中小企業における クラウドコンビューティングの現状に関する考察

岐阜経済大学論集 49巻 1号(2015年
)
中小企業における
クラウドコンビューティングの現状に関する考察
佐々木喜一郎
はじめに
第 l章 函内におけるクラウドの認知度
第 2章 園内におけるクラウドサービスの利用率
第 3:
t
;
f 中小企業におけるクラ ウドサーピスの 利 用 状況
第 4務 中小企業におけるクラウドサービス普及が進まない現状
;
'
! 中小企業におけるクラウドサーピス普及に向け た 課 題
第 5t
第 li
部 文献調査の視点から
第 2節 ヒアリング調査の視点から
おわりに
はじめに
中小企業におけるクラウド コンピユ←テ ィングの現状に関する考察を述 べる 為に, 本稿におけ
るクラ ウド コンビューテ ィングを定義する。米国国立標準技術研究所は, クラウドコ ンビューティ
ングの定義を以下の様に述べている。 「クラウドコンビューティングは,共用の梼成可能なコン
ビューティングリソース (
ネ ット ワー ク サーバ
ストレージ
アプリケーション.サー ビス)の
集積に,どこからでも,簡便に,必要に応じて,ネットワーク経由でアクセスすることを可能と
するモデルであり , 最小限の利用手続き またはサービスプロパイダとのやりとりで速やかに割当て
られ提供されるものである。このクラウド モデルは 5つの基本的な特徴と 3つのサービスモデル,
および 4つの実装モデルによ って構成される。 J (I]また.独立行政法人情報処理推進機摘は,クラ
ウドコンビューティングの定義を以下の様に述べている。「大規模データセンターにおいて仮想化
等の技術を用いてコンビュータの機能を用意し.それをインタ ーネット経由で自由に柔軟に利用
す る仕組みの総称1 1
1
1 さらに.企業システムにおけるクラウドコンビュ ーティ ング文献は,クラウ
IT産・業は商品やサービスを売ることが目
ドコンビューティングの定義を以下の様に述べている。 f
的のため,その手段としてクラウドコンビューティングという周語をマーケティングに利用 したと
3
1
いえる。 J1
以上より,本稿におけるクラウ ドコ ンビューティングを定義は,米国国立標準技術研究所及び
独立行政法人情報処理推進機構に定義に加え.マーケティンゲ要素を含む事とすあ,
さて,クラウ ドコンビューティングの出現は,どのような経緯であろうか。クラウドコンビュー
ティングの提唱者といえば米 G
oogl
eの会長 E
r
i
cSchmidt氏であ ることは多くの文献 におけ る共
通見解である
0
1
<
11
5
1 闘では
,
クラ ウ ドコンビューティングの出現について.情報システムの歴史的
5
1
な背景と照らし合わせてみる。 1
9
6
0年から 1
9
7
0年代は大型コンビュータによる情報システムサー
ビスの提供であるから,コンビュータを利用するには英大なコストが必要であった。その為,大
型 コンビュータの維持に必要な機械室.空調,電源,保守,運営要員のコスト負担から,中小企
業においてコンビュータを所持して利用する事が困難であり,コンビュータを所持が出来ない i
時
代と言われる。
I
l
l
1
9
8
0年から 1
9
9
0年代は,コンビュータのハードウェア,ソフトウェアの進歩に
より,ハードウ ェアの低価格化や保守性が向上した。結架,中小企業や小規模事業者において,
小型コンビュータ.オフコン,サーバ,パソコンの普及が進み,誰もがコンビュータを持てる時
代が到来した。
I
S
i現代は.情報や通信に関連する科学技術による情報システムが企業の中核とな
り産業の重要な基盤になった。また,新しい情報システムを利用する為に,ハードウェアやソフ
トウェアを更新及び所持する事の負担が増えた。さらに.情報システムを伴う新しい事業の展開,
情報技術者要員の確保,セキュリティ対策, ITサービス継続ガイドラインの策定に伴う負担が増
大する傾向がある。ゆ えに.企業において状況が許す限り固定資産を持たない経営が重要視され.
コンビュータを所持する必要が無い時代或はコンビユ←夕の所持が許されない時代が到来した。 l•I
これが,クラウドコンビューテイングの出現した経緯といえるだろう。また.クラウド時代の到来
と比I
除される所以である。本稿では.クラウド時代の中小企業おける I
T活用の促進を検討するた
め,現在の中小企業におけるクラウドコンビューテイングの現状について考察する。
第 1章
国内におけるクラウドの認知度
独立行政法人情報処理推進機構から公表されている中小企業等におけるクラウドの利用に関す
川平成 23年クラウドの認知度では
る実態調査l
クラウドを聞いたことがある企業の割合は
7
2.
7%,クラウドを聞いたことが無い企業の割合は 2
7.
3%であると報告さ れている。しかし.技術
的かつ専門的用語である SaaS,PaaS,laaSについて聞いたことがある企業の割合は 54.0%であり,
約 5筈1]の企業において認知されていない。また, IDCJapanから公表されている平成 2
6年圏内ク
ラウド調査[II)におけるクラウドの認知度では,平成 25年の調査結果において 39.2%,平成 26年
の調査結果において 35.7%と認知度が低下する結果がある。以上より.企業においてクラウドの
認知度が低く,正しい理解がされていない段階である事が明らかである。つまり,クラウドサー
ビスを活用する前提が整っていない状態が推測できる。では,第 2節において企業におけるクラ
ウドサービスの刷用率を分析し.クラウドサービスを活用した経営戦略の展望について考察する。
第 2章
圏内における クラウ ドサービスの利用率
総務省から公表されている平成 24年版情報通信白書I口l国内におけるクラウドサービスの利用状
今
−
J
5
2
中小企業におけるクラウドコンビューティ ングの現状に闘する考察(佐々木)
況(図表 l
)では,平成 22年度における調査結果から,クラウドサービスを全体的に利用してい
ると回答した企業の割合は 4.2%であり
一部の事業者又は部門で利用していると回答した企業の
割合 1
0
.
0% と併せ, 1
4
.
1%の企業においてクラウドサービスを利用している事が報告されている。
また,平成 23年度における調査結果から,クラウドサービスを全体的に利用していると回答した
企業の割合は 9
.
2%であり, 一部の事業者又は部門で利用していると回答した企業の割合 1
2.4%と
併せ, 2
1.
6%の企業においてクラウドサービスを利用している事が報告されている。
(
図表 I)圏内におけるクラウドサービスの利用状況
。%
20%
40%
回全体的に利用している
ロ利岡しτ
いないが、今詮利用する予定がある
60%
80%
100%
■一部の事業者又は部門で利用している
E手I
J
伺していないし、今後も利用する予定もない
回?ラウドザーピスについてよく
分か
ら
な
い
I
J
1
J
1
4 総務省 f平 成 24刷版情報通f
Jl
’1
,
1
干
」
総務省から公表されている平成 26年版情報通信白書1
1
,
1
国内におけるクラウドサービスの利用状
況(図表 2)では,平成 24年度における調査結果から,クラウドサービスを全体的に利用してい
ると回答した企業の割合は 1
3.
6%であり
一部の事業ー
者又は部門で利用していると回答した企業
の割合 1
4.
7%と併せ, 28.
2%の企業においてクラウドサービスを利用している事が報告されている。
また,平成 25年度における調査結果から.クラウドサービスを全体的に利用していると回答した
企業の割合は 1
5.
0%であり
一 部の事業者又は部門で利用していると回答した企業の割合 1
8.
0%
と併せ, 33.0%の企業においてクラウドサービスを利用している事が報告されている。以上より,
クラウドサービスの刺用率は,確実に増加の一途を辿っているが,まだ,約 7割の企業において
クラウドサービスを利用していない状況が明らかである。つまり,クラウドサービスの普及は十分
でなく,クラウドサービスを経営戦略的に活用する事により,競争力や生産性の向上を実現可能
である事を示唆している。では
第 3節において大企業と中小企業におけるクラウドサービスの
利用状況を比較して考察する。
句、J
5
3
(図 表 2
) 圏内におけるクラウ ドサービスの利用状況
平成2S
年末
(N 2,183)
。%
20%
40%
以泌
以鴻
100%
回全体的に利閉している
a−&師事業者叉l
;
J
.部門で手1
芹札ている
回利用していないが、今後利用する予定がある
由利用していないし、今後も利用する予定もない
図ヲラウドヲーピスについてよく分古、ら匂い
出
』1
4:総務省「平成 26年 版 情 報i
t
f
J
I
J
r
'I
書」
第 3章
中小企業 におけるクラウ ドサー ビスの利用状況
平成 26年版情報通信白書i川資金規模別によるクラウ ドサービスの利用状況(図表 3
)では.平
成 25年度における調査結果から,中小企業者の定義にあたる資本規模 1
,
0
0
0万円未満の企業の割
合は 3
2
.0%, 資 本 金 規 模 1
,
000万円から 3,
000万 円 未 満 の 企 業 の 割 合 は 2
6
.0%, 資本金規模
3
,
0
00万円から 5,
0
00万円未満ーの企業の割合は 2
6.
8%である事が報告されている。また,一部の中
小企業やみなし大企業の定義にあたる資本規模 5
,
000万円から i億円未満の企業の割合は 3
3
.1
%,
資本規模 i億円から 5億円未満の企業の割合は 39
.
7%であることが報告されている。さらに,大
企業の定義にあたる資本規模 5億円から 1
0位円未満の企業の割合は 49.
0%,資本規模 1
0億円か
ら 50倍、円未満の企業の割合は 3
6.
9%. 資本規模 50億円以上の企業の割合は 5
8.
2% であることが
報告されている。 以上から,クラウドサービスの普及について.大企業が約 5t
i
l
J
なのに対し,中
小企業において約 3割である事が明らかである。なぜ,クラウドサービスの普及が大企業に比べ
て中小企業において進んでいないのだろうか。では第 4章において中小企業におけるクラウドサー
ビスが普及しない原因を追究し
中小企業においてクラウドコンビューティングに よる情報シス
テムの活用した経世が可能であるか検討したい。
5
4
- 4ー
中小企業におけるクラウドコンビューティ ングの現状に闘する考察(佐々木)
III
(図表 3
)資本金目l
jクラウドサービスの利用状況
50%
40%
30%
・平成24
年末
−
20%
10%
γ
(N=2,183)
−
渦
(
”
=2.071)
白平成 25
年京
5態円e草
I口信伺来満
員
塁
来針
一
言未満
一Xδ万円5
U 円未満
︷
‘
一言
只 M万
A
干
−68 問来満
。%
ト
詳ト
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F
吋
面EEEm
60%
mJ
70%
l
:
t
J
J
I
札 総 務 省 「 平 成 26年版情報通幻自.!?J
第 4章
中小企業におけるクラウドサービス普及が進まない現状
4年中小企業庁委託 ITの活用に関するアンケ←ト調査 1141 (図表 4
平成 2
)では, I
T人材の充足
度においてやや不足していると回答した中小企業の割合は 3
3.
8%であり, とても不足していると
回答した中小企業の割合 30.2%と併せ.64.0%の中小企業において IT人材が不足している事が報
告されている。 また, I
T人材の充足度においてやや不足していると回答した小規模事業者の割合
は 1
8.
8%であり, とても不足していると回答した小規機事業者の割合は 2
7
.1
%と併せ,4
5
.
9%の
小規検事業者において I
T人材が不足している事が報告されている。 以上より. 中小企業や小規模
事業者において IT人材が不足している事から, 新しい情報システムの動向を知る機会の損失が発
生している事が明らかである。 ゆえに, クラウドコンビューティングによる情報システムの認知度
が低く, クラウドサービス導入が普及しない原因のひとつだと言えるだろう。
4年中小企業庁委託 ITの活用に関するアンケー卜調査では, IT人材の充足度にお
次に, 平 成 2
いて I
T人材を必要としていないと回答した中小企業の割合は 1
2
.1
%であり, 小規模事業者の割合
は 32.9%と報告されている。以上より , 小企業ーや小規模事業者におけるクラウドサービスの認知
度が原因よりも, ITを活用した経営がされていない実情が根本的な原因である。との原因について,
社団法人日本情報システム ・ ユーザー協会 IT 経営普及促進に向けた調査研究11•1 にも報告されてい
るように IT経世と利益率と労働生産性において相関関係がみられ. 企業の収益力に大きな影響力
を与えているにもかかわらず, この結果を認知していない中小企業や小規模卒業者が存在する事
が報告されている。 よって, 我々は現在においても, I
T人材の充足, IT経営の正しい在り方につ
いて周知する必要性があると考える。 では
第 5業においてクラウドサービスを認知しているが
、
伊
クラウドサービスを導入しない中小企業や小規模事業者について調査し, その理由からクラウド
J
5
5
サービス普及に向けた課題を明らかにしたい。
(
図表 4
)規機別 I
T人 材 の 充 足 度
m
中 型企業
(
N
:
l
,
2
5
2
)
。%
20%
40%
60%
回十分確保されている
圃おおむね確保されている
E とても不足している
Oil
人材を必要としていない
80%
100%
ロやや不足している
参考 :中小企業庁委託「J
Tの活用に閲するアンケート調査J
201
2年 1IJ
1,二
三義 UFJVサーチ& ョンサノレティング隊式会社
第 5章
中小企業におけるクラウドサー ビス 普及に向けた課題
第 l節文献調査の視点、から
平 成 26年度中小企業の情報利活用に係る実態調査!日lクラウドサー ビスを利用しない理由では,
.7%,自社の業務に適しない回答した中小企業
検討したことなしと回答した中小企業の割合は 41
1%,セキュリティに懸念回答した中 小企業の割合は 1
4
.
6%,利用したサービスなし
の割合は 30.
回答した中小企業の割合は 9.
0%,料金が割高そう回答した中小企業の割合は 8.
3%,現在の シス
.
1%. システム変更が頻繁に発生回答した中小企業の割合
テムを破棄回答した中小企業の割合は 5
は 4.5%,料金支払いが煩わしい回答した中小企業の割合は 2.1%である事が報告されている。
(
図表 5
)クラウドサービスを利用しない理由
4
員討したζとなし
4
1
.
1
7
%
自社の業調こ適さは、
セキュリティに懸念
3
0
.
1
1
4
.
6
i
f
J
1
用したいサ』ピスなし
料金が慣そう
現在利用システムを破棄
システム変更が殺到ζ発生
料金支払い力V
買わしい
。% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%
参考 :公俗財凶法人全凶中小企業取引振興協会
f
平成初年度中小企業の愉隙利活 乙係る実態調査J
m
1
5
6
-6-
中小企業におけるクラウドコンビューティ ングの現状に闘する考察(佐々木)
以上より,クラウドサービスを利用しない明確な理由を取り上げると,セキュリティに懸念回答
した中小企業の割合が最も多い。この課題について文献を調査すると,経営におけるクラウドコ
ンビューティングの課題1
1
11
では ITユーザーにと って見えない事に対する不安意識からくるセキュ
リティの懸念が,地域振興のためのクラウド連椀構想、の検証(
I
S
i
では, ITベンダーの準備不足によ
るセキュリティ懸念の 2つのタイプの諜題がある事が推察できる。次に,利用したいサービスが
なし 回答した中小企業の割合が 2番目に多い。これは,中小企業の IT経営を推進する新たなイニ
シアティブ:クラウドサービス推進機織の設立の意義1叩l
やクラウドコンビューテイングの利用にお
2
0
1
で述べられているように.安心できるクラウドサービスの不足.クラウドサー
ける利点と問題点1
ビスに関する情報が十分に提供されていない, リスク認識し最大限の対策する方策が十分で無い
課題を示唆している。では,第 l節の文献調査の視点から得たクラウドサービスの課題ついて.
第 2節においてヒアリング調査による実例と結び付けて結論とする。
第 2節
ヒアリング調査の視点から
本研究では. クラウドコンビ ューティングを主体とした中小企業向け情報処理サービスを展開
する株式会社量子情報を調査企業として取り上げる。小規模事業者にとって,データ自体がノウ
ハウそのものである場合があり,デ←タの流出は小規模事業者において経営が出来なく恐れがあ
る。ゆえに,データがどこに保管されているか分からない不安感から,データの運用方法について,
あえてクラウドサービスの利便性を捨てる実例がある。また.情報システムの運用主体について
も言及される実情があるようだ。クラウドコンビューティングによる情報システムは,運用主体 が
クラウドサービスを提供している ITベンダー企業になる。その為, ITユーザー企業の業務体系に
合わせたメンテナンスが行われない事から業務が停止した笑例がある。オンプレミス型の情報シ
Tベンダーの担当者や技術者から様々な説明があった。しかし,クラ
ステムを導入する場合は, I
ウドコンビューティング型の情報システムを導入する場合は ITベンダーの担当者や技術者を介
すのでなく,情報システムそのものに向き合い, ITの専門用語が記載されているマニュアルを読
んで理解する必要性がある 事から臨時する事例がある。クラウドサービスは,ソフトウェアの機
能や画面設計について逐次ア ップデー卜される場合が多い。その為.繰作方法が慣れ始めた頃に
アップデートがあり.操作方法を模索して最初から党えなければならない実情がある。
以上より,中小企業や小規模事業者の ITユーザー企業は,伺からどう入れたらいいかわからな
い.討をに聞いていいかもわからない現状があるようだ。また,平成 26年度中小企業の情報利活用
に係る実態調査1
2
1
1から,社内 I
T担当者は.総務担当者や代表取締役が兼任で行っており, I
Tの
専門知識が不十分である。また, H々の業務もあり. ITサービスに対して調査及び検討する時間
や手聞をとるのが難しい。
結果,文献調査の視点から得たクラウドサービスの課題とヒアリング調査の視点から得たクラ
ウドサービスの課題は共通する事が明らかとなった。つまり,クラウドサービス普及の鍵は. IT
- 7一
57
ベンダー及び ITユーザー企業のそれぞれの立場から
クラウドコンビューティングを活用した情
T経営に生かしていく方法を模索しなければならない。
報システムを正しく理解し, I
(図 表 的 規 模 別 I
T導入 ・活用を統芸Eしている実質責任者
中規様企業
(N l,263)
小F
且模事業者
(N•743)
°
'
も
20%
40%
60%
‘
800
100%
四代表取締役目取締役 目部長級国謀長等管理職巴その他 国実質的伝責任者1
aい
はい
参考
中小企業庁委託「T
Tの滑川1
に関するアンケー ト調1
E
J
2
0
1
2年 l
I.
F
l.三菱 UFJリサーチ&コンサノレティング抹式会社
おわりに
本稿では,クラウドコンビューティングについて .インターネットを介して共用の構成可能なコ
ンビューティングリソースの集積を自由かつ柔軟に活用できる仕組みであり .マーケテイング要
素を含んだ用語であると定義し,現在の中小企業におけるクラウドコンビューティングの現状に
ついて調査及び分析を行った。その結果により,中小企業におけるマーケティング戦略,経営戦
略,ビジネスモデyレの確立にクラウドコンビューティングを活用する流れは必然であることが明ら
かとなった。しかし,特に中小企業において未だクラウドコンピューティングの正しい理解と認
T経営が十分に実現されていない状況が浮
知度が低く , クラウ ドコ ンビューティングを活用した I
き彫りとなった。その為,本稿ではクラウド コンビューティングが活用されていない実態について,
Tベンダー企業に向けたヒアリング調査に よ り
, IT経営においてクラウド
各種文献による調査, I
コンビューティングが浸透しない理由を明らかとした。その結巣により.中小企業においてクラ
ウドコンビューティングの刺点を活用する方法が不明瞭であること,必ずしもクラウドコンビュー
T
ティングだけが IT経営を促進させる手段でないととが明らかとなった。以上の結果を踏まえ,I
ベンダー企業がマ ーケティング要素を多く含めてしまった事が クラウドコンビュー テイングに対
する十分な理解と認知がされないまま,過大な期待感のみが先行し. クラウド時代の中小企業お
T活用の促進を阻害してしまった要因といえるだろう。
ける I
Tベ ンダー企業が中小企業や小規模事業者を対象にした,より自由かつ柔軟なサー
本研究では, I
ビスを提供し,ユーザー企業に対して一方的な利害関係を築くのでなく,長期的な関係に基づい
。
。
た双方向性に優れた ICTサービスを展開する必要である事を提言する。
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中小企業におけるクラウドコンビューティングの現状に闘する考察(佐々木)
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]金野和弘『クラウドコンビューティングの利用における利点と倒題点オンプレミス型システムとの比較』
2巻. 2
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2年 2月.29頁
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島根県立大学総合政策学会総合政策論波 2
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中小企業庁委託 F
中小企業白書』三菱 UFJリサーチ&コンサルティング(株). 2
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