公開特許公報 特開2015

(19)日本国特許庁(JP)
〔実 7 頁〕
公開特許公報(A)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-164400
(P2015−164400A)
(43)公開日 平成27年9月17日(2015.9.17)
(51)Int.Cl.
A23F
FI
5/24
(2006.01)
A23F
テーマコード(参考)
5/24
4B027
審査請求 未請求
(21)出願番号
特願2014-39928(P2014-39928)
(22)出願日
平成26年2月28日(2014.2.28)
請求項の数4 OL (全12頁)
(71)出願人 313000128
サントリー食品インターナショナル株式会
社
東京都中央区京橋三丁目1番1号
(74)代理人 100140109
弁理士
小野 新次郎
(74)代理人 100075270
弁理士
小林 泰
(74)代理人 100101373
弁理士
竹内 茂雄
(74)代理人 100118902
弁理士
(72)発明者 須藤
山本 修
丈博
神奈川県川崎市中原区今井上町57
サン
トリー商品開発センター内
最終頁に続く
(54)【発明の名称】容器詰めコーヒー飲料の製造方法
(57)【 要 約 】
【課題】
ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】
容器詰め飲料の調合液に含まれるコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及
びカーウェオール)の濃度が特定範囲となるように、特定の粒子径に微粉砕された焙煎コ
ーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)と、焙煎コーヒー豆の抽出物とを配合し、この調
合液を加熱殺菌処理すると、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲
料が得られることを見出した。
【選択図】なし
( 2 )
JP
1
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2
【特許請求の範囲】
れている。
【請求項1】
【0003】
焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるメジアン径が50
例えば、コーヒー生豆をスチーム処理してから焙煎する
∼300μmの不溶性コーヒー粉末を準備する工程1、
方法(特許文献1)、コーヒー生豆をタンニン処理して
焙煎コーヒー豆の粉砕物に抽出処理を行って焙煎コーヒ
から焙煎する方法(特許文献2)、ロブスタ種焙煎豆を
ー豆の抽出物を準備する工程2、
クエン酸溶液で処理する方法(特許文献3)、ロブスタ
(A)パルミチン酸カーウェオールと(B)パルミチン
種コーヒー豆抽出液に、スクラロース又はソーマチンを
酸カフェストールの総量[(A)+(B)]が0.4m
添加する方法(特許文献4)等が挙げられる。
g/kg以上6.5mg/kg以下となるように、工程
【先行技術文献】
1の不溶性コーヒー粉末と工程2の焙煎コーヒー豆の抽 10
【特許文献】
出物を配合してコーヒー調合液を調製する工程3、
【0004】
調合液を加熱殺菌処理する工程4、及び
【特許文献1】特開平6−303905号公報
容器に充填する工程5
【特許文献2】特開平4−144642号公報
を含む容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
【特許文献3】特開2004−337061号公報
【請求項2】
【特許文献4】特開2013−208080号公報
工程2において、さらに(A)ジパルミチン酸カーウェ
【発明の概要】
オールと(B)パルミチン酸カフェストールの割合[(
【発明が解決しようとする課題】
A)/(B)]を0.01以上0.50以下に調整する
【0005】
工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
アイスコーヒーは苦味が重視されることから、ロブスタ
【請求項3】
20
種を深く焙煎したコーヒー豆が用いられることもあるが
不溶性コーヒー粉末の固形分と焙煎コーヒー豆の抽出物
、その独特の風味や後味が問題となることがあった。特
の可溶性固形分の総量のうちの50重量%以上がロブス
に、加熱殺菌処理して得られる容器詰めコーヒー飲料で
タ種である、請求項1または2記載の製造方法。
常温以下(好ましくは、冷蔵以下)の温度で飲用するタ
【請求項4】
イプのアイスコーヒーは、加熱臭と相俟ってロブ臭が顕
工程3において、調合液中のカフェイン濃度が10mg
著に知覚され、一部の消費者には受け入れられないもの
/100ml以上60mg/100ml以下となるよう
となっている。
に調製する、請求項1∼3のいずれか一項記載の方法。
【0006】
【発明の詳細な説明】
本発明は、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器
【技術分野】
詰めコーヒー飲料の製造方法を提供することにある。
【0001】
30
【課題を解決するための手段】
本発明は、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器
【0007】
詰めコーヒー飲料に関する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行
【背景技術】
った結果、容器詰め飲料の調合液に含まれるコーヒー特
【0002】
有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオ
コーヒーとは、コーヒー豆(コーヒーノキの種子)を焙
ール)の濃度が特定範囲となるように、特定の粒子径に
煎して挽いた粉末から、湯水で成分を抽出して得られる
微粉砕された焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉
飲料である。抽出原料となるコーヒー豆の種類は、アラ
末)と、焙煎コーヒー豆の抽出物とを配合し、この調合
ビカ種とロブスタ種(カネフォラ種)に大別され、これ
液を加熱殺菌処理すると、ロブスタ種特有の風味と香り
ら2つの種類から製造されたコーヒーは、異なる香味特
を軽減した容器詰めコーヒー飲料が得られることを見出
性を有することが知られている。アラビカコーヒーは、 40
し、本発明を完成するに至った。
まろやかで芳香性が高く、風味や香りの点で高く評価さ
【0008】
れることが多いが、ロブスタコーヒーは、ロブ臭とも呼
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は
ばれる独特の土臭い風味と後味を有し、苦味が強いこと
以下を包含する。
から、アラビカコーヒーよりも低く評価されることが多
(1)焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるメジアン径
い。そのため、ロブスタ種は比較的安価で流通して容易
が50∼300μmの不溶性コーヒー粉末を準備する工
に入手できるコーヒー豆であるが、アラビカ種をメイン
程1、
にしたブレンドに増量剤的に用いられる場合がほとんど
焙煎コーヒー豆の粉砕物に抽出処理を行って焙煎コーヒ
であった。増量剤として使用される場合にも、不快なロ
ー豆の抽出物を準備する工程2、
ブ臭のためにアラビカ種への配合量には制限があり、そ
(A)パルミチン酸カーウェオールと(B)パルミチン
の使用範囲を拡げるために、様々な品質改良法が提案さ 50
酸カフェストールの総量[(A)+(B)]が0.4m
( 3 )
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3
4
g/kg以上6.5mg/kg以下となるように、工程
合物(カフェストール及びカーウェオール)の濃度を特
1の不溶性コーヒー粉末と工程2の焙煎コーヒー豆の抽
定範囲に調整しやすいことから、好ましい態様の一例で
出物を配合してコーヒー調合液を調製する工程3、
ある。
調合液を加熱殺菌処理する工程4、及び
【0012】
容器に充填する工程5
この焙煎コーヒー豆を粉砕処理して、本発明の不溶性コ
を含む容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
ーヒー粉末を得る。粉砕処理は、焙煎後、24時間以内
(2)工程2において、さらに(A)ジパルミチン酸カ
、好ましくは20時間以内、より好ましくは15時間以
ーウェオールと(B)パルミチン酸カフェストールの割
内、特に好ましくは10時間に行うことが好ましい。焙
合[(A)/(B)]を0.01以上0.50以下に調
整する工程を含む、(1)に記載の製造方法。
煎後の放置時間が長いと、油脂成分がコーヒー豆表面に
10
析出しやすくなる。
(3)不溶性コーヒー粉末の固形分と焙煎コーヒー豆の
【0013】
抽出物の可溶性固形分の総量のうちの50重量%以上が
乾式での粉砕処理は、メジアン径で1mm以下に粗粉砕
ロブスタ種である、(1)または(2)記載の製造方法
した後、微粉砕することが好ましい。微粉砕をする前に
。
、予め粗粉砕することにより、一層効率よく短時間に微
(4)工程3において、調合液中のカフェイン濃度が1
粉砕することができ、コーヒーの香り(フレーバー)の
0mg/100ml以上60mg/100ml以下とな
飛散を最小限に抑えることができる。また、粒度分布を
るように調製する、(1)∼(3)のいずれかに記載の
狭くできるという利点もある。粗粉砕は、メジアン径で
方法。
約1mm以下、好ましくは0.5mm以下になるように
【発明の効果】
粉砕するが、その方法は特に制限されない。ロール式ミ
【0009】
20
ル、ボール式ミル、石臼式ミル等、種々の形式の粉砕機
本発明によると、大掛かりな装置や煩雑な工程を必要と
を使用することができる。
せずに、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰
【0014】
めコーヒー飲料が得られる。
焙煎コーヒー豆の微粉砕は、メジアン径で50∼300
【発明を実施するための形態】
μmとなるように粉砕する。メジアン径で300μmを
【0010】
超える粉末は、食感や舌触りなどのテクスチャーに違和
(不溶性コーヒー粉末)
感を与えることがある。より好ましい微粉砕の程度の上
本発明の「不溶性コーヒー粉末」とは、焙煎コーヒー豆
限はメジアン径で250μm以下、さらに好ましくは2
を微粉砕して得られるもの(焙煎コーヒー豆微粉末)を
00μm以下である。また、メジアン径で50μm未満
いう。ここで、「焙煎コーヒー豆」とは、コーヒーの生
となるまで微粉砕処理した場合には、保存安定効果が得
豆に対して焙煎と呼ばれる加熱処理を施したものである 30
られない傾向がある。より好ましい微粉砕の程度の下限
。焙煎によって生豆に含まれている成分が化学変化して
はメジアン径で70μm以上、さらに好ましくは80μ
コーヒーの風味(強い芳香性やフレーバー)が醸し出さ
m以上、特に好ましくは90μm以上である。微粉砕の
れており、また、空隙含有構造体が形成されている。
方法も特に制限されず、ロール式粉砕機、バーハンマー
【0011】
式やピンハンマー式等の衝撃式粉砕機、気流式粉砕機な
本発明の不溶性コーヒー粉末の原料となる焙煎コーヒー
ど、種々の形式の粉砕機を使用することができるが、ロ
豆は、特に限定されない。直火式、熱風式、半熱風式、
ール式粉砕機が好ましく用いられる。
炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式など
【0015】
の方法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、
粒子径は、多数個の測定結果を粒子径毎の存在比率の分
垂直回転ボール型、流動床型、加圧型などの装置を用い
布として表すのが一般的であり、これを粒子径分布とい
、コーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙 40
う。存在比率の基準としては体積基準と個数基準などが
煎度に仕上げればよい。ただし、焙煎度が高いと油脂成
あるが、本明細書では体積基準での存在比率で表わし、
分がコーヒー豆表面に析出しやすくなり、粉砕が困難に
レーザー回折・散乱法に基づいた測定装置にて測定する
なったり、粉砕処理して得られる微粉末がケーキングを
ことができる。測定装置の例としては、マイクロトラッ
起こし易くなったりする。この観点から、アグトロンカ
ク粒度分布測定装置(日機装株式会社製)である。そし
ラーメーターで測定した値(アグトロン値)を指標とし
て、本明細書において焙煎コーヒー豆の微粉砕物の粒子
て、45∼70程度、好ましくは50∼60程度となる
径をメジアン径で表わしているが、メジアン径とは粒子
ように焙煎された焙煎コーヒー豆が好適に用いられる。
径の累積データの50%径であり、粉体をある粒子径か
なお、コーヒー豆の種別についても、限定されるもので
ら2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる
はなく、アラビカ種、ロブスタ種のいずれも使用できる
径のことである。
が、ロブスタ種は本発明のコーヒー特有のジテルペン化 50
【0016】
( 4 )
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このようにして得られる不溶性コーヒー粉末の比表面積
本発明のコーヒー飲料は、コーヒー分として、上記の不
は、0.05∼0.50m
2
/g、好ましくは0.10
溶性コーヒー粉末及び上記のコーヒー抽出液を混合し、
/g程度である。なお、本明細書でいう
必要に応じて乳成分、甘味料、pH調整剤等を添加して
「比表面積」は、BET式多点法で測定される値を意味
コーヒー調合液を得、これを加熱殺菌処理して容器に充
する。
填して製造される。
【0017】
【0021】
(コーヒー抽出液)
本発明のコーヒー飲料は、ロブスタ種特有の風味と香り
本発明の「焙煎コーヒー豆の抽出物」とは、焙煎コーヒ
を軽減した飲料であり、ロブスタ種がコーヒー分の主成
ー豆の抽出液(本明細書中、「コーヒー抽出液」とも表
分であるコーヒー飲料は、本発明の好ましい飲料の一態
記する)をいい、コーヒー抽出液を乾燥させて粉末状に 10
様である。ロブスタ種がコーヒー分の主成分とは、不溶
加工したものも含む。
性コーヒー粉末の固形分とコーヒー抽出液の可溶性固形
【0018】
分の総量のうちの50重量%以上(好ましくは60重量
本発明のコーヒー抽出液の原料となる焙煎コーヒー豆は
%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好まし
、特に限定されない。直火式、熱風式、半熱風式、炭火
くは80重量%、特に好ましくは90重量%以上)がロ
式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方
ブスタ種由来であることを意味する。
法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、垂直
【0022】
回転ボール型、流動床型、加圧型などの装置を用い、コ
本発明における不溶性コーヒー粉末は、コーヒー飲料1
ーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙煎度
00mLあたりの水不溶性固形分が0.01∼1g、好
に仕上げればよい。
ましくは0.1∼0.5gとなるように配合する。ここ
メカニズムは不明であるが、不溶性コーヒー粉末の原料 20
で、水不溶性固形分とは、飲料中の不溶性固形分を濾紙
となる焙煎コーヒー豆と異なる焙煎度のコーヒー豆、特
上に集めて乾燥して得られる固形分(重量)をいう。飲
に不溶性コーヒー粉末の焙煎コーヒー豆よりも焙煎度が
料100mLあたりの水不溶性固形分が0.01g未満
高い、すなわちアグトロン値が小さい焙煎度のコーヒー
であると、ロブ臭を低減するのに十分な効果が得られな
豆をコーヒー抽出液の抽出原料に用いると、本発明の効
いことがあり、飲料100mLあたりの水不溶性固形分
果をより一層顕著に発現できる。アグトロンカラーメー
が1gを超えると、飲用時にザラツキを感じたり、好ま
ターで測定した値(アグトロン値)を指標として、35
しくない加熱臭を強く感じることがある。
∼60程度、好ましくは45∼50程度となるように焙
【0023】
煎された焙煎コーヒー豆は好適な態様の一例である。な
また、コーヒー調合液を調製する際には、調合液中のジ
お、コーヒー豆の種別についても、限定されるものでは
テルペン化合物の濃度が、0.4mg/kg以上6.5
なく、アラビカ種、ロブスタ種のいずれも使用できるが 30
mg/kg以下となるように不溶性コーヒー粉末及びコ
、ロブスタ種は本発明のコーヒー特有のジテルペン化合
ーヒー抽出液を配合することが重要である。好ましい上
物(カフェストール及びカーウェオール)の濃度を特定
限値は5.5mg/kg以下、より好ましくは5.0m
範囲に調整しやすいことから、好ましい態様の一例であ
g/kg以下、さらに好ましくは4.5mg/kg以下
る。コーヒー抽出液は、上記の焙煎コーヒー豆に温水等
、特に好ましくは4.0mg/kg以下の濃度であり、
の水溶性溶媒を用いて定法により抽出することにより得
好ましい下限値は0.5mg/kg以上、好ましくは0
られる。
.7mg/kg以上、より好ましくは1.0mg/kg
【0019】
以上、より好ましくは1.2mg/kg以上、さらに好
(容器詰めコーヒー飲料)
ましくは1.5mg/kg以上の濃度である。ここで、
本明細書でいう「コーヒー飲料」とは、コーヒー分を原
本明細書でいう「ジテルペン化合物」とは、後述する実
料として使用し、加熱殺菌工程を経て製造される飲料製 40
施例に記載の方法で測定されるカーウェオール(kahweo
品のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、1
l)とカフェストール(cafestol)にパルミチン酸がエ
977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する
ステル結合した、(A)パルミチン酸カーウェオール(
公正競争規約」の定義である「コーヒー」「コーヒー飲
略記:KwO-pal)と(B)パルミチン酸カフェストール
料」「コーヒー入り清涼飲料」が主に挙げられる。また
(略記:CfO-pal)の総量[(A)+(B)]をいう。
、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が
【0024】
3.0質量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正
コーヒー調合液中のジテルペン化合物の濃度調整は、不
競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われ
溶性コーヒー粉末及びコーヒー抽出液中のジテルペン化
るが、これは、本発明におけるコーヒー飲料に含まれる
合物濃度をそれぞれ測定し、計算により特定割合を配合
ものとする。
することによって行うことができる。また、コーヒー抽
∼0.30m
【0020】
2
50
出液(粉末状の場合はこれを水に溶解したもの)を吸着
( 5 )
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剤処理して、ジテルペン化合物を低減することもできる
スタ種特有の風味と香りの強さを指標に評価する。
。吸着剤としては、ペーパーフィルター、ネル(綿)フ
【実施例】
ィルター、珪藻土、ポリプロピレン製不織布を用いたフ
【0029】
ィルターカートリッジ等の多孔質ろ材が例示される。ま
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明する
た、三相遠心分離を用いて、油分、抽出液、粕の三相に
が、本発明はこれに限定されるものではない。
分け、油分を適量除去することによりジテルペン化合物
[実施例1]
を低減してもよい。
(1)不溶性コーヒー粉末の調製
【0025】
代表的なロブスタ種の豆としてインドネシア産ロブスタ
本発明のコーヒー飲料では、さらに、(A)パルミチン
を用いた。このコーヒー豆を定法にてアグトロン値が5
酸カーウェオールと(B)パルミチン酸カフェストール 10
0∼60(55程度)になるまで焙煎して、焙煎コーヒ
の割合[(A)/(B)]が、0.50以下、好ましく
ー豆を得た。この焙煎コーヒー豆をロール式粉砕機にて
は0.40以下、より好ましくは0.30以下となるよ
粒子径がメジアン径で105μm程度となるまで微粉砕
うに調整するのがよい。(A)/(B)の下限は、0.
して、焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)を
01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0
得た。なお、本実施例中、粒子径の測定には、マイクロ
.05以上程度である。不溶性コーヒー粉末を配合し、
トラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、型式:
上記範囲となるように調整することで、ロブ臭をより一
MT3300EXII)を用いた。測定は、粉体の試料を
層低減させることができる。
エアーで分散させながら、レーザー光を試料に照射し、
【0026】
回折散乱パターンから粒子径分布の測定(乾式レーザー
コーヒー飲料では、その風味上の観点から、カフェイン
回折散乱法)を行い、粒子径の累積データの50%径を
の存在が重要視されている。本発明の飲料にも、カフェ 20
メジアン径とした。
インを含有させることが好ましいが、カフェイン濃度が
【0030】
高いと本発明のロブ臭の低減効果を損ない、かえってロ
また、この不溶性コーヒー粉末のジテルペン化合物量を
ブ臭が顕著に知覚されることがある。調合液中のカフェ
測定した(表1)。なお、本明細書中、ジテルペン化合
イン濃度は、飲料100mLに対して60mg以下、好
物量は、不溶性コーヒー粉末を100mg/20mLと
ましくは55mg以下、より好ましくは50mg以下、
なるように水で希釈した希釈試料について、(A)パル
さらに好ましくは40mg以下となるように調整するの
ミチン酸カーウェオール(KwO-pal)及び(B)パルミ
がよい。カフェイン量の下限は、飲料100mLに対し
チン酸カフェストール(CfO-pal)の含量を、LC−M
て10mg以上、好ましくは15mg以上である。
S/MSを使用し、MRMモードにて測定した値を表わ
【0027】
す。以下に測定方法の詳細を示す。
ジテルペン化合物の濃度及び割合、並びに好ましくはカ 30
【0031】
フェイン濃度が特定範囲に調整されたコーヒー調合液を
(分析試料の調製)
加熱殺菌処理して、コーヒー飲料を製造する。加熱殺菌
まず、希釈試料2gをガラス製遠沈管にとり、アセトニ
処理の方法は特に限定されず、例えば、各地の法規(日
トリル4mlを加えて、ボルテックスミキサーで1分間
本にあっては食品衛生法)に従って行えばよい。具体的
攪拌した。これを遠心機で遠心(1680×g、30分
には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理
、20℃)し、上清を10mlメスフラスコに移した。
された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調
遠沈管にエタノール2mlを加え、沈殿物をピペット先
合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行
端で潰して拡散させた。これを超音波洗浄機に15分か
うレトルト殺菌法が挙げられる。UHT殺菌法の場合、
けて不溶物をさらに拡散させ、ボルテックスミキサーで
通常120∼150℃で1∼120秒間程度、好ましく
1分間攪拌し、遠心機で遠心(1680×g、30分、
は130∼145℃で30∼120秒間程度の条件であ 40
20℃)して、上清を10mlメスフラスコに移した。
り、レトルト殺菌法の場合、通常110∼130℃で1
同様のエタノールによる抽出作業を、さらに1回行った
0∼30分程度、好ましくは120∼125℃で10∼
。抽出液を回収した10mlメスフラスコをエタノール
20分間程度の条件である。
でメスアップし、よく混ぜた液をPTFE製メンブレン
【0028】
フィルター(東洋濾紙社製、孔径0.2μm、直径25
本発明のコーヒー飲料が充填される容器としては、殺菌
mm)で濾過し、分析試料とした。LC−MS/MSの
方法や保存方法に合わせて適宜選択すればよく、アルミ
測定方法は以下のとおり。
缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶、紙容器など
【0032】
、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。
(LC−MS/MS分析条件)
コーヒー飲料の評価は、官能評価によって行うことがで
〔使用機種〕
きる。例えば、加熱殺菌処理後のコーヒー飲料を、ロブ 50
・MS:4000QTRAP(AB
Sciex社製)
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10
・LC:1290Infinity(Agilent
ー粉末のジテルペン化合物量を上記と同様の方法により
Technologies社製)
測定した(表1)。
〔LC条件〕
【0034】
・移動相:(A)0.1%ギ酸水溶液、(B)エタノー
【表1】
ル
・流速:0.4ml/分
・グラジエント条件:0−1分(80%B)、1−5分
(80−100%B)、5−7.5分(100%B)、
初期移動相による平衡化2.5分
【0035】
・カラム:Agilent
(3)コーヒー調合液の調製
社製
Zorbax
HD
C18
Technologies 10
Eclipse
1.8μm
Plus
RR
上記(1)で調製した不溶性コーヒー粉末(焙煎コーヒ
2.1×150mm
ー豆微粉末)と、上記(2)で調製した焙煎コーヒー豆
・カラム温度:45℃
の抽出物とを種々の割合(表2)で混合して粉体混合物
・導入量:1μl
を得た。
〔MS条件〕
このコーヒー分の粉体混合物1.5重量%、砂糖9重量
・イオン源:Heated
Nebulizer
%、粉乳3重量%、水86.8重量%を混合し、さらに
・CUR:20
炭酸水素ナトリウムを用いてpHを6.5調整して、水
・CAD:Medium
不溶性固形分及びジテルペン化合物量の異なるコーヒー
・NC:5
調合液(カフェイン含量はいずれも50∼55mg/1
・TEM:400
20
00mL)を得た。この調合液を食品衛生法に従った殺
・GS1:40
菌条件で加熱殺菌後、熱可塑性樹脂の容器に150gず
・ihe:ON
つ充填し、容器蓋をヒートシールして密封して容器詰め
・切り替えバルブ条件:カラムを通過した移動相のうち
コーヒー飲料を製造した。
、4.5∼5.8分のみをMSに導入した
【0036】
〔MRM条件〕
【表2】
・パルミチン酸カーウェオール:535.41→279
.17(Q1→Q3)
・パルミチン酸カフェストール:537.43→281
.19(Q1→Q3)
・DP:95
30
【0037】
・EP:10
また、得られたコーヒー飲料中の水不溶性固形分量を以
・CE:21
下の方法で測定した。
・CXP:12
【0038】
本実施例においては、上記条件でパルミチン酸カーウェ
(水不溶性固形分量の測定)
オール標準品(MP
25℃に恒温したサンプル(コーヒー飲料)をよく攪拌
Biomedicals社製)お
よびパルミチン酸カフェストール標準品(LKT
La
し均一な状態にし、10gを遠沈管に定量し、卓上本架
bs社製)を分析して検量線をあらかじめ作成し、試料
遠心機(KOKVSAN H-28F)を用いて、処理温度20℃、
中のパルミチン酸カーウェオールおよびパルミチン酸カ
回転数3000rpmで10分間遠心した。保留粒子径
フェストールを定量した。上記条件におけるパルミチン
が5μmの濾紙の乾燥質量を測定した後、遠沈管内の遠
酸カーウェオールの溶出時間は5.1分、パルミチン酸 40
心後の上清固形分を減圧濾過により集めた。次に遠沈管
カフェストールの溶出時間は5.2分であった。
中にイオン交換水を加えて攪拌し、再び同条件で10分
【0033】
間遠心した。遠沈管内の遠心後の上清固形分を該濾紙上
(2)焙煎コーヒー豆の抽出物の調製
に減圧濾過により集めた。残った固形分も該濾紙上に集
代表的なロブスタ種の豆としてインドネシア産ロブスタ
めて水洗し、減圧濾過した。水洗に用いたイオン交換水
を用いた。このコーヒー豆を定法にてアグトロン値が4
は全量で100mLとした。該濾紙を乾燥後に質量を測
5∼49になるまで焙煎して、焙煎コーヒー豆を得た。
定し、以下の式により水不溶性固形分量(質量%)を算
この焙煎コーヒー豆を原料とし、湯による抽出処理を行
出した。
ってコーヒー抽出液を得、これを噴霧乾燥処理して粒子
[水不溶性固形分量(質量%)]=[(乾燥後の濾紙質
径がメジアン径で270μm程度の可溶性コーヒー粉末
量(g))−(濾紙の初期乾燥質量(g))]/10(
(焙煎コーヒー豆の抽出物)を得た。この可溶性コーヒ 50
g)×100
( 7 )
JP
11
2015-164400
A
2015.9.17
12
【0039】
で混合して粉体混合物を得、このコーヒー分の粉体混合
(4)官能評価
物1.5重量%、砂糖9重量%、粉乳3重量%、水86
6種類の容器詰めコーヒー飲料を1ヶ月間常温で保存し
.8重量%を混合し、さらに炭酸水素ナトリウムを用い
た後、冷蔵温度(5∼10℃)に冷却したものを官能評
てpHを6.5調整して、水不溶性固形分及びジテルペ
価した。官能評価は5名の専門パネラーにより、ロブ臭
ン化合物量の異なるコーヒー調合液(カフェイン含量は
について、++:とても強い、+:強い、±:普通、−
いずれも50∼55mg/100mL)を得た。この調
:弱い、――:とても弱いとし、最も多い評価で表わし
合液を食品衛生法に従った殺菌条件で加熱殺菌後、熱可
た。
塑性樹脂の容器に150gずつ充填し、容器蓋をヒート
【0040】
シールして密封して容器詰めコーヒー飲料を製造した。
表3に、各種成分の測定結果及び官能評価結果を示す。 10
なお、可溶性コーヒー粉末2の(A)パルミチン酸カー
表から明らかなように、特定の粒子径に微粉砕された焙
ウェオール(KwO-pal)及び(B)パルミチン酸カフェ
煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)を配合し、
ストール(CfO-pal)の含量は、(A)=84.62 mg/kg、(B)=
コーヒー調合液に含まれるコーヒー特有のジテルペン化
54.02 mg/kgであった。
合物(カフェストール及びカーウェオール;A+B)の濃
【0043】
度を0.4mg/kg以上6.5mg/kg以下に調整
【表4】
され、加熱殺菌処理されたコーヒー飲料は、ロブスタ種
特有の風味と香り(ロブ臭)を軽減した容器詰めコーヒ
ー飲料となった。特に、ジテルペン化合物濃度が1.5
mg/kg以上4.5mg/kg以下に調整され、かつ
その割合(A/B)が0.05以上0.50以下に調整さ
20
れたコーヒー飲料は、ロブ臭を大きく軽減することがで
【0044】
きた。
得られた5種類の容器詰めコーヒー飲料について、実施
【0041】
例1と同様に分析・評価した。
【表3】
結果を表5に示す。特定の粒子径に微粉砕された焙煎コ
ーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)を配合し、コー
ヒー調合液に含まれるコーヒー特有のジテルペン化合物
(カフェストール及びカーウェオール;A+B)の濃度を
0.4mg/kg以上6.5mg/kg以下に調整され
、加熱殺菌処理されたコーヒー飲料は、ロブスタ種特有
30
の風味と香り(ロブ臭)を軽減した容器詰めコーヒー飲
料となった。特に、ジテルペン化合物濃度が1.5mg
/kg以上5.0mg/kg以下に調整され、かつその
割合(A/B)が0.05以上0.40以下に調整された
コーヒー飲料は、ロブ臭を大きく軽減することができた
。
【0045】
【0042】
【表5】
[実施例2]
コーヒー原料として、実施例1(1)で調製した不溶性
コーヒー粉末(焙煎コーヒー豆微粉末)と、実施例1( 40
2)で調製した焙煎コーヒー豆の抽出物(以下、「可溶
性コーヒー粉末1」と表記する)と、市販の可溶性コー
ヒー粉末(インスタントコーヒー;ロブスタ種とアラビ
カ種の混合品の抽出物)(以下、「可溶性コーヒー粉末
2」と表記する)とを用いた。これらを表4に示す割合
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Fターム(参考) 4B027 FB24
FC01
FC02
FE08
FK02
FK03
FQ04
FQ16
FQ19
FQ20