羽生市 河田 晃明 市長(65歳)

羽生市
県内首長インタビュー
羽生市 河田 晃明 市長(65歳)
では、羽生の伝統工芸である藍染めなどの天
然素材を活かしたオリジナルブランド「卯三
郎」
(羽生市出身の偉人「清水卯三郎」から
命名)を新たに開発して、藍染めを県内外に
PRしています。
また、羽生市では、その肥沃な土地を活か
した米作りも盛んで、米の収穫量は県内一を
「キャラクターを活用した観光PR推進事業」を打ち出し、
全国から注目を集めた羽生市の河田市長
■豊かな自然と歴史が息吹くまち
「四里の道は長かった。その間に青縞の市
の立つ羽生のまちがあった」
この一節で始まる田山花袋の小説『田舎教
師』の舞台となった羽生市は、都心から60
㎞、東と南は加須市、西は行田市、そして北
は利根川を隔てて群馬県に隣接した関東地方
のほぼ中央に位置する豊かな自然に囲まれた
まちです。
日本最大の流域面積の利根川の豊かな水と
肥沃な大地に恵まれた羽生市では、江戸時代
から衣料縫製を中心とした「衣料のまち、藍
染めのまち」として発展してきま
した。大正時代には足袋や作業着
の生産、昭和に入ると学生服の生
産を中心に家内工業から工場制に
移行し、終戦後
は北関東第一の
生産地としての
地位を築き上げ
羽生市の産業発展の根
幹となった「武州正藍
染」
。この貴重な文化資
源を次の世代に引き継
ぐためにも市を挙げて
PRしています。
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ぶぎんレポート No.194 2015 年 12 月号
ました。
この貴重な産
業文化を継承し
ようと、羽生衣
料縫製協同組合
誇り、羽生米の「彩のかがやき」は、埼玉県
の推奨米となっています。さらに、
「全国米・
食味分析鑑定コンクール」では、市内の生産
農家が特別優秀賞
を 受 賞 す る な ど、
おいしい米のまち
としても有名です。
そ の 一 方 で、 農
業就業者の高齢化
や後継者の不足に
よ り、 年 々 耕 作 放
棄地が増加してい
衣料とともに羽生を支えてきた農作物。
なかでも稲作は、豊かな水と肥沃な土地
という恵まれた環境で県内一を誇ります。
る問題も抱えています。この対策として、羽
生市では大手企業と連携し、国の対策である
「農地中間管理事業」を活用し、昨年から羽
生市の耕作放棄地を含む18haの水田を農地
集約し、稲作を開始しました。これは耕作放
棄地の解消だけでなく、農業経営の安定化に
も繋がるとして注目を集めています。
■キャラクターでまちおこし
昨今、各自治体が作成した「ご当地キャラ
クター」が全国的なブームとなっています。
まちおこしの一手法にすぎなかったキャラク
ターが、連日マスメディアなどで取り上げら
れるなど、その人気は年々高まっています。
河田市長は、これら地域に根差したキャラ
クターに着目し、2000年に「キャラクター
を活用した観光PR推進進事業」を立ち上げま
ギネスブックに認定されるほどのキャラ
クターが大集合する「世界キャラクターさ
みっと in 羽生」
。今年も11月21・22日に
開催され、多くの人で賑わいました。
(写真は昨年の「第5回」の様子)
羽生市の人気キャラクター
「ムジナもん」と「いがまんちゃん」
した。2010年、第1回の「ゆる
キャラ®さみっと in 羽生」が開催されて、大
■観光交流人口100万人に向けて
昨年5月に3期目に入った河田市長は、自
成功を収めたことで、
「羽生は、ゆるキャラ®
身のマニフェストの中で「観光交流人口100
の聖地」とまで呼ばれ、全国から注目を集め
万人」を打ち出しています。現在の先行きが
るまでになりました。今年で6回目を迎えま
不透明な経済情勢からは、税収の増加は厳し
すが、2010年の第1回大会では、参加キャ
いため、羽生市が持つ観光資源「はにゅうブ
ラクターは85体、来場者は約5万人でした
ランド」を最大限に活用し、経済基盤の安定
が、2年前の第4回大会では、376体のキャ
を図る必要性を訴えています。
ラクターが集合し、
「マスコット集合数」のギ
羽生市には、前述の「田舎教師」や「藍染
ネス記録にも認定されました。来場者も40万
め」などの伝統的な観光資源以外にも、安定
人を超え、市だけでなく全国的なイベントと
した集客のある「道の駅はにゅう」
、新鮮な
なっています。参加キャラクターも来場者も
野菜が人気の三田ケ谷農林公園「キャッセ羽
回を重ねるごとに増加しており、国内だけで
生」
、全国でも珍しい淡水魚専門の「県営さ
なく海外からも参加するまでになりました。
いたま水族館」
、 大型ショッピングセンター
羽生市のメインキャラクターは、2002年
など多くの観光資源が点在しています。羽生
に市の若手職員が伝説の妖怪「むじな」から
市では、これらを「はにゅうブランド」とし
発案した「ムジナもん」です。このムジナも
て定着化させ、観光交流人口100万人を目指
んに、実際に触れることで、より親しみやす
しています。
い着ぐるみキャラクターにするために募金を
募ったところ、市民の理解と協力が得られ、
■「住みたい、住み続けたい」まちづくり
毎年、東洋経済新報社は、
「安心度 ・ 利便
着ぐるみキャラクターが誕生しました。その
度・快適度・富裕度・居住水準充実度」の5
後、仲間たちも次々と誕生し、市民に親しま
つの観点から、全国各都市の「住みよさラン
れるキャラクターに成長しました。
キング」を公表しています。羽生市のランク
は、全国73位(前年98位)
、埼玉県内では
2位(同3位)という高い評価を得ています。
羽生市の概要
人口(H27年埼玉県町(丁)字別人口調査)
55,886 人
世帯数(同上)
21,845 世帯
平均年齢(同上)
46.5 歳
生産年齢人口比率(同上)
62.3%
面積(H26年全国都道府県市区町村別面積調) 58.64㎢
名目市内総生産(H24年度市町村民経済計算) 2,052 億 4,000 万円
製造品出荷額等(H24年経済センサス)
2,373 億 7,633 万円
事業所数(同上)
2,306 事業所
その一方、高齢化や人口の減少、空き家増
加、雇用創出のための企業誘致など、多くの
自治体と同様の問題を抱えています。社会情
勢が変化を続ける中、
「羽生に住みたい、住
み続けたい」と思えるまちづくりについても
大きな施策が必要とされています。
ぶぎんレポート No.194 2015 年 12 月号