ハイライト表示

修⼠論⽂要旨
論文タイトル:「中国における⽇系企業の現地化」
学籍番号:AM12003
氏
名:楊蕙銘
指導教授:池島政広教授
【論文の構成】
はじめに
第 1 章 問題意識の提示と研究目的
1 問題意識
2 研究目的
第 2 章 本論
1 日中貿易及び中国に進出する日系企業の現状
2 中国に進出する日系企業が直面する問題
3 中国に進出する日系企業の人材採用・育成
4 中国における日系企業の現地化の現状と問題点
第 3 章 仮説の提示
第 4 章 仮説の実証
1 アンケート収集方法と実証の概要
2 変数の説定と分析方法
3 記述統計分析
4 相関分析
第 5 章 考察
1 ヒアリングまとめ
2 ディスカッション
おわりに
参考文献
【論文の内容】
研究目的
本研究では、中国における日系企業の現地化について、現地化の概念を明らかにし、人材現地化の遅
れにより生ずる様々な問題点及び現地化の進まない理由について検討し、人材現地化の進み方を明確に
することを目的とする。そして、現地化を進めることの必要性を述べ、現地化と企業の人材育成との関
係性や意思決定のスピードとの関係性、中国の売上高営業利益率との関係を明確にしていく。
2. 研究方法
まず、中国に進出している日系企業の全体的な特徴を把握し、進出する際に直面する問題を明らかに
する。そして、中国における日系企業の経営層現地化の現状を把握し、現地化のメリットとデメリット
を分析した上で、現地化の進まない理由や進め方などを明らかにする。先行研究を行った上で、仮説を
提示する。また、中国に進出する日系企業を対象としたアンケートを利用し、統計的な分析で、仮説を
実証する。
3. 研究内容
中国経済の高成長により、日中貿易関係は緊密になっていく。中国における経済規模が拡大するとと
もに、様々な質的変化も続いている。中国に進出する日系企業は様々な問題に直面している。特に、従
業員の質や人件費の高騰などの「人」に関する問題は非常に深刻である。現地の事情やビジネス環境を
熟知している現地人が経営を担い、現地に権限委譲を実行するは非常に大きな意味がある。そのため、
1.
計画的に経営層に適する現地人材を体系的に育成することが不可欠である。
欧米企業に比べ、日系企業の人気は高くない。日系企業のキャリアパスが不明確、評価システムは不
明確であることがよく指摘されている。また、相対的に昇進スピードが遅い、出世のチャンスが少ない
のが現状である。採用が上手くいっている日系企業は少ないのが現状である。日系企業の採用が上手く
いかず、
「負の循環」に陥る可能性が高い。日系企業が選ばれないと優秀な人材が集まらない。そして、
人材育成が上手くいかなくなる。また、人材の育成が進まず人材がいないために、日本人駐在員のマネ
ジメントが不可欠となる。これは現地化が進まない一つの要因である。中国における日系企業は、社内
公平公正・透明性・納得性、社員がインセンティブを感じ、最終的に自分のキャリアアップに繋ぐこと
ができる評価制度を作るのか重要である。
日系企業のトップ経営者の現地化は欧米企業に比べて遅れている。欧米企業は現地化が進んでいると
よく言われる。欧米企業は比較的に現地化を重視し、実行している。それによって一般的に大きな成功
を収めているのが事実である。数多くの日系企業は大量の現地人材を育成し、経営管理の仕事に従事さ
せているが、課長・部長級などの部門責任者に限る。中国人幹部が副総経理に就任する事例も多くなく、
総経理もしくは中国総代表に任命されることは極めてすくないのが現状である。欧米企業の場合は、海
外拠点を専門監査・監督部あるいは監査会社に依頼し、監査するケースが多い。日系企業は現地拠点へ
の監査ノウハウの欠如や責任の不明確等で、現実的には監査・モニタリング機能が働いていない。
経営現地化は現在、多国籍企業のグローバル戦略に必要な条件の一つである。多国籍グローバル化戦
略は経営効率をアップさせる管理である。現地化は様々なメリットがある。例えば、有能な現地人材の
採用と定着が容易になり、現地人のモチベーションの向上に有利である。また、現地社会との融合を促
進し、現地政府からの評判も向上させる。さらに、本国からの駐在員コストを削減できるなどがある。
近年では、中国における日系企業は現地化を進めるために、新しい動きが取り始められている。その中
で、経営層に適している人材を育成することが一番有効な方法の一つである。
4. 研究結果
中国における日系企業の経営現地化に関する先行研究を踏まえた上で、これからの中国における日系
企業の現地幹部の登用の現状を把握し、現地化と人材育成の関係を明確し、「現地人材の育成程度が高
ければ、現地化の実現可能性が高い」を一つ仮説として提示する。また、現地化の程度と意思決定のス
ピードの関係性を明らかにした上で、企業の営業成果との関係に明確にして、「現地化が遅れるほど、
意思決定のスピードが遅くなる」と「現地化の程度が高ければ、営業成果がよい」を仮説として提示す
る。中国に進出する日系企業を対象とした 2013 年 10 月に行われたアンケート調査のデータを基に、
統計的な分析で、以上提示した仮説を実証した。
【主要参考文献】
1.
2.
3.
4.
5.
薛軍(2010)『在中国の経営現地化問題——多国際企業現地化論の再検討』
,創成社.
町田秀樹(2010)『中国市場で成功する人材マネジメント』
,ダイヤモンド社.
金堅敏(2004)『対中ビジネスにおける現地化とガバナンスのあり方』
,富士通総研(FRI)経済研究所.
朱炎(2007)『中国における日系企業経営の問題点と改善策』
,Economic Reviev,No289.
高原彦二郎,陳軼凡(2011)『中国進出企業の労務リスクマネジメント』
,日本経済新聞出版社.