広域課題の解決に対応します! ∼新技術導入広域推進事業の取組紹介∼ 『法人経営における継承計画支援手法の検討』(計画的な経営継承のススメ!) ~県内農業法人における事業継承の実態調査アンケート結果より~ 1 はじめに ~計画的な経営継承の必要性~ 法人は、その経営を次代に継承できない場合、経営者自らがこれまで築いてきた事業基盤やノウハウ 等の経営資源が散逸してしまいます。また、法人に従業員がいる場合には、従業員本人のみならずその 家族の生活にも大きな影響を及ぼすことになります。さらに、それまで受託していた農地の耕作も継続 できなくなるため、法人の全経営耕地の耕作を肩代わりしてくれる農業者等がいない地域にあっては、 「事業継承できない=耕作放棄地の発生」ということも心配されます。 そこで、法人の経営継承支援の一貫で取り組んだ『農業法人の事業継承に関するアンケート』の結果 から、継承予定のある経営者が留意すべきポイントについて紹介します。 2 県内の農業法人における事業継承の実態 ( 1 )事業継承アンケート調査 〔県農業総合研究所基盤研究部と共同で実施〕 調査対象 : 過去 3 年間に代表者が交代した稲作を主作目とする農業生産法人 調査時期 : 平成25年10月、平成26年 8 月( 2 年に渡って計 4 カ年分で実施) 実施方法 : 郵送にて配布及び回収 回 答 数 : 配布数143法人、回収102法人、有効回答98法人( 2 カ年合計) ア 調査の概要 法人の規模及び経営概要、法人の代表者が交代した理由及び経過、経営者権限の移譲のタイミン グ、継承に向けて前経営者が事前に取り組んだ内容、継承後に現経営者が苦労した内容、継承準備 に必要と考える期間及び準備内容などを調査しました。 イ 回答法人の経営状況 表 1 回答法人の概況(法人タイプ別の平均) ウ 調査結果の概要 (ア)法人代表者が交代した直接的な理由 〔図 1 参照〕 継承の直接的な契機は、 「任期の満了」が最多で(有 志型Aでこの回答が多い)、次いで「前代表者の高齢 化」でした。ただし、有志型Bでは「前代表者の高齢 化」が最多回答であり、次いで「経営発展のため」と の回答が多く寄せられました。 図 1 法人代表者の交代理由 8 (イ)継承の計画性について 〔図 2 参照〕 現代表者の継承前の立場では、集落営農型では「継 承の候補者ではあったが特に準備はなかった」との回 答が過半を占めました。また、有志型Aと有志型Bで は「計画的な継承」と「継承の候補者ではあったが特 に準備はなかった」が半分ずつでした。しかし、半数 以上の法人で特に準備がないまま継承が行われてい 図 2 継承の計画性 る実態が明らかになりました。 (ウ)継承準備の取組期間 〔表 2 及び図 3 参照〕 計画的に継承準備を行って継承したと回答した法人における準備期間は、個々の法人によってもち ろん大きく異なりますが、傾向として『有志型B(平均 4 . 8 年)』>『有志型A(同 3 . 5 年)』>『集 落営農型(同 2 . 9 年)』の順番に準備に取り組んだ期間が長くなる傾向が見られました。 表 2 継承準備の取組期間 図 3 後継者育成の必要年数 (エ)継承準備として重要と考えること及び継承後に苦労したこと〔図 4 及び図 5 参照〕 現経営者が継承準備として重要と指摘しているのは、 「社内での業務経験」、 「役員への登用」、 「特定 部門の権限移譲」でした。しかし、実際に前経営者が継承準備として取り組んでくれた内容とギャッ プが見られました。 また継承後の苦労としては「収量・品質の向上」、「従業員の協力」、「機械施設の更新」、「従業員育 成」及び「役員の協力」などでした。 図 4 継承準備として重要と考えること 図 5 現経営者が継承後に苦労したこと 4 まとめ ~継承に当たって留意すべきポイント~ 後継者を確保するには、若い世代から見て魅力のある経営にしておく必要があります。従って、後継 者(候補者を含む)が就農したら、早めに経営者に必要な能力を身につけさせて一人前の経営者に育て る「人材育成」をスタートさせてください。 また、後継者育成は経営者の行う重要業務のひとつです。もしも、後継者育成がうまく行われないまま 経営移譲を行うと、世代交代後に経営が立ち行かなくなることにもなりかねませんので注意が必要です。 【経営普及課農業革新支援担当 高橋 一裕】 9
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