新潟大学産学地域人材育成センター 研究紹介 【農業用水の水質保全のための塩水浸入制御に関する研究】 研究者氏名:劉 海生 新潟県新潟市を流れる新川においても塩水楔が形成される.新川は排水用河川であるが,灌漑用河川の西川で用水が不 足する際には,灌漑用水として反復利用される.そのため,新川の水を利用する地域では,農地や農作物への悪影響が懸念 される.その対策として,灌漑用水の電気伝導度の常時観測を実施している.その電気伝導度値が基準値を超えた場合,新 川の河岸に設置された揚水機場のポンプを停止させ,新川河口のゲートを全閉として,排水ポンプによって河道内の塩水を海 へ強制排水する対策を講じている.しかし,現状の塩水対策には,揚水ポンプ停止に伴う用水不足,および強制排水にかかる ポンプ運転コストの発生といった課題が残る.新川における塩水楔の実態把握に加えて,現状の対策における課題を解消す る対策を提案し,その効果を現地観測および数値シミュレーションによって定量的に評価することを目的とする ≪研究成果と新規性・優位性≫ 塩水楔の動態を把握するため,潮位変動における塩水楔の動態を観測した.観測は,塩水楔の縦断分布には音響プロファ イリングシステム(SC-3),鉛直分布は電気伝導度計(EC メーター)を用いた.その後,新川における塩水楔の動態を把握する 1 次元 2 層不定流モデルを構築した.モデルによる計算結果と現地での観測結果が概ね一致した.これによって,新川におけ る塩水楔の動態が明らかとなった.次に,現状の対策で生じている課題を解消する対策の現地実験を行った.対策として,河 川流量増加による対策,河口のゲート操作による対策および揚水機場における構造物を用いた選択取水が挙げられ,それぞ れの効果を検証した.現地実験の結果,河口のゲート操作による対策が最も効果的であることが明らかになった. 本研究では,現地観測と数値シミュレーションによって,灌漑期間における塩水遡上の動態を把握した.また,現状の対策 で生じている課題を解消するような対策として 3 つの対策を提案し,現地実験によって効果を検証した.その結果,河口のゲー ト操作による対策が最も効果的であることが明らかとなった.この対策は河口にゲートを持つという同様の条件下の流域にお いて,有効な対策であるといえるが,他の地域では,それぞれの流域の特徴に応じた対策を講じる必要がある. ≪その他の研究テーマ≫ ■中国の東北地域で田んぼダムの適用性の検討 ■点滴灌漑システムの滴下装置の開発及び検査 ≪キーワード≫ 塩水侵入 点滴灌漑システムの滴下装置 ≪展開・応用が期待される分野・マーケットなど≫ ■川の上層部の選択取水 田んぼダム 数値計算 ■点滴灌漑の滴下装置 ≪関連する知的財産≫ [1] Haisheng Liu, Natsuki YOSHIKAWA, Susumu MIYAZU, Kouhei WATANABE. Influence of Saltwater Wedges on Irrigation Water Near a River Estuary. Paddy and Water Environment. 2014. DOI: 10.1007/s10333-014-0419-1 [2] Haisheng Liu, Yunkai Li, Yanzheng Liu, Peiling Yang, Shumei Ren, Runjie Wei, Hongbing Xu.Flow Characteristics in Energy Dissipation Units of Labyrinth Path in the Drip Irrigation Emitters with DPIV Technology.Journal of Hydrodynamics,ser. B. 2009. 21 (6): 137-145 [3] Dan Wu,Yunkai Li,Haisheng Liu,Peiling Yang,Haosu Sun,Yaoze Liu.Simulating on the Flow Characteristics in the Drip Irrigation Emitter with Large Eddy Methods. Mathematical and Computer Modeling.2011.DOI:10.1016/j.mcm.2011.10.074 (Corresponding author) [4] Yunkai Li, Haisheng Liu, Peiling Yang and Dan Wu. Analysis of Tracing Ability of Different Sized Particles in Drip Irrigation Emitters with Computational Fluid Dynamics. Irrigation and Drainage. 2013. DOI: 10.1002/ird.1737(First author: Supervisor) ≪連携を期待するテーマ・分野≫ ■川の上層部の選択取水設備を開発する ■詰まらない点滴灌漑の滴下装置を開発する H26.6.19
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