平成27年(ラ)第33号 川内原発稼働等差止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件 即時抗告申立補充書・その4 ―「争点3(火山事象)」に関する反論― 平成27年5月25日 福岡高等裁判所宮崎支部 御中 抗告人ら訴訟代理人 弁護士 森 同 板 同 後 同 白 雅 美 井 藤 優 好 鳥 成 努 外 -1- 本書面においては、即時抗告状の第4編「争点3(火山事象により本件原子炉施 設が影響を受ける可能性・・・)に関する反論」を補充する。 1 原決定の認定について 原決定は、「多数の火山専門家も参加するモニタリング検討チームで同意され た基本的な考え方において、『何らかの異常が検知された場合には、モニタリン グによる検知の限界も考慮して、“空振りも覚悟のうえ”で巨大噴火の可能性を 考慮した処置を講ずることが必要である。また、その判断は、原子力規制委員会 ・原子力規制庁が責任を持って行うべきである』といったモニタリングに関する 考え方が示されていることをも併せ考慮すれば、火山ガイドが条件付ける火山活 動のモニタリングは、その目的に照らして実効性のないものと断じることはでき ず、火山学の知見に照らしても不合理なものではないと認めるのが相当である。」 (原決定・117頁~178頁。下線は抗告人訴訟代理人)とある。 しかし、このモニタリングに関する考え方が実現されるとは、到底、考えられ ない。 甲182は、甲173の証拠に表紙をつけたものであるが(甲173の証拠説 明書では、作成年月日が2014年12月8日とあるが、2014年12月3日 の間違いであった。)、ここでは、モニタリングについて、以下のように記載さ れている。 「7 火山活動のモニタリング等 7.3 手順書の整備 (1) 火山活動のモニタリングのための活動の手順 ア 原子力土木建築部長は、対象火山に対して火山活動のモニタリングを -2- 実施し、第三者の助言を得た上で、1年に1回、評価を行い、その結果 を社長へ報告する。 イ 原子力土木部長は、対象火山に顕著な変化が生じた場合、第三者の助 言を得た上で、破局的噴火への発展性の評価を行い、その結果を社長へ 報告する。 (略) (2) ア 原子炉停止、燃料体等の搬出等の実施指示のための手順 社長は、破局的噴火への発展可能性があると報告を受けた場合、原子 力管理部長に原子炉停止、原子力技術部長に燃料体等の搬出等の実施を 指示する。」 この保安規定が後に変更されたかどうかは、債権者においては不明であるが、 変更されたとの情報もない。 この保安規定においては、(債務者の)原子力土木建築部長が破局的噴火の可 能性について判断することとなっており、原子力規制委員会・原子力規制庁が判 断するというモニタリングに関する考え方と明らかに矛盾しているのである。 また、 保安規定変更許可申請の審査は現在継続中だが、審議されている 2014 年 12 月 3 日付け事業者ヒアリングにおいて、債務者から提出された保安規定案 (甲182)には、モニタリングをどうするのか、把握すべき兆候は何で、対処 の判断基準は何か、燃料体等の搬出をどのように行うのか、具体的な計画も実施 基準もなく、ただ単に項目が並べられているだけである。 そもそも、モニタリングに関する考え方では、「何らかの異常が検知された場 合には、モニタリングによる検知の限界も考慮して、“空振りも覚悟のうえ”で 巨大噴火の可能性を考慮した処置を講ずることが必要である。また、その判断は、 原子力規制委員会・原子力規制庁が責任を持って行うべきである」(原決定・1 77頁)とある。 -3- 今年になって、阿蘇山は噴火を繰り返しており、平成27年5月 8 日には、震 度3の火山性地震が発生している。 また、桜島の噴火回数は、 2005年: 17回 2006年: 51回 2007年: 42回 2008年: 80回 2009年: 755回 2010年:1026回 2011年:1355回 2012年:1107回 2013年:1097回 2014年: 656回 2015年: 960回(1月から5月20日までの5ヶ月弱での数字) である。 姶良カルデラが活動を活発化させていることは疑いようがない。 また、新燃岳においても、マグマが供給され続けている。 何らかの異常は現時点で検知されているのである。 しかるに、債務者は、川内原発の再稼働を停止し、燃料の搬出を始めたなどと いう事実はない。 原決定がいうような、「多数の火山専門家も参加するモニタリング検討チーム で同意された基本的な考え方において、「何らかの異常が検知された場合には、 モニタリングによる検知の限界も考慮して、“空振りも覚悟のうえ”で巨大噴火 の可能性を考慮した処置を講ずることが必要である。また、その判断は、原子力 規制委員会・原子力規制庁が責任を持って行うべきである」(原決定・177頁) という話は、実現されていないものであり、このような事情をもって、新規制基 -4- 準適合性審査が不合理でないということなど到底出来ないのである。 以上 -5-
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