2015-12-01 05:32:53 Title 葉酸依存性RNAメチル

>> 愛媛大学 - Ehime University
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葉酸依存性RNAメチル化酵素TrmFOの包括的解析( 学位
論文要約 )
山上, 龍太
. vol., no., p.-
2015-03-24
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/4548
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受理:2015-1-15,審査終了:2015-3-6
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学 位 論 文 要 約
Dissertation Abstract
氏
論
名 (Name) 山 上 龍 太
文
名:葉酸依存性 RNAメチル化酵素TrmFOの包括的解析
(Dissertation Title)
Transfer RNA(tRNA)は、機能性 RNA分子の一種である。tRNAは、転写産物において
は、その機 能をもたないため、機 能性tRNAへと成熟 するための様々な編集 加 工 の工 程 を
経る必要がある。その工程には、tRNA中の余分 な付加配列の除去反応や構造安定化因
子、コドン認識 に関わる因 子 の付 加反 応 など、多 様な成熟 化 反 応が含 まれており、それら
の反 応 は、同 時 多 発 的 に生 体 内 で展 開 される。すなわち、1つのtRNAに対 して複 数 の成
熟 化 酵 素 群 が協 調 的 にはたらいている。では、細 胞 の無 秩 序 な空 間 の中 で、tRNA成 熟
化酵素群は、如何にして標的 tRNAを効率よく見つけ出し、如何にして他の成熟化酵素群
と協調してはたらいているのだろうか?本 論文では、それらの疑問を解決すべく、葉酸依存
性RNAメチル化酵素TrmFOを用いて、以下の3つの観点から研究を進めた。
(1)TrmFOは、どのようにして、tRNAのU54を認識しているのだろうか?
Thermus thermophilus において、tRNA中 のU54は、葉 酸 依 存 性 tRNA(m 5 U54)メチ
ル化 酵素TrmFOによって、メチル化 される。一 般的 にRNAメチル化 酵 素は、S-アデノシル
-L-メチオニンをメチル基供与体とするが、TrmFOは、例外的にメチレンテトラヒドロ葉酸をメ
チル基供与体とする。メチレンテトラヒドロ葉酸は、非常に不安定なため、TrmFOの酵素活
性を測定することが困難であった。そこで、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)
を用いた2段階酵素 活 性測定法を開発し、反 応系を最適化することで、この問題を解 決し
た。
次 に、この酵 素 活 性 測 定 法 と42種 の変 異 tRNAを用 いて、基 質 認 識 部 位 を同 定 した。
その結 果 、TrmFOは、T-アーム中 のU54U55C56とG53-C61の保 存 配 列 を認 識 していた。
さらに、TrmFOは、アンチコドン-アームのA38をネガティブデターミナントとして認 識 し、誤
った部位にメチル基転 移が起こるのを防いでいた。また、ゲルモビリティーシフトアッセイ、
蛍 光 スペクトル測 定 、基 質 阻 害 実 験 を併 せた結 果 より、以 下 ことが明 らかになった。
( Ⅰ)TrmFO の 反 応 は、 少 な くと も 基 質 の 初 期 結 合 過 程 とメチル 化 部 位 の ループ 構 造
を崩 壊 させる過 程 の2つ以 上 のステップから成 っている。
( Ⅱ) 基 質 の 初 期 結 合 過 程 に お い て 、 基 質 tRNA の 結 合 と 解 離 が 非 常 に 速 く 起 こ っ て
いる。
(Ⅲ)基 質 認 識 の律 速 段 階 は、T-アームの構 造 崩 壊 のステップにある。
さらに、他 の 修 飾 ヌク レ オシドの存 在 が TrmFO に、ど のように影 響 するかを 確 認 し た
と こ ろ 、T- ア ー ム 内 に 存 在 す る m 1 A58 修 飾 ヌ ク レ オ シ ド が 、 TrmFO の 反 応 を 加 速 さ せ
た。以上の速度論的解析結果を用いて、TrmFOとT-アームの複合体モデルを構築した。
(2)tRNA中のm 5 U54は、他の修飾酵素とどのようにして相互作用し得るか?
近 年 、tRNA中 の3D-コアの修 飾 ヌクレオシドは、tRNA修 飾 ネットワークを介 して調 節 さ
れ る こと がわ かっ てき た 。そ こで 、 tRNA 修 飾 ネ ッ ト ワ ーク の 全 貌 を 明 ら かに す る ため に、
m 5 U54の存 在 意 義 を検 討 した。初 めに、T. thermophilusを用 いて、trmFO遺 伝 子 破 壊
株 を相 同 的 組 み換 え法 によって作 製 した。得 られたtrmFO遺 伝 子 破 壊 株 の生 育 的 特 性
の変 化を確認したところ、trmFO遺 伝子 破 壊株 は、低 温 域で生 育 が遅 れることがわかった。
そこで、低 温 培 養 時 のtRNA修 飾 ヌクレオシド量 やタンパク質 合 成 量 を確 認 したところ、次
のことがわかった。
(Ⅰ)trmFO遺 伝 子破 壊 株のtRNAでは、m 2 G6とGm18の含 有量 が増 加 し、m 1 A58の含 有
量が減少する。
(Ⅱ)trmFO遺伝子破壊株では、タンパク質合成速度が低下するが、合 成されたタンパク質
のポピュレーションは変化しない。
以上より、m 5 U54は、低温 環境下でのtRNAの環境適応機構に関与していた。
(3)TrmFOの存在は、DNA合成系に影響を及ぼすか?
同じくMTHFをメチル基供与体とするDNAの基質前駆体であるdTMP合成酵素 ThyXとT
rmFOの関 連 について、trmFO遺 伝 子 破 壊 株 を用 いて解 析 した。tr m FO 遺 伝 子 破 壊 株
は、最 少 培 地 で 生 育 速 度 が 速 くなっ た 。 こ の 原 因 を 追 及 するため に さらなる 解 析 を 行
ったところ、以 下 のことが明 らかになった。
(Ⅰ)DNA合 成 に使 われるチミジンやセ リンのメチル基 の量 は 、trm FO 遺 伝 子 破 壊 株 で
増 加 していた。
(Ⅱ)試 験 管 内 におけるTrmFOのメチル基 転 移 活 性 は、ThyXの存 在 によって阻 害 され
た。
以 上 より、trmFO 遺 伝 子 破 壊 株 で 生 育 速 度 が速 くなる 原 因 は、TrmFOが消 失 する
こ とで 、 D N A 合 成 系 で 代 謝 さ れ る MT H F の 量 が 増 加 し 、 D N A 合 成 速 度 が 上 昇 し た た
めであると予 想 した。