした。
「過呼吸」はビルドア
ップ、
「光刺激」はフォトドライブについて異常度を設定した。また「突発性異常波」は、波形の種類と
出現頻度によって決定される。
【考察】
脳波検査は、
「記録の膨大さ」と「判定の客観性」などに問題があった。しかし、技師は記録の技術面
に徹し、これらの問題に積極的に関わって来なかった感がある。今回の検査室主導による試みは、判読
サマリーと画像波形を一体にした独自のレイアウトにより、より説得力のあるデータベースが構築でき
ると期待できる。また、自動判定であるため、客観性のあるサマリーが検査室サイドで作製できると思
われる。これらのことから、判読医の判読に関する時間軽減ができ、これまで以上に臨床に貢献できる
ものと思われる。
データの変更に関しては、医師と技師の双方で行えるため、判読の考え方を伝えるコミュニケーショ
ンツールとしての役割も期待できる。さらに、これらの作業を通し、検査技師の業務拡大として地位向
上につながることが期待される。
【まとめ】
1.脳波検査結果報告のデータベースを汎用性ソフトで構築した。
2.臨床に役立つデータが瞬時に見られる。
3.判定結果をアルゴリズム化することで客観性のあるサマリーができる。
4.時間的拘束を伴わず、技師・医師の意見が反映された判読が可能である。