28 日高地方湧払郡厚真村は湧払原野に隣 接し厚真川をはさんだ細長い平野とそれ 腐泥が混じている。 mの 竜神沼 厚真川東部で海岸から約 9k を取巻いている丘陵地帯からなっており 所 々 に 大 小 20数 個 に も お よ ぶ 池 沼 を 有 地点にあり湖の周囲は牧野でほぼ北西方 向にのひ、た楕円形の湖盆で、北西部は浅く しているがこれら池沼の中 3池沼(三ヶ 南東部に深く最深部付近で深度 2.0mが 月沼,大沼および軽舞貯水池)について 測定された。招中央部から西岸にかけて はハスとヒシからなる浮葉植物が繁茂し は既に水産利用の基礎になる陸水学的な 条件について昭和 3 3年 5月 下 旬 の 状 況 ている。底質は浅所は火山灰深所は黒色 について江口弘氏他によって報告されて の腐泥より成る。なお流入流出の河川は いる。われわれはさらに厚真村および浜 ない。 松 の 沼 竜 神 沼 北 部 約 1均の地点にあり 厚真漁業協同組合の協力を得て同様の目 的で湖沼学的な観察を行なったがその結 果の概要を述べそれら池沼の水産利用の 上の参考に供する。 池沼の位置と湖盆の概要 0k m入 っ た 厚 真 三カ月沼海岸から約 1 南 北 に 長 い 沼 で 面 積 は 6.0haあるが大 部分は極めて浅く沼の中央部は 3 0 c m程 度以下の地域もかなり広く小型ボートの 運航にも差っかえる。したがって湖盆は 北部と南部の副湖盆に分かれ北部の副湖 J l l西部の原野と丘陵地帯とのほぼ境目に 盆は最深点付近で深度 2.5mが測定され あり周囲は原野で東岸には針葉樹の濯木 若干深いが南部の副湖盆では深度はほぼ 林が岸にせまっている。湖盆は鋭くまが 1 m程度にすぎずヒシとハスの浮葉植物 ,湖岸の大部 った三カ月状で面積 5.5ha の群落がほぼ湖面の一面に繁茂してい 分はヨシの群落が繁茂しその北岸一帯に る。底質は浅い部分では火山灰両湖盆の はヒシとハスの浮葉植物の群落が発達し 中央部ではそれに黒色浮泥が若干堆積し ている。特にその群落は沼の東側の湖盆 ている状態である。流入流出の河川はな で発達し北東隔のかなりな面積を占めて し 、 。 いる。湖岸は西側の湖盆では概して急に 深くなり水深はほぼ 4 mにも達する。底 真川の東部上厚真の付近にあり周囲に 2 質は浅所では火山灰が主で深所では黒色 ~3 の人家があり水田地帯に取固まれて ジュンサイ沼 海岸からほぼ1.5k m,厚 29 30 いる面積1.8haの小沼で沼の両側は浅く 1 2 . 4haの大きな沼で大沼も面積は約 6.5 東側は若干深くなっている。深度は湖中 haを 占 め て い る 。 こ れ ら 両 沼 は 岸 か ら 中央部でほぼ O.5mが測定された。底質 は西側の浅い所が火山灰東側のやや深い 場所には黒色泥が若干堆積する。沼の東 側の沼の約 1九程度の面積にヒシ及びハス 観察,採集をしただけで、深度その他につ いては明らかではないが,長沼では沼の 両岸中央部では遠浅で北部がかなりの深 さを有しているとの事である。また,大 沼では沼は東岸からの観察では沼の岸は の浮葉植物の群落が繁茂し湖岸にはヨシ の落群が発達している。流入河川はない 大体急、に深くなっておりかなりの深さを が流出川として幅 1 m程 度 の 細 流 が あ る 。 清水沼 有している模様である。また,沼面には 浮葉植物の発達はほとんど見られない。 前記ジュンサイ沼の南方ほぼ 3 ~400m の地点にあり,やはり周囲は水団 地帯で人家の裏手にある。面積 0.6haの 小沼で沼の中央部で水深は1.3mを計り 0c mの 厚 さ に 黒 ほぼ同形の底部には約 7 流出入河川はない。 三宅沼最も海岸に近く海岸からほぼ 2 . 5k mの場所にある原野中のほぼ長方形 の沼で面積は 7.4haで あ る 。 沼 の 岸 に はヨシが繁茂し,沼面にはハスとヒシの い浮泥が堆積している。湖岸にはヨシの 群落が発達し,ヒシおよびハスを主とし た群落が沼面一面に発達している。流出 入の河川はない。 浮葉植物が中央部から西岸に発達してい 上厚真のほぼ東約 4kmの丘 1 .3 mを計った。流入川はないが流出の 小川が一本沼の南側にある。 長沼と大沼 陵地帯にあり両沼は丘を狭んで東西に相 対している長沼は名の通り細長く面積は るがその程度はややまばらである。沼の 底は浅い所は火山灰,やや深い所では黒 色の浮泥である。深度は沼の中央部で 水理条件 水色,透明度,水温及び水の 表 1 厚真村、;也沼の表面水の水質(昭和 3 6年 8月下旬) iI P H I仏 I O I Cl I s o .I Ca I P hp ls叫 224 I U 池 沼 名 問 雫目│水色 水温 I~ I民 三ヶ月沼 神 沼 竜 松の沼(南湖盆〉 ク (北湖盆〕 沼 清 水 沼 長 沼 大 沼 宅 2 2 2 2 2 3 2 3 2 2 2 3 2 3 2 3 I( o C )I 2 . 3 薄褐色 1 .3 今 1 .5 2 2 5 .7 6 . 95 . 1 18 8 . 6 9 . 0 4 . 3 2 5 . 57 . 03 . 96 2 . 01 7 . 01 1 .6 2 3 .7 6 . 74 . 0 61 .5 11 3 . 0 3 . 6 イ シ 2 3 . 06 . 65 . 18 4 . 5 9 . 2 2 . 6 薄褐白色 2 4 . 46 . 52 . 02 9 . 51 2 . 01 0 .1 3 . 26 薄褐色 2 . 85 . 2 4 . 0 1 ク 2 4 . 46 . 86 . 41 0 8 . 4 11 0 . 6 1 .9 1 1 .3 ク 2 4 . 67 . 06 . 21 0 5 .1 1 0 . 8 1 .2 1 。 分析結果は表 1に纏めた通りで水色は大 部分の沼で薄い褐色を呈していたが,ジ ユンサイ沼ではそれに幾分白色がまじっ ている様な独特の色調を示していた。活 品 I ∞/ L I% I ( p p m ) l ( p p m ) : ( p p吋 I(ppm) ! ( p p 叫 (]J]J~) 4 . 60 . 0 4 5 33 2 . 4 6 6 . 00 . 0 1 6 72 2 . 1 1 4 . 20 . 0 1 4 92 8 . 0 8 5 . 40 . 0 1 4 42 9 .1 2 9 . 50 . 0 4 0 02 3 . 6 8 4 . 90 . 0 1 5 83 0 .7 0 4 . 40 . 0 1 4 72 8 .7 7 . 0 2 1 72 7 .1 9 3 . 80 .1 41 1 7 . 7 3 0 . 2 2 7 . 8 1 6 . 4 2 7 . 8 2 2 .1 .0 21 明度は一般に極めて低く最低はジユンサ イ沼の 0.3m最大は三カ月沼の 2.3mで 、 そ の他(長沼,大沼を除く〉は全て1. 3~ 1. 5 m であって,水温は 2 3 .0~25. 7O Cで大 31 体同様である o PH は 最 低 が 清 水 沼 の 6.5,最大が竜神沼と三宅沼で測定され た 7.0 ,その他は 6.6~6. 9で PH はー 幾分過飽和量に達していた。塩素量 ( C l ) は 8~12 ppmで 大 体 普 通 硫 酸 塩 (S04) は1.2~l 1. 6ppmで か な り 含 有 量 に 変 般に幾分低い様である。溶存酸素量は特 に低いのが清水沼で飽和度で 29.5%(2.0 動があり竜神沼と清水沼がやや多く三宅 沼で最も少なし、。カルシウム (Ca) は にすぎず,次いでジュンサイ沼,竜神沼 一般に少なく 4~10 ppm で 清 水 沼 と ジ 松の沼の南側の副湖盆で 62~67 % ( 約 ユンサイ沼が最も多く 7~lO ppm 三宅 沼が最少で約 4ppmで あ っ た 。 桂 酸 塩 3~ 4 c c / l ),その他の測定はほぼ 85%以 上含有されており特に大沼と三宅沼では (Si0 2 ) は一般に多く 22~37ppm が測定 表 2 プランクトン主要種の出現状況 (注) +…屡々見られる R…幾分稀 R R…稀 MMC-ub 肌川 RRR RR RRR RRR RRR RRR RRR i d a eCopepodid l i d e Copepoodid l aN a u p l i i 叫側苅抑 脇市MnMQ仏 品 s t a l l i n a l o n g i r o s t r i s i う s i sd e i t e r s i ss p eγIC叫S u t t a t a i z n ap r i o d o n t a γc ac y l i n d γi c a c a t u s i n a i ut e tγαιt i s zh : 世d s o n i ~ c o c h l e a r i sh i s P i d a c o c h l e a r i sm i c r a c a n t h a r as p . th i γ , 叫 叫d i n e l l a ' ns p . ; t i sa l 叫γ e g i n o s a i t a l i c a RRR RRR RRR RRR RRR RRR R R RR RRR R RR R + RRR R R R RRR R R RRR RRR RRR RRR RRR R RR RR RR RRR RRR . PR R RRR R RR RR R R RRR 十 R R RRR RR RR 十 R RRR RRR R R RRR RRR RRR RR R R R + + RRR RR RR t e r l ωsp. 2S p p . h 一 s p . r u 押tS p p . umS p p . i 沼│三宅沼 沼 大 RR , h n i aq u a d r a n g u l a 叫蜘均 切り humm 戸 ム ・ M M M Z C ! ' M kbcDCQmMBhω-AA4hthmmhkhQ 肋 M !百品|竜神沼 l 松の沼 1~1副清水沼[長 1 0 舎sl e叫c k a γt i h y a l i n u s I Ss eγ γu l a t u s !a s p p . R R R…極めて稀 側 RR RP . IRRR RRI R RRRIRRR R R RRR RRR R R R R R RRR 32 され,最多はジュンサイ沼の 37ppm最 小は竜神沼の 22ppmで 火 山 灰 地 帯 の 池 やや見るべき出現を示しているだけであ る。また動物プランクトンでは三宅沼で Bosmina l o n g i r o s t r i s (枝角類〕が, 沼の特徴をよく示している。栄養塩とし p h o s P . ) はほぼ 0.015 て重要な燐酸塩 ( 三カ月沼で K e r a f e l l ac o c h l e a r i sv a r . ~0.045ppm の含有量が示され,清水. h i s ρi d a (輸虫類)がやや見るべき出現 ジュンサイ,三カ月の三沼が 0.040~ を示していたにすぎない。 0.045ppm,その他は O .014~0. 022ppm 水産利用に関する考察 の含有を示した。これらの含有量は大体 調査の結果を要約すると厚真村のこれ 一般の湖沼水では中等度の含有量であ らの池沼は全て火山灰地帯に渉透水によ る。過マンガン酸カリ消費量は 16~41 って泌養されたもので火山灰地帯特有の ppm でやや高く清水沼と竜神沼は 16~ 珪酸分の比較的多い水を湛えているが同 時に湖盆形態や周囲の状況によって差異 はあるが外来性の腐植質の影響も受け大 部分の池沼は腐植湖的な様相を呈してい 18ppmで 大 体 高 栄 養 湖 並 で あ る が そ の 他は大体腐植栄養湖の範囲に入る。 プランクトン プランクトンの採集は大部分の池沼で る。従ってプランクトンの現存も比較的 0 c m, 長さ 50cmの は沼の中心部で口径 2 低くプランクトン生産量とは必ずしも比 X X16番 の 細 目 ネ ッ ト と XX8番の同 例するものではないが, これらの池沼の 様大きさの粗目ネットを沼の中央部付近 漁業生産性は低いと考えられそして特に で水面下約 1 mの深度をボートで静かに 外部からの影響を強く受けやすい小池沼 約 10m横 は 成 行 し 得 た 標 本 に つ い て 観 察したが粗目ネット破損のため長沼,大 沼および三宅沼では粗目ネットの採集は 行なわず,また,その長沼と大沼では冬 湖の西岸と東岸で岸から約 10m沼面に ネットを投入し,手本に引き寄せる方法 で採集した。採集結果得た主要構成種の 出現状況は表 2の通りである。 採集標本から検出された種類から見て種 類は普通の池沼性種で腐植質の多い湖に l o s t e r i 多く出現するといわれている C um,Staurastrumや Pediastrumの鼓 藻類も出現している。出現量は一般に貧 弱で植物プランクトンでは三宅沼で藍藻 i c r o c y s t i s aureginosa がやや見る の M べき出現を示していたが水の華を形成す る程ではなし、。また,その他大沼では Ceratium h i r u n d i n e l l a (双鞭藻類〉が においてははなはだしいと考えられる。 したがってこれら調査池沼の中で漁業生 産に利用し得る良い条件を備えていると 考えられるのは面積が比較的大きい PH の中性またはそれに近い溶存酸素量も比 較的豊富な過マンガン酸カリ消費量の比 較的低い長沼,大沼および三宅沼の三池 沼であろうと考えられ,プランクトン出 現状況でも大体それが裏書きされる。
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