松阪市市営住宅のあり方市民討議会報告書

松阪市市営住宅あり方市民討議会報告書
平成 26 年 12 月
一般社団法人
構想日本
1
目次
1.松阪市の概況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(1)
松阪市における公共施設の現状
(2)
市営住宅のあり方市民討議会開催の経緯
2.市民討議会開催までの取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(1)市営住宅施設シートの作成
(2)現地調査及びインタビュー調査
(3)市営住宅の現状と課題の整理
(4)市民討議会開催に向けた周知
(5)市民討議会事前研修会の開催
3.市民討議会の開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(1)
開催概要
(2)
市民討議会の進め方
(3)
市民討議会の開催
ア
松阪市からの市営住宅の課題についての報告
イ
ナビゲーターからの指摘事項等
ウ
市民討議人(市民ディベーター)からの提案
エ
コーディネーターのまとめ
4.構想日本からの提案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(1)
「公共施設白書」について
(2)
「合意形成」の第一歩としての「市民との協議の場」の設定
(3)
市営住宅見直しの視点
5.おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
1.
(1)
松阪市の概況
松阪市における公共施設の現状
松阪市は平成 17 年 1 月に 1 市4町で合併し、人口約 17 万人、市域面積が約 620 平方kmと
拡大しましたが、中心市街地への人口集中と山間地域の過疎化が進むとともに、少子高齢化の
進展により人口構造が変化し、将来的には人口の減少も予測されています。
合併前の旧市町の時代には、各自治体が、それぞれ独自に庁舎をはじめ、小中学校の校舎・
体育館、文化・スポーツ施設、福祉・保健施設、生涯学習・コミュニティ施設などを整備し、
住民の福祉向上に寄与してきました。しかし、合併後の松阪市になっても旧自治体時代に整備
された公共・公用施設はそのまま維持され、施設総数は 630 施設に及び、施設種類別に見ると、
消防防災施設 107(17%)、集会施設 91(14%)、公営住宅 57(9%)、小中学校 52(8%)など
となっています。
また、総床面面積は約 580 千㎡で、施設種別ごとでは、小中学校 247 千㎡(43%)、住宅 99
千㎡(17%)、文化施設 27 千㎡(5%)、庁舎 25 千㎡(4%)などとなっています。
1
建築年次別では、旧耐震基準の 1981 年以前の建物の床面積は約 280 千㎡(48%)、1981 年以
降の建物の床面積は約 300 千㎡(52%)となっています。また、建築後 30 年以上経過してい
る建物の床面積は約 360 千㎡(62%)となっており、今後、老朽化が進み、維持管理費の負担
の増大、さらには改修・改築が必要となることは避けて通れない状況となっています。
一方、市財政の状況を見ると、市税収入が横ばいの中で、地方交付税の増額と臨時財政対策
債の発行により合併時の一般財源総額をかろうじて維持していますが、福祉関係経費の伸びは
著しく、職員数の適正化などで人件費を圧縮するとともに、公共施設を適正に維持していくた
めの改修費用を抑制して収支の均衡を図っている状況です。
(2)
市営住宅のあり方市民討議会開催の経緯
このように、松阪市が保有する公共施設は約 630 施設あり、その多くの施設は老朽化が進み、
現存のすべての施設をこのまま維持し続けることは財政的にも困難な状況となっています。ま
た、少子高齢化の進展などに伴うニーズの多様化や人口動態の変化により公共施設の配置や管
理運営のあり方などの見直しが必要になっています。
このため、松阪市では効率的かつ効果的な施設経営をめざして、公共施設の最適化に取り組
んでいます。
この一環として、市営住宅が管理戸数 1,700 戸あり、公共施設の約 17%(延床面積)を占め、
老朽化が顕著となり、空き家も多く、今ある施設をそのまま更新した場合の費用が約 150 億円
と試算される一方で、市内の民間住宅の空き家が約 5,000 戸あると推計される状況を客観的に
整理し、今後の市営住宅のあり方を、市民と一緒に考える機会とするため「松阪市市営住宅の
あり方市民討議会」を開催することにしました。
2
2.開催までの取り組み
(1)
市営住宅施設シートの作成
○
別添資料1
期間 平成 26 年 5 月 7 日~26 日
松阪市が作成した施設カルテを深化させた施設シートを作成。
(2)
現地調査及びインタビュー調査
○
参加者
○
期 間
ナビゲーター2 人
・7 月 8 日
清生町団地、粥田団地、城南団地、川井町団地、船江団地、こだま団地、
丹生寺町団地、笹川町改良住宅、宝塚団地、小黒田町団地
・7 月 14 日
堂山住宅、飯高若者定住住宅、農林業就業者住宅、旧営林署住宅、森住宅、
宮前東出住宅、公営第 2 宮前団地、下滝野住宅
・7 月 15 日
(10 箇所)
(8箇所)
京町改良住宅、若葉町団地、若葉町一般住宅、若葉町改良住宅、宮町団地、
東町改良住宅、幸生改良住宅、東町団地、上川団地、高田団地、中万町団
地、南効団地
(3)
○
(12 箇所)
市営住宅の現状と課題の整理
期
別添資料2
間 7月 17 日~8 月 31 日
上記の現地調査、関係者からのインタビュー調査、松阪市市営住宅担当者からの聞き取り調
査を基に別添資料2の「松阪市における市営住宅の現状と課題」のように整理しました。
【松阪市の市営住宅の現状と課題の概要】
➀
老朽化への対応
・ 建設から 40 年が経過する市営住宅が多く、木造・簡易耐火構造の住宅は法定耐用年数を超
過している住宅が多い。
・ 一方、民間の空き家で良好な住宅が約 5,000 戸あり、住宅困窮者に対する住宅の確保には
民間のストックの活用ができる状態にあります。
・ 入居者の高齢化が進み、入居世帯の半数ほどが病院や施設に入所などし、家具等の置き場
になっている団地も見受けられます。
・ 簡易耐火 2 階建て住宅では、階段が急で、高齢者は 1 階で生活し、2 階は物置化している
状態も見られます。
・ 以上のことから、各団地の特性を踏まえ、空き家住宅への住み替えを促進しつつ、空いた
住宅の用途廃止等を検討する時期にきています。
②
効率的な運営
・
空き家戸数が 254 戸あり、そのうち、政策空き家以外の空き家が 202 戸(12.4%)存在し
ています。
・
過去 5 か年の市営住宅の募集に対する応募倍率は 0.78 倍~3.08 倍と、特定の住宅に応募
者が集中する一方で、郊外に立地する住宅では募集しても応募者のない状態にあります。
・
老朽化住宅からの移転や同一団地内の住み替えを促進し、効率的な運営を図っていく必要
があります。
3
③
設備の対策
・ 一部の住宅を除き、浴室スペースはあるものの、浴槽・風呂釜は入居者の負担で設置し、移
転時には現状することになっています。また、浴室のない住宅も存在しています。
・ 一部の住宅では汲み取り式トイレの状況にあり、浄化槽等の設置には相当の費用が必要とな
る一方、今後 10 年程度で公共下水道への接続が見込まれる状況です。また、水洗化されて
いるトイレでもその多くが和式便座となっていて、高齢の入居者が多いなかで改善が求めら
れています。
・ 今後とも維持していく市営住宅については浴槽の設置やトイレ便座の洋式化について、使用
料のあり方を含めて検討する必要があります。
・
汲み取り式トイレの住宅については、水洗化への改修費用と建物の老朽度の見合いの中で
費用対効果を検証し、用途廃止を含めて検討する必要があります。
・
一部の団地では駐車スペースがなく、路上駐車などの問題が生じています。また、駐車ス
ペースのある住宅でも、一部の住宅を除いて駐車場使用料が無料となっており、公平性の観
点から有料化を検討する必要があります。
④
地域コミュニティの形成
・
世帯の高齢化が進み、全世帯の約 3 割が 65 歳以上の単身高齢者となっており、孤独死等
の状況が発生しています。
・
外国籍入居者が増加しており、文化・慣習の違いやごみの出し方や屋外での生活騒音など
のトラブルが生じている場合があります。
・
住宅部門だけでの対策でなく、福祉や多文化共生などの取り組みとも連携して対応してい
く必要があります。
⑤
家賃滞納対策
・ 平成 25 年度の現年度住宅使用料の徴収率は 91.1%で、滞納額が約 15 百万円。滞納者数が
163 人で、60 人が 12 ヶ月分を滞納しています。
・
過年度分の収納率が 6%程度であり、滞納額も 9 千万円を超えている状況から、債権管理
の取り組みの強化が必要となっています。
(4)市営住宅市民討議会開催に向けた周知
○
期
間
9 月 5 日~9 月 30 日
JI ニュース、JI メールニュース、各自治体へのメール・FAX での周知、
地方行政への掲載など
(5)
市民討議会事前研修の開催
○
期
日 10 月 4 日
○
参加者 大阪大学大学院教授
構想日本政策アナリスト
赤井
伸郎
川嶋
幸夫
市民討議人(市民ディベーター)
10 人
行政担当者
○
内
容
➀
松阪市ファシリティマネジメントの取り組み(松阪市)
4
②
市営住宅の現状(松阪市)
③
地方自治体の財政の現状と公共の役割(赤井教授)
④
松阪市の公共施設最適化の取り組み
松阪市の財政の状況
市営住宅の現状と課題(資料2参照)
市民と進める公共施設の最適化
⑤
市民討議会の進め方(松阪市)
⑥
現地調査
京町改良住宅、若葉団地、若葉町一般住宅、若葉町改良住宅、宮町団地、
東町改良住宅、東町団地、幸生改良住宅、清生町団地、高田団地、上川団地、
宝塚団地、粥田団地、城南団地、川井町団地、こだま団地
(16 箇所)
【事前研修会での市民討議人(市民ディベーター)からの意見等】
市民討議人からは、
「長年、松阪市に住んでいるが、市営住宅について初めて説明を受け、実態を知った。も
っと認識しなければいけない」
「空き家が多いことが分かった。もっと有効に活用する工夫が必要」
「維持管理に多くの費用がかかっていることがわかった」
「家賃を払っていない人がかなりいる」
「民間の住宅がたくさん余っていることを初めて知った。こういう情報を市が積極的に提
供していくことも必要ではないか。いずれにして、市からの情報提供が少なく、実態が分
からなかった」
―などの指摘があった。このほか、以下のような質疑が行われた。
・自主財源の確保とあるが、家賃の改定をすることが前提になっていないのか。
収納対策を十分行っているのか。家賃改定の前に収納対策が必要ではないか
・空き家対策では、遺族の遺品整理に 10 万円程度必要。行政の支援が必要ではないか
・入居者の年収の上限はどの程度か。障害者も母子世帯も同じ上限か
・滞納者で支払い能力のある人への対応は十分か
・風呂は自己装備とあるが、構造上設置できるのか。自分で風呂場を増築しているが
・市営住宅の敷地に自分で増築している世帯があるが、退去の際に現状復帰するのか
・障害者の1、2級は入居できるが、軽度の人は入居できないのか
・松阪市の活性化の手段として市営住宅を活用できないか。
・高齢の入居者は日常生活の利便性を求めている。集約化には利便性の確保が必要
・今住んでいる人の考えを聴く必要があるのでは。今回の討議会だけで決めるのは拙速。
また、現地調査では、
「かなり古い住宅が多く、汲み取りトイレの住宅の改善が必要」
「2階建て住宅の階段が急で、高齢者が住むにはきつい」
「敷地が広く、2階のベランダも広くて使いやすい」
「マンション並みに広く 24 時間給湯があり、快適な環境の割には家賃が安い」
「松阪駅に近いのに家賃が安い」
―などの意見がありました。
5
3.市民討議会の開催
(1)
開催概要
○
日 時
平成 26 年 10 月 18 日(土)13 時 30 分~16 時 30 分
○
会 場
松阪市産業振興センター 3 階研修ホール
○
参加者
コーディネーター
:
松阪市長
山中
光茂
ナビゲーター
:
大阪大学大学院
教授
赤井
伸郎
特任教授
谷口
元
名古屋大学
構想日本
政策アナリスト
川嶋
幸夫
市民討議人(市民ディベーター)
説明者
(2)
:
無作為抽出等による市民 10 名
:
行政担当者
市民討議会の進め方
市民討議会では、最初に松阪市の市営住宅の課題について住宅課の担当者から説明があり、
これを受けてコーディネーターが論点を示し、ナビゲーターと市民討議人(市民ディベーター)
がそれぞれの立場から議論を進めました。
論点としては以下の項目が挙げられ、論点に沿って、まずナビゲーターから課題提起の議論
があり、これを受けて市民討議人(市民ディベーター)が、それぞれの立場から具体的な意見
を述べています。
➀
老朽化に伴う市営住宅のあり方
②
効率的な市営住宅の管理運営
③
市営住宅使用料のあり方と収納対策
最後に、市民討議人(市民ディベーター)から、以下の区分で提案シートの提出と、これに
基づく意見表明が行われました。
➀
施設の総量について
(一般市営住宅=中高層、一般市営住宅=簡易耐火 2 階建て、一般市営住宅=簡易耐火平
屋・木造建て、小集落改良住宅、農林業・若者定住住宅、その他戸建て住宅ごとに)
②
市営住宅の管理運営方法について
(管理運営方法、空きや募集)
③
住宅使用料について
(使用料の設定、収納対策)
6
(3)
市民討議会の開催
ア.
松阪市からの市営住宅の課題についての報告
【松阪市が捉える市営住宅の課題】
1.老朽化住宅への対応
建設から 40 年経過の住宅が多く、特に、木造、簡易耐火構造の住宅は法定耐用年数を
超過。今ある市営住宅をそのまま建替えると約 150 億円が必要。一方、市内には民間の
空き家が約 1 万戸あり、このうち良好な状態のものが約 5 千戸存在している。
2.市営住宅の空き家募集
市営住宅の空き家が約 250 戸、このうち政策空き家以外は約 200 戸。募集しても特定
の住宅に応募が集中し、郊外の住宅は募集しても応募のない状況が続いている。
3.設備の老朽化
一部の市営住宅を除き、浴槽・風炉釜は入居者が負担して設置。一部の団地には駐車ス
ペースもなく、路上に駐車されている状況。駐車スペースのある住宅でも取り扱いが団地
によって異なる。
4.入居者の高齢化
市営住宅入居者のうち、全世帯の3割が 65 歳以上の単身高齢者。入居者の世代や家族
構成への配慮が必要。
5.家賃の滞納
25 年度の現年度分の徴収率は約 91%、未納額は 15 百万円、滞納者 163 人のうち 60
人が 12 ヶ月未払い。
イ.
ナビゲーターからの指摘事項等
➀老朽化に伴う市営住宅のあり方、②効率的な市営住宅の管理運営、③市営住宅使用料の
あり方と収納対策に論点を整理し、ナビゲーターから下記のような指摘がありました。
➀
老朽化等による市営住宅の今後のあり方について
松阪市の地方債残高が 1,000 億円を超えるなかで、新たな地方債を発行してまで市営住宅を

建て替える状況にはないこと
行政の役割として住宅困窮者に住宅を提供していかなければならないが、コストは可能な限
り安くする必要がある。そのためには民間の参入を進め、入居者に一定の補助金を支出するよ
うな方法を導入して直接供給する必要性はないこと
一般公営住宅(中層 4 階建て)は耐用年数 70 年に対して半分程度経過しているものの、引

き続き使用することは可能だが、屋上・外壁等の劣化が激しいので、計画的な修繕が必要なこ
と

その他の住宅は、既に耐用年数(30~45 年)を経過している住宅が大半を占め、今後4~
5年経過するとほとんどの住宅が耐用年数を超過するほど老朽化している。設備についても、
浴室のスペースが設けられていない住宅があるとともに、汲み取りトイレの住宅も複数あり、
さらに、水洗化されているトイレでも洋式化されていない住宅があるなど居住環境の改善が必
要な住宅があること

老朽化の状況から、政策空き家対策を進めている住宅もあるが、空き家募集を行なっても、
7
市街地から離れている市営住宅への応募がない状況では、市営住宅の必要性を点検する必要が
あること
簡易 2 階建て住宅では 2 階部分への階段が急で、高齢者は 1 階部分で生活を送っており、2

階部分は物置となっている実態があること、高齢の入居者が多く、入居者の半数程度が病院や
施設に入院・入所し、居住はしていないが家具等がそのまま置かれている団地もあることが現
地調査で判明。他の住宅への転居を促すなどの取り組みが必要なこと。その場合、入居者の中
でコミュニティが形成されており、移転の場合は、一定のまとまりの中での対応が必要なこと

小集落改良住宅では、建設経緯から入居者が限定され、その結果、空室が多くなっているこ
とから入居基準の見直しが必要なこと

比較的敷地が広い住宅では入居者が独自に増築し、持ち家のように使用している実態から入
居者に譲渡することも視野に入れる必要があること
松阪市内には空き家が 1 万戸あり、このうち、すぐにでも使用できる賃貸・売却可能な住

宅が 5,000 戸もあることから、老朽化している市営住宅は建て替えるのでなく、家賃補助等の
仕組みを作り、民間住宅の活用を図ること

農林業・若者定住住宅は、飯高・飯南地域の定住対策として機能している一方、入居者が固
定化していることから、入居期間を設けるか、現在の入居者への譲渡を検討すべきこと

戸建て住宅については、長年居住している実態から、基本的に入居者への譲渡を協議する必
要があること
PFI・PPP の手法を活用して住宅等を整備し、民間が低層部分を分譲し、高層階を市営住宅

にして整備することも可能であること
―などの意見がありました。
②

市営住宅の効率的な管理運営
市営住宅であっても、管理運営費の効率化が必要。現状、管理運営費は人件費を含めて直
接経費で 2.6 億円、減価償却費相当分を含めると 4.4 億円かかっている。このうち住宅使用
料は 1.6 億円で、一般財源は直接経費で約5千万円、減価償却費相当分相当分を含めると 2.3
億円となっていること
管理運営に職員を 10 人配置し、一部の業務を除き直営で実施しているが、三重県や周辺の

自治体では指定管理者制度を導入し効率化を図っている実態がある。他の自治体と比較し、
松阪市の市営住宅管理戸数の規模、職員配置の状況などから指定管理者制度を導入すること
で相当の効率化ができる可能性があるので検討が必要なこと

指定管理者を導入することで、住宅の修繕などを住宅課職員が介さずに対応できること、
職員の役割を住宅の管理業務から収納対策などに重点化できること
一方、指定管理者制度では効果が限定的なことから、PFI や PPP の手法を活用するほうが

効果が大であること
―などの意見がありました。
③


市営住宅の使用料のあり方、収納対策
小集落改良住宅などは建設の経緯があったとしても低額すぎること
城南団地や若葉町団地は建物も新しく、部屋も広く、浴槽も完備され、24 時間給湯が可能
となっており、現行の家賃を見直す必要があること
8

駐車場使用料について、車を持っている人と持っていない人との負担の公平の観点から一
定の使用料を徴収すべきこと、路上駐車している団地があるので、駐車場を明確に位置付け
ること

住宅使用料の滞納が増加していることから、公平性の観点から臨戸訪問して対応する必要
があること

市全体の債権管理の中で、収納体制を整備し、一元的に対応すること
―などの意見がありました。
ウ.市民討議人(市民ディベーター)からの提案
【討議会での意見等】
(入居者について)

市営住宅に単身の高齢者が多くなっているなかで一般住宅に移ることは厳しい。若い居住
者が高齢者をサポートする仕組みが必要

老人、障害を持った方などいろいろな人が住めるようにしてもらいたい

独居老人、高齢者2人世帯に対し、見守り活動や生活環境の改善、財産の有効活用など含
めた対策を、住宅課だけでなく、市役所の各部門の連携で進めてもらいたい

福祉に依存せざるを得ない人に住宅を提供するだけでなく、自立性、自主性を持ちながら
生活していけるような仕組みを、住宅部門だけでなくオール松阪市の対応が必要
(老朽化とその対応について)

上川団地は老朽化し、トイレもくみ取り式で、階段も急で、政策的に入居募集を実施して
いない。入居者と話すなかで、住み替えるなら気心の知れた皆なで移れるような場所があれ
ば喜んでもらえる

土地も建物も譲渡する方法が良い。個人の持ち物なら病院に入院して物置化していても問
題はない

どの住宅でも一定の時期には建替えが発生する。入居時に入居期間などを明記する必要が
あるのでは

耐用年数がきているから譲渡して、あとは自分で対応してくださいというのは理解できな
い。戸建ての建物は高層化して有効活用し、一部を民間に譲渡する方法もあるのでは

無償譲渡も一つの方策だが、既得権益化していることになり、市民感覚で納得できない。
小集落改良住宅はもっと効率的な付加価値のある使い方を考えるべき。市民に説明責任が果
たせるように

老朽化しているので撤去という話があるが、民間の空き家利用もいいことだがグループか
ら離れたくないとの意見もある。建て替えるには費用がかかるから無償譲渡が最適では

老朽化するなかで施設を集約化する手法がある。その場合転居推進政策と民間の建物の活
用策を設ける必要がある。
(住宅設備について)

入居者が浴槽を整備し、退去の時に撤去するがムダのように考える

市営住宅をリフォームしたり、風呂を設置すると退去の時には現状復帰。この方式を見直
しできないか
(空き家募集について)

空き家対策について募集期間を設定せず、随時申込を受け付けできるように改善を。また、
9
市外から松阪市に移り住む人も対象にできないか。単身でも入居できるように緩和できない
か
(住宅使用料関係)

高田団地は駐車スペースを設けている、団地の自治会で区画割りを行い、割り振っている。
車庫証明が出されていない。駐車場代はない方がよいが、通念から考えれば駐車場代金は不
平等をなくす観点から取ったほうがよい。できれば安く

家賃の納付方法について現金だけでなく、契約時に口座振替での納入できるように誘導を

支払い能力がありながら家賃を未納している人に対しては臨戸訪問を行い、制度の趣旨を
説明して納付交渉を
(その他)

今日の討議会はいいが、市営住宅に入居している人の意見を聴くべきではないか

農林業・若者定住住宅は若者の定住を狙ったが、45歳~50歳の入居者が多くなってい
る
【提案シートでの意見等】
➀
全体的な事項

現在の市営住宅を、財政難という理由だけでなくすことのないように

1戸建てから 10 階建てにして維持管理費用を少なくする。1階の一部にはコンビニや談話
室(サロン)を配置し、サービスの向上に努める

余った住宅は売却するか、高めの家賃を徴収し、最後にその人に譲渡する

複数人を住まわせる共用スペースを持つことも一考

古い市営住宅が残っているが、壊すのでなく保存し、市営住宅の建築技術や建築当時の建
築様式・内部構造・内装等を復元し、松阪市の建築遺産・建築産業の変遷を見学できるよう
に。県や県内各市町と協力して全県的な取り組みを

②
浴槽の自己装備は入居者にとって大変な負担
一般市営住宅(中層 4 階建て住宅)
区 分
一般市営住宅
中高層4階建て、
低層2階、中層3階、5階
建て
提案シートの集計結果
現状維持
見直しが必要
総量増加
6
1
総量減少
2
その他
未回答
人
3
4
市が整備
入居者に土地・建物を譲渡2件、
民間に土地・建物を譲渡1件
老朽化、安全性
立ち並ぶ RC 構造の市営住宅、高い階層の市営住宅について、外壁の改装時に景観等に配慮
○
して目立つ塗装色、デザインを工夫し、ランドマークとして来訪者に案内ができるようにでき
ないか
○
一部の団地において老朽化が進んでいる
○
安全性から必要かどうかを考える
○ 4階まで階段を上がるのは大変
○ 駐車場の料金を徴収すべき
10
○ 汲み取りトイレ、浴槽の自己装備について、考え直しが必要
《個別住宅への提案》
・粥田団地=特になし
・川井町団地=入居率 94.8%。外壁が老朽化しているので整備を
・小黒田団地=現状維持
・清生町団地=東町団地に転居も考えるべき。退去者が多い。老朽化が進んでいる
・高田団地=老朽化している。外壁の修理が必要。階段が急となっている
・中万町団地=駅から遠いこともあり民間に土地・建物を譲渡。老朽化が進んでいる
・船江町団地=現状維持
・宮町団地=取付道路がかなり狭く、入り組んでいる。広い部屋の 2 戸が空室になっている
・若葉町改良住宅=入居者に土地・建物を譲渡する
・城南団地=現状維持
・若葉町団地=現状維持
③
一般市営住宅(簡易耐火 2 階建て住宅)
区 分
一般市営住宅
簡易耐火2階建て
提案シートの集計結果
現状維持
1人
見直しが必要
4
総量増加 総量減少
その他
未回答
3
1
5
入居者に土地・建物を譲渡、
入居者に転居を促し土地有効活用2件
老人、障害者の利用促進
○ 汲み取りトイレと浴槽の自己装備について、見直しが必要
《個別住宅への提案》
・上川町団地=特に減少が必要。民間活用の検討が望まれる。老朽化しているので、入居者に転
居をお願いする。取り壊し、土地は民間譲渡。入居者に転居を促し、土地を有効
活用。汲み取り式を見直しと考える人も多いと思う
・小片野住宅=老朽化しているので、入居者に転居をお願いする。取り壊し、土地は民間譲渡
・粥田団地=現状維持
・清生町団地=空き室の活用が望まれる。老朽化していて、入居率も 44%であり、転居をお願い
する。入居者に転居を促し、土地を有効活用
・宝塚団地=他の空き室に移転し、空地の民間活用が望まれる。契約しているが入居しないで物
置化しているのが 6 割。入居者に建物を譲渡する。転居希望の場合は応じる
・南郊団地=入居戸数 59 戸と多いので転居は難しい。募集を停止し、転居希望者から順に少な
くしていく
・丹生寺町住宅=入居戸数1なので周辺の住宅に転居をお願いする。取り壊し、土地を民間に譲
渡する
・東町住宅=空き家の活用が望まれる。部屋数多く、広い敷地。入居率 95.9%で、月額家賃格安
・若葉町改良住宅=入居者に土地・建物を譲渡する。入居者に転居を促し、土地を有効活用
11
④
一般市営住宅(簡易耐火平屋・木造建て住宅)
区 分
一般市営住宅
簡易耐火平屋
木造建て
現状維持
見直しが必要
総量増加
総量減少
その他
未回答
提案シートの集計結果
1人
4
1
市が整備
入居者に土地・建物を譲渡、
3
入居者に転居を促し土地有効活用3件
5
○
安全な生活が遅れるか検討が必要。
○
汲み取りトイレ、浴槽の自己装備について、見直しが必要
《個別住宅への提案》
・庄厚生住宅=高齢者の入居が多く、建物も古いのでバリアフリー化した住居に転居を促し、こ
れができれば民間譲渡。入居者に転居を促し、土地を有効活用
・宝塚団地=入居者に土地・建物を譲渡。高齢者が元気なうちにやらなければ物置化が進む
・南郊団地=老朽化が進んでいるので、今後の対応が必要。入居者に土地・建物を譲渡。個人で
増築している世帯が多いので。入居者に転居を促し、土地を有効活用
・公営森団地=現状維持
・公営第一宮前団地=現状維持。市内への通勤は少し遠いが便利。入居者を募集すべき
・公営第二宮前団地=現状維持。市内への通勤は少し遠いが便利。入居者を募集すべき
⑤
小集落改良住宅
区 分
小集落改良住宅
簡易耐火2階建て
木造平屋建て
中層3階、中層4階建て
提案シートの集計結果
現状維持
見直しが必要
総量増加
総量減少
その他
未回答
2人
3
2
入居者に土地・建物を譲渡、
入居者に転居を促し土地有効活用2件
1
5
○
改良してもスーパーとか利用者はどのように考えているのか
○
浴槽の自己装備について考え直しが必要
《個別住宅への提案》
・幸生町改良住宅=階段が急で危ない。周辺への団地、住宅に転居できればいいと思う。建物は
古いので取り壊す
・東町改良住宅=入居者に転居を促し、土地を有効活用。環境良好、格安。月額家賃は他に比べ
て低い。入居者に土地・建物を譲渡することも考える
・笹川町改良住宅=高齢の単身入居者にバリアフリー化に対応する住宅への転居をお願いする。
それができなければ民間譲渡
・こだま住宅=入居者に土地・建物を譲渡
・京町改良住宅=駐車料金を徴収
12
⑥
農林業・若者定住住宅
区 分
農林業・若者定住住宅
提案シートの集計結果
現状維持
4人
見直しが必要 総量増加
総量減少 その他
未回答
6
○ 若者たちは生活するが、給料が安いので考えて良い。
《個別住宅への提案》
・農林業就業住宅=なし
・若者定住住宅=飯南地域の住宅は現状維持。子どもも地域の小中学校に通っている
⑦
その他の戸建て住宅
区 分
その他戸建て住宅
提案シートの集計結果
現状維持
見直しが必要
総量増加
総量減少
その他
未回答
1人
3
1
2
6
入居者に土地・建物を譲渡、
入居者に転居を促し土地有効活用、他用途への転用
個人への譲渡、安全性に配慮
○ 個人に譲渡が望ましい。
○ 安全性を考えて欲しい。
○ 汲み取りトイレ、浴槽の装備は考え直しが必要。
《個別住宅への提案》
・春日町西罹災住宅=入居者に土地・建物を譲渡する。
・若葉町一般住宅=入居者に土地・建物を譲渡する。
・粥見住宅・下滝野住宅・堂山住宅・波瀬住宅・森住宅・宮前第一住宅・宮前第二住宅
=土地を有効活用。
⑧
市営住宅の管理運営について
項目
1 管理運営方法
提案シートの集計結果
現状維持
1人
見直しが必要
5
指定管理者制度の導入 1
民間業者への委託拡大 3
その他 1
PFIの導入
未回答
4
《提案事項》
○
全体を考えなおして見てはと思います。住宅を利用されているが、少しは、老人、障害者が
利用できると良いと思う。出会いが必要で、一人暮らしはどうかと思う。
空けないで、どうしたら人が入れるか考えて、空き家住宅がないように、入れる人が利用で
きるようにするにはどうするか。障害者、老人への住宅提供をどのようにしたらよいか考えて
見直してもらいたい。
13
○
一般市民(持ち家・借家)より現状では優遇されている。民間事業者に委託して、ある程度
公平化に努めてほしい。
○
契約時に要点を明確にしておくべき。
○
行政から手を離し、財政状況を良くする。
○
指定管理者制度も考える。
⑨
空き家募集について
項目
2 空き家募集
提案シートの集計結果
現状維持
人
見直しが必要
5
随時登録制の導入 2 募集回数の増加 2
一定数応募がない住宅は募集しない
1
その他
未回答
4
《提案事項》
○ 老朽化している建物は募集しないで取り壊すほうがいいのでは。
○ 募集期間を随時制とする。
○ 他の地域から松阪に移り住む人も対象にする。
○ 単身家族の入居基準を緩和する。
○
高齢者、障害者、母子世帯向けの募集を優先して行なうこと
⑩
住宅使用料等について
項目
1 使用料の設定
提案シートの集計結果
現状維持
2
見直しが必要
4
民間の家賃を参考に適正な家賃設定
1
県営住宅並みに家賃設定
1
低所得者には低額な家賃設定
2
その他
未回答
4
人
《提案事項》
○
生活保護制度との関連に注意して、低所得者に特別配慮すること。
項目
2 収納対策
提案シートの集計結果
現状維持
見直しが必要
4
体制を整備し、各戸訪問を行う
1
所得状況を考慮し、分納制度を設ける
他の債権とあわせて一括して対応する
2
その他
未回答
1 6
《提案事項》
○
人
駐車場料金を徴収すべき。
14
6
申込時に振替用紙を
添付し、振替納付に
エ.
コーディネーターのまとめ
【老朽化する市営住宅の今後のあり方について】
市営住宅の必要性は高く、住んでいる人を急に追い出すことは絶対にあってはいけない。し
かし、老朽化する市営住宅を、今後の財政状況を見たとき、どのように考えるかが重要。費用
対効果の側面だけでなく、居住者の利便性、安全性などを含めてあり方を検討しなければなら
ない。
住民の方の意見を聞きながら、他の市営住宅への転居を促して行くことについて、支援のあ
り方を含め検討すること、建替えが全てではなく、民間ストックの活用を検討して必要な住宅
を確保していくなど、行政としてサービス提供のあり方を明確にしていく必要がある。
小集落改良住宅については、地域や居住者の合意を得て、譲渡する方向性が議論の中で出さ
れた。
有償・無償などの課題整理を整理し、住宅を維持した場合に想定される費用、将来失ってし
まう価値、無償譲渡した場合のメリットなどを比較検証して判断していく必要がある。
【管理運営について】
これまで市営住宅は公共事業で建てるだけで、マネジメントは放置してきた。費用対効果を
検証し、指定管理者、PPP・PFI など、民間の活力を活用して管理運営をしていくことを検討す
る必要がある。
【住宅使用料等について】
住宅使用料の滞納について、中立性・公平性の点から、支払い能力がある方には制度を理解
してもらうためにも、臨戸訪問を強化する必要がある。また、連帯保証人に対してのアプロー
チを強めていく。
駐車場使用料については、合併の経過があり、旧自治体ごとのやり方を踏襲してきたが、合
併 10 年を経過する中で、公平性の観点から統一して取り組んでいく必要がある。
【今後の進め方について】
今回、市営住宅 1 戸 1 戸の全てに市民討議会の案内チラシを配布するとともに、インターネ
ット中継、CATV の放送(録画含む)を行い、情報提供を行って来たが、当事者の参加は少なか
った。
本日をスタートに、現場の市営住宅の入居者と協議の場を設置し、意見交換会やワークショ
ップを開催するなど地域ごとの議論を丁寧に実施していく。
4
構想日本からの提案
今回の開催準備の過程、当日の議論の内容を踏まえ、松阪市の公共施設見直しの全般に亘る
取り組みと、市営住宅の見直しの視点、今後の進め方について、以下のように提案します。
(1)
「公共施設白書」について
松阪市は、全公共・公用施設の「施設カルテ」を早期に作成し、施設の基本情報(名称、所
在地、目的、耐用年数等)や規模・構造・規制(土地・建物面積、構造・階数等など)、工事履
歴(時期、内容等)、コスト(建設費、改修費、維持管理費等)、劣化度(劣化診断結果、耐震
15
化対応等)、管理・利用状況(開館日数、サービス内容等)を整理しています。
今般、市営住宅の現状把握にあたり改めて「施設カルテ」を点検した結果、以下のことが把
握できませんでした。
➀棟ごとの維持管理経費と使用料の状況(3か年)
②棟ごとの修繕等の履歴
③棟ごとの入居状況(率)、募集戸数と応募状況
④棟ごとの高齢者世帯・障害者世帯・母子世帯・一般世帯の区分と入居状況
⑤棟ごとの面積、間取り、設備の状況
⑥棟ごとの建設時の取得費
⑦集会所の利用状況
など
これらの情報は、施設の形式的な入居状況の把握だけでなく、実際にどういう居住状況、生
活ぶりを把握する上で重要な情報といえます。「施設カルテ」の内容を深化させる「施設シー
ト」のタイプに変更することを提案します。
各自治体では、総務省からの要請を受けて「公共施設等総合管理計画」の策定に取り組んで
います。この一環として、現状把握のために「公共施設白書」の策定が進められていますが、
自治体によっては民間のコンサルタント等に多額の委託料を支出して策定している場合があ
ります。
一方、松阪市では、行政内部で取り組んでいますが、白書は作成することが目的でなく、白
書の策定を通して課題の整理と今後のあり方を検討し、公共施設の見直しに活かしていくこと
が主眼となります。
そのためには、職員が自ら、施設カルテを深化させた施設シートを作成し、現場の実態をと
らえて課題の整理を行っていくことが不可欠です。
今回の取り組みでは、現地調査や関係者からのインタビュー調査及び行政担当者からの聞き
取り調査を行い、資料 2 の「松阪市の市営住宅の現状と課題」として整理しました。
他の公共施設の見直しにあたっても、「施設カルテ」を深化させた「施設シート」の作成や
「現状と課題の整理」を行い、職員自らの手づくりで、「公共施設白書」の策定に取り組むこ
とを提案します。
(2)
「合意形成」の第一歩としての「市民との協議の場」の設定
今回の市民討議会には、市民討議人として 10 人が参加しましたが、前年度の総合計画策定
に際して無作為で抽出した市民委員会から 6 人、市営住宅の入居者 2 人、市の行政改革推進委
員 2 人でした。また、傍聴は約 70 人ありましたが、その多くは松阪市の行政関係者や他の自
治体関係者で、松阪市民や市営住宅入居者の参加は多くありませんでした。
ネット中継や CATV での放送があったとしても、当事者としての松阪市民や市営住宅入居者
の参加が求められます。討議会の場でも、市民討議人からは「今日一日の議論で方向性を決め
ることは拙速である」旨の指摘があり、市側からは「本日が市営住宅のあり方を検討するスタ
ートになる。今後、地域・団地ごとに意見交換会などを開催していく」旨の説明が行われてい
ます。
今回指摘された課題等を整理し、早期に、市民等で構成する検討委員会や地域・団地ごとの
協議会を開催し、意見集約を図っていく必要があります。
16
市民等で構成する検討委員会の委員の選任にあたっては、無作為抽出による方法を採用し、
「市民対行政」の構図でなく「市民同士の協議の場」になるような運営面の工夫を期待します。
なお、現在庁内で検討を進めているその他の公共施設のあり方の検討にあたって、行政内部
で課題整理ができた段階で、今回の手法を活用した公開での施設評価を開催し、市民との合意
形成の第一歩としていくことを提案します。
(3)
市営住宅の見直しの視点
市民討議会での議論等を踏まえ、以下のように市営住宅の見直しの視点を整理しました。市
営住宅のあり方を検討する関係者との協議を進める際に活用してください。
➀
民間ストックを活用しての市営住宅の提供
松阪市の市営住宅は、一般市営住宅(中層 4 階建て)と農林業・若者定住住宅を除き、ここ
数年でほとんどの市営住宅が耐用年数を超えることになります。使用できるものは可能な限り
使用するにしても、入居率が低い住宅や設備環境の好ましくない住宅については更新の検討が
必要となります。
しかし、民間の良好な空き家住宅が 5,000 戸ある状況の中で、民間の空き家対策を推進する
面から、また、入居希望に迅速に市営住宅を提供していく両面から、民間の空き家住宅を公営
住宅に位置付けて活用する方法を検討する必要があります。
この場合、行政には住宅に困窮する低所得者に住宅を提供する使命があることから、民間住
宅を借り上げる場合の費用負担のあり方、入居者の範囲、家賃補助のあり方など制度づくりが
必要です。
②
入居者の集約化による効率的・効果的な運用
中層 4 階建ての市営住宅の空き家募集を行なっても、市街地の市営住宅には応募があるもの
の、松阪駅から相当の距離がある市営住宅には応募者がない状況となっています。
簡易耐火 2 階建て住宅など市営住宅の見直しを円滑に進めるための移転先として活用するほ
か、同一団地内での他の棟への移転などを促し、既存コミュニティに配慮しながら入居者の集
約化を進め、効率的かつ効果的な運用を図る必要があります。
移転を円滑に進めるための移転費用の支援などの制度づくりが必要です。
➂
高齢者にふさわしい住宅の提供
入居者の高齢化が進むなかで、簡易耐火 2 階建て住宅については階段が急であること、玄関
入口のバリアフリー化が困難なことなどから高齢者にとって必ずしも快適な居住環境にはなっ
ていません。
民間空き家住宅を活用した市営住宅や、既存の平屋建て若しくは中層4階建ての住宅への転
居が望まれます。既存コミュニティに配慮しながら入居者の移転を促す支援策が必要です。
④
小集落改良住宅等の譲渡の促進
小集落改良住宅や一般市営住宅の簡易耐火平屋建て住宅、木造平屋建て住宅については、各
戸の敷地も広く、既に入居者本人が増改築等を行ない、入居者が持ち家的に使用している実態
17
から、入居者の意向を踏まえ、譲渡することを検討すべきです。
譲渡にあたって有償か無償かの取扱いについては、これまでの費用負担、将来の費用負担等
を勘案して総合的に判断する必要があります。
⑤
住宅環境が好ましくない住宅の対応
汲み取り式トイレの住宅や浴室スペースが設けられていない住宅については、住宅の老朽化
が進んでいる実態を踏まえ、新たな設備投資に要する費用対効果を検証し、公衆衛生の面、安
全対策の面から他の住宅への転居を促すなど政策的に空き家対策を進め、除却する方向で臨む
必要があります。
⑥
農林業・若者定住促進住宅の譲渡
飯高・飯南地域の過疎対策として設置した農林業・若者定住住宅については、比較的若い住
民が長期間入居するなど定住対策としては効果があるものの入居者の固定化が進んでいます。
入居期間を定め、期間経過後には転居を要請するなどの対応も考えられます。一方で、国庫
補助金との関係を整理して入居者に有償で譲渡することも検討する必要があります。
⑦
引き続き維持していく市営住宅の適切な整備
中層4階建て住宅は、耐用年数的にも適切に修繕等を行えば長期的に使用できる状況にあり
ます。施設の保全計画を策定し、屋上、外壁等を定期的に補修するとともに、浴槽や風炉釜の
設置、エレベーターの設置、省エネ化などついて財源確保を図りながら計画的に取り組む必要
があります。
その他の住宅についてはここ数年で耐用年数を超過しますが、②~④の対応を検討したうえ
で、今後とも適切な修繕等を行うことで使用が可能な住宅については、浴槽・風炉釜の設置な
どの設備の改修、屋根や外壁などの改修を計画的に実施していく必要があります。
⑧
指定管理者制度の導入
現在、10 人の職員を配置し、一部業務委託を行ないながら直営で管理運営を行なっています。
県営住宅のほか近隣の自治体では指定管理者制度を導入している実態から、費用対効果を検
証し、指定管理者制度の導入を検討する必要があります。
⑨
市営住宅の空き家や募集
現行、年2回募集していますが、募集から入居者の決定まで長い時間を要しています。
募集に際して、事前登録制度を設け、空き家が生じた場合には随時入居できるような手法の
検討が必要です。
⑩
使用料の設定
現在、一般市営住宅については国が定めた基準で設定していますが、立地条件や住宅の建築
年次、広さ、住宅設備の整備状況などでの差が少なく、しかも、隣接する県営住宅の使用料と
は乖離している実態もあります。
利便係数などを再点検し、住宅使用料の適正化を図る必要があります。
小集落改良住宅については設置時の経緯から定額制でかなり低廉や使用料となっています。
18
入居要件の見直しにあわせ、住宅使用料の算定方法を一般市営住宅と同様の方法で見直しする
必要があります。
⑪
駐車場使用料の設定
一部の住宅を除いて駐車場使用料の設定がありません。駐車場を利用する人と利用しない人
との公平性の観点から有料化を導入すべきです。使用料の設定にあたっては、住宅の立地状況
を踏まえて設定する必要があります。
また、駐車場がなく路上駐車している市営住宅については、早急に、駐車場を設けるか、ス
ペースが無い場合には民間の駐車場への誘導を図るなど適切に対応する必要があります。
⑫
収納対策の強化
現年度分の収納率は 91.1%、未納額約 15 百万円、滞納繰越分の収納率 6.3%、未納額 91 百
万円、全体では収納率 60%、未納額 106 百万円となっており、未納分については税金で補てん
していることから、受益と負担の関係に照らして厳格な対応を行う必要があります。
臨戸訪問を徹底して行うとともに、退去を含めて交渉する体制を、指定管理者制度の導入に
あわせて検討する必要があります。また、全庁的な債権管理の取り組みに位置づけることを検
討する必要があります。
5
おわりに
全国的にも初めてとなる市営住宅の見直しに向け、市営住宅に入居する市民、無作為抽出の
市民が参加して「市民討議会」を開催しました。一般傍聴者の数は必ずしも多くなかったです
が、ネット中継、CATV の放映を含めると一定の市民等が情報を共有できたと考えます。
多くの自治体の公共施設見直しのプロセスを見ると、行政内部での議論が先行し、一定の方
向性を決めた後に市民に説明するパターンが多い中で、松阪市が行政の内部で検討する前にこ
のような取り組みを行ったことは極めて有意義な取り組みと評価できます。
市民討議会での議論は抽象論でなく、当事者を含め高所大所の立場から具体的に議論し、松
阪市の財政状況や住宅の状況について情報を共有し、市営住宅の見直しに向けて動き出さなく
てはならないという方向性については概ね合意できたと確信します。
しかし、市民討議人から指摘があったとおり、財政や福祉など他の部門の職員も加わり、住
民の人の意見をさらに聴くことが必要であり、地域別・団地別に協議の場を設定していく会議
の開き方を工夫することが必要です。
今回は市営住宅をテーマに開催しましたが、学校や公民館などの公共施設のあり方を検討す
る場合にも今回の方法を応用し、市民討議人(市民ディベーター)をその都度新しく選んで開
催し、100 人、200 人と松阪市民の相当数が「自分ごと」として松阪市の大事なことに関わって
いくことができるようにしていくことを要望します。
市民討議人(市民ディベーター)が増えていくことは、松阪市の行政に対する理解者が増え
るという意味で「資産」といえます。そして、このことは行政の担当者が代わったとしても松
阪市が全国に誇れる住民主導の自治の町になるための基盤となるものと考えます。
19