(下水道展で出会った子供たち〉`

Vo1 50
No 603
下 水 道 協 会 誌
2013/01
下水道 の扉
(下 水道展 で出会 った子供 たち)
ンに立 ち、子供 たちを中心 とした一 般来場者 のための
ガイ ド役 を務 め る とい う もので す。2010年 は名古屋
昨年 の秋、埼 玉大学 で 開かれ た第 5回 野草 サ ミッ ト
(野 草 サ ミッ ト実行委員会 )に 参加 した折、関係者 か ら
興味深 い話 を聞 きま した。 それ は、 このサ ミッ トの 母
市 で下 水道展 が開かれた のですが、それ以来、3年 連
続 でパ ブ リックゾー ンの お手伝 い をさせ て い ただ い て
お ります。動機 は、子供 たちに「本格 的に下水道へ の
体が、 も とは野鳥 フ ァ ンの 集 ま りだった とい う こ とで
す。埼 玉 県 にはその昔、野 田 (現 。さい た ま市 内)の
関心 の扉 を開けて もらい た いJ、 「 そ のための カギを手
渡 した い」 とい う思 いが あ ったか らです。
サギ山 とい う有名 なサギの営巣 スポ ッ トがあって、最
盛期 には 3万 羽 ものサギが生 息 して い た と聞 きます。
ところが、昭和 40年 代 に入 って都市 開発 に伴 う餌場
会場 で実際に子供 たちと触れ合 い、会話 をしてみる
と、それぞれが個性豊かで実 に多種 多様 な好奇心 を
持 ってい ることに気付か されます。具体的には、ある
子供 は重機が好 きだ と言 い、 またある子供 はマ ンホー
の減少 な どが深刻化 し、営巣数がみるみるうちに減 り、
つい には絶滅 とい う最悪 の結末 を迎 えたのだ といい ま
す。そ んな悲 しい 出来事 に遭遇 した ことで野鳥 ファン
ルの ような狭 い ところに入 ってみたい と言 い ます。
筆者 は名古屋・東京 (2011年 )・ 神戸 (2012年 )の 3
たちが決起 し、野鳥 の生息環境 をまもるための勉強を
始めたのが きっか けだ とい うのです。そ して、野草が
自然生態系 を根底か ら支 える存在だ と気付 き、先述 の
開催 で述 べ 12日 間活動 を しましたが、その経験 を通
じて、下水道展 におけるガイ ド役 の重 要性 を改めて感
じてい ます。それはやは り確 かな手 ごたえが あ ったか
サ ミッ トをは じめ とす る具体的な活動が始 まった と聞
きました。筆者 が参加 した第 5回 サ ミッ トでは野草 の
自生 メカニズムな どを学んだ後、埼玉大学か ら秋 ヶ瀬
公園へ と足 を延 ば し、そ こで営 まれてい る草木の生態
らです。子供たちと 1対 1で 向 き合 うことで、例えば
「○○が好 きJな どの生の声 を聞 き出す ことがで きま
す。そ して、それに応 じた臨機応変 な対応 によって、
彼 らの好奇心 に ピンポ イ ン トで下水道へ の入口をつ な
を見てまわった ことを覚 えて い ます。
ぐ工 夫が で きるのです。
野鳥 へ の想 いが野草 へ の関心 につ なが つた
人には 1つ の関心事 がで きる と、その扉 の先 に新た
な関心事が見えて くる ことが あ ります。そ して、次 の
扉、次 の扉 と開 いてい くうち に、気付 けば当初 は想定
もしなか った分野 に足 を踏み入れて い た とい う話 は、
決 して稀 なケースではあ りませ ん。探究心 の強 い人ほ
子供 たち と笑顔 で コ ミュニ ケ ー シ ョン
毎年必ず一人か二 人出会 うのは、「下水道が大好 き」
とい う子供 たちです。筆者 が 1開 催当た り対応 で きる
子供 の数 はせ いぜい百人が限度 です ので、 この一人∼
二人 とい う数字 は決 して悲観す るよ うなものではあ り
ません。 とい うよ りも、そ んな子供が いることその も
ど、同時にい くつ もの 関心事 を抱 えるものです。
さて、私事 で恐縮ですが、筆者 は 2010年 に新 しい挑
戦 を始め ました。それ は、下水道展 のパ ブ リックゾー
のが正直嬉 しい驚 きで した し、筆者 としては じっ くり
( 66 )
Vo1 50
No 603
下水道の扉
2013/01
水道 の理解 が一段 階進 んでいるために「つ まらない」
と感 じて しま う子 が混在す るので、そのあた りを見極
めることが重要で した。一 人ひとりの関心や理解度が
時間をかけ て彼 らをサポ ー トす ることで、「下水道が
さらに好 きになった」 と言 って もらえる喜びがあ りま
した。
分かれば、それに沿 った特別仕立 ての話 (ク イズ)を
してあげる ことが可能で、その ことによって興味をで
きる限 り大 きく膨 らませてあげることがで きます。 と
にか く展示物やパ ネルが発信す る力 には限界 があ りま
すか ら、足 りない部分 は対面 の コ ミュニ ケー ションで
それか ら印象 に残 っているのは、機械 を分解す るの
が好 きだ とい う子供 と一 緒 にまわった時の ことです。
さすが に展示物 を分解 させ るわ け にはい きませ んが、
分解 した ら楽 しそ うな ものを探 してまわったのをよ く
覚 えてい ます。 もちろん筆者 自身、そ んな目線 で下水
道展 を見学 した こ とが なか ったので とて も新鮮 で し
た。展示 されてい る設備 の 隠れた部分 まで想像 しなが
ら見て い ると、 ついついパ ンフレッ トの細か い構造図
補完す る しかあ りません。正 直 い う と下水道展 で授 け
た知識 が、その後すべ ての受け取 り手に よって持続的
に保持 され、 各 々の生活 の中で活かされてい くか とい
えば、それはなかなか難 しいので はないか と感 じます。
ただ、で きるだけ多 くの子供 たちに、本当の意味 で「面
白い」と思って もらえる何かを見つ けて帰 って もらい、
にまで 目が向 き、従来 よ りも深 い部分 で技術 に触れた
気が しました。
我 々 も彼 らに対 して継続的に情報 を発信 で きる術 を持
つ ことが重要です。それがで きれば、彼 らの中の下水
道 に関す る知識 は永 く記憶 され、 さらに理解 を深める
学習へ と彼 らを導 いて くれる ことで しょう。
子供 た ちの姿 は真剣そ の もの
パ ブ リックゾ ー ンの案 内 に関 して は、基 本 的 にブ ー
ス ご とに設置 された クイズ を解 い て まわ るス タイルを
採 りま したが、 この形 も功 を奏 した と思 い ます。 なぜ
な ら子 供 た ち に とって、 クイズ に挑 戦 す る こ とが全
ブ ース をまわ る 目的 にな ります し、それ を脇 でサポ ー
関心の入 口になることを願 つて
トす る人 間が い る こ とに よって ゴー ル をめ ざす モ チ
ベ ー シ ョンが 高 まる と感 じたか らです。
人 間 は 日々 の 暮 ら しの 中 で しば しば新 しい 発 見 を
し、 場合 によってはその ことに興味 を持 ち、深 く入 り
意外 だ ったの は、小 学校 の低 学年 を想定 してつ くっ
た クイズが大 人 に も受 け入 れ られた こ とで す。考 えて
みれば、下水 道 に関す る知識 レベ ルは大 人 と子供 でそ
込 んで い きます。生 きる ことはそれ 自体が探究的 な学
習 の積 み重 ねだ ともい われて い ます。下水 道界が人 々
う大 差 が な い のか も しれ ませ ん。一 方 で、「 問題 が簡
単す ぎてつ ま らな い 」 と言 う子供 もい ま した。 この場
がで きるか、 それ を実践す る場 として下 水道展 は今後
の好奇心や関心 に対 し、 どれだ け の扉 を用意す るこ と
ます ます重要 な もの になるはず です。
(筆 者 :中 山
合、単 にクイ ズ を解 くコ ツをつ か むのが早 い子 と、下
◇
◇
◇
( 67 )
◇
◇
勲)