8‐6 マルファン症候群に合併した急性大動脈解離から急性心筋梗塞を発症し た一例 聖マリアンナ医科大学病院 循環器内科1)、聖マリアンナ医科大学病院 心臓血管外科2) ○松田 央郎1)、橋本 信行1)、三宅 良彦1)、幕内 晴朗2) 症例は37歳男性。 青年期よりマルファン症候群を指摘されていたが放置していた。 2007年12月、 突然の胸痛を自覚し当院救命センターを受診。受診直後から心室細動となり、直ちに経皮的 心肺補助装置(PCPS)を挿入した。諸検査の結果、上行大動脈の急性大動脈解離に伴う左冠 動脈主幹部(LMT)閉塞から急性心筋梗塞(AMI)に至ったものと診断した。冠血流再開を 第一に考え、経皮的冠動脈形成術(PCI)を行い LMT にステントを留置した。上行大動脈解 離に関しては心嚢水貯留がないこと、大動脈弁逆流が軽度であったことから緊急手術の適応 に乏しいと判断し、まずは PCPS を中心とした血行動態の保持につとめ待機的に手術を行う 方針とした。PCPS の稼働を第一に考え、大量輸液、輸血を行ったが、AMI に合併したと考 えられる急性心不全から肺胞出血のコントロールが困難な状況が続いており、低蛋白血症、 貧血の是正が困難であった。機械的サポートを中心とした加療を継続したが徐々に PCPS 稼 働困難な状況となり、第3病日に死亡確認に至った。マルファン症候群に合併した急性大動 脈解離から LMT 閉塞を来たし AMI を発症した一例。マルファン症候群に合併する大動脈解 離は上行大動脈を含む症例が多く、 中でも LMT 閉塞を合併した症例の救命率はきわめて低い。 本症例も、急性大動脈解離に LMT 閉塞を合併し、冠血流再開を第一に考え LMT にステント を留置したが、結果的には肺胞出血のコントロールがつかず救命できなかった症例である。 若干の文献的考察を加えて報告する。 ‐81‐
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