第12回(14plpc_12,約687KB)

担当:大谷 宗啓
2014年度
(前回までのPDF)⇒
http://www.re2.sakura.ne.jp/14plpc/
学習過程の心理学
学習過程の心理学C
心理学
連絡:1/10(土)に出席できない方
• 次の出席時に,公欠届と,「公欠者用代替課題」を
提出してください。
• 「公欠者用代替課題」の内容と記入用紙は,
1/12(月)に再配布用HP上で公開します。
前回の振り返り
第 12回
『記憶』
• 知能 >前回スライド • 知能検査の誕生>前回スライド
• 知能の測定
再配布版(2015.01.09更新)
>前回スライド
• 創造性
>前回スライド
• ちょっとしたテスト(等周長面積対比較課題)
>前回スライド
※結晶性知能と流動性知能
(Horn & Cattell, 1963)
双生児研究から
結晶性知能:過去の学習経験を
結晶性知能:
高度に適用して得られた判断力
や習慣
流動性知能:新しい場面への適
流動性知能
応を必要とする際に働く能力
(1)結晶性知能の加齢低下は
遅く緩やか
Figure 1 PMA知能検査による修正
された知能の加齢パター
ン(Shaie, 1980のデータか
ら中里, 1984が作図)
(2)流動性知能も訓練すれば
向上
Figure 2 知能指数に及ぼす遺伝と環境の効果(Erlen-meyerkimling & Jarvik, 1963: 山上, 2006)
Rカードから_1
• 「知能を“測る”ということを学んできましたが,自分
たちも測られていたのかと思うと少し複雑。学校の
先生になるということは,今までの人生のほとんど
を過ごしてきた学校の裏側を知ることなのだと・・・」
• 「(蝋燭課題)マッチは火をつけるものだという固定観
念にとらわれて,箱を使うという発想が・・・」
>前回スライド
• 「高校の数学とか理科は収束的思考だけれど,国
語の読書感想文は発散的思考なのかな,と」
⇒もう一度発散的に考えてみましょう。例えば数学の場合・・・
1
Rカードから_2(等周長面積対比較課題)
• 「3~6歳児の場合,何も考えずに見た目で選んで
いるのではないか」
• 「パッと見た感じでは,正方形の方が大きい」
• 「小学生になると,面積の計算式を知っているので,
かえって間違えてしまうのではないか?」
• 「“同じ長さの針金だから”と・・・」
• 「周の長さが同じだから面積も同じと無意識に答え
てしまった・・・」
保存概念(concept of conservation)
どんなに対象が知覚的に変化したり移動
したりしても,対象そのものには変化が
加わらないと認識すること
長さの保存(6~7歳で獲得)
面積の保存(9~10歳で獲得)
Figure 4 種々の保存と保存テスト(村田, 1990より抜粋)
小学校2年生,5年生は,この保存概念を獲得して
いく時期 ⇒ 保存概念を適用して答えた?
Figure 3 保存の概念(Nolen-Hoeksema et al., 2009)
確かめてみましょう
しかし,長さと面積を区別しなくても大丈夫?
今度は面積の方を固定してみる
60cm
60cm
• 縦15cm,横15cm ⇒周長=60cm
,面積=225cm2
• 縦20cm,横10cm ⇒周長=60cm ,面積=200cm2
周長と面積とは分けて考える必要がある
周長と面積とは分けて考える必要がある
縦15cm,横15cm
縦7.5cm,横30cm
面積=225cm2
面積=225cm2
周長=60cm
周長=75cm
やはり,分けて考える必要がある
2
保存概念獲得と,誤答
ピアジェの認知発達理論では
前操作期(
歳):前概念的・直観的思考
前操作期(2~7歳)
歳)
知覚に依存。
具体的操作期(
~11歳)
歳):物理的実在に限
具体的操作期(7~
歳)
定した論理的思考
「保存概念」の獲得
具体的な内容に依存。
形式的操作期(
歳~):物理的実在から開
形式的操作期(11歳~)
歳~)
放された抽象的思考
Figure 5 等周長課題に対する各保存レベルの反応別割合(西林,
1988)
正答率のグラフに重ねると・・・
眼前の現実を離れた仮説演繹が可能
能力が落ちたのではない
ない
3・
・4歳児,
歳児,5・
歳児:
歳児, ・6歳児:
論理的に考えられない
結果の正答
2年生,
年生,5年生:
年生, 年生:
論理的に考えた(考えられる)結果の誤答
ステップ・アップしたがゆえのエラー
前操作期 具体的
操作期
形式的操作期
そのことに気付かないと・・・
Figure 6 ピアジェの発達段階論(浜田, 1983)
3
⇒春学期『発達過程の心理学』
Piaget, J.
(1896-1980)
スイスの生物学者・心理学者
「世紀の巨人」
かつて, A. ビネーの
研究を手伝っていた
>前回スライド
Rカードから_3(考えてみました)
• 「数学的に考えると,
1つの例だけでは答
えにならないが・・・」
•
• 「縦+横=30cmだから,(1,29),(2,28),・・・(15,15)と。
創造性がもっとあれば,こんな地道な考え方をしな
くても分かったのかなと・・・」
•
Rカードから_4(収束と発散)
•
• 「(等周長面積対比較課題の解答)これは,収束的思
考であると同時に,面積を導き出すところから始め
るのは発散的思考でもあるなと思いました」
4
記憶 (memory)
記憶の分類・特徴
過去経験を保持し,後にそれを再現して
利用する機能。
記銘(符号化),
保持(貯蔵),
想起(検索),の3段階からなる。
Figure 7 一般的な短期記憶と長期記憶に関する説明(藤田哲也, 2007)
なお,短期記憶(作動記憶)の容量限界は増量できない。
入力,保存,読み込み
ただし 「チャンク」化によって 情報量を増やすことは可能
実験:マジカル・ナンバー7±2
Figure 8 ワーキングメモリのモデル(Baddeley, A. D., 1997: 豊田弘司,
2011)
5
長期記憶の分類
宣言的記憶の分類
エピソード記憶:時空間的に定位された自己の
エピソード記憶:
経験に関する記憶
Figure 9 長期記憶の分類(藤田哲也, 2007)
■手続記憶:ものごとの
やり方,段取りに関する
■手続記憶:
記憶。言語化しにくい。
■宣言記憶:事物や事象に関する記憶。
■宣言記憶:
言語化しやすい。
意味記憶:物理法則や言語のような,
意味記憶:
一般的知識に関する記憶
「再生」 と 「再認」
再生:選択肢が示
再生:
されない状態で想
起すること
再認:選択肢の中
再認:
から正しいものを
想起すること
Figure 10 クラスメートの氏名の再認と再
生(Bahrick et al., 1975: 金城, 2006)
「系列位置効果」
リスト内での位置によって
再生率が異なる
初頭効果:初頭部で提示さ
初頭効果:
れたものほど再生率が高い
Figure 11 自由再生における系列位置曲
線(Glanzer & Cunitz, 1966: 神谷,
2008)
新近性効果:終末部で提示
新近性効果:
されたものほど再生率が高
い
但し,遅延再生条件では新近性効果が消える
⇒短期記憶と長期記憶が別物であることの反映
6
“忘却”
「エビングハウスの保持曲線(忘却曲線)」
記憶したものは学習直後に急速に忘れるが, 一
定時間を過ぎると忘却は緩やかに
Ebbinghaus, H.
(1850-1909)
ドイツの心理学者
Figure 12 エビングハウスの保持曲線(Ebbinghaus, 1855: 金城, 2006)
※節約率=(原学習所要時間-再学習所要時間)/原学習所要時間×100
「レミニセンス(reminiscence)」
条件によっては,学習直後よりも一定時間後の方
が学習成績が高くなる現象
妨害的反応や誤反応が急速に忘却され
るため
就寝条件:夜10時に記銘学習→就寝→数時間後に起こし
就寝条件
て再生させる
活動条件:朝10時に記銘学習→数時間後に再生させる
活動条件
Figure 13 就寝条件と活動条件での忘却度の差(Jenkins & Dallenback,
1924: 金城, 2006)
7
「順向抑制」 と 「逆向抑制」
順向抑制:先行の学習・記憶が,後続の学習・記
順向抑制:
憶を阻害し,後続の学習内容が忘却さ
れること
逆向抑制:後続の学習・記憶が,先行の学習・記
逆向抑制:
憶を阻害し,先行の学習内容が忘却さ
れること
ところで・・・
次回
第 13回(1月10日)
『性格』
Appendix
ピアジェによる思考の発達段階(野呂正, 1983:
渡部雅之, 2011)
(>第11回)
解の例
Appendix 1 蝋燭課題の材料
(Nolen-Hoeksema et al., 2009)
Appendix 2 蝋燭課題の解法
(Nolen-Hoeksema et al., 2009)
8
(>第11回)
問題
【再配布版 注記】
①当日出席した受講者に話を聞いて,ノート部分を
補完する手順を忘れないでください。
60cm
60cm
②以下は,当日映写のみで(配布資料には載せずに)
運用したスライドです。ただし,前回までのスライ
ドを再参照する部分(リンク先)は省きました。
『面積について,正しい説明を(1)~(3)から選べ』
(1)正方形<長方形,(2)正方形=長方形,
(3)正方形>長方形
変形後だけを見てみましょう
Rカードから_4(収束と発散)
•
知覚だけに頼れば,
難しくない課題
実験の説明
• 今から,数桁の数字が順に映写されます。
• 口に出したり,メモを取ったりせずに,黙読で暗記
してください。
• 実験者が「それでは書いてください」と申し上げ
たら,暗記した数字をノート部分に記入してくださ
い。
• 「(等周長面積対比較課題の解答)これは,収束的思
考であると同時に,面積を導き出すところから始め
るのは発散的思考でもあるなと思いました」
実験
2423
そ れ ま で
それでは始めます
9
実験_2 の説明
• 今から,数桁の数字が順に映写されます。
• 口に出したり,メモを取ったりせずに,黙読で暗記
してください。
• 実験者が「それでは書いてください」と申し上げ
たら,暗記した数字をノート部分に記入してくださ
い。
実験_2
33725 6 8
そ れ ま で
それでは始めます
実験_3 の説明
• 今から,数桁の数字が順に映写されます。
• 口に出したり,メモを取ったりせずに,黙読で暗記
してください。
• 実験者が「それでは書いてください」と申し上げ
たら,暗記した数字をノート部分に記入してくださ
い。
実験_3
91473 4 2
そ れ ま で
それでは始めます
音の数
【シ】 【ガ】 【ダ】 【イ】
【ガ】 【ク】 【キョ】 【ウ】
【イ】 【ク】 【ガ】 【ク】
【ブ】
=13個
単語だと・・・
【滋賀】 【大学】 【教育】
【学部】
= 4個
10
固有名詞は一塊に・・・
“私の所属”
【滋賀大学】 【教育学部】
【滋賀大学教育学部】
= 2個
= 1個
これほど違う
ところで・・・
【シ】 【ガ】 【ダ】 【イ】 【ガ】 【ク】 【キョ】
【ウ】 【イ】 【ク】 【ガ】 【ク】 【ブ】 =13個
【滋賀】 【大学】 【教育】 【学部】
=4個
【滋賀大学】 【教育学部】
=2個
【滋賀大学教育学部】
=1個
最初の実験の数字(4桁)を
思い出せますか?
11