Title Endoscopic Papillary Large Balloon Dilation as a Salvage Procedure for Basket Impaction During Retrieval of Common Bile Duct Stones( 内容と審査の要旨(Summary) ) Author(s) 馬淵, 正敏 Report No.(Doctoral Degree) 博士(医学) 甲第989号 Issue Date 2015-03-25 Type 博士論文 Version none URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/51063 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 [ 正 ] 氏名(本籍) 馬 淵 敏(岐阜県) 学位の種類 博 士(医学) 学位授与番号 甲第 学位授与日付 平成 学位授与要件 学位規則第4条第1項該当 学位論文題目 Endoscopic Papillary Large Balloon Dilation as a Salvage Procedure for 989 27 年 号 3 月 25 日 Basket Impaction During Retrieval of Common Bile Duct Stones 審 査 委 員 (主査)教授 竹 内 (副査)教授 塩 入 保 俊 樹 教授 武 内 康 雄 論文内容の要旨 総胆管結石に対する治療は,現在,内視鏡的治療が第一選択として世界中で広く行われている。こ れは,十二指腸乳頭部の総胆管開口部を内視鏡的に高周波ナイフで切開あるいはバルーンで拡張した のちに,総胆管内の結石をバスケットカテーテルで把持して取り出す手技であり,治療成功率 90%以 上と報告されている効果的な治療法である。しかし,一方で手技に関連する偶発症も約 10%にみられ, 膵炎,出血,消化管・胆管穿孔,胆管炎などがその代表的なものであるが,結石を把持したまま十二 指腸乳頭部からバスケットカテーテルが取り出せなくなる“バスケット嵌頓”もときに経験される。 “バスケット嵌頓”はいったん発生すると対応の難しい偶発症であり,外科手術で対応せざるをえな い場合もある。申請者らは近年,こうした“バスケット嵌頓”に対して,嵌頓バスケットの脇から大 口径バルーンを挿入して総胆管開口部を大きく広げる処置(Endoscopic papillary large balloon dilation:EPLBD)を行ったのち嵌頓バスケットを取り出す方法の有用性を本研究において評価した。 【対象と方法】 2009 年 1 月から 2012 年 6 月までの期間に岐阜大学医学部附属病院および岐阜市民病院において内 視鏡的に総胆管結石を治療した 354 例の治療データを後方視的に調査した。“バスケット嵌頓”に対 する初期対応および EPLBD の手順については以下の通りである。“バスケット嵌頓”が起こった際に はバスケットカテーテルの手元ハンドル部分をペンチで切断し,これを残したまま内視鏡を体外に抜 去する。この状態ではバスケットカテーテルの手前ワイヤー部分が口から出た状態となっているが, まずはこのワイヤー部分に金属シースをかぶせて挿入していき,機械的砕石具を使用して結石破砕を 試みる。これが不成功に終わった場合には再度内視鏡を挿入し,バスケットカテーテルの脇から胆管 内に大口径バルーンを挿入・留置したのち十二指腸乳頭部を拡張する(EPLBD)。その後,バスケット カテーテルの口から出ている部分を引っ張って嵌頓したバスケットカテーテルの体外への取り出し を試みる。なお,使用するバルーンの大きさは総胆管径より小さく,嵌頓結石の短径よりも大きい径 を選択した。 【結果】 調査対象期間中に EPLBD によって対応した“バスケット嵌頓”症例は 6 例であり,女性・男性各 3 例,年齢 35~96 歳(中央値 82.5 歳)であった。結石数は 1~10 個(中央値 2.5 個) ,結石径は 10~ 30mm(中央値 18mm) ,総胆管径 15~21mm(中央値 19.5mm)であり,嵌頓した結石の大きさは長径 10 ~30mm(中央値 13mm),短径 6~18mm(中央値 11mm)であった。EPLBD によって“バスケット嵌頓” は全例に解除でき,遺残結石は追加のバスケット・バルーンカテーテルによる採石処置によって完全 に除去できた。また,この手技に関連した偶発症の発生は 1 例もみとめなかった。 【考察】 “バスケット嵌頓”に対しては体外式衝撃波結石破砕療法,経口胆道鏡下レーザー/電気水圧衝撃 波砕石などの有用性がこれまでに報告されてきたが,これらの方法は特殊な機器と技術を要するため 行える施設が限定され,治療回数も複数回行わなければならないものであった。このため多くの施設 において,外科的手術が唯一の対処法とされてきた。“バスケット嵌頓”は,主に不十分な総胆管開 口部の切開によって起こるため,理論的には切開を追加することにより嵌頓が解除できるはずである が,実際には嵌頓したバスケットカテーテルが邪魔となり安全に切開を追加することは技術的に難し い。これに対して,バルーンによる拡張は手技的にはるかに容易であり,特殊な機器も必要としない ため,どこの施設でも行うことが,可能性であると考えられる。この手技を行う際の懸念として十二 指腸乳頭部あるいは下部総胆管の穿孔リスクが挙げられる。これはバルーンと総胆管壁の間に結石が 挟まったままバルーンの拡張を行うことによって起こりうると考えられる。このためバルーン拡張は, できる限り結石および嵌頓バスケットを胆管上流に押し上げた状態で行うことが望ましい。また,バ ルーン単独での拡張でも総胆管穿孔は起こりうると報告されているため,バルーン径は総胆管径を越 えない大きさのものを使用する必要がある。今後さらに多施設多数症例での本手技の有用性・安全性 が評価されるべきである。 【結論】 EPLBD はその簡便さ,汎用性から, “バスケット嵌頓”の際に第一に考慮すべき救済処置と考えられ る。但し,手技を行う際には穿孔の危険性を最小限に防ぐため使用するバルーン径を検討する必要が ある。 論文審査の結果の要旨 申請者 馬淵 正敏は,総胆管結石に対する内視鏡的総胆管結石治療の偶発症である “バスケッ ト嵌頓”の救済処置としての Endoscopic papillary large balloon dilation (EPLBD)の有用性を検 討し,対象症例6例すべてにおいて EPLBD による合併症なしの陥頓解除,結石除去成功を確認した。 従来,“バスケット嵌頓”の対処法として,多くの施設において外科的手術が唯一の対処法と考えら れてきたが,簡便さ,汎用性から,EPLBD が“バスケット嵌頓”の際に第一に考慮すべき救済処置と なりうる可能性を明らかにした。本研究成果は内視鏡治療学の発展に寄与するものと認める。 [主論文公表誌] Masatoshi Mabuchi, Takuji Iwashita, Ichiro Yasuda, Mitsuru Okuno, Shinya Uemura, Masanori Nakashima, Shinpei Doi, Seiji Adachi, Masahito Shimizu, Tsuyoshi Mukai, Eiichi Tomita, Hisataka Moriwaki: Endoscopic Papillary Large Balloon Dilation as a Salvage Procedure for Basket Impaction During Retrieval of Common Bile Duct Stones Dig Dis Sci 59,220-3(2014).
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