河川の護岸工事による環境ホルモンの影響について 北海道開発局 石狩川開発建設部、開発土木研究所 ○玉川 尊、中津川 誠、太田 陽子 Influence of River Revetment Adhesion agent of Water Quality, by Takashi TAMAGAWA, Makoto NAKATSUGAWA and Yoko OTA (Hokkaido Development Bureau. ) 1.はじめに されなかった。また、BPAは0.01411∼0.01665μg/Lの溶出量 河川の護岸工事のひとつに連結石張工法がある。近年、こ が推定される一方、現地調査ではほとんどの場合検出下限値 の工法を改良し自然石と金網を接着剤で一体成形する工法 (以下、「連結石張接着工法」と云う)が用いられているが、 を下回っているものの1例だけ上回るものがあった。これに ついては今後原因を調査していく必要があるが、護岸自体か ここで使用される接着剤の種類によっては環境ホルモンを含 らの溶出量は1995年の施工から以後は堆積土で被覆されてい むものがあるので、その流水への影響について実態調査を 行った結果を報告する。 るため、今回の試験結果より小さいと考えられる。 2.調査方法 連結石張接着工法の施工断面図を図-1に示す。調査対象 とした河川は石狩川水系忠別川および鵡川の2河川である。 使用された接着剤で、BPA(ビスフェノールA)の分析方法は、 環境庁の「外因性内分泌撹乱化学物質調査暫定マニュアル」 によった。また、BPF(ビスフェノールF)は我が国では環境ホ ルモン物質ではないが、BPAの同属体と考えられることから調 図-1 連結石張接着工法の施工断面図 査の対象とした。ただし、明瞭な分析方法が示されていない ため図-2 に示すBPFをフェネトール体に誘導体化することで BPAと同程度の検出精度が得られたのでこの測定法を用いた。 3.調査結果 (1) 接 着 剤 の 溶 出 試 験 と 結 果 河川護岸に使用された接着剤の溶出試験(テストピース)を 日本水道協会の「水道用液状エポキシ樹脂塗料塗装方法」1) に準拠して行った。その結果、BPAは2.56∼4.25μg/LでBPF は0.03μg/Lの溶出濃度となった。 (2) 河 川 の 調 査 結 果 河川水の調査は夏期と秋期の計2回を実施した。その結果 図2 BPFのエチル誘導体化 表 − 1 実 河 川 に お け る 調 査 結 果 (単 位 :μ g / L ) 河川名 採水地点 (接着剤種類) 参宮護岸 (BPA) 忠別川 参宮樋門護岸 (BPF) 鵡 川 米原低水護岸 (BPA) 位 置 ビスフェノールAビスフェノールF 上流 下流 上流 下流 上流 下流 第1回 第2回 第1回 第2回 <0.01 0.02 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 を表-1に示す。忠別川のBPAについては、第1回の忠別川神楽 量が異なるため、忠別川を代表としてその溶出濃度を測定し た。その結果を図-3に示す。BPFでは水温、pHとも変化が少な い。BPAもpH5∼10の範囲では横這いであった。BPAの水温では 15℃から濃度が上昇するが、寒地河川の特徴から20℃以上を 越える頻度は少ない。 3 2 1 1 0 0 10 これを接着剤の溶出濃度を推定するうえでの基準の流量とし、 忠別川 河川中で検出されるおそれは少なく、実際現地調査でも検出 水温 ( ) 30 5 pH 10 表−2 河 川 へ の 溶 出 濃 度 の 推 定 河川名 表-2からBPFは0.00013μg/Lの溶出量と推定されるが、この 濃度は分析精度管理による検出下限値の0.003μg/Lより低く、 20 ℃ 図 - 3 水温とpHによる溶出濃度の変化図 (1) 施 工 河 川 の 低 水 期 に よ る 推 定 溶 出 濃 度 の 算 出 水質の環境基準は、75%である低水流量を基準としている。 5.結論 対象河川水 (忠別川) 3 2 4.考察 各調査地点の護岸から換算した場合の調査河川に溶出する濃 度を推定したその結果を表-2に示す。 4 BPA BPF 濃度(μg/L) 流況変化によって河川水の水温やpHの変動で接着剤の溶出 4 濃度(μg/L) 橋(参宮護岸)の下流で0.02μg/Lの濃度が検出された。 (3) 水 温 と p H に よ る 溶 出 濃 度 施工箇所 参宮護岸 参宮樋門護岸 低水期 接着剤浸 溶出濃度 推定濃度 流 量 水面積 μg/L・ (計算値) 2 μg/L m2 m ・day m3/s 7.91 鵡 川 米原低水護岸 10.62 1323.8 907.8 789.7 50.8 0.01665 0.6 0.00013 84.3 0.01411 参考文献 1)「日本水道協会規格」(JWWA K135-1989)、「水道用液状エ ポキシ樹脂塗料塗装方法」
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