環境の現況と課題

第2章
環境の現況と課題
2.1
津久見市の概要
1位置
本市は、県の中心都市である大分市から南東約30kmに位置し、
北は臼杵市、南は上浦町、佐伯市、弥生町と隣接しており、一方
東側は豊後水道に面した海沿いの都市となっています。
また、津久見湾を囲むように半島部にはリアス式海岸が伸び、
沖には四浦半島の延長に保戸島、長目半島の延長に地無垢島、沖
無垢島などの諸島があります。さらに、西側の山間部には、鎮南
山、姫岳、碁盤ケ岳、南側には彦岳といった標高600∼700mの
山地が形成され、また石灰石を産出する胡麻柄山などもあります。
国
道
2
1
7
号
線
J
R
日
豊
本
線
東九州自動車道
2歴史・沿革
「津久見柑橘史」によると、740年(奈良時代中期)に仁藤仁左衛門が上青江の松川でみかん栽培を
始めてから、非常に長いみかん栽培の歴史があります。また、戦国時代には大友氏の支配下にあり、
大友宗麟が津久見を最後の居住地と位置づけ、1587年(戦国時代後期・安土桃山時代中期)にこの地
で逝去しています。江戸時代から明治時代にかけ、みかん栽培や石灰づくりが発展し、特に大正5年
の日豊本線臼杵・佐伯間開通を契機に、みかんの栽培面積が拡大するとともに近代的なセメント産業
が発達しました。
行政的には、本市の母体となった津久見町と下浦村と青江村が昭和8年に合併し、その後半島部の
日代村などと合併し、昭和26年に現在の本市が誕生しました。
5
第2章
環境の現況と課題
3人口・世帯数
●住民基本台帳人口の推移(各年4月1日現在)
本市の人口および世帯数は、平成15年12月末
日現在で、23,279人、8,958世帯となっており、
(人)
30,000
過去5年間の人口の推移を見ると、年々微減して
25,000
いる傾向にあります。
20,000
●人口および世帯数
世帯数
8,958世帯
人 口
15,000
男
11,031人
10,000
女
12,248人
5,000
合計
23,279人
0
平成
11年
平成
12年
平成
13年
平成
14年
平成
15年
(平成15年12月末日現在住民基本台帳人口)
4土地利用
本市は、東を豊後水道に面した津久見湾を抱えもつような馬蹄型の市域をもち、北、西、南の三方
を山々に囲まれています。
住宅地は、海岸線の希少な平坦部及び津久見川、青江川、千怒川に沿った沖積層が中心となってお
り、これに、山間及び海岸線、島しょ部の農漁村的な集落が加わっています。
産業的な土地利用としては、市内全域の傾斜地を利用したみかん農業、津久見湾の湾奥から胡麻柄
山を経て東南方向に石灰石採掘場やセメント産業、さらにリアス式海岸に広がる漁業が中心となって
います。
本市の地目別土地利用の状況は、平成14年現在で田畑が8.99km2と最も多く、次いで原野、山林、
宅地となっており、経年的には宅地がやや増加し、田畑が減少する傾向にあります。
●地目別土地利用面積の状況
地目
面積
平成14年
単位:km2
田畑
宅地
池沼
山林
原野
雑種地
その他
合計
8.99
2.88
0.01
6.16
7.16
1.77
52.44
79.44
●地目別の土地利用面積の割合 ※地目のうち、その他は除いて集計した。
■
■
■
■
■
■
平成14年
0
6
10
20
30
40
50
60
70
80
90
田畑
宅地
池沼
山林
原野
雑種地
100(%)
5産業
本市の産業は、平成12年国勢調査の産業別就業者数をみると、サービス業が2,174人と最も多く、
次いで卸小売業1,851人、製造業1,300人、建設業1,257人となっています。本市の産業の特色と
しては、農業、漁業と石灰石関連産業・セメント産業があげられます。
農業
農業は、みかん栽培が中心作物となっています。平成14年におけ
る柑橘類の生産高は2,813t、生産額は約5億円となっています(お
おいた県南柑橘農業協同組合連合会取扱いによる数値)。みかんの他
にも、果物や花卉も盛んに栽培されています。
また、斜面に石を積み階段状に仕上げたみかん畑は、本市の自然
や景観を形作る大きな特色となっています。しかし、近年はみかん
栽培の低迷や農業者の高齢化などにより、みかん畑の荒廃が問題に
市内の段々畑
なっています。
漁業
漁業は、豊後水道の豊かな漁場に恵まれていることもあり、津久
見湾周辺で沿岸漁業が行われています。また保戸島では遠洋まぐろ
漁業が営まれています。平成14年現在の漁家数は473経営体、漁
獲量は14,075t、漁獲金額は約83億円となっていますが、漁獲金
額は年々減少する傾向にあります。
また、昨今乱獲と環境変化の影響により漁獲量は減少傾向にあり、
今日では「獲る漁業から、育成管理する漁業へ」転換していること
もあって、沿岸の水質の保全は重要な課題です。
赤江漁港周辺の養殖場
石灰石関連産業・セメント産業
石灰石と珪石の採掘は、本市の経済を支える主な産業となってお
り、石灰石は全国一の生産量を誇っています。また、平成13年度
現在の工業の製造品出荷額は、セメント製造の窯業・土石が約
362億円と市全体の約8割を占めています。
今日では、工業技術の向上に伴い、セメント製造が廃棄物処理や
再生に有効利用できる面をとらえて、環境産業として発展していく
ことが期待されています。また、石灰石採掘跡地は、平地の少ない
本市にとって、貴重な土地資源でもあり、その有効利用も期待され
工業地帯と津久見湾
ています。
7
第2章
環境の現況と課題
2.2
環境の現況
1大気環境
本市では、環境中の大気質の状況を把握するため、津久見市役所、
●降下ばいじんの状況(年平均値)
単位:t/km2/月
青江小学校、堅徳小学校の3地点で、継続的に大気汚染物質濃度の調
測定結果
測定地点
査を実施しています。二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質(大気
青江小学校
4.0
中に浮遊する10μm以下の粉じん)はほぼ環境基準を達成しており、
岩屋口
3.1
小園町
3.2
入船区公民館
5.0
合ノ元町
7.4
本市の大気は大都市と比較すると良好な状態であると言えます。
また、津久見市では、降下ばいじん(10μm以上の粒子も対象とし
た重力によって沈下する粉じん)の状況を把握するために、市内10地
津久見高校
3.6
点で調査を実施しています。本市の降下ばいじん量をみると、合ノ元
西ノ内
2.7
セメント町
4.1
岡町
3.5
堅浦
3.5
町では7.4t/km2/月、入船区公民館では5.0t/km2/月と他の地域と比
べてやや高くなっています。
このことから、健康面からみた浮遊粒子状物質の濃度は高くありま
注)平成14年度測定値
せんが、快適面からみて降下ばいじん量が高いために、ややほこりっ
ぽさを感じる地域も見受けられるものと考えます。
2騒音・振動
騒音や振動は、工場内の機械、建設作業の機械、ト
●道路交通騒音の状況(平成14年度)
環境基準
ラック等車両の通行といったものが問題になります。
これら騒音振動の問題となる工場(特定工場等)
項 目
や建設作業(特定建設作業)については、法律によ
り規制(届出)されており、本市では平成14年度現
在で特定施設(騒音728台、振動315台)
、特定建
設作業(騒音21件、振動12件)となっています。
測定地点
測定結果(dB)
環境基準(dB)
昼間
夜間
昼間
夜間
国道
中町
75
68
70
65
217号線
港町
70
61
70
65
注)dB(デシベル):音の大きさを表す単位
他の市町村に比べて特定施設の件数が比較的多く、空気圧縮機や送風機、土石用または鉱物用破砕機等の
施設が高い割合を占めていることから、石灰石関連産業の工場や作業現場、これらに関係する車両などが
騒音振動の主要な発生要因になっているものと考えられます。
また、道路交通騒音については、幹線道路である国道217号線で測定調査(中町、港町)が行われ
ており、環境基準を超えているところがあります。
8
3水環境
水循環
本市は山と海が近く、傾斜が大きいことと鉱山の採掘により自然の保水力が少なく山に降った雨は濁
水を伴って短時間で海に流れ去ってしまいます。そこで恵みの雨をできるだけ有効に使用するためにダ
ムや池、営農用貯水施設を作り真水を蓄えています。
また、雨のとき以外は河川の水が非常に少ないか枯れてしまうため、希釈や浄化作用が期待できませ
ん。そのため汚水が流れ込むとすぐに環境の悪化につながる恐れがあります。
海域水質
津久見湾は水質類型A(最もきびしい値を適用)と
●津久見湾COD(75%水質値)経年変化
(mg/l)
4.0
地点1
地点2
地点3
地点4
定められ、水質の監視をする観測点を4点定め水質を
3.0
定期的に分析監視しています。過去5年間の化学的酸
素要求量(COD)75%水質値を見ると半数弱が環境基
準を少し超えており、家庭からの排水が水質悪化に影
2.0
1.0
響を与えている要因の一つと考えられます。他の地域
と比べると、臼杵湾とは同様な値となっており、別府
0.0
平成10
湾(大分港)と比べると良好な水質になっています。
平成11
平成12
平成13
平成14
(年度)
●津久見湾等のCOD(75%水質値)経年変化
単位:mg/l
水域名
調査地点
平成10年度
平成11年度
平成12年度
平成13年度
平成14年度
地点1
2.0
2.1
2.3
1.9
2.2
地点2
2.1
1.8
2.1
1.7
2.0
2以下
地点3
2.0
1.8
2.0
1.9
1.9
(A類型)
地点4
2.2
2.0
2.1
2.2
1.9
地点5
2.4
1.9
1.9
1.9
2.2
地点6
1.9
2.0
1.9
1.8
1.9
地点7
2.0
1.9
1.9
2.4
2.1
地点8
2.9
2.2
2.2
1.9
2.9
別府湾
地点9
2.6
2.2
2.0
2.2
2.7
3以下
(大分港)
地点10
2.5
2.3
2.0
2.6
3.1
(B類型)
地点11
2.8
2.6
2.7
2.7
3.1
津久見湾
臼杵湾
環境基準
2以下
(A類型)
9