講演資料 - 気象研究所

2013年1月14日の南岸低気圧の
発生・発達過程
シミュレートされた
水物質の混合比
(2013年1月14日9時)
東京大学大気海洋研究所
渡邉俊一・新野宏
2015年8月10日
「南岸低気圧とそれに伴う気象・雪氷災害に関する研究会」
2013年1月14日の低気圧
低気圧経路
低気圧中心気圧
最低気圧
932hPa
発達率最大
ε=3.4
1020
1000
980
15/12
14/12
15/00
14/00
13/00
13/12
960
940
920
関東で降水
関東で降雪 900
中心気圧
発達率
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
GSMより
• 関東地方に降雪
– 東京8cm 横浜13cm
24時間で49hPa 気圧低下
大きな発達率が長時間継続
発達率
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
13/00UTC
UL2
1
中心気圧
1000
発達率
980
960
940
920
900
PVU
12
06
15/00
18
12
06
14/00
18
12
06
13/00
UL1
0
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
13/06UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
13/12UTC
1000
10
中心気圧
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
920
3
2
1
900
13/0006 12
PVU
0
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
13/18UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
14/00UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
14/06UTC
1000
10
中心気圧
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
920
3
2
1
900
13/0006 12 1814/0006
PVU
0
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
14/12UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
発達率最大 ε=3.4
940
5
4
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
14/18UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
15/00UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
15/06UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
上層のトラフ
1020
300hPa渦位場(PVU)・500hPa高度場
海面気圧
15/12UTC
10
中心気圧
1000
発達率
980
9
8
7
6
960
5
4
940
3
2
920
1
PVU
06
12
18
15/00
06
12
12
18
14/00
0
13/00
06
900
大量の水蒸気
可降水量(mm) 水蒸気フラックス(kg m s-1)
13/00UTC
大量の水蒸気
可降水量>50mm
凝結熱
大量の水蒸気
可降水量(mm) 水蒸気フラックス(kg m s-1)
14/00UTC
大量の水蒸気
可降水量>50mm
凝結熱
NHMによるシミュレーション
使用モデル
気象庁非静力学モデル
(JMA-NHM)
初期値・境界値
GSM
計算領域
鉛直
右図
20m~22.1km
水平解像度
鉛直解像度
10km
40m~1180m(可変)
計算開始時間
2013年1月13日00UTC
計算時間
60時間
雲物理
2モーメントバルク法
雲水・雨・雲氷・雪・霰の混合比
雲氷の数濃度
積雲パラメタリ
ゼーション
Kain-Fritsch スキーム
乱流クロージャー
モデル
MYNN(Level3)
SST(JRA-25)
℃
中心気圧時系列
低気圧経路
GSM
NHM
中心気圧
1020
GSM
NHM
1000
980
960
940
37hPa
気圧低下
920
12
06
15/00
18
12
06
14/00
18
この実験を標準実験として
感度実験を行う
13/12
900
感度実験の設定
実験名
CNTL
設定
標準実験
DRY_1300
13日00UTC以降水蒸気なし
DRY_1400
14日00UTC以降水蒸気なし
ULPV1R_1300 UL1 を初期値13日00UTCから取り除く
ULPV2R_1300 UL2 を初期値13日00UTCから取り除く
上層トラフに対する感度実験
1.
2.
3.
領域内の500hPaより上層のPVアノマリーがつくる循環・温位アノマリーを計算
(Piecewise PV inversion; Davis and Emanuel 1991)
アノマリーを初期値・境界値から取り除く
シミュレーションを実行
PV@300hPa
UL2
UL1
海面気圧
上層トラフに対する感度実験
1.
2.
3.
領域内の500hPaより上層のPVアノマリーがつくる循環・温位アノマリーを計算
(Piecewise PV inversion; Davis and Emanuel 1991)
アノマリーを初期値・境界値から取り除く
シミュレーションを実行
PV@300hPa
UL2
海面気圧差
ULPV1R
上層トラフに対する感度実験
1.
2.
3.
領域内の500hPaより上層のPVアノマリーがつくる循環・温位アノマリーを計算
(Piecewise PV inversion; Davis and Emanuel 1991)
アノマリーを初期値・境界値から取り除く
シミュレーションを実行
PV@300hPa
UL2
UL1
海面気圧
上層トラフに対する感度実験
1.
2.
3.
領域内の500hPaより上層のPVアノマリーがつくる循環・温位アノマリーを計算
(Piecewise PV inversion; Davis and Emanuel 1991)
アノマリーを初期値・境界値から取り除く
シミュレーションを実行
PV@300hPa
海面気圧差
UL1
ULPV2R
感度実験
凝結熱 or UL1なしでは低気圧が発生・発達しない
1020
1010
中心気圧 (hPa)
1000
990
980
970
960
950
940
930
CNTL
DRY_1300
DRY_1400
ULPV1R_1300
ULPV2R_1300
GANAL
凝結熱・UL1両方がないと
920
13/00 06
12
18 14/00 06
12
18 15/00 06
発生・発達しないのはなぜ?
Time (UTC)
12
Piecewise PV inversion (Davis and Emanuel 1991)
各PVアノマリーによる925hPa
高度偏差(m)14日00UTC
低気圧中心の高度偏差
上層
UL1・UL2
中層
凝結熱
−39.6 m
−169.6 m
下層
温位
低気圧の高度偏差に対する寄与
中層
下層
温位
>
上層
−142.1 m
下層温位アノマリーの形成要因
各PVアノマリーによる963hPa
南北風(m s-1)13日12UTC
太線:温位アノマリー > +5K
上層
UL1
中層
凝結熱
温位移流
0.40 K/hour
下層
温位
温位移流
0.22 K/hour
下層温位アノマリー形成への寄与
中層
>
上層
温位移流
0.10 K/hour
上層渦位アノマリーの役割
渦位・渦位生成平均 1000-500 hPa
0.03
0.3
Potential vorticity (PVU)
0.25
ULPV1R_1300
渦位
0.02
0.2
0.15
0.025
渦位生成
0.015
0.1
0.01
0.05
0.005
Potential vorticity generation
(PVU/hour)
CNTL
標準実験ではより多くの渦位が生成
0
0
0
3
6
9
12 15 18 21 24
強い中層の渦位アノマリー
Forecast time (hours)
上層渦位アノマリーの役割
700hPa 高度場(緑)・Q-ベクトル
Q-ベクトル収束・発散(色)
13日00UTC
2 ⋅
≡
,
⋅
,
UL1R_1300
標準実験
上昇流
下降流
強い降水域
強い降水域
UL1によって強制された上昇流が
対流を強化
⋅
まとめ(発達前半)
PV
水蒸気 温位
偏差
T−∆T
T
T+ ∆T
冷
暖
1. 湿潤な下層傾圧帯に上層トラフが西から接近
2. トラフの全面で上昇流を誘起
3. 凝結熱によって対流圏中層にPVが生成
4. 中層のPVによる循環で暖気移流・地表温位偏差の形成
5. 中層のPV + 地表温位偏差による低気圧性循環
2014年2月の事例
凝結熱なしでは低気圧が発生・発達しない
2月7日0000UTC
2月13日0000UTC
850hPa 鉛直p-速度(色; Pa s-1)、300hPa渦位・500hPa高度
上層高渦位域の接近で対流が強化
→ 低気圧発生