2.2 ソフトエラー耐性の高いフリップフロップ Radiation-Hard Flip-Flops 小林和淑, 増田政基,山本亮輔(京都工芸繊維大学),古田潤,小野寺秀俊(京都大学) K. Kobayashi, M. Masuda, R. Yamamoto, Kyoto Institute of Tech. ; J. Furuta, H. Onodera, Kyoto Univ. BCDMR FF の中性子による加速試験を行った.結果を図 2 1.はじめに に示す.BISER FF は予想通り,クロック周波数に対して ソフトエラー耐性を高めるための多重化フリップフロッ エラー数が増加したが,BCDMR FF は増加していない 3). プ(FF)の一つとして, 二重化 FF である BCDMR FF, その 通常の FF のエラー数は 260 個であり,エラーの観測され 低消費電力化を狙った BCDMR-ACFF の回路構造を説明し, なかった BCDMR は通常の FF より大幅なエラー耐性を持 中性子を用いて行った実験結果についても報告する. つといえる. BCDMR ACFF は低活性化率 10%以下で通 常の FF と同程度の電力となる.そのエラー耐性は BCDMR 2.研究の背景と目的 微細化,低電圧化と共に LSI の信頼性は低下している. ソフトエラーは中性子,α線などによって引き起こされる FF とほぼ同等であり,改良したレイアウトにおいては中 性子測定ではエラー数 0 となった.4) ML0 D 一過性のエラーであり,SRAM やフリップフロップ(FF) などのメモリ素子の値を反転させ,LSI が誤動作する. FF では,SEU*による1ビット反転でもエラーとならない多 SL0 D Q C τ C QB ML1 CLK Slave Latches AC C AC AC CM0 C D QB D QB C C Q C CLK Master Latches Q C SL1 D QB C C Q DB CLK D Q C C QB C δ CLK C CS0 C CLK KM CLK DB C Q KS CLK C CS1 C CM1 QB AC C AC 重化が一般に用いられる.3 個の FF と 1 個の多数決回路 CLK (Voter)を用いる TMR*が用いられることが多いが,回路お よび性能オーバヘッドが大きい.我々の研究グループは三 図1 CLK BCDMR FF(左)と BCDMR ACFF(右)の構造 24 Resiliency) FF1)を改良した BCDMR (Bistable Cross-coupled 20 BISER in twin well BISER in triple well # of errors 重 化 よ り 面 積 が 小 さ い BISER (Built-in Soft-Error BCDMR in triple well 15 Dual Modular Redundancy) FF を提案している.BCDMR は BISER と比べて,クロック周波数でのエラー耐性を向上 DFF = 260(@0Hz) 10 させている.その低電力化を狙った BCDMR ACFF (AC は 5 5 Adaptive Coupling)も提案した. 2 3 3 2 1 3 1 MHz 10 MHz 12 6 2 NA 0 100 MHz 300 MHz Clock Frequency 3.ソフトエラー耐性の高い FF 図2 中性子照射実験の結果 図 1 に,BCDMR FF と BCDMR ACFF の回路図を示す. BCDMR は,BISER と異なり二重化したラッチの値が異な る競合状態で,出力が HiZ となる C-element を二重化して いる.BISER ではこの C-element 起因から発生する SET パルス*により二重化したスレーブラッチが共に反転する ため,クロック周波数とともにエラー率が上昇する.一方 BCDMR では二重化された C-element によりその直後に接 続されている Keeper の保持値を相補的に固定するため, 最悪の場合でもスレーブラッチの一方しか反転しない. 5. 結論 本稿では,二重化+αの面積オーバヘッドで高いエラー耐 性を有する BCDMR FF およびその低電力版である BCDMR ACFF のエラー耐性と電力を論じた.BCDMRFF は通常の FF と比べてエラー数を 260 個から 0 個へ大幅改善する. BCDMR ACFF は,低電力かつそのエラー耐性も高い. 参考文献 BCDMR ACFF では BCDMR に,AC 素子 2)を組み込んだ. 単相のクロックで動作するため,活性化率が小さいところ 1) S. Mitra et al.., IFIP, pp. 332-337(2006.10). で消費電力が低くなる. 2) K. T. Chen et al.. ISSCC, pp. 338-340(2011.2). 3) R. Yamamoto et al.., IEEE Trans. on Nucl. Sci., vol.58, no.6, 4.実験結果 65nm バルク CMOS プロセスにて試作した BISER FF, pp. 3053-9(2011.12) 4) M. Masuda et al.., IEEE Trans. on Nucl. Sci., vol.60, no.4, pp. 2750-2755(2013.8)
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