第54次東京私教連教育研究集会 報告集

第54次東京私教連教育研究集会
報告集
2015年
6 月 28日 於:正則高等学校
第54次教研は、74名(のべ112名)の参加で行いました。その内容を報告します。
午前中の分科会
10時~12時30分
国語科分科会
司
会…石川信行さん(明星学園中高)
発表…但馬徹哉さん(正則高校)
評論文「虚ろなまなざし」に取り組んでー生徒の主体的な探求を目指して
和田敏男さん(駒込学園)
「バグダッドの靴磨き」を生徒とともに読む
参加人数…14名(晃華1・和光2・駒込1・明星1・大阪商大堺1・大東1・鶴川3・京都東山1・法政
1・藤村1・正則1)
記
録…根岸美江さん(鶴川高校)
はじめに…
国語科分科会では、発表後その都度、3~4名のグループ(全 3 班)で内容について討論を行います。
次に各グループで出された意見や質問を代表者が発言し、報告者が応えるといった二重討議形式で進めまし
た。
1.評論文 『虚ろなまなざし』
(岡 真理)
(現代文 B 三省堂)を取り組んでー生徒の主体的な探求を目
指してー
但馬先生(正則)
〔*15 時間配当〕
但馬先生の実践報告は、目の前の生徒の特徴を細かく分析した上で、生徒たちが主体的に本文を読み込ん
でいくことをめざした、まさに現在授業で実践されているものです。先生にとっては 2 回目となる教材で、
生徒のコンディションに負けない「魅力のある発問」を意識されて臨まれています。
特にこの作品では①「ことばとのであい」を大事にすること、②評論文という抽象的な文章を生徒の具体
的な体験や経験に落とし込んで考えていくこと、③「他者」という概念に着目し、「他者理解の有り様」に
ついて生徒自身の固有の考えを持たせること、④クラスメイトと意見を共有しあい、相互の意見から認識を
深めることを意識しながら展開されています。
生徒の実態に対応するために、①新しい文章を読むときには、事前に必ず「語句プリント」を使用し、言
葉を確認する。②「本文の先の予測をし、筆者のロジックと併走させていく中で論理的に本文を読む感覚を
養う」ために、「本文を区切りながら提示」する。③「クラスの閉塞感を打破し、主体的探究心を呼び起こ
す」ために「説明せよ系」の発問ではなく、
「探索型の発問」や「グループ討議に耐えられる発問を練る」
といった行き届いた工夫がされています。
この「探索型の発問」というのは、生徒の身近な生活感覚から考えやすい発問で、一見本文から離れた発
問と見られますが、実は本文の内容につながり、最後にそれを探索させることに結び付くものです。
授業では導入で、題名や提示された2枚の写真からこれから始まる本文の内容を推測します。そして毎時
間ごと授業の終わりに「本日の授業の感想」を書かせ、次の授業でプリントしたものを発表し読み合います。
語句プリントは段落ごと提示し、新出語句への不安を除きます。本文は毎時間ごと区切ったものを配布し、
内容の復習・確認をするときは本文に空欄が施されているプリントを用います。
語句のプリントや本文空欄プリントの取り組みでは学習の共同体をつくりたいという意図から、グループ
などで作業をさせています。
1
こうした取り組みも現在12時間目「意見文を書く」の所に至っています。最終的には作品論を書かせて
終了だそうです。
ここまでの所で但馬先生は「
『○○』と答えさせたいと思うがそのための質問が浮かばないため、具体例
を絵に描いて説明した。生徒がもっと生徒同士で相談や話し合いたくなるように、発問を洗練させなければ
……」といった更なる課題を自らにつきつけられています。
但馬先生の発表後、各グループからは次のような感想や意見・質問が出されました。
まず感想として、
・
(但馬先生が)内容をよく読んでいて、授業中のやり取りが上手い。本文の運用が上手い。
・生徒を一人一人把握されている。生徒に書かせる指導が丁寧。生徒がきちんといいことを書いている。
・評論は力のあるもの。担当者がこの作品が好きなのかな、この評論の世界を理解させたいのかなというこ
とが受け止められる。
次に質問として 、
(※【
】の内容が但馬先生の回答です。)
・12時間かけているが、指導書では 8 時間程度だと思う。1学期中にどのくらいの作品が扱えるか。生
徒の声をフィードバックするのは校務との兼ね合いで大変だなと感じた。持ちコマは何時間なのだろうか?
【定期試験までには一つの作品を取り扱うことと決められている。作品を取り扱う時間は長くて 5 時間と
言われているが、他の先生方は16時間で扱っている。生徒は一作品が終了するまで長いと飽きてしまうの
で、10 時間を目安に行っている。持ちコマは週 14 時間で 3 クラスを受け持っている。】
・教員が作品を選べるのか?
【扱う作品は学校で決まっている。
】
・授業の中で答える子以外はどうしているの
か?
【生徒自身が題名の通り「虚ろ」。質問しても
1 対 1 対応で広がらない。じっとさせないため
にメモをとったり、本文に線を引くなどの作業
をさせているが、クラスに4~5人は上の空で
考えていない。
・評論は批判的に読むのではないか?高 3 の生
徒にこの作品をぶつけていく意味はなんなの
か?
【批判的に読ませる、批評的に読むということ
にチャレンジしてみたいが、迷っているうちに
終わってしまった。自分はこの評論が好きだか
ら内容確認の方が先行してしまう。批評できるものになればいいが、それは今後の課題としたい。
】
こうした質疑応答を受けて「評論文は受験技術的なものになっている。センター試験の過去問題をこなせ
るか、
(解答するための)テクニックを学ぶものとなっている。評論を批判的に読ませるのか、
(授業で)ど
こまでやるのか?」という発言があり、これからの問題として共通認識しました。
2.小説『バクダッドの靴磨き』
(米原万里) (現代文 B
第一学習者)
和田先生(駒込)
〔*高2で実施 6~7 時間 〕
この小説はバグダッドの一少年の目から見たイラク戦争のことを、この少年の一人語りという形式で表現
されています。
そして「見る者の視点が違えば、世界の見え方も違う」ことについて考えさせることをねらいとした実践
です。
今回の発表に際して7点(①テクスト本文②報告③課題プリント④期末テスト該当部分⑤村上春樹インタ
2
ビュー記事⑥キャプションを付ける新聞記事⑦生徒作文)の資料が配布されました。
まず参加者は3~4名のグループに分かれて、新聞記事(読売新聞 2003 年 3 月 19 日夕刊 「アメリ
カのイラク攻撃に支持45カ国」
)に添付された写真のキャプションを付けることから始まりました。これ
は実際の授業(2014 年度 3 月 2 年生で実施)で取り組まれたことを参加者が追体験するものです。それ
ぞれのグループからは「正義のために」
「お父さん、敵をうって!」
「お父さんは私の誇り」などの言葉が上
がり、正解(「帰ってきてね」
)が示されます。
この導入では「この新聞の見出しから見れば多くの国がアメリカを支持している。新聞がどういう意図で
発信しているのか」を読みとります。
実際の授業では内容理解は主に課題プリントを用い、グループ学習を取り入れるなかで意見を書かせたり
しています。
特に「この作品はアフメド(主人公の少年)の視点で書かれている。アフメドが語っていることを聞き取
ったジャーナリストが書いているがアフメドの視点で読み取る。アフメドの周りで起きた死(妹・祖母・母・
叔父)は自分に関わっているので彼らは自分のせいで死んだと考えている。更にアフメドの話を聴いている
ジャーナリスト(日本人)を批判の対象にしているのではないか?ジャーナリストがアフメドに対して同情
することを批判しているのか?アフメドから話を聞いたお礼にジャーナリストがお金を渡すことは、銃の購
入費用となり、戦争に加担することにならないか?アフメドはこの後どうなると思うか?」などに注意しな
がら問いを出すことで内容を深めて捉えさせています。
さらに「金を与えることで戦争に加担することになる。この少年が何れテロリストになる。そうなればア
メリカは攻撃するだろう。
」という仮説のもとで、最後に「負の連鎖をどうすればとめられるか」という意
見を400字程度で書かせています。生徒の反応として感想はアフメドに感情移入したものが多く、今の日
本は平和だと認識するものが多くいました。
最後に実際の授業では配布はされませんでしたが、村上春樹の新聞記事「時代と歴史と物語を語る」(東
京新聞 2015 年 4 月 17 日)を提示する予定でいたそうです。
また「テロと目されている人の方からはどう見ているのだろうか?」が理解できているかをみるために定
期試験に出題してテロリストを引き出させたそうです。
和田先生の報告後、各グループからは次のような感想や意見・質問が出されました。
・導入の方法や授業の進め方、テストまでの中で授業を完成させているのはすごい。
・この文章最後の「人は殺さないが、侵略者は殺す。」は大事な部分。他者を見るときにどういうふうに見
るのが問題なのかを足す。
・生徒のやり取りがどういうふうなのか。生徒の話し合いがどうだったのか?
・日本人の語り手の批評とかにいくまでにはどういう発問をされたのか?
・どういう発問をすればこのジャーナリストの視点に到達するか?
・どのようなやり取りで全体像を読み取らせたのか?
・最後に「負の連鎖」に持って行ったのは行き過ぎか?このままだとテロリストになるのではないかと今の
世界状況からそういうのがよぎった。
・最後のテストの記述の評価はどのようにされたのか?「負の連鎖」を出したのはどういう意図で出したの
か?
・読売の記事で気づくのは大国がないことで、ここがリテラシーにつながる。他の新聞にはないので、あま
り使われない方が……新聞社にレッテルを張ることにならないか。
こうした質問事項については時間の都合からまとめて以下のように応えられました。
「新聞記事に関して、ゼミの授業では読売と朝日を比較した。内容理解に関しては、生徒とのやり取りの
中で形象をとらえさせた。特にポイントとなることはプリントを中心にしながら生徒とやり取りをした。ど
ういう発問をすればこのジャーナリストの視点に到達するかが難しい。」と。
戦争について様々な角度から考えさせられ、初めて読んだ時、正直とても衝撃を受けた作品でした。そん
な教材を「授業でどんなふうに料理するのか」とても興味がありこの会に臨みました。丁寧な教材分析のも
3
とでの実践がなされていて改めて教材研究の大切さ、生徒とのやり取りの大切さを実感しました。
*感想より*
★但馬先生…本当によく生徒を把握して練られた授業に感動しました。一つ一つの発問を積み重ねて子どもたち
が教材にのめりこんでいく様子がよくわかります。書いた内容を発表するのは、先生がなさっているのいかなあ
と思いますが、自分の声で発言してもらうという時間をもって、声を出す練習をすると、教室に動きが出てくる
かもしれません。
和田先生…ダイナミックな授業展開、子どもたちへの信頼がベースになっているのではないかと思いました。
★どちらも日常生活の中で、生徒に気づいてほしい社会の構造や視点、私たちの立ち位置でした。「教え込む」
ことなしに生徒の体の入った経験位するか、ということを学ばせていただいた実践でした。「虚ろなまなざし」
の実践では、生徒達が、恣意的ということばを自分のものにしている所が印象的でした。
「バグダッドの靴磨き」
はまず、イスラム国のことがあって生徒の関心も高く、けれども踏み込むに難しい問題を教材として投げ込んだ
ところをまずすごいと思いました。
少年が自分自身を振り返っているところを発問の中心にしていたのは、やるせない叔父さんとの関係、母への
思いが、真ん中に来て共感しやすくなっていると思いました。負の連鎖…語れる中身が育っていれば、十分つな
がると感じます。どちらも家で読み返そうと思います。
★但馬さんの若い意欲にまずは拍手!一方で“筆者の主張の代弁者”からどう脱していけるか?批判的に読み解
くダイナミズムを知ることが閉塞状況を打ち破り超えることに――。4度目の東京私研どんどん規模も内容も豊
かになっていますね!
★「バグダッドの靴磨き」では、政治や社会情勢との関わり、メディアとの関わりの難しさを感じながら、教材
の「生ものさ」について考えさせられました。文学として読むことも必要だと思いますが、その時だからこそ出
る意見、できる討議等に目を向けたいと思いました。
★但馬さんの実践は、生徒の目線に立って、生徒のことばをひきだす工夫がされているところがとてもすばらし
いなと思いました。生徒が文章を読んだり考えたりする動機を大切にしながら授業を大切にするという点が大変
勉強になりました。和田先生の実践は、教材選びがすごいなと思いました。話題としても現在に合っていて、バ
グダッドの少年が(事件の)語り手になっているところが読みやすく、しかも、その少年について語っているの
が日本人ジャーナリストという点が複数の視点でよむことを可能にしている作品だと思いました。生徒が書いた
ものを読むと、生徒の中で作品が自分のものになっていることがわかりました。珍しい手法を駆使しているので
はないのに、生徒を作品に出会わせている和田先生の実践の奥義をもっと知りたい!と思いました。
社会科分科会
司会…北田邦夫さん(東海大望星)
発表者…松山恵美さん(鶴川)
「~体験!エンカウンターで意見交流の下地を作る~」
馬塲隆太郎さん(法政大学)教育実習体験記
山田智之さん(法政大学)教育実習体験記
参加人数…8名(東海大望星1、鶴川1、早稲田1,法政中高1、トキワ松1、成城1、法政大学2)
記録…吉田
守さん(成城)
はじめに、全員で自己紹介(名前、所属)を行いました。その中で、石川先生から今回の社会科分科会に
4
ついて概要が話されました。テーマは「授業づくりのわざ極意を探る」ということで、松山先生の「~体験!
エンカウンターで意見交流の下地を作る~」授業を、実際に参加者がエンカウンターのエクササイズを体験
しながら発表してもらう。次に教育実習を終えたばかりの大学生の体験を語ってもらう。今日、集団的自衛
権など安保法制問題、18歳選挙権など、社会科教員のあり方が難しい時代になり、何を授業で大切にして
いくか悩みも多く、最後にまとめとして「授業の極意とは何か」を討論したいとの発言がありました。
1.松山先生から、まず鶴川高校の紹介があり、社会科では学習内容を概要で統一し、授業は個々の教員の
アレンジに任されている。今年は、高1の地理を担当。社会的問題意識が高い生徒、経済的な問題、健康面
での問題、学習障害のある生徒などなかなか大変だそうです。職員会議が無く、組合会議で組合員の授業の
生徒の様子を話し、共有しているそうです。授業での生徒は否定的・排他的な意見が多く、
「戦争」と聞い
たら「反対」とステレタイプな答えが返ってくる。相手に対して攻撃的で討論が成立しにくい。生徒会執行
部を教員が選んでいること。部活動の時間も30分しか保障されていないこと。そのために生徒が意見を交
換してお互いに肯定的な関係を作っていく機会が奪われていることが、原因の一つだそうです。そこで先生
は、十数年前に「社会心理士」の資格を取る。授業の中で人間関係を築き、自分の考えを伝え、相手がどの
ように受け取るかを繰り返す中で、人間関係のパイプと自分の考えづくりが平行に育ち、権利意識も強くも
てる生徒を育てるため、エンカウンターエクササイズを取り入れた。そこで参加者全員でエンカウンターエ
クササイズを体験しました。
①肯定的関係をつくる
2人組になって、短時間、交代しながら自己紹介をする。その後相手の良かった点をお手紙として書く。最
後に、これからもよろしくね、と書く。話し合えて良かった。ラブレターみたいなもの、いま、はじめて会
った人に自分を肯定されて、結構嬉しいです。これを生徒が少し慣れた連休明けにやるそうです。
②カウンセラーになる
授業が進んだ6月。
短い相談の文を読む、参加者(生徒)はそれを聞きとる。相談にあった事実を、思ったより思い込みで解釈
してしまう。人の話を聞くことの大変さ、事実と思い込みをきちんと分けること、事実を聞いて自分の中に
関連づけていく難しさに気づく。こうして、事実に基づいてどう自分が考えているか、事実で裏付けて、積
み重ねて説得力のある自分の意見を持つことで討論が可能になる。というものです。
2.二人の実習生が授業で何が大切か、考えたこと
馬塲隆太郎さんの教育実習体験記から~中学2年生の地理を担当。問いかけ(発問)の大切さ。思い込みや、
今までの生徒の価値観を壊し新しい見方を持てる授業。教材研究の深さで生徒に何を伝えたいのかが見えて
くる。
山田智之さんの教育実習体験記から~高校1年生の現代社会担当、導入の工夫、生徒が考えるきっかけにな
る素材を出す。
参加した先生方からは、
「しっかりしてるな」「原点にもどれるな」との感想がありました。
3.まとめの討論、授業の極意
3名の方の発表や参加者の発言から、授業の極意について、北田先生が上手にまとめました。
生徒の知的好奇心を揺さぶる・そのための授業の方法論・生徒にどのように問いかけるか。そのためには、
生徒がどのような状況で生きているか。生徒が何に関心をもっているか。生徒を知ることが大切だ(石川)
。
毎時間パーフェクトな授業を目指すのは大変だが、授業の発想や資料集めをする(石垣)。生徒がもった考
5
えは、なかなか強固で、これを変えるには教師はこんな考え方もあると、先を見る、気づかせることが大切
(山田)。
生徒をいかに育て、教師として成長していくか、授業の基本をあらためて学ぶことが出来たと思います。
*感想より*
★松山先生のエンカウンターの授業は大変参考になりました。先生のおっしゃる「ステレオタイプの意見を持つ
生徒」
、大変同感しました。私自身も本当に毎日悩んでいるので、ぜひ今日の松山先生のエンカウンターをやっ
てみたいと思います。教育実習生のお二人はとても熱心で、頭が下がりました。授業準備は本当に大変だったと
思います。これからも頑張って下さいね!
★授業をどのようにつくっていくのかという事に日々悩んでいたけれど、「生徒を知る」という事にポイントが
あるという事に気がつかされました。明日の授業から是非とも活かしていきたいと思います。
★松山先生の発表は大変興味深かった。特にエンカウンターを取り入れたコミュニケーション能力の向上につい
ては、とても参考になった。是非自分も取り入れたいと思った。馬場さん、山田さんお二人の大学生の教育実習
体験記も大変良かった。授業の原点を改めて確認できる良い機会となった。感謝しています。
★「授業づくりの極意を探る」というテーマで、日頃忘れかけていた授業づくりのための努力を改めて認識しま
した。松山先生の「エンカウンター」の手法など、参考にできることがあって、有益でした。
数学科分科会
司
会…荒木徹さん(晃華学園)
発表…長尾航さん(関東一高)
数学の不思議にスマホで触れる
岡諒子さん(晃華学園)
実数の連続性
参加人数…9名(目黒1・明星1・晃華2・大東3・関東一2)
記
録…永嶋圭二さん(関東一)・長尾さん・岡さんの合作
「数字の不思議にスマホで触れる!」という題目でレポートを行いました。最初の方でしかあまり活用でき
ませんでしたが,スマホ片手に実践していただきこちらとしては大変嬉しかったです。ラマヌジャンという
数学者の逸話に,
「1729 というタクシーのナンバーはつまらないものに思えたが,ラマヌジャンはそれが
立方数の和の形で 2 通りにかける最小の数であることを即座に返してきた」というものがあります。実際
に,
1729 = 13 + 123 = 93 + 103 であり,これはそ
の逸話から「タクシー数」と呼ばれています。こ
のように
「○○数」と名のつくものは数え切れないほど存
在し,そこに名を残す数学者も非常に多く、その
魅力は何千年も人を惹きつけて止みません。
私 が今回紹介し た のは「保型数」「寄生数」
「Lychrel 数」
「カプレカ数」
「シドニー数列」
,お
6
まけとして「ナルシシスト数」
「巨大数の一例(アッカーマン関数とグラハム数)」
「-1+i 進法」の 8 つにな
ります。最後の一つを除いては必要な知識は足し算とかけ算だけであり,
「数字」というものが面白く思え
てくるようなものになっています。実際にこの中のいくつかは,体験入学や模擬授業で中学生を相手として
実践もしております。学校の数学が苦手な生徒の中にも,こういったものを楽しんでくれる生徒がいますが,
完全にシャットアウトしてしまう生徒も居るので,その辺りが課題となっています。
感想の中に「私自身が楽しんでやっている」ことを書いてくださったものがあり,このことが伝わってい
るというのが非常に嬉しく,それが伝わるように,日々心がけて数学の授業も行っております。私自身が数
学についてこれからも学び続ける,好きで有り続けることが生徒のやる気を引き起こす一助となると信じて
これからも邁進して参ります。
上で紹介したものに関しては「Project Euler」
「MATLAB」などを参考にしております。是非皆様の数
学探究が良きものとなりますよう付記致します。
岡先生のレポートは実数の連続性の公理に関するものであり,その中でも「Dedekind の公理」
「有界集
合の上限・下限の存在(順序完備性)」「有界単調数列の収束」「区間縮小法とアルキメデスの原理」
「Bolzano-Weierstrass の定理」「コーシー列の収束とアルキメデスの原理」の同値性を扱ったものでし
た。
土曜講座という選択制の授業の中で更に数学に興味の強い生徒を対象にしているとあり,内容としては完
全に大学初年度程度のもので,非常にレベルの高いものとなっています。今回はそれぞれの「公理と同値な
命題」に関する紹介にとどまりましたが,実際に扱われているテキストはよくまとまっており,力のある生
徒なら十二分に独習可能だと思いました。
レポートの最後には同校の荒木先生から補足がありました。テキスト中の「『円に内接する三角形は,正
三角形のときに面積が最大』の証明の不備」という問題に関連して,「1 が自然数の中で最大の元である」
という話をされました。
「1 以外に最大元があると仮定してそれを𝑛とすると,𝑛 < 𝑛2となり,最大元という
仮定に反するので,1 が最大元である」というもので,「最大元(最大値)が存在する」ということの怪し
さに自覚的であることの大切さを,高校生に認識させる一つの方法ということを教えていただきました。
最後に,大東学園の池上先生から,教科書採用の時期であり,中学生用の教科書展示をご覧になった際に,
正負の数の解説において7社とも数直線を採用していることに危惧を抱かれているとのことでした。この問
題は確かに根深く,厳密に言うと数直線のみではなく,物理的なモデルを採用しながら(東に進むことを正
としたとき,西の進むことが負,1 時間後が正で 1 時間前が負など)教えているものの,それのみに終始
していることに問題があります。社会科の歴史認識の問題が取り上げられて久しいですが,こういった面に
も我々教員の側から批判的に訴えていく必要があります。それは個人での授業レベルでの取り組みはもちろ
ん,こういった研究会などの場で多く語られるべきであるとの意見でありました。(永嶋・長尾 記)
今回のレポートは、大学の数学を扱った内容を紹介しています。実数の連続性の公理に関して説明し、い
くつもの公理の同値性を証明するものなので、中高生対象の授業内容としては非常に難しいものです。
そのような難しい内容ですので、学校でこのトピックで講義したいと申し上げたときも不可能だと言われま
したし、今回も生徒にこの内容を説明することは非現実とのご意見を頂いております。
勿論、中高生を対象として扱うトピックとしては至極難しいものです。このレポートを題材にして講義を
行うことができた理由は、その講座が希望者対象の少人数の高校生を対象としたものだったからです。しか
し、決して成績優秀者対象という訳ではなく、普段の数学の成績があまり良くないような生徒からも、80
7
分で概要を説明した講義内容に関して、よく理解できて面白かったという感想を貰っています。
希望者対象のこの講座は、学校で 2 回行っており、同じ内容を別の生徒に行いましたが、生徒の理解力や
こちらの準備状態の差異により、2 回目は講義は進まず、このレポートの概要の 1/3 程度しかお話してお
りません。
まず、私が初めに留意して頂きたい点は、このレポートによる講義は、必ずしもすべての内容を分かって
貰おうというつもりではなく、生徒にとって、今までまったく知らなかった世界を見せることで、生徒の可
能性・人間性をなにかしら広げることに繋がるのではないか、という意図で行っている、という点です。扱
う内容自体は高尚なものあるが、教育対象の相手に合わせ、その人に見合う分だけ一部題材として切り取っ
て見せる、というのは教育の基本的な実態かと思います。
また、講義する対象が、可能性のある生徒であれば、それに見合うだけの材料を提供して良い、という思
いもありまして、実際、生徒の数学力に値するという点において、効果を感じる例がありました。このレポ
ートを、数学の理解力の高い、ある中学生に個人的に興味があれば読んでみたらどうか、と薦めたところ、
途中経過で質問は受けましたが、彼女はすべての内容を 1 ヶ月かけて理解してきました。いつも熱心に勉
強や興味ある活動に精を出している彼女は、益々その先の勉強に興味を傾けながら成績も上がり調子という
感じで、彼女は学校としても大変将来が楽しみな生徒になっています。
そのような背景がありまして、今回の発表させて頂きました。今回、皆様にレポートをお見せしましたと
ころ、やはり内容が難しいという反応でした。私としましては、特に導入の部分の内容は十分改善の余地が
ある、講義をもっと計画的に分割して行うようなことも真面目にやった方が良いだろう、というのが、主な
感想です。ただ、数学史に関する自分の理解も十分ではなく、色々な改善するにはまだ時間はかかるかもし
れません。
やはり、この題材を使って講義を行うこと・この内容を人に説明することは、難易度が高いのだ、と改め
て痛感させられた発表でした。
中々機会を見つけることは難しいとは思いますが、レポートを活用してくださる方がいらっしゃいました
ら、是非ご自由に使って頂きたいと思います。下記の URL に pdf ファイルをアップロードしておりますの
で、どうぞご活用頂きたく思います。
https://drive.google.com/file/d/0By6j8NiJk_SwcW5reDBlMmgzZHM/view?pli=1
(岡 記)
*感想より*
★久しぶりに勉強しました!ずっとお話を聞いていたいくらい数学が楽しく思えた2時間でした。やはり、まず
は教師自身が数学を勉強して楽しい!と思えないと生徒はついていかない様に思いました。
★とても有意義に話し合いが出来ました。公理・公準の話は教える側として、きっちりと認識するべきだと思い
を強くしました。
★前半のレポート長尾さんのお話は大変興味深いものでした。色々な数があるのですね。長尾さん本人が数の計
算をするのにとても楽しそうにしていてそれが一番印象的でした。後半のレポート岡さんのお話はかなり挑戦的
で野心的なものだと思いました。高校生対象は難しい話題ですが頑張って欲しいです。
理科分科会
司
会…窪寺尚哉さん(かえつ有明)
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発表…永倉慎也さん(法政大中高)
文理合同クラスで行う高三生物・皆が興味を持てる授業づくり
吉田理美さん(明治学院東村山中)
中学生につけたい理科の力
参加人数…4名(国本1・かえつ有明1・明学東村山1・法政1)
記
録…吉田理美さん(明治学院東村山中)
開始時刻近くで・・・4 人しかいない・・・少し経ったら人が増えるかしら?はじめのうち、ちょっとお
遊びで、皆さんで貝殻のストラップを作ろう!ということになり、宝貝とマクラメ編みのストラップを作り
始めました。「文化祭に、景品として使えるね」
「貝殻に親しむのにいいかもしれない」「校外授業で海辺に
行ったとき、生徒が拾う貝の使い道として有効だ」などと話しながら楽しく作業が進みました。しかし、出
来上がるころになってもやはり 4 人・・・人数は少ないけどがんばろう!
「文理合同クラスで行う高 3 生物・皆が興味を持てる授業づくり」永倉信也さん(法政大学付属中高)
永倉さんは以前、受験を前提とした授業を行う学校で勤務されていました。しかし、現職場に勤務してみ
ると、大きな違いがあったそうです。大学の付属であるため、大学受験を前提としない、文系と理系の生徒
が混在するクラスで授業をすることになりました。また、前任者と入れ違いであるため、以前の様子を気楽
に聞く機会も少なく当惑もあったとのことです。それでも前向きに、モチベーションの違う様々な生徒それ
ぞれにとって、魅力的な授業をするために工夫をされてきました。
その中でも、各授業のはじめに、演示実験や映像を見せることで、その時間のテーマに多くの生徒たちの
心を惹きつける工夫は説得力がありました。
筋肉が電気信号で動くことを体感的に理解するために、家庭用低周波治療器の電流を腕に流して、指先が、
その刺激にあわせて動く様子には、私たちも思わず夢中になりました。
また、人の卵子が受精し、着床するまでの映像は、思わず固唾を呑んで見入ってしまいました。
このような、魅力的な映像や、手軽に短時間でできる実験を授業のはじめに取り入れることで、モチベー
ションの違う多くの生徒たちの興味を惹きつけているとのことでした。
では、これに類するネタをどこで手に入れるのか?やはり、教研は様々な示唆を与えてくれます。また、
学会や大学主催の勉強会、研修会は、ネタが新しくてよいなど、経験に基づく情報も多く出されました。そ
れぞれの先生方からは、実践例がいくつか紹介されました。中でも、犬のえさとして売られている鶏頭の水
煮缶で脳の解剖をすると、柔らかいため、割り箸やピンセットで解剖ができ、脳のつくりや視神経と目のつ
ながりが良くわかるなどという経験談は印象に残りました。
生徒たちの心に響く実験や映像を、タイミング良く授業にとりいれることにより、生徒たち自身の心の動
きから生じる素直な意見交換は、内容の定着や更なる興味増進につながることも示唆されました。
生徒たちの心を動かしつつ、効率よく教科書の内容を扱っていく工夫の紹介は魅力的で大変参考になりま
した。
「中学生につけたい理科の力」
吉田 理美(明治学院中学校)
系列の大学に、理系学部がなく、理系はどちらかと言うと苦手と言う生徒が多い学校において、理科で何
ができるのか?また、技術科や数学科と連携することで、新たな可能性が開かれるのではないか?という模
索の報告です。
9
入学してまもなく、定規でまっすぐ線が引けない生徒たちと向き合うことになりました。定規を押さえる
手がずれてしまい、なかなか直線にならないのです。不器用で手先が思うように動かず、作図が難しい生徒
たち。計算は何とかできても、理論的に数式やグラフを扱えない生徒たち。このままではいけない!何とか
しなければ・・・。
教員同士で話すうち、協力できそうな部分が見えてきました。
【例】
1. 技術で作図を習うとき、たくさんの線を描く授業を行う。生物分野で葉脈のスケッチをするとき、透
明な方眼用紙を葉脈標本にのせて、正確にメモリを見ながら 2 倍に拡大して描く。正確にメモリを読
み取る。数学の図形分野で、展開図を描く。
2. 代数分野で連立方程式を習った後、理科の地震分野では、生データから実際に走時曲線を書く。2 本
の比例の式をグラフから導き出して、連立し、解を見つけて、走時曲線の折れ曲がるところの座標を
見つける。
教科間の連携により、生徒たちが新しく習った知識や技術を使い慣れることで、定着と技術向上を模索中。
習ったことが、他教科でも使えることの経験は、「学校で習ったころは、工夫して違う場面でも使えるの
では?」という広がりを求める発想につながるのではないか。つなげられるところは、他にもあるかもしれ
ない。この模索を深めるには、先生方が日ごろの生徒たちの様子や互いの悩みを話す余裕も必要である。な
どの意見交換がありました。
参加者は少数、レポートも 2 本でしたが、今後につながる深い教研となりました。
*感想より*
★こうした分科会には初めて参加させて頂きましたが、とても勉強になりました。工夫された授業展開や、知ら
なかった知識を教えていただける事、又、持ち寄った案について意見を頂けることで自分の持っているものを深
められたのも大変有意義でした。学校外の活動にもこれからもっと出て行きたいと思います。ありがとうござい
ました。
★生物の授業の導入に演示実験や映像を取り入れると、その後の展開がより深いものになるのは今までも実感し
ていましたが、改めてどのようなものが効果的か考えさせられました。今後に生かしたいです。参加者の方から
の情報も参考になりました。
★私立学校ゆえのカリキュラムの柔軟性が生かせる学校もあり、ぜひ見習いたい部分と思いました(明治学院東
村山中)
。私立(教員)には異動がない分、刺激も少ないですが、それを実践された永倉先生の勇気、素晴らし
いです。学校の特性も大きく異なる中、四苦八苦されていますが、理科教員のネットワークを広げ、情報交換し
ていくことは大切ですし、私教研に参加することも一つの手段と(初参加で偉そうに言うのも何ですが)思いま
した。発表や役員の先生方、お疲れ様でした。
英語科分科会
司
会…小松昭夫さん(南部地区協役員・元目黒)
発表…中村健士郎さん(法政大中高)
コミュニカティブ・アプローチを用いた英語教育<フィリピンの英語教科書におけるタスク学習を
活用した授業実践>
石塚紀章さん(正則高校)
10
What Should We
Do in TT Class?
参加人数…9名(藤村1・法政2・日本女子大学生1・法政大学生1・大東1・元目黒1・東京1・正則1)
記
録…斉藤秀雄さん(東京)
中村健士郎先生(法政大中高)がコミュニカティブ・アプローチを用いた英語教育
「フィリピンの英語教科書におけるタスク学習を活用した授業実践」という授業実践を発表してい
ただきました。コミュ二カティブ・アプローチとは、言語の運用能力の養成、具体的なコンテクス
トの中で、適切で有意義なコミュニケーションを行うことのできる能力を身に着けること、学習者
の動機・興味や関心に対する配慮して、授業の主役になりながら学習することです。これらを導入
するところが多くなってきているということで、フィリピンのタスク授業を参考にしながら、授業
実践しているという様子の発表です。(中村先生はフィリピンでのボランティア経験があります。
)
発表のあとの質問では、フィリピ ンの高校は義務教育?なぜフィリピンにこだわるのか?タスク
学習のゴールは?フィリピンの教科書は文学作品が多いということだが、メリットはあるのか?文
学作品が多いということだがタスク学習と両立するのか?ドリルがないということだが弱点には
ならないのか?社会科の先生とはタッグを組んだことはあるのか?家庭では何歳から英語を学ぶ
のか?といった様々な質問がありました。フィリピンの教育制度は日本と違い小学校6年高校4年
大学4年制です。多くの生徒が小学校を卒業して就職していて、良いところに就職するには公用語
でもある英語ができると就職に有利になるので、主体的に英語に取り組む姿勢があるということで
す。フィリピンでは教員・テキスト・教室が不足しており、教室使用は 70人クラスの三部制の
学校もあるということです。
フィリピンの生徒は勉強が好きで、支援を受けるため、継続するためにどん欲に学ぶ。仕事を
得るために必要であるから勉強します。しかし日本の生徒は英語の必要性をあまり感じないので、
モチベーションも上がりません。中村先生のほうからモチベーションを上げるにはどうしたらよい
かと、出席者に問いかけがありました。出席者からは、教材選びが大事、自分の興味のあるテキス
トを使用する、三友社には良い教材がたくさん載っている、教科書の中にある面白くない教材はす
ぐに飛ばして次の良い教材を使用する、英語だから触れられる内容やニュアンスがある、英語と日
本語の比較をしながら面白くする、いろんな研究会に行く、いろんな授業を聞く、といった意見が
出されました。
中村先生の考えは、英語はあくまで手段であり、英語を通して世界を見てほしい、社会性のあ
る人間になってほしい。英語をしゃべれるのは大事だが、外人と一(いち)社会人として立派に
対応してほしい、そして物事に対して批判的な側面も持ってほしい、テレビや新聞などの情報を
うのみにしないでほしい、外のことに関心を持ってほしいということでした。その考え方はこれ
からより重要度を増してくると思うと同時に、ますますコミュ二カティブ・アプローチはこれか
ら必要性を増すことと思われます。それを有効にするためにタスク授業もその一つの方法だと思
いました。
ただタスク授業をどのくらい取り入れるかは学校のレベルやその授業の教室の学習レベルに違
いがあると思われますが、できるだけその割合を増やせるようになることは良いことだと感じまし
た。
石塚紀章(正則高校)WhatShouldWeDo inTTClass
11
最初の10分は電子黒板の使い方を教えていただきました。高額な商品なので簡単には手に入
らないが、ぜひ各学校にも何台か購入し、活用できることが望ましいと思いました。その次に石
塚先生の発表は、0まえがき、1学校紹介、教科紹介、2これまでの議論、3今年度3学年での
実践、4生徒の反応から見えたこと、5考察と続きました。その中身を短くまとめると、正則高
校ではALT2名がいて、TTは英語表現Ⅰ・英語表現Ⅱ・英語Rの授業で実施し、生徒たちは
2週に1度TTの授業を受けます。これまでの訳読中心の授業から、英問英答やTrue or False
といった内容理解を行っていく形へとシフトさせ、実践を積み上げています。従来のTTの基本
的な流れは1、挨拶2、JETとALTによるDialogue3、練習:生徒によるペアワーク4、実
践:ALTとの会話活動やリスニングタスクなどです。今年度3学年での実践は第1回ニュース
記事を英語で紹介し、自分の意見を述べる。第2回意見について賛成・反対を表明する・自分の
意見の理由を述べる。第3回あるトピックについて、賛成または反対を表明し、理由を述べる。
第4回ALTにインタビューする。今回の発表は第3回のTTです。
(実際に参加した先生方がペ
アを組み体験したが、先生方も楽しそうに授業をした。)リスニングからペアワークに切り替えた
ことで、授業開始から生徒に動きがあり、より生徒が「やらなければならない活動になった。」授
業全体としてみれば、50分の授業時間の内のほとんど生徒が考える時間となっており、発信自
体も大きく増加しました。これらを通して適切な形容詞のブラッシュアップの必要性と、教員側
が形容詞や副詞を用いた表現のレパートリーをより増やしていくことが必要で、良い言語材料を
集めていくことが重要と考えました。先生方からの質問では、TTの主導はALT?息の合わな
いALTとはどうするべきか?2週間で1回でいいか?英検指導は?教材を作るのは大変?感情
の表現は?など様々な質問が飛びました。ALTとのTTは準備を良くして、息を合わせ、効率
よく進めればかなり主体的で豊かな発想力を養え、英語力が身に付きそうです。ただネイティブ
のALTの授業は費用がかかるので、その辺の学校側の理解と援助が重要だと感じました。
*感想より*
★石塚先生の発表は目からウロコでした。電子黒板の使用もさることながら、大変コミュティカティブなトピッ
クを使用している点は、子どもたちが英語を使う上で必要であると思います。T&Tは法政では毎回暗唱させて
おり、重要なことではありますが、生徒が楽しめそうなのは石塚先生のような生徒に考えさせ、英語で表現させ
る授業であると思いました。石塚先生の学校では2週間に1回という頻度でT&Tの授業があるそうですが、せ
めて週に1回だと良いかもしれません。大変勉強になりました。ありがとうございます。
★中村先生のレポートは、英語を第2言語(公用語)とするフィリピンの英語教育アプローチを紹介していて、
そのレベルの高さと、現実社会の結びつきに驚きました。日本の高校英語(もしくは大学英語)でこのレベルま
で到達することが、世界的基準からすると求められているのだなと感じました。生徒の声や書いたものがあれば、
別な機会でまた発表していただきたいなと思います。私自身のレポートは話題づくりと思っていましたが、書い
ている過程や実際の討議で改めて考えることが多くありました。勉強になりました。
★お二人の若い方のレポート発表を聞き、少ない参加者ではありましたが沢山の質問、意見交流することができ
ました。英語は3年前から「コミュニケーション英語」が始まり、どの学校も苦労しながら新しい授業展開を行
っているのがわかり、励まされました。英語を通じて生徒に何を考えさせるのか、そのためにどんな教材を扱う
のか、もっと多くの方と交流したいと思いました。
★正則のTTの授業はトピック選びからとても面白い内容になっていて、生徒がペアワークで生き生きした状況
が思い浮かびます。生徒が agree or disagree に分かれて、自分の意見を言えるようにしていくのはとても大事
12
なことのように感じました。特に、生徒が授業中いかに活動的になれる時間を確保することは大事だと思ったの
と、英語をしゃべる時間中、英語で考えさせる時間を取ることがとても重要であると考えさせられました。
クラスづくりと父母協同分科会
司
会…糸井駿平さん(大東学園)
・佐藤未希さん(東小松川幼稚園)
発表…上山達典さん(法政大中高)
要求の高い保護者とどう向き合う?
小田原時弘さん(修徳学園)
親の心をわしづかみにする方法
助言者…岩上昭司さん(成城学校)
参加人数…15名(成城1・修徳1・東小松川4・藤村1・和光鶴川小3・大東3・法政1・関東一1・)
記
録…橋本紗弥さん(和光鶴川小)
クラス作りと父母共同、ということから、幼稚園から高校までの先生が集まり、意見を交流することがで
き、とても貴重な場になりました。
上山達典さん(法政大中高)
『要求の高い保護者とどう向き合う?』
上山先生からは、学校と父母との共同の難しさについて悩みが語られました。上山先生の学校では、保護
者は保護者会などへの参加も多いのですが、学校への期待も大きく、排他的に子どもを見てしまう親、また、
そしてそのような声に対して、保護者が言ってこないからいいや、言ってきたからどうしようか…、といっ
たところが学校にある、といった悩みが話されました。例えば保護者から「調査することで人間関係が悪く
なるからやめてくれ」
、などを聞いてしまう、といった父母との共同、そして学校内の父母共同に対する意
識の共有の苦労が話されました。そして、父母共同や子どもへの見方について意見が交流されました。
参加者からは、
「なぜそのトラブルを起こしてしまったのか、そこからがその子の心理が読み解けていく。
どこの学校でも起こりうること、頭が悪い、いいではなく、同じ中で育っているのだから。そこが親とも語
り合えていけば、親も成長できるのでは」
「親が実態をみないで、イメージでこうしてくれて当たり前、と
かけ離れた要求があるように思う。私立は特に高校への期待、不安を抱えてくる。実態と一致させてみれて
いるのかが大切」といった意見がだされました。
「教員が父母共同をどう認識していくのか、
共有できていないところが課題。トラブルが起
きたら、高校行かさないでいいよね、という話
題になってしまう。親も排除の意識になってし
まう」という上山先生の思いも語られる中、
「父
母共同をつくっていこうとしているところに、
希望を持てる。問題を起こさない子に育てるで
はなく、問題を起こしたときにそれを共感でき
るようにしていくことが大切」といった交流が
され、それを職員会議や学年会など、教員間で
共有していくことが大切なのではないかとい
13
った意見が出されました。それぞれから、どう子どもを見ていくのか、自分の学校の父母共同と重ねながら、
意見が話されました。
助言者の岩上先生からは、学内教研があることの大切さ。親に言われて右往左往するのは、間違った動き
ではない。子どもは事件を通して成長する、これを通してこう成長させたいんだ、と親にも伝えていく。親
の意見だけになってしまうと辛くなってしまう。親の意見を聞いて学校を作っていくのは大事。といったこ
とが語られました。
学校としてのスタンスや子どもへの見方を共有すること、子どものトラブルなどをどう見るのかなど、参
加された先生たちから、それぞれの意見が出され交流することができました。
小田原時弘さん(修徳学園)
親の心をわしづかみにする方法
小田原先生のレポートでは、父母共同で大切にしていることが語られました。4月のはじめての保護者会
をすごく大切にしている、という小田原先生は「子どものこれまでを振り返る」という作文を保護者に書い
てもらうなど、工夫されている部分も話して下さいました。親に、教師が何を大切としているのかを知って
もらうことや、「親が子どもの前で一方的な見方をしてしまうと、子どももその考えの中で育ってしまう。
(こういった考えもあったのかもね)
、など親も色々な目で物事を見ることが大切、と伝えている」など、
学ぶことがたっぷり詰まったレポートでした。
参加者の幼稚園の先生からは、幼稚園での保護者のつながりについてが話され、幼稚園の親は、親同士安
心して話す機会が今までなかったりと、まだ繋がりがない人も多く、孤独を抱えている人も多いのでは、と
いう意見から、お母さんの関わりの場となること、そして1つの問題に対して、保護者全体で見ていくこと
の大切さを皆で確認することができました。
最後には、参加者それぞれから想いが語られました。保護者会など、働いている保護者は参加できない時
もあるので、それは郵送するなど、一緒の仲間だという姿勢でいること。教育って柱を持っていないと、た
だ繋がってもあまり意味がない。教員を集団にしていくことが大切。など、想いが語られました。
助言者の岩上先生からは、我が子を語るという作文は、親は安心する。(自分の子どもを理解しようとし
てくれている)このメッセージが信頼の第一歩になる。親との関係で争論の意見には、メッセージがある。
具体的につかむことが大切、といったことが話されました。
2つのレポートを軸に意見を交流する中で、改めて子どもを保護者と教員が一体となって育てていく、見
守っていくことの大切さを感じることができました。また、そのためには、教師や学校が意識を共有して集
団となることが何よりも大切なのだと感じさせられました。幼稚園から高校までの先生が集まり、意見を出
し合うことができ、充実した分科会となりました。
*感想より*
★幼稚園から高校までの先生が集まり、それぞれのクラスの様子や父母との関わりについての話を聞き、今後に
繋げていきたいなと思うことがたくさんありました。小田原先生の「子どものこれまでを振り返る」という作文
を保護者に書いてもらうっていうのがすごくいいなと感じました。一人ひとりの成長過程があり、そういうのを
保護者に書いてもらうことで、子どもについて、保護者と教員とで話すきっかけにもなるし、知ることができる
ので、子どもにとってよりよい環境になるのではと思いました。
★幼稚園では初めての学校生活ということで、親、子どもに不安も多く、担任としても丁寧に対応をしていかな
ければと心掛けています。その思いからか、どうしても個別対応中心になり、私(担任)自身の負担が増えてい
ることも1つ、でも、親の不安は減らしてあげたい、伝えてあげたい…全体で話していくという事は、どちらも
14
解消していけるのではないのかなと感じました。保護者会、今はまだできないのが現状ですが、できるようにな
り、その中で保護者の不安も減らしていけるお手伝いができると良いです。
★学園によってクラスづくりや父母協同に向かうスタンスがどう違うのかがよくわかった。法政のトラブル対応
に苦しむ話や、修徳の小田原先生の実践を自分の学校と比べて、良い所、足りない所を考えることができました。
私も「子どもの良い所ベスト3」を書いてもらうということをやってきましたが、「我が子を語る」もやってみ
ようかと思いました。また、クラスや父母の集団作りのためにはまず教員(職場)が集団にならなくてはいけな
いということに気づくことが出来ました。組合の存在意義をこんな風に感じることになるとは。
★2本のレポートありがとうございました。レポートを聞きながら「教育」としての父母との協同をどうしてい
くのかとか、保護者の集団作りのための教員の集団作りをどうしていくのかなど、多岐にわたり考えることがで
きました。
午後の模擬授業(1時半~2時半)・授業検討会(2時半~3時半)
<平和をどう教えるか>
授業者:松山尚寿さん(和光高校 校長 社会科)
テーマ:「辺野古・沖縄・安保を考える」
司会…米山昭博さん(大東)
記録…北田邦夫さん(東海大望星)
参加人員25名(大東5,和光4,晃華3,法政3,藤村女子2,鶴川2,成城・東京・国本・明星・東海
大望星・明学東村山各1)
まずはじめに授業者が「この授業は高校2年生という設定で行います。
」と宣言されて授業がはじまりま
した。毎年3泊4日で沖縄に生徒を連れて行くという学校行事で撮影した写真をパワーポイントで紹介しな
がら「これはどこか」等の発問をしながら授業は進行していきました。実際に生徒を沖縄に連れて行き、し
かも生徒に、高校生を含む地元の人に対してインタビューさせる、そして米軍基地をも訪問し勤務する米兵
とも意見交換するという、大変興味深く内容の深い沖縄の基地問題に関する学習を土台に、
「広い視野から
沖縄の基地問題を考えよう」と、普天間基地が建設された経緯・経過、現状、そしてその移設先に辺野古が
選ばれた理由等、次々と繰り出されていく意外な事実によって誰もが引き込まれていく、とても興味深い内
容で授業が展開していきました。
ひとしきりの説明ののち、
「あなたは辺野古基地建設を認めますか。」という発問があり、4人位のグルー
プに分かれて意見交換をすることになりました。その際、
「A,建設に賛成」
・
「B,建設は仕方がない」
・
「C,
建設に反対」
・
「D,自分には関係がないのでどちらでもよい」
・
「E,今の段階では判断できない」の5つの
立場のいずれかを選ぶように指示されました。そのあと「在日米軍は日本を守るためにあるのか。
」と問題
提起され、「それは『なぜ米軍は日本に基地を置くのか』を考えればわかる。米軍基地の費用の7割を負担
してくれる日本に置くほうが維持費が格段に安いし、日米地位協定でアメリカ本土では不可能なことも日本
ではできるからだ。
」そして「なぜ本土では反基地闘争が進展しないのか」、最後に「戦争法案を阻止するた
めの組合の役割とは何か」というテーマで5~6人で話し合いをすることになりましたが、
「組合は運動の
力になっていない。特定秘密保護法を通した段階でもっと行動すべきだった。」等の意見が出ました。模擬
15
授業全体への質疑応答としては「生徒を連れて米軍基地を訪問し交流する方法は。」という質問があり、授
業者より「自衛隊の広報担当を窓口にするのがいいが、手続きは大変」等の回答がありました。また「日本
人の気質として中立的意見が多い。色々な問題を考えるには知識を持った人がそれを広げていく必要がある」
等の感想が述べられました。
大変内容が深く、知らず知らずのうちに引き込まれていく魅力のある模擬授業でした。
*感想より*
★松山先生がご自分の足でかせがれた事…そして「目からウロコ」「それが根っこにある!」と気づいて人(生
徒)に伝えたくて仕方がない事…それが今日の授業の原動力だと感じました。私も沖縄への問題意識がありまし
て…生意気ですが同じ土台を感じた次第です。史実・法の条文などで明確になってしまっている決まりごとを客
観的に紹介する中で、いかにヤマトとウチナーがコケにされ、軍事植民地化しているか…これをそれぞれの学園
で子どもたちに伝え続けるべきだ!と決意を新たにできました。ぜひ、辺野古・高江でお会いしたいです。
★辺野古のことから安保のこと、基地のことを日本で生きている者としてだけでなく、人として深く問われまし
た。基地移設も、安全保障法案も私は反対ですが、確実な理由をもって伝えられない曖昧な自分に腹がたつのと
同時に、周囲ともっと交流していかなくてはと強く感じました。
★強く思ったのは、偏った情報で判断してはいないか?情報は一方通行であり、操作される側面もあるというこ
とを据えて判断することの必要性を説いていきたいと感じた。高校生の気分(?)になりながら新鮮な気持ちで、
夢中で授業に参加できました。生徒たちが主体的に学べる工夫がされているには、そのための研究が十分すぎる
ほどに行われていると感じました。
★辺野古について今まで意識的に考えたことがありませんでしたが、本日松山先生をはじめ、多くの先生方のお
話、大変勉強になりました。日本人とは、どちらかというと中立的な人が多い気がします。たとえそれが悪いこ
とでもそれが判断できなくなることもあります。本日のような機会がもっと多くの人にあり、それがもっと多く
の人が考える材料になると良いなあと強く感じました。
★基地とは何なのか?根本的に平和とは何なのか?生きにくさを感じた時、人は何かをこわしたくなる…?何を
争っているのか?色々と考えさせられました。でも何があっても戦争はイヤです…個人が幸せを追求するチャン
スを奪うことはだれにも許されていないはず…だと思います。
★うちの職場、大分平和教育が遅れている、というよりも政治の話をするのがタブーになっている雰囲気があっ
て、どうにもやりにくいと感じています。戦争法案を止めるには早急な対策が必要かと思いますが、それとは別
に、教育はなかなか成果がすぐ出るものではないので、長いスパンで平和教育を考えていかないと思います。ど
うやってそれを進めていくか、少しずつ仲間を増やしていきたいと思います。
授業者:川田玲子さん(A学園・社会科)
テーマ:「女性と人権 慰安婦問題を考える」
司会…石川秀和さん(法政大中高)
記録…武藤由美さん(大東学園)
参加人員10名(大東2・法政2・書記局1・正則1・法政大学生2・鶴川1・A学園1)
0.最初に
~川田さんから~
今回「お知らせ」には学校名を出していません。理由、自分自身はもう気にしていないのですが職場の同
16
僚達はまだ気にしているからです。これは今まで職場でごく当たり前のように取り上げてきた題材です。勤
務校が女子校なので、いろんな問題の入口になっているのでこの従軍慰安婦問題を取り上げるのは自然なこ
とでした。しかし 1 年前に週刊誌から突然取材が入りました。「慰安婦問題を教えているとは何事だ。」な
ぜこの授業の内容が週刊誌側に伝わったのか、わかりません。週刊誌側とは電話でやり取りをしましたが、
昨年度の現代社会の問題用紙がどうも週刊誌側の手元に渡っていたようでした。現代社会の授業は昨年度は
2人の教員で担当していました。4クラスを私担当し、もう一クラスをもう一人の同僚が担当し、その同僚
の作った問題が渡っていました。週刊誌に記事が出て、ネットでもバッシングをひどく受けました。それを
生徒や卒業生、保護者も見て学校は大騒ぎになりました。それ以降、学校は気にしていて、今年は慰安婦問
題を授業で取り上げてくれるな、と学校からは言われています。今年度は、授業の流れの関係もあり今日ま
で授業では扱っていません。
1.1年間の授業内容
授業時間数
1 学期 25 時間 2 学期 25 時間
授業内容
1 学期
日本社会における女性の地位
18 世紀までのヨーロッパでの女性の地位
戦時下の女性たち 等
2学期 労働問題 労働と貧困 日本国憲法の人権規定(LGBT を取り上げている) 等
2.授業の実践
「従軍慰安婦って聞いたことはあるけど、中国とか韓国のでっち上げでしょ?」
2015月18日
(1)
アメリカの研究者ら 「偏見のない声明を」
従軍慰安婦とは何か?
「従軍」という言葉のイメージ=自主的
「慰安」=慰め安心させる
でも実際はほとんどが騙されて、強制的に。
慰安所で日本軍兵士の性的な相手をさせられた女性
そのため、従軍慰安婦という言葉は実態を正しく伝えていない。という批判も。
ビデオ鑑賞(朝鮮人慰安婦
在中国
ハ・サンスクさんの証言)約10分
(2)なぜ慰安所ができたのか?
戦争―心身ともに健康な男性を徴兵
→連日の残虐行為で精神のバランスを崩す
殺戮をスムーズに行わせるために差別感情を植え付ける
米軍兵 多くが精神的虚弱で戦闘心が弱まる
6日間連続して徹夜で戦わせると94%が精神異常をきたす
→さらに残虐な行為に発展(強盗、強姦、虐殺)
→軍の指揮系統が乱れる
→日本軍:兵士を鎮めるために女をあてがう
ドイツであったかも? アメリカ・イギリスにはなし(本国に兵を返す・前線から離す)
兵士同士でどれだけ銃を発砲したか?――全体の15%位(アメリカ
吉見義明「従軍慰安婦」岩波新書
資料より「強姦事件の防止」
「性病の蔓延の予防」
しかし性病患者は減らなかったし、強姦事件も減らな
かった。
17
慰安婦にさせられた女性たち
ンドネシア
日本旧植民地出身の女性=朝鮮半島出身・中国・オランダ・フィリピン・イ
日本女性はごくわずか(慰安所でもし自分の妹にあったら、
、
、?という状況を避けるため) 強
制され、騙されて連れてこられた。
正確な人数を表すデータはない
性病関係の統計資料から――51.8%が朝鮮半島出身
兵員100人に対して 1 人の慰安婦が必要と考えると計算では 4 万 5 千人が必要になる。29 人に対して
1 人だったら、20 万人必要。
3.授業についての感想・反応
①当時の生徒の感想
②学校外の反応
――「この授業を続けて欲しい」が一番多い声
――「どんなひどい授業をやっているんだ?」右翼から沢山電話がかかってきた。他教
科の人から「ひどい授業」と決めつけられたのは大変辛かった
③現在の生徒の状況――最初は「ひどい授業をやっている人なんでしょ?」先入観を持たれていた
④職場の反応
――「入学者が減っているのは川田のせいだ!と職員会議で何回も話題になっ
た。春休み中に開かれた会議(自分は家庭の都合で欠席)で「川田を高校3年生の
現代社会からはずせ!」という意見も。
質問・討論
A
自分も「従軍慰安婦問題」を学校で習った覚えはありません。先生は従軍慰安婦について今までもず
っと教えていたのですか?
――慰安婦問題がマスコミで取り上げられるようになったのは1991年以降。当時のバッシングとして
は、「慰安婦問題を考える会」の会場に右翼が乗り込んできた位。歴史の問題として取り上げられる
ようになったのは最近のこと。現在の中、高校生は、その時の教科書に載っていなかったため、学ん
できてはいない。1997年には全教科書には載ったが、2006年に教科書の本文からは削除され
るようになった。今現在は実教出版の教科書にしか載っていない。(現代社会)性にまつわることは
激しい反応がくる。授業担当者の温度差によってとりあげたり、とりあげなかったり。
B
川田さんはあまり用心しないでこの授業をしていたんですよね?
――そうなんです。今までは何も警戒せず牧歌的に授業をやってきた。なので、去年突然こういう取材が入
ったのはとても不可解。ネットにどっぷりつかっている生徒はたくさんいるので、そういうところで情
報を得ている子が多い。在日の生徒も多いので、それも関係しているのかな?
C
本校も耳を閉じちゃう生徒がいるが、川田さんの学校ではどうか?
――沢山います。先入観もないが基礎知識もない。しかし3、4年前くらいから「先生の授業を聞くと日本
を嫌いになる」と言い出す生徒が出始めた。
C
そういう生徒へのアプローチは?
――それは私も教えてもらいたいけど、話をしていくしかないのかなぁ。
「なんで嫌だと思うの?」と問い
かける。でも話してくれるだけいい。問題なのは、何も言わなくて勝手にネットに書いている子かなぁ。
C
「そういう生徒がここ2、3年で急に増えた」と先輩の先生は言っている。
――今年は「戦争時の兵士の心理」をみていった。第二次世界大戦中のこととか。日本軍の加害行為と言っ
ただけで、ダメな生徒がいるので、アプローチを変えている。どういう基礎訓練かというと、
1、脱感差
ホラー映画とかをずっとまぶたを伏せないようにして見させる
2、条件反射 銃で打つ練習を段階を踏んでうまくなるよう練習する
3、ご褒美
射撃ができたら、打てばご褒美をもらえるようにする 差別感情を植え付ける
18
この訓練のおかげで、ベトナム戦争中はアメリカ兵は精神的に戦えたが、戻ってきてから多数が PTSD
になった、と言われている。
「今も知らないうちに気がついたら実はゲームとかでやっているかもね?」
というと生徒はよく聞いてくれる。
D
河野談話・村山談話で日本はそもそも戦時下の課題を認めて謝罪する、ということには授業でふれて
いるか?
――授業の中で談話については触れる。事実を事実としてあげていく、他の国はこう、あなただったらどう
思う?というふうにしたい。今のところ作戦を立てている最中。アジア女性基金についての説明も意見
が分かれる。できるだけ偏らないように紹介している。
B
ひとつは、この話がでてくる必然性が1学期からの授業の流れの中にあるということ。その前に勇気
ある実践で、これからも負けないでやっていただきたい。戦争と性暴力の関係は、国家の問題だ、というこ
とについては生徒の理解はあるのか?資料で出したらどうか?戦時性暴力を扱うようになった関係を年表
で抑えているだけでも、国家と組織の全体的な問題だという形でこの問題に入っていったらどうか。「みん
なの周りにこんな人いますか?女性に対してこういう性的な扱いをする人いますか?」という問いかけをす
るといっていたが、実は今でもこういう扱いを受けている人はいくらでもいる。現在の性暴力の問題として
いくらでもいる。この問題は、どんな人もこういう仕組みの中にいるとこの構造に絡み取られてしまう、と
いうこと。解説を加えても、文字ヅラも資料だけ、としたらどうか?裁判でもそれなら大丈夫。
――資料を出すのがすごく怖くて…非常にためになりました。
A
すごい授業だな。私は自分が受けた現代社会は覚えていないが、これはすごく心に残る授業だなと思
いました。
E
日々の生活に追われていると、なかなかできない。
――資料の取捨選択、これもあれも言いたい。短時間で、かつ外さず、ツッコミが入らないように、
今後安倍政権は閣議決定しないと言っているが、何らかのアクションは起こすと思うので、何らかのこ
とはしなければ、と思っている。そこまでには生徒との関係を良くしておかなければいけないなと思う。
E
高校生は意外と知りたい、分かりたいと思っているのではないか。現在、高校3年生の政治経済を教
えている。同僚は中国の歴史を中心に近現代を教えている。それに対して生徒は「私たちを反日教育に洗脳
しようとしている」自分たちのなかの知らない概念に対して、ちゃんと知りたいと思っているのではないか。
そう最近思う。生徒の問いかけを、揚げ足を取ろうとしている、と思わずにきちんと答えてあげることが必
要だな、と思う。
F
歴教教大会で、右翼の人が2人いた。生徒自身がその矛盾に気づくかどうかが一番かな、とは思う。
生徒に発言するときに、その資料の出典をきちんと書かせたらどうか。言ってくれない生徒が一番厄介。
C
ちょっと出典書かせるのは危険だなと思う。自分が信じているものを壊そうとする、と感じてしまう
のではないか。
B
生徒は、自分と違う意見を持っていても、何を根拠にそれを言っているのか?を知りたがっている。
その姿勢に対しては生徒は尊重してくれる。生徒はニュートラルな人が好き。ニュートラルな絶対動かない
資料、それを使う。軍の公式の会議での一時資料を使うだけで、「韓国人のうそなんでしょ」というのがガ
タガタと崩れてくはず。とにかく、公立中学高校では、社会科で従軍慰安婦のことを勉強することはできな
い。私学でやるのも命綱。
「戦争と性暴力」というくくりの中でだったら、いくつかはできるかもしれない。
――動画、映像を見せたいのだが…。どれをピックアップするかで悩んでいる。WAM の人が作ったビデオ
も、作った人自体がおかしい、ということになっているので…。慰安婦の人がどれだけ苦しい思いをし
ているのか、を知ってもらいたい。何十年もたっているのに今も苦しんでいる、というのを見てもらい
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たい。見れば、この人が嘘をついているかどうかはわかる。そこが今は悩み。映像資料を使いたいのだ
が、校内で残酷なものを見せているという批判があったので。見せるとしたらどういうものがいいのか
な?
B
映像で心配なのは、今名前を出して証言してくれているひとりひとりについて、ネットで否定されて
いること。一番いいのは裁判所で認定されている証言。それが安全。
D
裁判で認められている第一級の証言は有力かな、と思う。第一級で加害を証言されている人がいるの
では。
B
思い出を書いている人だったら沢山いる。
G
生徒の感想は?
――期末テストでは、
「現代社会でまなんだことを未来につなげるにはどうしたらいいですか?」という問
題。「日本がやってきた加害の歴史をみんな知るべき。だからこの授業をやめないでください」とみん
な書いてくれた。
「朝鮮人慰安婦の証言」というビデオを見せた時、お通夜みたいになっちゃった。今
まで嘘だと思っていたけど、違うと思った。
「でも日本はもう謝ったと聞いています、だからいいんじ
ゃないか。」と書いた生徒も100人のうち2人くらいいた。いつまでもそんなことにこだわっている
なんて…と書いた生徒もいた。
最後に(川田さん)
私自身まだ発展途上なので、今後作戦を立てていく上で重要だなと思ったので、大変ありがたかったです。
ありがとうございました。
*感想より*
★先生の勇気ある実践に敬意を表するものです。今後ともより豊かに実践していただきたいです。発言でもお伝
えしましたが、必要な警戒心を持ち、資料も精選(=一次資料・政府の公式の言明など)していくことが必要だ
と思います。それによって、「半信半疑」の生徒たちの抵抗感も減らすことができるのはないかと思います。日
本だけが悪かったのか?という誤解にならないように、「戦争と性暴力」ということについての理解をある程度
してもらうことも必要かもしれません。
★一次資料が大切であるという事を改めて知る事ができただけでも、参加した意味があったと思います。また、
日々の忙しい中で上記の事をしっかりと行っていくためには、みんなでつながってお互い協力しながら授業をつ
くっていく必要があると感じました。川田さんのファイトから力をもらいました。
★戦争を学ぶ時、日本の加害的な面そして今日の慰安婦問題は絶対に今の生徒に伝えなくてはならない内容だと
思う。ただ正直、慰安婦問題は公立の学校では教えられていない。教科書にも載っていない、私立でも教えると、
このようなバッシングがあるというのは知らなかった。私がもし川田先生の立場だったら、怖くて教えられない
かもしれない。でも、やはりこれからもこの授業を続けてほしいと強く感じました。先生の意見を前面に押し出
すのではなく、資料を通して事実を伝え考えさせるというのはいいと思う。すごく心揺さぶられる授業でした。
これからも頑張ってください。
★バッシングにもめげずに慰安婦の授業をされていることにまずスゴイと思います。戦争を行ったことでこの問
題が起きているわけですが、この恐ろしい戦争、現在の若者たちは、参戦させられるかもしれない。だからこそ
川田先生はこの授業の必要性を感じているのだと思います。二度と戦争によるこのような犠牲者(戦死者だけで
なく全ての)を出すことのない社会にしてほしいと感じました。
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<スマホに勝つ面白授業>
授業者 糸井駿平さん(大東学園・家庭科)
テーマ:タダってなに?
司
会…小野博司さん(東京実業)
参加人数…18名(和光1・明星1・鶴川1・法政学生1・東実1・日本女子学生1・東小松川幼2・藤村
2・大東2・和光鶴川小2・正則1・関東一2・書記局1)
記
録…三木ひろ子(鶴川)
~家庭科の消費生活の授業の最後に、テスト範囲を終えて一時間で組んでいるのがこの授業です。
糸井先生が、「自分の疑問を考える」というスタンスで準備しました。~
「タダのもの、というと何を思い浮かべますか?このピンク色の紙に書いてみて下さい。」まずは
こんな気軽な導入でスタート。思い思いにタダのものを書き、それを近くの人と交換。発表は自分
のものではなく、人が書いた「タダ」を読み合います。「ライン」「アプリ」など今風のものから、
「試食品」
「ホットヨガ体験」
「無料マッサージ」などの年齢を感じさせるものまでいろいろ出ます。
中には「愛」
「運命」などの哲学的なものま
で。
「スマイル」に記録者は「何、スマイル
って?」と思わず。
「マクドナルドでスマイ
ルお願いします、っていうと、無料で飛び
きりの笑顔をしてくれるの知らないの?」
と皆に言われてしまいました。そんな風に
座を沸かせた後、ニンゲン観察バラエティ
『モニタリング』を見ます。無料のブロッ
コリーを喜んで持って帰る人の多い日本に
対して、手づかみのポップコーンをほとん
ど持って行かないアメリカ。この違いは何
だろう?無料に対する危機意識?ブロッコ
リーはそのまま売るけれど、ポップコーンは普通手づかみでは売らない・・・など意見が飛び交い
ます。
次に、ピンクだけではなく、青い紙が配られ、「次のものは無料・有料どちらを選ぶ?」という
ことで無料はピンク、有料は青の紙を挙手の際に上げます。例えば、ポケットティッシュ・水・ノ
ート・髪のカット、そして「お金をかけないで時間を使う」か「時間を使わないでお金を使う」か、
などという人生に関わる選択まで。普段自分は無料のものを選んでいるかお金を払っているか考え
ていきます。
そのあと、ゲームアプリ0円のからくり、ということで、最初タダで始めたはずなのに、次第に
のめりこみ、お金をつぎ込んでしまった例の「クローズアップ現代」を見ます。ゲームの中で、勝
ち進むと、仲間から称賛されるので、それがうれしくて有料でアイテムを手に入れてしまい、はま
っていくというもの。
「130万円はお金をかけました。だからもう今更やめられません。」そして、
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ゲーム会社がどのように意図して作っているかの制作会議では、「どんどんのめりこんでもらわな
いと困る」「早く勝ちたい、結果が出したいという気持ちを駆り立て、アイテム獲得に走らせる」
などのこわーいノウハウが。
これを経たうえで、改めて「タダは本当にただなのか。裏があるから警戒する必要があるのでは?」
という事が明らかに。もう一度最初の選択に戻り、無料でもらえるというものも本当に無料なのか
を考えていきます。例えば公園の水だって税金で払われているわけだし、カットモデルで切っても
らえば、失敗するかも、というリスクを負う。Tシャツ3枚で2枚分の値段などというのは、もと
もとそれでももうけが出るような価格設定になっているという事。ティッシュやノートにも広告代
がふくまれている、など。
「タダ」を安易に利用することについて、ちゃんと考えなければいけないね、という認識が広が
る授業でした。実際に生徒たちに授業をする際は、このあと、「あなたはタダについてどう考えま
すか?」を書かせて終わりになります。
授業後、参加者でたくさん意見交流しました。その内容の一部を紹介しましょう。
「私もおばちゃんなので、タダは大好き(会場・笑)
。でも、よく考えるとただってないよな、と。
被害にあうこともあるんですよね。」
「今は、ライン、フェイスブック、そして無料のアプリとあり、魅力的だけれど、危険があるんだ
な、と自分たちの日常を考えさせられました。」
「ずっと考えつづけて、やり取りができる、参加して面白い授業でした!題材もとてもよかった。
うちの学校の子どもたちも、パズドラとか妖怪メダルが欲しくて保護者のお金を使ってしまったり
とトラブルがあります。そういう事を考える授業を生徒とともに作っていきたいですね。」
「自分もゲームが好きなので、はまる気持ちはわかるような。もちろん無料の範囲を出ないけれど。」
「ぶつぶつ言いながら楽しく授業に参加できました。試食とか無料体験とかのような顔が見えるタ
ダは断る勇気が必要だから覚悟するし、手を出しにくいけれど、ネットなどの顔が見えないタダは、
気軽に手を出せて、制限が難しいなと思いました。」
「今は、課金など消費スタイルも変わってきていますよね。だからこれはどの教科にも広げていけ
る学習かなと思いました。」
「タダを通して考えるって大事ですよね。タダと思っていても、勝手に搾取されている、という事
がある。あと、メディアを使うとき、そのまま流すのではなく、糸井君が辛口のコメントを差し入
れながら見せていたのがよかったな。」
「発展性のあるテーマですね。ゲームアプリと悪徳商法、とかTシャツの価格はどういうからくり
になってるか、とか、日本とアメリカまたは関東と関西の文化の違いはどうしてとか。ぜひこの続
きの授業を研究してほしいです。」
「糸井先生は自分でインスタントの授業準備と言っていたけれど、生徒達に考えさせるための映像
を常にチェックして探しているという意味では、全然インスタントじゃないと思います。タダとい
うのは広告のしかたであり、誰かがお金をめぐって損したり、得したりしているそういう企業戦略
にまで迫っていくと、なお面白くなるのではないかと思いました。」
「ただというと気楽だし失敗が許される気がして、考えずに入りがちだけれど、実は便利さの陰に
リスクが伴うんですよね。今まで自分が思っていた視点から広がる授業でした。アプリの仕組みを
知ることを伝えても面白いかも。」
「何を無料か有料かって、実はその人のアイデンティティがかなり関わってますね。たとえば僕は
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ノートにこだわってるから、ノートは絶対自分の気に入ったものを買うみたいな。それと、ただ、
ということでゲームアプリにはまると、すぐに結果を求めたくなる。すぐ結果が出ないと面白くな
いんですよね。ところが学ぶことの楽しみってすぐには結果が出ないし、とても苦労したりする。
でも時間をかけてそれがわかったり気付けたりするのって本当に楽しいじゃないですか。そういう
学ぶ楽しみを子どもたちに伝えるにはどうしたらいいのか、それが本当にスマホに勝つことかな、
なんて考えていました。」
*感想より*
★タダの奥に何が見えるのか、とても若い世代にわかりやすい授業だったと思います。携帯ゲームの課金は本当
にこわくてせつなくなりました。でも、大人でも子どもでも、誰かに認めてもらいたい、リアルじゃなくてゲ
ームの中で、というところが印象に残りました。そして、この授業の先を見てみたいなあと思いました。
★位置づけを課題研究にして、夏休み等でレポート化させることも興味深そうである。投げかけで終わりでもも
ちろんいいと思う。もやもやして終わる授業こそ、問題を喚起すると考えるからである。
★紙片を用いて周囲と交流する方法が良かった。自分では気が付かない発見があった。多くの生徒にとって、実
体験があり、興味があり、考えがいある題材だと思うので、授業の後、交流の時間が持てるととてもよいと思
う。
★今日「スマホに勝つ」では、3つのポイントを知ることができました。一つ目は面白い授業をし、生徒に興味
を持たせるという点です。面白い授業をすることで、スマホより面白ければ、生徒は徐々に顔をあげていくと
思いました。二つ目は生徒と一緒に活動するアクティビティを取り入れるという点です。生徒に質問を投げか
けることで、それを考えなくてはいけなくなり、スマホを見ることがなくなると思いました。三つ目は、頻繁
に生徒と会話や活動を細かく入れていくということです。ゲームをやっている場合、頻繁に立ったり座ったり
することで、ゲームに集中できなくなり、やめると思いました。
★授業の中に子どもたちを引き付ける仕掛けが隠されていたのが、工夫されていてさすがだなあと思いました。
(映像や子どもが参加する仕掛けなど)タダは社会にはたくさんあって、それは便利な部分もあれば、その裏
も知る視点を得る授業だったなと思いました。子どもの言葉で、今の社会とタダをつなげて語り合って面白い
な、と思いました。討論の中で、石川さんの言葉、タダと時間の関係が面白いなあと思いました。時間を買う
って、今の社会には沢山あるのかも。
★面白くて時間があっという間に過ぎた。生徒も楽しく学べるのではないかと思う。ただ、動画はかなり恣意的
に切っているので、自分のバイアスが掛かり易いのではないかと思う。どちらを選ぶのか…の静止画の必要性
は特にないかな…それよりもっと多くの事例を挙げてみた方がいいかと思う。少し、生徒同士の討議の時間を
作ってみたら面白い。せっかくこれだけの準備をしたなら、与えるだけにならない方が良いのでは?
★身近な題材で、考えたくなる、面白い授業でした。初めに、
「身近なこと、もので、タダの物と言えば?」と、
自分たちで考え、交流したり、映像を使って考えさせるなど、生徒が主体的に参加できると思いました。生徒
は、どんな視点でこの授業を受けたのか、また授業を受けた後でどんな視点が持てたのか、知りたいと思いま
した。高校生の時を思い出すと、お小遣いも少ない中で、試供品をもらったり、スーパーの試食をしたり、多
摩川で遊んだり…ただを楽しんでいたなあと思いました。今は、アプリなど、手のひらの中で、享受するタダ
の方が多くなってきて、それに伴い、スマートフォンとにらめっこする時間が増えているのだなと思いました。
参加された皆さんと感想交流する中で、思ったのは、この一時間の中には考える視点がとーってもたくさん
あるなあと思いました。何時間かに分けて、一つ一つの考えさせたいねらいを組み立てたり、生徒同士のやり
とりの時間をたっぷり取れると、面白いなあと思いました。
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(おわり)