トラブル事例から学ぶ 労働関係法令の基礎知識

トラブル事例から学ぶ
労働関係法令の基礎知識
主催 滋賀県 後援 滋賀労働局
講師 特定社会保険労務士 福谷 丞太郎
滋賀労働局 個別労働紛争の運用状況
合意率
56.3%
計266件
全地方裁判所 労働審判申立て件数
年 次
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
平成24年
平成25年
件数
877
1494
2052
3468
3375
3586
3719
3678
件数
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
全地方裁判所 第一審通常訴訟新受事件数
労働に関するもので
金銭を目的とする訴え
金銭目的以外の訴え
合 計
2,243件
966件
3,209件
限定正社員の種類
勤務地限定
正社員
職種限定
正社員
勤務時間限定
正社員
どの程度の給与差が認められるのか?
1.「多様な形態による正社員」に関する研究会 企業アンケート参照
2.丸子警報器事件 長野地裁上田支部 H8.3.15判決
▷ 会社が原告らをライン要員として採用したまま固定化し、2ヶ月毎
の雇用期間の更新をしていた。
▷ 原告らライン作業に従事する臨時社員と、同じライン作業に従事
する女性正社員の業務を比べると、従事する職種、作業の内容、勤
務時間及び日数並びにQCサークル活動へ関与などすべて同様で、
長い者で25年勤務。
▷ 同一価値労働同一賃金の原則は、労働関係を規律する一般的な
法規範としての公序とはいえないが、原告らの賃金が、同じ勤続年
数の女性正社員の8割以下である場合には、許容される賃金格差の
範囲を超え、その限度において会社の裁量は公序良俗違反として違
法となるとされ、8割までの差額の支払いを損害賠償として認定。
限定正社員制度の設計で配慮すべき点
1.労働契約法及びパートタイム労働法の均等待遇を考慮して、他
の契約社員やパートタイム社員との位置づけを明確に分けておく。
2.無限定正社員と限定正社員の待遇差が小さければ、無限定正
社員を希望する社員が増え人員配置に問題が生じる可能性があ
る。転換条件等のルールの明確化が必要。高度専門能力のある者
に限定するのかなどを含め、人事戦略上の検討が必要。
3.無限定正社員と限定正社員間の転換を認めるのか。認める場合
は、転換に伴う労働条件の変更となるため、待遇面での透明性を高
める必要がある。
4.職種限定の場合には、高度な専門職として採用するのか、それと
も、一般的な業務として限定するのかにより解雇の合理性が異な
る。当該職種がなくなった場合の対応。
5.勤務地限定の場合には、採用した事業所での限定とするのか、
一定のエリア内で転居を伴わない異動があるのか。採用した事業所
勤務を限定とする場合、事業所廃止となったときの対応。
パートタイム社員やフルタイム契約社員等の雇用形態別
の均等待遇
▷ パートタイム労働法 第8条、第9条(均等待遇等)
第14条(パートへの説明義務)
▷ 労働契約法 第20条(均等待遇等)
参考判例
ニヤクコーポレーション事件 大分地裁 H25.12.10判決
トラブル防止
対策
1.パートタイム社員の職務内容を限定する。
2.人材活用の仕組み(人事異動の範囲、勤務形態等)
社員区分の定義を就業規則で明確にして、それに基づ
いて運用する。
労働条件の変更(賃金制度・変更届)
▷ 労働組合法 第14条(労働協約の効力の発生)
第16条(基準の効力)
▷ 労働契約法 第8条、第9条、第10条
▷ 労働基準法 第89条、第90条、第106条
参考判例
トラブル防止
対策
キョーイクソフト事件 東京高裁 H15.4.24判決
ノイズ研究所事件 東京地裁 H18.6.22判決
大阪京阪タクシー事件 大阪地裁 H22.2.3判決
1.調整手当などの経過措置や代償措置を講じる。
2.従業員に変更の趣旨や制度変更に伴う変更内容を
しっかりと説明し、変更後の就業規則の周知を図る。
3.従業員からできるだけ多くの個別同意をとる。
労働条件の変更(配置転換・賃金カット)
▷ 労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)
▷ 労働安全衛生法第66条の5(健康診断実施後の措置)
参考判例
トラブル防止
対策
西東社(せいとうしゃ)事件 東京地裁 H14.6.21判決
1.現職への復帰に再発の可能性の有無や復職後の業
務内容等について主治医に情報提供を書面で求める。
2.業務軽減等の必要性がある場合には、復職に応じる
際に、労働条件の変更内容を提示して、同意書の提出
を求める。
3.職務の内容や職務遂行能力に応じた賃金決定を行
う場合は、制度内容を整備し、就業規則で定める。
時間管理・残業代未払い
▷ 労働基準法 第32条(労働時間)、第34条(休憩)
第36条(時間外及び休日の労働)、第138条
第37条(割増賃金)、第108条(賃金台帳)
▷ 労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の
延長の限度等に関する基準
▷ 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
に関する基準について
参考判例
トラブル防止
対策
ゴムノイナキ事件 大阪高裁 H17.12.1判決
フォーシーズンズ・プレス事件 東京地裁 H20.5.27判決
1.職務分析による担当課業への配置管理、作業方法
の改善による時間外労働の短縮
2.適正な労働時間の管理の徹底(残業承認制度)
3.仕事の内容や職務遂行能力に応じた賃金決定
定額残業代支払い
▷ 労働基準法
参考判例
トラブル防止
対策
第37条(割増賃金)
第38条の2(事業場外労働)
関西ソニー販売事件 大阪地裁 H63.10.26判決
高知県観光事件 最高裁 H6.6.13判決
SFコーポレーション事件 東京地裁 H21.3.27判決
イーライフ事件 東京地裁 H25.2.28 判決
1.就業規則に割増賃金の対価としての根拠を規定し、
何時間分の残業時間に相当する定額残業代なのかを
雇用契約書、給与明細書で明確にする。
2.できる限り組込型にせずに手当型として支給する。
3.定額残業代を超える時間外労働が発生した場合は、
超過分の手当を支払うことを雇用契約書、給与明細書
に記載する。
有給休暇
▷ 労働基準法
参考判例
トラブル防止
対策
第39条(有給休暇)
大宝タクシー事件 大阪高裁 S58.4.12判決
1.日頃から、有給休暇の取得を促すようにすること。
2.自己都合退職のルールとして、退職申出後10日間
は業務引き継ぎ等のため、実際に勤務することを就業
規則及び雇用契約書に規定し、周知徹底する。また、適
正に退職した場合の退職金加算の優遇措置を講じる。
3.退職時において、消化できない有給休暇について
は、有給休暇の取得を抑制しない金額での買い上げを
検討する。
労働時間
1
日
2
3
4
5
6
7
8
9
10
残業
残業
休日出勤 休日出勤 休日出勤 休日出勤 休日出勤 休日出勤
月
火
水
代休
代休
代休
代休
代休
代休
代休
代休
木
金
土
法定時間外労働2時間分
の割増賃金0.25は支給