<第 11 回 担当:辛島 Case 18-2015> 2015 年 9 月 28 日 辛島聡志(済生会熊本病院 研修医 2 年目) <症例提示> Case 18-2015:A 41-Year-Old Woman with Decreased Vision in the Left Eye and Diplopia 左眼視力低下と複視を来した 41 歳女性 【症例】41 歳、女性 【主訴】左眼視力低下、複視 【家族歴】母方の祖母がリンパ腫 【既往歴】甲状腺機能低下症、慢性副鼻腔炎、顔面の帯状疱疹、乳房線維腺腫(手術済み) 【アレルギー】埃などでアレルギーが出たことがある。薬剤アレルギーはない。 【生活歴】夫、子供との 3 人暮らし、日中は仕事をしている。 【嗜好歴】喫煙:なし、飲酒:機会飲酒 【現病歴】 ●入院 7 週間前(晩夏)まで、特に心身に異常なく過ごしていた。 ●入院 7 週間前のある日 左頭痛を自覚したが数時間続いた後に完全に寛解した。翌朝の起床時には左顔面の下眼瞼より下の 範囲で感覚障害を認めた。A 病院を受診したが頭部単純 CT では出血性病変や腫瘍性病変などの異 常を認めず、B 歯科でも異常は指摘されなかった。 ●入院 7 週間前~5 週間前 その後、左顔面感覚障害は 2 週間で改善傾向にあったが、その間に左眼瞼下垂と複視が出現して増 悪傾向にあった。C 病院を受診したが、頭部単純 CT と脳血管造影検査では左篩骨洞と蝶形骨洞の 粘膜肥厚、両側上顎洞の液体貯溜を認めるのみで、血液検査では血算(白血球分画を含む)、一般 生化学に異常はなく、尿検査では妊娠反応陰性であった。2 週間の抗菌薬投与を指示され、さらに 数日後にガドリニウム造影頭部 MRI も行ったが、副鼻腔炎の所見のみで他に異常は認めなかった。 眼科コンサルトにて両眼の視力低下はなく、複視に対しては眼帯で対応した。髄液検査(単純ヘル ペスの DNA 検査を含む)に異常はなく、血液培養検査も陰性であった。 ●入院 2 週間前 左眼窩周囲の疼痛が出現したが、圧迫感や頭痛は伴わなかった。 ●入院 1 週間前 複視の増悪を伴うようになった。 C 病院での眼電図に異常はなかったが、左眼の視力低下と色盲を認めた。 ●入院 3 日前 嘔気、嘔吐、めまいを伴うようになり、トイレで倒れた。 このときは複視と左眼窩周囲の疼痛(NRS:5/10)を伴っていた。 ●入院前日 C 病院で造影頭部 MRI 検査が再度行われた。 ●入院日(第 1 病日) 1 頭部 MRI 後、D 病院を受診するよう指示された。精査加療目的に D 病院に入院となった。 【身体所見】(第 1 病日) 体温:37.4℃、その他のバイタルサインに異常なし、その他の一般身体所見に異常なし 【神経学的所見】(第 1 病日) 左眼は視力低下があり色の識別は不能 対光反射(+、±)、左軽度眼瞼下垂あり、左眼瞼裂は右に比べると狭小化 左眼は上転、下転、内転が右眼と比べて拙劣、外転は不能(添付資料参照) 左頬部の軽度感覚低下あり、顔面運動正常 【眼科学的、耳鼻科学的身体所見】(第 1 病日) 眼圧(13mmHg、11mmHg)、細隙灯顕微鏡検査では異常なし、眼球突出度(16mm、18mm) 眼底検査では視神経乳頭は正常、視野検査では左眼で中心暗点があるも周囲の視野は正常 鼻腔内は鼻甲介が肥大しているのみ 【血液検査】(第 1 病日) 血算(白血球分画を含む)、一般生化学に異常はない。 尿検査では妊娠反応陰性、尿潜血(-)、尿蛋白(-)、ケトン体(1+) 抗核抗体(+)、抗 ds-DNA 抗体(-)、抗 SS-A 抗体(+)、PR3-ANCA(-)、MPO-ANCA(-) 【髄液検査】(第 2 病日) 初圧:175mmH2O、単核球がごく少数あるも、その他に異常所見はない。 オリゴクローナルバンド(-)、悪性細胞(-) 【画像所見】 頭部 CT(第 3 病日)、造影頭部 MRI(C 病院)は添付資料参照 胸部レントゲン(第 2 病日):肺野は清、リンパ節腫張を疑う所見はない。 2 3 4
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