放射光軟X線分光法によるカーボンナノホーンの局所構造解析 物質計測学研究グループ TM08B003 天野泰至 1. 緒言: 近年,カーボンナノホーン(CNH)が新しい炭素材料として注目されている。CNH は炭素六角網面を基本構造として,五員環を含む曲面構造が先端部をキャップした特異な 角状構造をもつことがカーボンナノチューブ(CNT)と異なる。CNH の合成は様々な手法で 試みられているが,最近,佐野ら[1]は液体窒素中でのアーク放電による CNH の効率的合成 に成功した。そして,この CNH は窒素を含有することが電子エネルギー損失分光法(EELS) により確認された[2]。しかし,この含有窒素の化学状態や窒素が CNH の電子状態に及ぼす 影響については明らかにされていない。そこで,本研究では液体窒素中アーク放電で合成 した CNH のキャラクタリゼーションと物性解明を目的として,放射光軟X線分光法による CNH の局所構造解析を行う。具体的には,(1)軟X線スペクトル解析による窒素の状態分析と,(2) NK/CK 端X線吸収強度比から窒素の定量に必要な検量線を作成する。 2. 放射光軟X線測定: 測定試料は,佐野ら[1]によって液体窒素中アーク放電で合成された CNH と副生成物の CNT であり,市販の高配向性熱分解黒鉛(HOPG)を参照試料とした。ま た,検量線の作成に用いる標準試料には,-NH2,=N-,-NO2 などの窒素官能基を持ち,10-5 Pa 程度の真空中でも安定な市販の窒素含有化合物を選定した。放射光軟X線発光・吸収測 定は,米国の放射光施設 Advanced Light Source (ALS)のビームライン BL-8.0.1(発光測定) と BL-6.3.2(吸収測定)で行った。 3. 結果および考察: 軟X線発光・吸収スペクトルから,EELSの結果と同様に CNHは窒素を 含有することが確認された。CNH と標準試料の NK 端X線吸収端構造(XANES)を比較する と,CNH 中の窒素の結合状態は sp2 混成に起因することがわかった。窒素の定量に必要な検 量線を描くため,標準試料の全電子収量X線吸収(TEY-XAS)スペクトルのσ*ピーク面積か ら計測した NK/CK ピーク強度比と N/C 原子比との相関を調べた。その結果,Fig. 1 に示すよ うに両者は正の相関を示し,この回帰直線は高い相関係数(R2=0.98)と低い標準偏差 (STD=0.037)を示した。したがって,これは N/C 原子比を数パーセントオーダーで定量でき る検量線になると判断できる[3, 4]。今後 CNH 中窒素の局所構造を解明するため,Discrete Variational (DV) -Xα 分子軌道法 でモデル化した CNH クラスター [5]をベースとして,sp2 混成を伴う 窒素の局所構造を物理吸着と化 学吸着の双方の観点から解析す る。また,作成した検量線の有効 性を実証すべく,窒素を含む工 業炭素材料の定量・状態分析を 進める。 [1] N. Sano et al., Carbon, 42, 667-691 (2004). [2] H. Wang et al., Nanotechnology, 15, 546-550 (2004). [3] 天野ら,関西分析 研究会 (2008) [4] 天野ら,第 22 回日本 放射光学会年会・放射光科学合同シン ポジウム,11P041 (2009) . [5] T. Amano et al., Intl. J. Quantm Chem. (in press). Fig. 1 標準試料のTEY-XASから求めたNK/CKピーク面 積比と N/C 原子比の相関,およびその回帰直線。挿入図 は典型的な窒素含有化合物の TEY-XAS。 放射光軟X線分光法によるカーボンナノホーンの局所構造解析 受賞履歴 物質計測学研究グループ TM08B003 天野泰至 カーボンナノホーン(CNH ) カーボンナノホーン(CNH) 全電子収量軟X線吸収分光法( 全電子収量軟X線吸収分光法(TEYTEY-XAS)に XAS)に よるsp よるsp2系炭素表面酸素の定量分析の原理 液体窒素中アーク放電による EELSスペクトル カーボンナノホーン(CNH)の合成 上田, 村松, E. M. Gullikson, X線分析の進歩, 38, 273-280 (2007)., 上田, 村松, E. M. Gullikson, X線分析の進歩,39, 105-116 (2008). - Nitrogen K-edge power 放射光軟X線発光・吸収測定 発光・吸収分光法の原理 TEY-XASスペクトル + 検量線 unoccupied orbitals O吸収端 CNT Arc discharge hO/hC C吸収端 TEY CNH hO hC 合成条件 アノード炭素電極(3mmΦ,純度99.99%) カソード炭素電極(12mmΦ,純度99.99%) 放電条件: 電圧約34V,電流50A CNHのTEM像 TEY-XASによる検量線の作成 Measured peak area ratio, Oσ*/Cσ* (arb. units) H,Wang et al,Nanotechnology 15 (2004) 546-550 XES hv Atomic ratio, O/C Energy 2 XAS Band-gap occupied orbitals 拡大図 X-ray absorption inner orbitals Oσ*/Cσ* ALS/LBNL hv’ 測定条件 回折格子刻線密度: 600 lines/mm ローランド円半径:10 m スリット幅: 40 μm 励起エネルギー : 320 eV X-ray emission XAS XES 1 全電子収量法(TEY) f(x) = 1.335x + 0.1880 R^2 = 0.8981 0 0 0.2 0.4 0.6 Atomic ratio,O/C X線 0.8 1.0 吸収測定: BL‐6.3.2@ALS 標準試料 光電子,二次電子 (放射光) 放射光 汚れ I(試料電流) G4 表面 目的 放射光軟X の局所構造解析 放射光軟X線発光・吸収分光によるCNH 線発光・吸収分光によるCNHの局所構造解析 20nm 発光測定: BL‐8.0.1@ALS Energy A I0(入射強度) 測定条件 回折格子刻線密度: 1200 本/mm スリット幅: 40 µm 分解能(E/∆E):10000(250 eV)~2000(450 eV) 走査範囲: 250〜450 eV (CK, NK) 真空度: 10-5 Pa以上 測定時間:約5分/1試料 バルク (1)軟X線スペクトル解析による CNH中の窒素の状態分析 中の窒素の状態分析 (1)軟X線スペクトル解析によるCNH (2)NK/CK 端X線吸収強度比から窒素の定量に必要な検量線を作成 (2)NK/CK端X線吸収強度比から窒素の定量に必要な検量線を作成 窒素含有芳香族化合物のN 窒素含有芳香族化合物のNK端の吸収微細構造( 端の吸収微細構造(XANES)による窒素の状態分析 XANES)による窒素の状態分析 放射光軟X線発光・吸収スペクトル 吸収スペクトル (XAS) MW-CNT HOPG 260 CK ×10 ×10 ×10 ×10 Am1; 4-Amino-p-terphenyl CNT N H NH2 MW-CNT CK OK CK ×10 400 Photon energy / eV 500 600 H2N CNT HOPG 380 NK-XAS CK-XAS Total electron yeild (arb. units) 390 400 410 Photon energy / eV OK-XAS AmIm2; 9H-Pyrido[3,4-b]indole CNH N N N N Am9; Carbazole 530 540 550 560 Photon energy / eV NH N H * NK π σ* DOS スペクトル ●amine 1.5 C-DOS 1.0 1.0 f(x) = 1.5505x + 0.0495 R2 = 0.9382 STD = 0.0687 0.5 0 ●complex 0.5 f(x) = 1.0373x + 0.0519 R2 = 0.6296 STD = 0.1374 0 0 0.2 0.8 0.4 0.6 Atomic ratio, N/C 1.0 1.5 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Atomic ratio, N/C 1.0 1.5 Nσ*/Cπ* 1.0 Nπ*/Cσ* f(x) = 0.9497*x + 0.0701 R2 = 0.7371 STD = 0.0979 1.0 0.5 0.5 0 0 0 0.2 0.8 0.4 0.6 Atomic ratio, N/C 1.0 f(x) = 1.6373x + 0.0287 R2 = 0.8310 STD = 0.1275 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Atomic ratio, N/C Nσ*/Cσ*のピーク高比で求めた検量線で約10%未満の 分析精度で定量が可能 1.0 σ*region NN N N N Pd1; Benzo[c]cinnoline N H Pr1; Purine 共通点 -N= CNH中の窒素の結合 状態はsp2混成に起因 400 405 410 415 Photon energy / eV Cπ* Cσ* C2s Nπ* Nσ* N2p 450 Nπ*/Cπ* Nσ*/Cσ* π*region C2p N-DOS 1.5 N N H AmIm2; 9H-Pyrido[3,4-b]indole AmNt1 AmNt2 AmNt3 Am17; Di-3-indilymethane 定量分析精度の向上 0 ●amine N2s 10 MO energy / eV ●imine 1.0 1.0 Nσ*/Cσ* f(x) = 0.7582x + 0.0318 R2 = 0.9147 STD=0.0400 0.5 0 0.8 0.4 0.6 Atomic ratio, N/C 0.2 1.0 0 1.0 Nσ*/Cπ* 0.4 0.6 0.8 Atomic ratio, N/C 1.0 Nπ*/Cσ* f(x) = 0.9576x + 0.0408 R^2 = 0.8898 STD = 0.0582 0.2 0.8 0.4 0.6 Atomic ratio, N/C 1.0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Atomic ratio, N/C DOSのピーク高比から求めた計算検量線で 実験検量線の相関を再現可能 2p σ* Cσ* region 291.0eV~306.0eV Nσ* region NK 405.0eV~420.0eV CK NN 15eV 15eV π* 0 10 MO energy / eV 20 30 250 300 1.0 0 1.5 Nσ*/Cσ* f(x) = 0.6554x + 0.0089 R2 = 0.9893 STD = 0.0118 0.5 0 0.2 350 400 Photon energy / eV 450 実験検量線 0.4 0.6 0.8 Atomic ratio, N/C 1.0 Nσ*/Cσ* f(x) = 1.3929x - 0.0193 R2 = 0.9763 STD = 0.0374 1.0 0.5 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Atomic ratio, N/C 1.0 補足説明 OK 0 0 σ* 15eV範囲の面積比から求めた検量線で分析精度が向上し数%オーダーで定量が可能 f(x) = 0.5856x - 6.8747×10-5 R2 = 0.8222 STD = 0.0470 0.5 0.5 0.2 σ*region 計算検量線 ●complex f(x) = 0.7447x - 0.0012 R2 = 0.8194 STD = 0.0604 2s N-DOS -10 Nπ*/Cπ* 0.5 π* 30 0 0 1.0 0 20 π*region C-DOS Unoccupied DOS DOS (arb. units) TEY (arb. units) Measured peak intensity ratio Measured peak intensity ratio NN 400 N H Pd1 Pr1 395 電子状態密度(DOS )のピーク高から求めた計算検量線 電子状態密度(DOS) 350 Photon energy / eV ●imine N AmIm2, Pd1, Pr1の π*ピーク位置と一致 ピーク面積比から求めた検量線 TEYTEY-XASスペクトルの例 XASスペクトルの例 300 N N H2 C π*およびσ およびσ*ピークのピーク高から求めた四通りの検量線 250 Pd1; Benzo[c]cinnoline N(CH3)2 -NH2, -NH-, -N<系 Am1 Am2 Am5 Am6 Am7 Am9 Am12 Am13 Am14 Am15 Am16 Am17 -N=系 Im1 Im2 Im3 Im4 複合系 AmIm1 AmIm2 AmIm3 AmIm5 Pr1; Purine DVDV-Xα分子軌道法による実験検量線の再現 分子軌道法による実験検量線の再現 Pd1; Benzo[c]cinnoline HC NN H C AmIm5; 4(4-Dimethylaminostyryl)quinoline 窒素含有芳香族化合物を用いた 窒素の定量分析 * CK π σ* AmIm3; TPP (Tetraphenylporphine) Im4; Bathophenanthroline N N H 400 410 420 430 520 Photon energy / eV N AmNt3; 4-Nitro-1,2phenylenediamine Am16; N,N,N',N'-Tetramethylbenzidine HOPG 290 300 310 390 Photon energy / eV N N Am7; 2-Phenylindole MW-CNT 280 N Am15; N,N,N',N'-Teraphenylbenzidine N H CNT MW-CNT MW-CNT N CNT CNT NH2 NH2 N H N N H N NO2 Im3; 4,7-Dimethyl1,10-phenanthroline NH2 Am6; 3,3'-Diaminobenzidine CNH NH2 AmNt2; 4-Amino-4'nitrobiphenyl N Am14; 1-Methyl-2-phenylindole NH2 H2N CNH Measured peak intensity ratio Measured peak intensity ratio X-ray intensity (arb. units) NK-XES O2 N Im2; Phenazine NH2 H2N NO2 AmNt1; 4-Nitro-1-naphtylamine N N H N Am5; 3,3',5,5'-Tetrametylbenzidine CNH N AmIm1; 6-Aminoquinoline Am13; 4,4'-Dimethyltriphenylamine 300 N Am2; 1-Aminopyrene ×10 HOPG H2N CNHの吸収端ピーク CNH NH2 Im1; 9-Phenazine Am12; N,N'-Diphenylbenzidine N 200 270 280 290 Photon energy / eV NH2 複合(complex)系 Measured peak area ratio, Nσ*/Cσ* (arb. units) CNT H N ×10 OK ×10 CNH -N=(imine)系 Total electron yield (arb. units) CNH -NH2,-NH-,-N<(amine)系 NK CK NK端TEY-XAS 標準試料(窒素含有sp2系芳香族化合物) XAS wide scanning Total electron yeild (arb. units) X-ray intensity (arb. units) CK-XES Calculated peak area ratio, Nσ*/Cσ* (arb. units) 発光スペクトル (XES) TEY (arb. units) CNHの構造(5種類) 1.0 NK OK 15eV Back ground I ALSのBL6.3.2においてOK端の場合はピーク強度が強いた め15eVの面積幅を見積もっても十分な面積を確保できるが NK端の場合はピーク強度が弱いため15eVの面積幅で 見積もるとマイナスの領域が出てきてしまう NK 15eV Back ground II NK端のようなピーク強度の弱いスペクトルを扱う場合は X線散乱成分を考慮したバックグラウンドの取り扱いが 必要である まとめ ¾CNHの放射光軟X線発光・吸収スペクトルから窒素のピークを確認 →EELS EELSの の結果と同様に放射光軟X線分光法で窒素の含有を確認できた ¾窒素含有sp2 系芳香族化合物を標準試料とするXANES XANESから からCNH CNH中の窒素が 中の窒素が-N=の結合状態であることがわかった CNH中の窒素の結合状態は 中の窒素の結合状態はsp sp2混成に起因することがわかった 窒素含有sp2系芳香族化合物を標準試料とする N=の結合状態であることがわかった →CNH ¾π*またはσ*ピークのピーク高から求めた四通りのNK/CK比は,いずれもN/C原子比に対して正の相関を示した。このうち, Nσ*/ Cσ*比で描いたプロットが最も高い相関係数を示した。→炭素に対する窒素の検量線になり得る 炭素に対する窒素の検量線になり得る ¾DV-Xα分子軌道法で求めた窒素含有芳香族の非占有N-DOS/C-DOSピーク高比は N/C原子比に対して正の相関を示し,上記の実験結果を再現できた。加えて,DOSのピーク面積から求める方がピーク高から求める場合よりも高い相関係数を与えることがわ かった。→計算検量線による実験検量線の再現と分析精度向上の示唆 計算検量線による実験検量線の再現と分析精度向上の示唆 数%オーダーの定量が可能 ¾Nσ*/ Cσ*ピーク面積比から求めた検量線は,ピーク高比から求めた場合に比べて高い相関係数 (R2=0.9763)を示した。→数%オーダーの定量が可能 今後の展開 zCNH中窒素の局所構造を解明するため, DV -Xα分子軌道法でモデル化したCNH クラスターをベースとしたsp sp2混成を伴う窒素の局所構造を物理吸着と化学吸着の双方の観点からの解析 CNH中窒素の局所構造を解明するため,DV 分子軌道法でモデル化したCNHクラスターをベースとした zNK端のバックグラウンドの取り扱いを検討した上で窒素を含む工業炭素材料による作成した検量線の有効性を実証 成果発表一覧 z国際学会: T. Amano et al, Electronic structure calculations of carbon-nanohorns for their chemical state analysis using soft X-ray spectroscopy, 第21回DV-Xα研究会/The 5th International Workshop on DV-Xa (Himeji, 2008) (第6回優秀ポスター賞受賞) 回優秀ポスター賞受賞) z国内学会: 天野ら, グラファイトとダイヤモンドの電子状態に及ぼす欠陥の影響;軟X線スペクトルの微細構造解析, 日本コンピュータ化学会2007秋季年会(イーグレ姫路, 2007) 天野ら, カーボンナノホーンの放射光軟X線発光・吸収分光, 第21回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム (立命館大学, 2008). 天野ら, 全電子収量軟X線吸収分光法を用いた炭素材料表面窒素の状態・定量分析技術(1);窒素含有芳香族化合物を用いた検量線の作成, 第69回分析化学討論会, (名古屋国際会議場, 2008). (優秀ポスター賞(初めての学会発表部門)受賞) (優秀ポスター賞(初めての学会発表部門)受賞) 天野ら, 全電子収量軟X線吸収分光法を用いた炭素材料表面窒素の状態・定量分析; 窒素含有芳香族化合物を用いた検量線の作成, 平成20年度関西分析研究会 (大阪, 2008). (優秀講演賞受賞) 優秀講演賞受賞) 天野ら, 全電子収量軟X線吸収分光法を用いた炭素材料表面窒素の状態・定量分析; 窒素含有芳香族化合物を用いた検量線の作成と応用, 第22回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム(東大, 2009). 天野ら, 全電子収量軟X線吸収分光法による窒素含有sp2系炭素材料の状態・定量同時分析技術, 第3回化学プラットフォーム@関西講演会(大阪府大, 2009). z論文投稿: T. Amano et al, Electronic structure calculations of carbon nanohorns for their chemical state analysis using soft X-ray spectroscopy, Intl. J. Quantum Chem. (in press). 放射光軟X線発光・吸収分光法による天然ゴムの化学状態解析 物質計測学研究グループ TM08B015 久保田雄基 1. はじめに: 天然ゴム(NR)にカーボンブラック(CB)を混練すると,ゴムの耐久性 と耐磨耗性は格段に向上する。この補強効果は,ゴムの機械的特性と CB の種類や 粒子構造などとの相関から多角的に調べられているものの, CB 粒子とゴム分子間 に働く化学的相互作用はほとんど解明されていないのが現状である。一方,我々は CB 結晶子の局所構造に関する化学情報を放射光軟X線分光法で引き出せること を見出し[1, 2],本法を用いれば CB 粒子とゴム分子との化学的相互作用を解析で きることが示唆された。そこで,本研究では CB によるゴムの補強効果を化学的相互 作用の観点から解明することを目的として,本研究ではまず母材となる NR の放射光 軟X線状態分析を行った。 2. 実験: 放射光軟X線測定に用いた NR 試料は,東海カーボン(株)で調整された 様々な天然ゴム薄片である。放射光軟 X 線測定は米国の第三世代放射光施設 Advanced Light Source (ALS) で 行 っ た 。 軟 X線 発 光 スペ クト ルは ビー ム ラ イン BL-8.0.1 で測定し,軟X線吸収スペクトル(XAS)は全電子収量法(TEY)を用いて BL-6.3.2 で測定した。 3. 結果および考察: NR の基本構造はポ リイソプレンであるが,いずれの NR 試料か らも OK 端 TEY-XAS に酸素の存在が観測 された。また,Fig. 1 に示すように,NR 試料 (NR#1, #2)では CK 端 TEY-XAS のπ*σ*ピーク間に幅広いピークが現れた。ま た,このピーク形状と強度は OK 端のピーク 強度と相関があることもわかった。そこで, CK 端のπ*-σ*間ピークに注目し,アルキ ル直 鎖 を骨 格 とするジカルボン酸 などの CK 端 XAS と比較したところ,NR のπ*-σ *間ピークは少なくとも 2 成分(図中,a と b で示す)からなると判断でき,この成分 a,b はそれぞれアルキル鎖(C-H)とカルボキシ ル基(-COOH)に起因することがわかった [3]。したがって,NR の構造を理解するに はポリイソプレン構造だけでなく,カルボキ シル基などの酸素官能基とアルキル鎖を 考慮した解析が必要であり,現在,DV-X α法を用いて,これらを考慮したスペクトル 解析を進めている。 [1] Y. Muramatsu et al., X-ray Absorption Fine Structure, XAFS13, 511-513 (AIP, 2007). [2] Y. Muramatsu et al., Tanso, 236, 2-8 (2009). [3] 久保 田ら,第 21 回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム, 13P033 (2008). Fig. 1 天然ゴム(NR#1, #2)と参照試料 の CK 端 TEY-XAS。 放射光軟X線発光・吸収分光法による天然ゴムの化学状態分析 物質計測学研究グループ TM08B015 物質計測学研究グループ TM08B015 久保田雄基 1. 天然ゴム 4. スペクトル解析 素練り ロールを用いて 天然ゴムを10∼ 20回繰り返し練 る(NR #2) 工業用ゴム ゴム製品 相互作用? C=C CH3 H CH3 C=C CH2 CH2 Isomers Polymerization, n n Zigzag (boat) Flat LUMO HOMO-LUMO gap 6 HOMO-LUMO gap 2 5.5 HOMO-LUMO gap 0 5 HOMO HOMO 5 10 15 0 5 10 15 0 X-ray emission XES Sample Set-up for TEY-XAS NR films on Cu substrates CK-XAS π∗ σ∗ 8:2 8:2 7:3 7:3 6:4 6:4 5:5 5:5 n=5 4:6 4:6 n=6 3:7 3:7 n=8 2:8 2:8 1:9 1:9 0 : 10 0 : 10 -10 n=4 HO-(CH2)n-OH n = 10 10 20 280 285 290 Photon energy / eV O 295 HO HO OH OH O S3; Azelaic Acid NR #0 天然ゴムの処理条件による化学状態変化 O O S4; Suberic Acid O HO HO S3 OH OH O S4 CK H3C 300 XAS (270-560 eV) OK NR #0 NR #1 TEY (arb. units) 285 290 295 Photon energy / eV O -COOH系 O HO OH S13; Methylmalonic Acid S21; Sebacic Acid S16 O HO OH S19 O S21 HO S16; Octadecanedioic Acid OH O -OH系 S5 NR #2 O S19; Pentadecanedioic Acid O -COOH / =O /-OCH3 CH2O =O /-OCH3 S8 310 520 530 Photon energy / eV 540 550 560 520 OCH3 HO S22 NR #3 O OH HO O CH3 S13 530 540 550 Photon energy / eV 560 270 280 290 S22; Monomethyl Itaconate 300 310 520 530 Photon energy / eV 0.4 OCH3 S8; Methyl Arachidate S6 π∗ NR #1 S6; Dodecanedioic Acid S5; 1,10-Decanediol NR #3 280 σ∗ π∗ 0.4 Oσ∗/Cσ∗ Cπ*/Cσ* ratio NR #1 σ* TEY (arb. units) π* O TEY (arb. units) n=3 n = 10 0 0 MO energy / eV 酸素官能基を持つ脂肪族化合物 NR #0 NR #3 300 n=2 (TEY) NR #2 290 n=1 9:1 A Total electron yield HOPG 280 C2p 9:1 -20 π TEY (arb. units) Zigzag* : Flat 10 : 0 C2s SR 3. XES & XAS 270 σ* Unoccupied DOS C2p TEY (arb. units) Normalized DOS (arb. units) hv’ XAS 275 b π* NR #0 HOOC-(CH2)n-COOH XES X-ray absorption inner orbitals σ a CK-XAS XAS hv BL-6.3.2@ALS/LBNL 290 ジカルボン酸のXAS ジカルボン酸のXAS CK-XAS NR #1 Occupied DOS occupied orbitals 275 280 285 Photon energy / eV 15 Energy Band-gap 270 10 XES・ XES・XASと XASとDOSの比較 DOSの比較 CK-XES NR #1 unoccupied orbitals X-ray intensity (arb. units) 5 n Zigzag* : Flat C2s 10 : 0 265 n = 15 4.5 0 BL-8.0.1@ALS/LBNL NR #2 n=3 Flat HOMO -2 2. 放射光軟X線発光・吸収測定 NR #1 n = 15 LUMO LUMO ゴムの構造解析 (酸化状態) 酸化状態) HOPG n=3 (boat) 6.5 Zigzag (chair) MO energy / eV CH2 n Zigzag HOMOHOMO-LUMO Gap vs. n 4 NR #0: 天然ゴム(未処理) NR #1: 天然ゴム(冷加硫) NR #2: 天然ゴム(素練り、冷加硫) NR #3: 硫黄配合天然ゴム(プレス加硫) n = 15 C H Polyisoprene 測定試料 とゴム分子の相互作用の解明 <目的>天然CB 天然CBとゴム分子の相互作用の解明 CK-XES Top view 5 3 CH3 n=3 Side view (chair) 2 1 6 H C=C H HOMO - LUMO gap / eV CH3 Zigzag 4 CH3 プレス加硫 145℃で圧力をかけ た状態で30∼40分 保持する(NR #3) 天然ゴム( 天然ゴム(NR)の基本構造 NR)の基本構造 ; ポリイソプレン CH2 ポリイソプレンのクラスターモデルとHOMO ポリイソプレンのクラスターモデルとHOMO--LUMO Gap Isoprene Oσ*/Cσ* ratio エラストマー カーボンブラック 硫黄 (天然ゴム) (CB) 0.3 0.2 NR #1 NR #2 NR #3 σ∗ 540 550 560 Cπ∗/Cσ∗ 0.3 0.2 NR #1 NR #2 NR #3 <結論> ・ NRの基本構造はポリイソプレン構造で説明できる ∗ ・ NRのCK-XASにおけるπ −σ∗間ピーク ・アルキル鎖の存在 ・酸化状態は単純な-COOH基だけではない ・処理条件による化学状態変化 酸素量とC=C結合の量が処理条件により変化する <学会発表> 1. 久保田ら, 放射光軟X線分光法によるゴムの化学結合解析, 第21回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム (立命館大学, 2008) 2. Y. Kubota et al, Electronic structure calculations of polyisoprene for the chemical state analysis of rubber using soft X-ray spectroscopy, 第21回DV-Xα研究会/ The 5th International Workshop on DV-Xα (Himeji, 2008) 3. 久保田ら, 放射光軟X線分光法によるゴムの電子・化学状態分析(1); 天然ゴムのスペクトル解析, 日本分析化学会第57年会(福岡大学, 2008) 4. 久保田ら, 放射光軟X線分光法による天然ゴムの化学状態分析, 平成20年度関西分析研究会 (大阪, 2008) 5. 久保田ら, 放射光軟X線分光法によるゴムの化学結合解析(2); 天然ゴムの酸化状態解析, 第22回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム(東大, 2009) 6. 久保田ら, 放射光軟X線発光・吸収分光法による天然ゴムの化学状態分析, 第3回化学プラットフォーム@関西講演会(大阪府大, 2009) 放射光軟X線分光法による岩塩型金属炭化物の電子・化学状態分析 物質計測学研究グループ TM08B020 下村 健太 1.はじめに: 高輝度放射光を用いた軽元素材料の軟X線状態分析技術を確立するため, 我々はこれまでに様々な炭素材料の軟X線発光・吸収スペクトル(XES・XAS)を測定し,これ を Discrete Variational (DV) -Xα法で解析できることを明らかにした[1]。ところで,炭素鋼や 超硬合金などに代表される金属-炭素合金系では,炭素原子が電子数の多い金属原子に囲 まれるため,通常の炭素材料に比べて炭素原子の化学状態情報を引き出す分光計測手法 が限られ,加えて DV-Xα法による放射光軟X線スペクトル解析が複雑になる。しかし,我々 は放射光を用いて様々な金属炭化物の CK 領域における軟X線発光・吸収スペクトル (CK-XES・XAS)を測定し,電子・化学状態を反映した微細構造が観測できることを確認した [2]。そこで,本研究では金属-炭素合金系の軟X線状態分析技術の開発を目的として,この 基本物質である金属炭化物の軟X線状態分析を行う。ここではまず軽金属に分類され,比較 的単純な構造の岩塩型結晶構造を持つ炭化チタン(TiC)及び炭化バナジウム(VC)を対象と し,DV-Xα法によるこの CK-XES・XAS スペクトル解析の可能性について検討した。 2.放射光軟X線分光測定および DV-Xα 分子軌道計算: 測定試料は市販の TiC と VC 粉末である。放射光軟X 線 発光・吸収測定は米国の放射光施設 Advanced Light Source (ALS)のビームライン BL-8.0.1(発光測定)と BL-6.3.2(吸収測定)で行った。この CK-XES・XAS を解 析するため,種々のMxCy (M: Ti, V) クラスターモデルを 構築し,各モデルにおける中心炭素原子と金属原子の 電子状態密度(DOS)を非相対論 DV-Xα 分子軌道法で 算出した。 3.結果および考察: MxCy クラスターモデルにおける中 心炭素原子の DOS はクラスターサイズに依存した。しか し,Fig. 1に示すTiCのように,Ti62C63 クラスターモデルを 用いれば,中心炭素原子の C2p-DOS で CK-XES・XAS を再現できた[2, 3]。加えて,Ti の価電子構造も含む光電 子分光スペクトル(XPS)も中心炭素とこれに結合する Ti 原子の全 DOS で,ほぼ再現できた。VC の場合も同様な 結果が得られた。以上より,岩塩型結晶構造を持つ金属 炭化物における炭素の軟X線状態分析では,対称性を 考慮して 5×5×5 原子程度まで拡大したクラスターモデ ルの DV-Xα 計算により,CK-XES・XAS を解析できる見 通しが得られた。今後は,他の結晶構造を持つ金属炭化 物について検討し,DV-Xα 法によるクラスターモデル構 築法の体系化をめざす。 Fig. 1 Occupied DOS in the C2p, [1] 村松, 炭素材料学会 10 月セミナー 炭素材料応用の現状と診断 法の新展開 , (2007). [2] 下村ら, 第 21 回日本放射光学会年会・放射 光科学合同シンポジウム, 13P035 (2008). [3] K. Shimomura et al., Intl. J. Quantm Chem. (in press). C2s, Ti3d, Ti4s, and Ti4p orbitals at the center C atom and the 1st-neighbor Ti atom in the Ti62C63 model (upper panel), compared to the CK-XES and the XPS. 放射光軟X線分光法による岩塩型金属炭化物の 電子・化学状態分析 物質計測学研究グループ TM08B020 下村 健太 軟X線発光・吸収分光法( XES・ ・XAS) 線発光・吸収分光法(XES XAS) 無機炭素材料への適用 無機炭素材料への適用 <目的> 軟X線発光・吸収分光法による金属原子 中炭素原子の状態分析技術の確立 吸収測定 BL-6.3.2@ ALS 回折格子刻線密度: 1200 lines/mm スリット幅: 40 μm 走査範囲: 255 - 290 eV (CK ) 真空度: 10-5 Pa程度 X線 z金属炭化物に着目し,DV-Xα 分子軌道法を用いて 軟X線発光・吸収スペクトルを解析 z岩塩型結晶構造を持つ金属炭化物を対象とする XAS XES 金属炭化物 M 6C 7 M19C6 Ti62C63 CK-XES DOS C 2p C 2s Ti 3d Ti 4s : C ( M=Ti , V ) DOS and/or X-ray intensity (arb. units) :M TiC VC CK-XES Occupied DOS Ti62C63 C 2s CK-XES C 2p 62 63 C 2p V14C19 Ti14C19 V19C6 Ti19C6 Ti6C7 -20 Occupied DOS C 2s V C V6C7 -10 0 -20 -10 MO energy / eV 0 DOS and/ or X-ray intensity (arb. units) M62C63 XAS TiC VC HOPG 265 275 Photon energy / eV CK-XAS DOS C 2p C 2s Ti 3d Ti 4s Ti 4p Ti 4p -20 M14C19 XES TiC 285 VC HOPG 280 290 Photon energy / eV 300 DVとVCの DV-Xα法によるTiC によるTiCと VCのXES・ XES・XASスペクトル解析 XASスペクトル解析 DOS and/or X-ray intensity (arb. units) DVMxCyのクラスターモデル DV-Xα計算における 計算におけるM のクラスターモデル DOS and/or TEY (arb. units) :V :C 炭化バナジウム(VC) : Ti : C 炭化チタン(TiC) 炭化バナジウム(VC)は,遷移金属炭化物特有の高 融点,高硬度という性質を持つ。また,バナジウムを 鋼に添加すると鋼中の炭素と結合してV4C3を形成し微 細に分散する。そのことにより,結晶粒が微細化し,靭 性を損なわずに強度が増加するほか,熱および機械 的性質も向上させることができる。炭化チタン(TiC)も, 炭化バナジウムと同様の性質を持ち、耐摩耗金型・工 具、切削工具、機械部品の耐摩耗性保護膜として広く 利用されている。 G4 -10 0 0 MO energy / eV 20 XPS(VC0.8)*2 XPS*1 DOS C 2p C 2s C 2s Ti 3d V 3d Ti 4s V 4s Ti 4p V 4p -10 0 -20 -10 MO energy / eV CK-XES DOS C 2p C 2s V 3d V 4s V 4p -20 CK-XAS DOS C 2p C 2s V 3d V 4s V 4p -10 0 0 MO energy / eV 10 20 <結論> 結論> DV-Xα分子軌道法を用いれば,岩塩型結晶構造を 持つTiC,VCのCK-XES/XASは 5×5×5 程度に拡 大したクラスターの基底状態の占有および非占有 C2p-DOSで概ね再現できることを明らかにした。 CK-XES CK-XES DOS C 2p -20 10 V62C63 DOS and/or TEY (arb. units) X線 内殻軌道 X-ray intensity (arb. units) XES 占有軌道 回折格子刻線密度: 600 lines/mm ローランド円半径:10 m スリット幅: 40 μm 励起エネルギー : 320 eV TEY (arb. units) XAS 非占有軌道 発光測定 BL-8.0.1@ ALS XES・XASは有機化合物をベースとする 炭素材料の状態分析に有効 DOS and/or X-ray intensity (arb. units) E XES・ XES・XAS測定 XAS測定 @ ALS / LBNL TiC,VC のCK-XESにおいて,主ピークと高エネル ギーショルダーはC2pとTi, Vの3d, 4p との混成軌道 に起因し,低エネルギーピークはC2pとTi, Vの4s, 4p との混成軌道に起因することがわかった。 0 チタンとバナジウムは金属のなかでも軽金属に分類 されるので,重金属のクラスター計算に用いられる 相対論DV-Xα 計算を用いなくても対応できることが 確認できた。 *1. Song, B. et al ., J. Phys. Cond. Matt., 1998, 10, 9443. *2. 伊原ら, 秋の分科会講演予稿集Vol.1976, No.2(19760916) p.119 成果発表一覧 <学会発表> 学会発表> 1. 2. 3. 4. 5. 下村ら, 放射光軟X線発光・吸収分光法による岩塩型金属炭化物(TiC, VC)の電子状態解析, 第3回化学プラットフォーム@関西講演会(大阪府大, 2009). 下村ら, 放射光軟X線発光・吸収分光法による遷移金属炭化物(TiC,VC)の電子・化学状態分析, 第22回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム(東大, 2009). 下村ら, 全電子収量軟X線吸収分光法を用いたsp2/sp3炭素比分析の考察(1);混合標準試料を用いたsp2/sp3炭素の電子収量比, 第44回X線分析討論会(日本女子大学, 2008). 下村ら, 放射光軟X線分光法による金属炭化物の電子・化学状態分析(1);炭化チタンのCK X線スペクトル解析, 日本分析化学会第57年会(福岡大学, 2008). K. Shimomura et al., Soft X-ray spectral analysis in the C K region of titanium carbide (TiC) using the DV-Xa molecular orbital method, 第21回DV-Xα研究会/The 5th International Workshop on DV-Xα (Himeji, 2008). 6. 下村ら, 金属炭化物の放射光軟X線発光・吸収スペクトル, 第21回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム (立命館大学, 2008). <主著学術論文> 主著学術論文> 1. K. Shimomura et al., High-resolution soft X-ray spectral analysis in the C K region of titanium carbide (TiC) using the DV-Xα molecular orbital method, Intl. J. Quantum Chem. (in press). トバモライトの重金属捕集能向上と分析応用 -ケイ酸ストロンチウム水和物を用いた水溶液中鉛の蛍光 X 線分析物質計測学研究グループ TM08B005 井澤 良太 X-ray intensity / cps 1. 緒言:鉛は毒性が強い元素であるため、水道水や環境水における鉛濃度は カドミウムと同様に基準値は 10μg/L以下と定められている。水中の鉛の分析法 としては原 子 吸 光 分 析 法(AAS)や誘 導 結 合 プラズマ発 光 分 析 法(ICP-AES)が 一般に用いられるが、ICP-AESでも 10μg/Lの鉛イオンの検出が限界であり、濃 縮法が必要であり、共存イオンによる干渉を避けるための干渉抑制剤や濃縮妨 害イオンに対するマスキング剤も必要となる。しかし、蛍光X線分析法(XRF)は、 固体試料で測定ができ、干渉の影響も少ない。さらに近年、技術の進歩により ハンディタイプの蛍光X線装置が開発されているため、オンサイト分析が可能と なった。オンサイト分析では、より簡便な操作と必要最小量の試薬を用いる濃縮 法が求められる。そのための鉛イオン捕集剤として、本研究室では、ケイ酸カル シウム水 和 物 の一 種 であるトバモライト Ca 5 Si 6 O 16 (OH) 2 ・4H 2 OはCa 2+ が重 金 属イオンとイオン交換することに注目し、このCaをSrで置き換えれば、Srとイオン 半 径 が近 いPbの効 率 的 な捕 集 が可能 であると考え、ケイ酸 ストロンチウム水 和 物を合成した。そこで、新しい環境分析技術の開発を目的として、本研究で合 成したケイ酸ストロンチウム水和物(SSH)を予備濃縮剤として用いる前処理法の 蛍光X線分析への適用可能性について検討した。 2. 実 験 : 蒸 留 水 お よ び 人 工 海 水 (Na + ,K + ,Ca 2+ 等 を 含 有 す る 溶 液 ) に 対 し 0-50 μg/Lの鉛溶液を調製した。この溶液に吸着剤としてSSHまたはトバモライト 0.1 gを添加して 1 h攪拌してイオン捕集後、30 min静置してろ過した。吸着剤は 0.45 μmのメンブレンフィルター上に直径 2.0 cmの範囲に捕集した。乾燥した吸 着剤を分析試料とし、WDXRFで鉛のLα線を測定した。 3. 結果および考察:蛍光X線による人工海水中の鉛の濃度とLα線の強度の 相関関係をFig.1 に示した。高濃度のNaやKなどの金属イオンを含む人工海水 でも 10-50 μg/Lの範囲で相関係数が 0.99 以上の検量線が得られた。人工海水 中 には高 濃 度 のCl ― イオンも共 存 するため 1200 測定回数 2回 PbCl + の錯 イオン形 成 も考 えられるが、SSH 1000 SSH 800 傾き 17.7 cps/ppb ではなんら妨 害 を受 けることなく低 濃 度 まで 600 効率よく捕集できていると考えられる。したが トバモライト 400 傾き 14.7 cps/ppb って、定 量 分 析 の検 量 線 として使 用 可 能 で 200 0 あり、SSHは蛍光X線分析の予備濃縮剤とし 0 10 20 30 40 50 6 Pb concentration / ppb て利 用 できると考 え られる。また、 SSHの 比 Fig.1 The work curves of Pb 表面積がトバモライトに比べ 1/2 程度である concentrations in artifical seawater にもかかわらずトバモライトより感 度が良かっ measured by XRFwith the of た理由の一つとして、SrとPbのイオン半径 が collectors 近 いことが考 えられる。今 後 、さらに実 験 で 明らかにする予定である。 トバモライトの重金属捕集能向上と分析応用 -ケイ酸ストロンチウム水和物を用いた水溶液中鉛の蛍光X線分析 物質計測学研究グループ TM08B005 井澤 良太 近年、ケイ酸カルシウム水和物であるトバモライト Ca5Si6O16(OH)2・4H2Oがイオン交換反応による重金属捕集剤として注目されている。我々は、環境汚染物質に該 当する重金属に対する捕集剤としてトバモライトを用いた新しい環境分析技術の開発を目的に、蛍光X線分光法(XRF)の試料前処理に適した重金属捕集剤の合成 を試みている。本研究では、環境水中の基準値が10ppb以下と規制をされているPbに注目し、 Pbとイオンサイズが近いSrをトバモライトのCaの代わりに原料として 用いれば効率的にPbが捕集できると考えた。そこで、トバモライトのCaをSrで置換したケイ酸ストロンチウム水和物(SSH)の合成を試み、SSHによるPbの予備濃縮 とXRFによる定量分析の可能性を明らかにした。 蛍光X線分析法によるPbの捕集結果 背景・目的 Ca 2+ M2+ 1200 1000 傾き 16.4 cps/ppb R = 0.9987 600 400 SrSiO3 傾き 13.3 cps/ppb R = 0.9918 200 SSHを捕集剤における妨害イオンの影響 0 ハンディタイプ蛍光X線装置 それには、 鉛の微量分析の予備濃縮に適した重金属捕集剤が必要 X-ray intensity / cps 海や川における簡易的な現場分析法の開発 20 30 40 Pb concentration / ppb 50 傾き 17.7 cps/ppb R = 0.9993 800 600 蒸留水 400 傾き 16.6 cps/ppb R = 0.9996 200 60 0 800 傾き 16.3 cps/ppb R = 0.9991 600 蒸留水 400 傾き 14.7 cps/ppb R = 0.9952 200 10 20 30 40 Pb concentrarion / ppb 50 60 人工海水におけるSSHとトバモライトの比較 測定回数 2回 人工海水 1000 1200 測定回数 2回 1000 SSH 800 傾き 17.7 cps/ppb 600 400 トバモライト 200 傾き 14.7 cps/ppb 0 0 0 10 20 30 40 Pb concentration / ppb 50 0 60 10 20 30 40 Pb concentration / ppb 50 60 SSHを用いた本分析条件での人工海水中の鉛濃度の定量限界 効率的にイオン交換する 1.32Å 10 1200 Pb2+ ? 測定回数 2回 人工海水 1000 トバモライトにおける妨害イオンの影響 重貴属捕集剤と ハンディ蛍光X線の融合 Sr2+ 1200 0 0 http://www.rigaku.co.jp/products/p/xfni0001/ X-ray intensity / cps イオン交換体 合成時にCaの代わりに Srを原料に用いる SSH 800 Ca2+ 層状化合物 測定回数 2回 X-ray intensity / cps ケイ酸駆カルシウム水和物であるトバモライト Ca5Si6O16(OH)2・4H2O 溶液中のPb濃度とX線強度 蒸留水におけるSSHと副生成物であるSrSiO3の比較実験 X-ray intensity / cps 環境水(河川・海) のPbの基準値は10ppb以下と規制されている。一般的な分析方法で あるAASやICP-AESの検出限界は、それぞれ25ppbおよび3ppbであるため、定量分析 するには予備濃縮が必要であり、試料を溶解させ溶液として測定する必要がある。 鉛捕集実験 1.33Å SrO-SiO-H2O ケイ酸ストロンチウム水和物の合成及び評価 水熱合成条件 ① Sr/Si=0.2 Sr(OH)2・8H2O 3.200 g SiO2 3.617 g 3.5M NaOH 20mL 160℃ 72h 水熱合成 ② Sr/Si=0.6 CaO 0.841 g SiO2 1.502 g 3.5M NaOH 20mL 180℃ 72h 水熱合成 X-ray intensity (a.u.) XRDによって測定した回折ピーク SEMによる結晶観察 X-ray intensity / cps 1200 1000 定量下限 5.56 ppb 測定回数 4回 800 600 検出下限 1.67 ppb 400 感度 17.7 cps/ppb 200 0 トバモライト SSH SrSiO3 トバモライト 0 SSH 10 20 30 40 Pb concentration / ppb 50 60 基準値の10ppbをクリア 鉛を回収しているかどうかの確認実験 SSHとトバモライトを用いたPb 50μg添加人工海水1Lでの吸着実験 5μm 0 10 20 30 2θ/deg 40 50 BET比表面積 27 m2/g 1μm 14 m2/g 本実験の目的 合成したSSHのPbに対する選択的捕集性を確認する 酢酸1M 10mLに溶解 遠心分離 原子吸光分析 Pb SSH 93 μg, トバモライト 79 μg 合成したSSHはトバモライトと同等以上のPb2+イオン捕集能力がある。 副生成物であるSrSiO3 はPbでは定量的な捕集ができなかった。また、 SSHはトバモライトに比べBET比表面積が1/2であるにも関わらず、同 定度の感度が得られた。これはSrを用いたことによる効果だと考えられ る。 実験 蒸留水および人工海水中の鉛の測定 実験手順 攪拌 試料フォルダーのリング Pbを標準添加した蒸留水 or 人工海水1L + 試料(SSH、SrSiO3、トバモライト) 0.1g 2cm 1h攪拌 ろ過 ろ過後の捕集剤 波長分散型 蛍光X線分析装置 蛍光X線の測定条件 30min静置 ろ過 孔径 0.45mmのメンブレンフィルター上に 穴の直径が2cmのリング内に捕集剤を集める 自然乾燥 Pb La線の蛍光X線スペクトルを測定 (波長分散型 Rigaku RIX2000) 結論 合成したSSHはトバモライトに類似した構造を有することが明らかとなった。こ のSSHを使用すれば、水中のppbレベルのPb2+イオンも定量的に捕集でき、人 工海水に含まれる濃度のアルカリ金属イオンやアルカリ重金属イオンの妨害も 受けないことが明らかとなった。以上の結果より、環境水中の鉛を蛍光X線分 析法により定量する場合の予備濃縮剤としてSSHは十分に期待できる。 今後の予定 電圧・電流 分光結晶 Pb L α BG1 BG2 50kV-50mA LiF(200) 33.96° 33.66° 34.26° • SPring-8でBL-37XU でPbのXANESスペクトルを測定し、Pbの捕集メカニ ズムの解明する。 • 高純度SSHを合成し、それを用いたPbの微量分析の最適条件を検討する。 学会発表 井澤ら, 水中の鉛の蛍光X線分析 -ケイ酸ストロンチウム水和物を用いた予備濃縮-, 日本分析化学会第57年会 (福岡大学,2008) 浄水発生土とカキ殻および廃ガラスを原料とするカドミウムイオン吸着剤の水熱合成 物質計測学研究グループ TM08B011 荻野芳菜 1.はじめに:カドミウムは毒性が強く多くの生物に吸収・蓄積されやすい元素であるため、RoHS指令 やコーデックス委員会の対象とされている。土壌中におけるカドミウムの移動性は低いとされているが、 土壌の酸化還元電位の増加や土壌水でのイオン強度の増加により水中への溶解度や作物への吸収性が増 すことも知られている。排水や環境水からカドミウムを除去する吸着剤が種々開発されているが、処理水 が大量の場合には、特に安価な原料で簡便に合成できる吸着剤が望ましい。一方、資源の有効活用や環境 負荷低減の観点から、無機系廃棄物を水熱合成により有価物とする研究が行われている。我々はこの中で 重金属吸着性の高いアルミニウム置換型トバモライトに着目した。そこで、カドミウムイオンを効率よく 捕集できる吸着剤の開発を目的として、ケイ素とアルミニウム源には浄水発生土と廃ガラスを、カルシウ ム源にはカキ殻をそれぞれ用いて水熱合成し、生成物のカドミウムイオンの吸着性を調べた。 2.実験:水熱合成に先立ち、無機系廃棄物原料はブレンダーで粉砕し、150 μm以下のものを使用した。 カキ殻は 900℃で 2 時間焼成した後に使用した。粉砕した各原料をテフロン製耐圧容器(Morey型)に入 れ、アルカリ水熱合成を行った。合成温度は 150℃とし、溶媒には水酸化ナトリウム水溶液を用いた。な お、原料の浄水発生土は浄水処理場で凝集沈殿する際に水中の有機物を含有しているため、浄水発生土か ら有機物を除去する前処理操作についても検討した。水熱合成生成物を同定するため、生成物を蒸留水で 洗浄・乾燥後、粉末X線回折測定に供した。水熱合成生成物についてカドミウムイオンを用いて吸着実験 を行い、その吸着性を調べた。 3.結果および考察:浄水発生土にお ける有機物除去の前処理操作を検討 した結果、アルカリ処理ではアルミニ ウムの損失が見られアルミニウム源 として浄水発生土を用いる場合、強熱 処理のほうが適していた。強熱処理し た浄水発生土においてアルカリ水熱 合成を行ったところ、粉末X線回折結 果よりソーダライトが生成すること が確認できた。強熱処理した浄水発生 土と一定量のカキ殻焼成物からトバ モライトを合成する際に必要なガラ ス添加率を検討したところ、アルミニ ウムのモル分率の減少に伴いソーダ ライトのピーク強度が低下し、逆にトバモライトのピーク強度は増加する傾向が見られた。ソーダライト およびトバモライトはいずれもイオン吸着性を示すため、これらの生成物におけるカドミウムイオンの吸 着性を調べたところ、アルミニウムのモル分率が 0.15~0.20 の場合にカドミウムイオン吸着率が高くな った。その理由として、①ソーダライトとトバモライトの両者が生成していることによる相乗効果、②カ チオン吸着性の高いアルミニウム置換型トバモライトの生成、③比表面積の大きいC-S-Hの生成、などが 推察されるが、他の重金属イオンでは違った吸着挙動を示す可能性があるため、今後の検討課題である。 4.まとめ:標記の無機系廃棄物を用いてカドミウムイオン吸着剤を合成した。ポリ塩化アルミニウムで 凝集沈殿した浄水発生土はアルミニウム含有率が高いため、廃ガラスとの混合率を制御することによりソ ーダライトやトバモライトに転換可能なことを確認した。浄水発生土やガラスの種類によって変動はある が、標記原料(前処理後)の乾燥重量比を 1:1:1 として水酸化ナトリウム水溶液中 150℃で 72 時間水熱 合成することでカドミウムイオン吸着率の高い生成物が得られることを認めた。今後、アルミ置換型トバ モライトにおいてカドミウムイオンや他の重金属イオンについての吸着特性を明らかにする予定である。 浄水発生土とカキ殻および廃ガラスを原料とするカドミウムイオン吸着剤の水熱合成 物質計測学研究グループ TM08B011 荻野芳菜 背景 実験手順 無機系廃棄物 浄水発生土 廃ガラス カキ殻 ・吸着剤の合成について 無機廃棄物原料 3.5M-NaOH 20mL Cd Cd アルミニウム源 Cd ケイ素源 カルシウム源 ・吸着実験について 吸着剤 アルミ置換型トバモライト 撹拌 吸着剤50mg Cd溶液10mL 原子吸光分析 *結晶構造の描画は門馬氏のVICS-Ⅱによる 遠心分離 3000rpm×10min ソーダライト 目的 カドミウムイオン吸着剤の 無機廃棄物からの合成と その吸着特性の解明 土壌中のCdの移動度は低いが 土壌の酸化還元電位の増加や 土壌水でのイオン強度の増加に より水流への溶解や作物への 吸収性が増す 結果 XRDの測定条件 X-Ray 発散スリット[°] 発散縦制限スリット[mm] 散乱スリット[mm] 受光スリット[mm] 処理方法 Na 上澄み液除去 繰り返し ②強熱処理 浄水発生土 Al 40 20 処理前 発煙が認められなく なるまで加熱 0 強熱処理 浄水発生土からの有機物除去法としては アルミニウムの損失がなく簡便な強熱処理が適している Ca-Kα FP法 ピーク角度[deg] アルカリ処理 Q:石英 S:ソーダライト T:トバモライト 瓦シャモット S S 10 フライアッシュ S 20 30 40 50 60 70 2θ / deg (Cu Kα) Al-Kα 分析手法 測定範囲[deg] Cd 228.8 5 0.34 C2H2-Air 強熱処理した 浄水発生土 T 0 Q Q XRF測定 Si-Kα 波長[nm] ランプ電流[mA] スリット[nm] フレーム Si X-ray intensity (a.u.) 含有率 /mol% 浄水発生土 3.5M NaOH水溶液 50kV/50mA 原子吸光分析 の測定条件 合成条件:150℃‐8時間 60 ①アルカリ処理 XRFの測定条件 40kV/30mA 1° 10 1.25 0.3 強熱処理した浄水発生土を原料とした水熱合成 浄水発生土の前処理 加熱 撹拌 XRD測定 アルミ置換型トバモライトの構造 SiO4四面体 AlO4四面体 Ca原子 O原子 H2O分子 Cdは毒性が強く多くの生物に吸 収・蓄積されやすい 乾燥 粉砕 洗浄 Morey容器 安価な原料 資源の有効活用 簡便な合成 水熱合成 吸収 生成物 オートクレーブ(150℃) 140-147 140-147 59-65 109.04 144.61 61.98 ステップ[deg] 0.05 測定時間[sec] 0.4 浄水発生土とカキ殻焼成物を原料とした水熱合成 カルシウム源としてカキ殻を加えて水熱合成すれば トバモライトの生成が期待できる カドミウムイオン吸着性 トバモライトの生成に及ぼすガラス添加率の影響 100 C:水酸化カルシウム C Q アルカリ処理 X-ray intensity (a.u.) T A:酸化アルミニウム 合成時間:150℃‐72時間 強熱処理 Al/(Al+Si) 0 80 吸着率/% Q Q 水熱合成後 C 合成条件 150℃‐8時間 60 40 水熱合成前 強熱処理 S S アルカリ処理 S X-ray intensity (a.u.) 未処理 0 0.10 T S C 0.15 A A 30 40 50 60 70 2θ / deg (Cu Kα) アルカリ処理ではトバモライトのピークが認められる 強熱処理では水酸化カルシウムのピークが認められる 強熱処理の浄水発生土では ケイバン比が小さいためトバモライトが生成しない と考えられるのでケイバン比を上げるために ガラスなどのケイ素源を添加する必要がある 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 まとめ 0.25 20 0.05 なお,A/(Al+Si)=0.15の吸着剤0.5gを 10ppb(50μg/5L)のカドミウム溶液中で撹拌したと ころ,±4.5%の誤差範囲内で100%の吸着率を示 した.このことから,本吸着剤は極微量のカドミウム に対する吸着も可能であることを確認した. S 0.20 10 0 浄水発生土の比率大 Al/(Al+Si) 未処理 0 ガラスの比率大 20 0.05 0.30 0 10 20 30 40 50 60 70 2θ / deg (Cu Kα) アルミニウムのモル分率の減少に伴い ソーダライトのピーク強度は低下し トバモライトのピーク強度は増加する傾向が見られる 標記の無機系廃棄物を水熱合成法を用いること でカドミウムイオン吸着剤に転換可能なことを 確認した 標記原料の乾燥重比を1:1:1として3.5M水酸化 ナトリウム水溶液中,150℃で72時間水熱合成 することで、カドミウムイオン吸着率の高い生成 物が得られることを認めた 今後の予定 アルミニウム置換型トバモライトにおけるイオン 吸着特性の解明 <学会発表> 荻野ら,浄水発生土とカキ殻および廃ガラスを原料とするカドミウムイオン吸着剤の水熱合成,第19回(平成20年度)廃棄物学会研究発表会(京都大学,2008).
© Copyright 2024 ExpyDoc