家庭教育力の強化を図ろう -「あいさつ」は家庭でできる最も簡単で大事な教育のひとつ- 豊田市立上郷中学校育友会 1 学区及び学校の概要 本校は、豊田市の南部に位置し、学区の東端と南端は隣の岡崎市と安城市に接しています。学 区内にはトヨタ自動車の上郷工場をはじめ自動車関連の工場などがいくつかありますが、それ以 外は主に田畑が広がるのどかな所です。 全校生徒数 549 人、学級数 18 クラスで、27 校ある豊田市の中学校の中では 11 番目の規模の学 校です。 本校の特色ある活動として、開校 50 周年記念行事として始められた、2 年生の生徒全員が豊川 市の臨海緑地公園から上郷中学校まで 43km を歩き通す「立志を歩く会」があり、今年も 3 月 15 日に 16 回目を実施しました。 2 研究のねらい 「あいさつ」のできる子に悪い子はいないといわれる通り、「あいさつ」は家庭や地域ででき る最も簡単で、効果のある教育のひとつと考えます。家庭や地域で常に「あいさつ」などで声を 掛けられるのは、子供自身にとって、常に見守られているという安心感を得ることができ、心の 成長に大きく貢献するものと考えられるからです。 また、子供だけでなく地域の人同士の「あいさつ」によって、空き巣などの犯罪が抑制される ということも一般に言われており、「あいさつ」は教育だけでなく、地域の防犯にも寄与するも のと考えられます。 このように簡単で大きな効果のある「あいさつ」を誰でも積極的にできる雰囲気が地域に醸成 されるような活動が当会でできないか、実践を通して探ります。 3 研究の仮説 例年、当会では春と秋に役員が交代で「あいさつ運動」を行なっていました、また、同じく登 校時の「交通安全立哨」や下校時の「立哨活動」も行なっており、合わせて年間 2 週間程度は当 会役員が中心となって「あいさつ」を行なう活動を実施してきました。また、学校の先生方も校 門に立ってあいさつをしてくれたり、生徒会でも「あいさつ運動」をしたりしています。 筆者は朝の通勤時に多くの本校の生徒とすれ違います、その時子供の方からあいさつをしてく れることもありますが、なかにはこちらがあいさつをすると、ちょっとびっくりしてあいさつを 返してくれる子や、返してくれない子もいます。 学校周辺や、明らかに関係者とわかる人とは積極的にあいさつができても、学校から離れたと ころでは必ずしもそうではない場合も見受けられ、地域の人とすれ違ったら(名前や顔を知らな くても)あいさつをするのが当然という意識がまだ少し足りないのではないか、という仮説をた てました。 4 研究の方法 当会で行なっていた「あいさつ運動」「立哨活動」「交通安全立哨」について、活動方法の見直 しを行いました。見直しの骨子は下記の 2 点です。 ・年数日だけの活動ではなく、年間を通して活動を行なう ・役員だけでなく、一般会員にも参加してもらう 今までの「立哨活動」と「交通安全立哨」については中止にして、その代わり毎日、会員持ち 回りで子供の登下校時間に合わせて立哨や巡回をするように改めました。活動する時間帯(登校 時または下校時)や、活動の形態(立哨または巡回)は各自で選べるようにすることで、会員の 負担をなるべく減らせるよう配慮した方法としました。そして、立哨でも巡回でも子供たちと元 気よくあいさつすること、地域の人たちにも同じようにあいさつすることをお願いしました。な お、立哨場所や、巡回範囲はそれぞれ自分達の自治区内とし、持ち回りのルールなども各自治区 の判断としました。 また、「あいさつ運動」についてはもともと「あいさつ」に特化した活動なので今まで通り行 なうこととしました。 5 研究の実践 防犯グッズ(ベストなど)の準備や、各自治区での順番決めなどを行い、 6 月から活動を実施 しています。また、通常の「あいさつ運動」は 6 月 19 日、20 日及び 11 月 25 日、26 日に行いま した。 6 研究の考察 活動の効果をある程度定量的に評価するために、活動前と現時点でアンケート調査をするべき でしたが、時間的な制約もあり、調査ができませんでした。 ただ、筆者が通勤時に中学生とすれ違うとき、子供たちの方からあいさつをしてくれることが 少し増えてきたような感覚があり、当会の活動や、先生方、生徒会の活動が奏功していると感じ ています。 7 成果と今後の課題 「あいさつ」を誰でも積極的にできる雰囲気が地域に醸成されることをねらいとして、「あい さつ」をするのが当然という意識づけをするための活動を現在も行なっています。本来の目的で ある子供の情緒教育への寄与や、本研究においては副次的な効果になりますが、地域の防犯への 寄与について、どの程度成果があったのか大いに興味があるところです。しかしこれらは本研究 以外の様々な要因もかかわる事項であり、本研究の成果についての詳細な評価は難しいと考えま すが、この活動は必ずプラスの影響を及ぼす活動であると確信しています。 ただ、活動方法について、年間を通して活動をするため、1 回あたりの動員が少なくなり、以 前のように「何かやっているな」というふうに周りから見えなくなってしまったのが反省点です。 そのため、各家庭、ひいては地域に影響を与えられるだけの活動量の確保が今後の課題と考えて います。
© Copyright 2024 ExpyDoc