2015年8月26日 分掌変更退職金の分割払い

くちきデイリーニュース
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2015 年 8 月 26 日(水)
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株式会社朽木会計事務所
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分掌変更退職金の分割払い
役員退職給与の確定総額と分割払い額
役員退職給与の損金算入時期は、①株主
総会の決議等によりその額が具体的に確定
した日の属する事業年度、②法人がその退
職給与の額を実際に支払った日の属する事
業年度、のいずれにするかを選択すること
ができます。②の場合は、分割払いも想定
されており、その分割払いする各事業年度
が損金算入時期です。
分掌変更による退職金認容での未払金
常勤→非常勤、取締役→監査役、代表取
締役辞任で役員報酬の半分以下への激減、
などに該当するときは、実質的に退職した
と同様と認められるので、退職給与として
法人が「支給した」給与は損金算入できる、
との通達があります。
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があることを要求しているので、未支給に
ついては余程の合理的な理由がある場合で
ない限り、認められないとして、納税者は
敗訴となりました。
地裁では一転して、中小企業での税法通
達依拠経理は、一般に公正妥当な会計慣行
の一つであるというべき、として分割払い
を特別な例外取扱いにすることにつき、こ
れを否定し、納税者勝訴としました。
裁判所の通達解釈
企業が、税法通達を斟酌して、会計処理
の方法を検討することは至極自然、特に中
小企業においては、会計基準よりも、税務
会計が一般に公正妥当な会計慣行であると
いうべきである、としつつ、他方、通達は、
課税庁における税法の解釈基準や運用方針
を明らかにするものであり、行政組織の内
部において拘束力を持つものにすぎず、法
令としての効力を有するものではない、と
判決は言い切っています。
ここでの、
「支給した」との文言は、未払
計上を否定する趣旨と解説されています。
グレーゾーンがホワイト化
なお、未払分を未払計上せず、翌期以降の
分掌変更退職金の分割払いと分割支払時
分割払いとしたときは、各支払時に損金算
損金算入はいままでグレーゾーンで、容認
入が認められるかを争った事案があります。 と否認の見解が交錯していたところでした。
これからは、あまり神経質にならずに、
審判所では負け地裁では勝ち
取り組めそうです。
国税不服審判所の裁決では、分掌変更退
分割払いは普通
職金は一種の打切り支給特例としての在職
のことでしょう
退職金なので、弊害防止の趣旨から、債務
の確定だけではなく、実際に金銭等の支給
補足と解説
過去の◆daily コラム◆
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◆2012.11.12「分掌変更退職金の分割払い」
本件第二金員は、退職慰労金の一部として支払
われたものであり、法人税法上の退職給与に該当
し、かつ、本件第二金員を現実に支払った平成2
東京地方裁判所平成24年(行ウ)第592号法人
0年8月期の損金の額に算入することができる
税更正処分取消等請求事件(全部取消し)
(確定)
(納
というべきである。したがって、本件更正処分等
税者勝訴)平成27年2月26(変更判決27年3
は、本件第二金員が退職給与に該当しないことを
月3)日判決
前提としてされた点において違法であるという
判
1
示
事
項
本件は、原告の創業者である役員乙が原告の代
に伴い、乙に対する退職慰労金として2億500
行政組織の内部において拘束力を持つものにす
0万円を支給することを決定し、平成19年8月
ぎず、法令としての効力を有するものではない。
期に7500万円を支払い、さらに平成20年8
しかしながら、租税行政が法人税基本通達に依拠
月期にその一部である1億2500万円(第二金
して行われているという実情を勘案すれば、企業
員)を支払い、本件第二金員が退職給与に該当す
が、法人税基本通達をもしんしゃくして、企業に
ることを前提として、損金の額に算入し、また、
おける会計処理の方法を検討することは、それ自
本件第二金員が退職所得に該当することを前提
体至極自然なことであり、中小企業においては、
として計算した源泉所得税額を納付したところ、
企業会計原則を初めとする会計基準よりも、法人
処分行政庁から本件第二金員は退職給与に該当
税法上の計算処理に依拠して企業会計を行って
せず損金の額に算入することはできないとして
いるような中小企業との関係においては、本件通
更正処分等を受け、また、本件第二金員は退職所
達ただし書に依拠した支給年度損金経理は、一般
得に該当しないとして、賞与であることを前提に
に公正妥当な会計慣行の一つであるというべき
計算される源泉所得税額と原告の納付額との差
である。
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以上検討したところによれば、本件第二金員を
その取消しを求めるとともに、本件納付金等の返
平成20年8月期の損金の額に算入するという
還を求める事案である。
本件会計処理は、公正処理基準に従ったものとい
本件第二金員は、本件退職慰労金の一部として
うことができる。
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役員退職給与に係る費用をどの事業年度に計上
要件及び一時金要件のいずれも満たしているも
すべきかについては、公正処理基準に従うべきと
のと解すべきであるから、所得税法上の退職所得
ころ、本件通達ただし書に依拠した本件会計処理
に該当するというべきである。
が公正処理基準に従ったものといえることは、こ
原告は、本件第二金員が退職所得に当たること
れまで検討してきたとおりであり、これと異なる
を前提として、本件第二金員に対する源泉所得税
2203万2000円を納付したのであり、本件
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法人税基本通達は、課税庁における法人税法の
解釈基準や運用方針を明らかにするものであり、
支払われたものであり、退職基因要件、労務対価
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表取締役を辞任して非常勤取締役となったこと
額について納税の告知処分等を受けたことから、
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べきである。
被告の主張は採用することができない。
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そして、本件第二金員が退職給与に該当するも
第二金員が退職所得に当たらず、給与所得に該当
のとして平成20年8月期の損金の額に算入し
することを前提としてされた本件告知処分等は
た上で、平成20年8月期の法人税に係る所得金
いずれも違法であり、取消しを免れない。
額及び納付すべき法人税額を算定した結果、本件
源泉徴収による国税の納税義務は、源泉徴収の
更正処分のうち、当初申告所得金額、納付すべき
対象となる所得の支払の時に成立し同時に納付
法人税額を超える部分及び本件過少申告加算税
すべき税額が確定するものであるところ、原告が
賦課処分は、いずれも違法であり、取消しを免れ
本件告知処分等を受けて納付した金員は、その徴
ない。
収義務がないにもかかわらず納付されたもの(誤
納金)であるから、被告は、原告に対し、遅滞な
く、これを金銭で還付しなければならない。