研究課題事後評価結果(平成25年度)

研究課題事後評価結果(平成25年度)
Ⅰ.評価対象研究課題の概要
1.研究課題名:低燃費車に対応した燃費試験法の高度化に関する研究
2.研究代表者:鈴木 央一
3.研究期間:平成22年度~平成24年度
4 . 研 究 予 算 :( 22 年 度 ) 1,645 千 円 、( 23 年 度 ) 1,764 千 円 、( 24 年 度 ) 3,592 千 円
5.研究の種類:特別研究、 経常研究
6.研究の要旨
公表燃費が実燃費と乖離している、という指摘があるが、その乖離をなくすことは、メー
カ ー が 進 め て い る 低 燃 費 化 技 術 を 単 に カ タ ロ グ 値 だ け で な い 現 実 の 燃 料 消 費 削 減 や CO2 排
出 低 減 に つ な が る 。 そ の 差 を 生 む 主 た る 因 子 と し て 、「 走 行 抵 抗 の 高 精 度 化 」「 エ ア コ ン 使 用
時燃費評価」を取り上げ、例えばエコタイヤにおける従来タイヤと異なる特性等を反映でき
る妥当性を向上させた評価方法を提示した。
7.研究計画の変更等に関する説明
走行抵抗に関する事前調査では、加減速時に転がり抵抗が増加するにも関わらず、惰行試
験に基づく値を設定すること、さらには車両の内部ロスが速度により非連続な変化をするこ
とが燃費誤差要因として考慮されたが、試験の結果それらの影響は十分小さかったのに対
し 、走 行 抵 抗 測 定 に お け る 温 度 影 響 が 、い わ ゆ る「 エ コ タ イ ヤ 」に お い て 顕 著 に 大 き く な り 、
燃費試験の誤差要因となることがわかり、公平な試験方法の策定に資する検討を行った。
8.得られた主な成果とその効果
○転がり抵抗の小さい、いわゆる「エコタイヤ」において走行抵抗測定時の気温の影響が大
き い こ と が わ か り 、高 温 下 で 走 行 抵 抗 測 定 を 行 う と 2~ 3% オ ー ダ ー で 燃 費 が 良 く な る 傾 向 に
な る 。 そ れ に 対 し て 、 現 行 試 験 法 の 温 度 補 正 を 、 ISO に 基 づ く タ イ ヤ 単 体 転 が り 抵 抗 係 数
( RRC)を 用 い た 2 次 近 似 式 を 用 い る こ と で 、気 温 に よ ら な い 高 精 度 な 走 行 抵 抗 評 価 が 可 能
となることを明らかにした。
○ 上 記 に つ い て 、 WLTP 試 験 手 順 策 定 の 場 に デ ー タ を 提 出 し た 。
○エアコン使用時燃費について、試験室およびエアコン設定温度の違いによる影響度が車両
に よ り 大 き く 異 な り 、1 条 件 で 現 実 を 代 表 す る こ と は 困 難 だ っ た 。そ の 中 で 試 験 室 温 度 30℃ 、
設 定 温 度 25℃ と し た 場 合 に 、 あ る 程 度 ト ー タ ル 性 能 に 見 合 っ た 評 価 が 行 え る こ と が わ か っ
た。
○ WLTP に 関 す る 各 種 調 査 を 実 施 し 、非 常 に 複 雑 化 な 手 順 と な る 電 気 自 動 車 や プ ラ グ イ ン ハ
イブリッド車についても試験評価できる体制を整えた。
Ⅱ.評価結果
1.これまでの研究の進め方
4.0
(手順、手段、手法)は適切であったか
2.研究のレベルは
3.9
どうであったか
・エアコン設定燃費試験結果をどのように試験法改善に繋げるのか明示して頂きたい。
3 .( 当 初 の 計 画 か ら の 変 更 が あ っ た
場 合 、) そ の 理 由 ・ 内 容 は 適 切 か
4.4
4.研究成果の発表状況は適切か
4.0
・積極的に外部発表を行っている。
・エアコン使用時の評価法の結論がやや弱い。
・成 果 発 表 状 況 は 良 好 で あ る 。こ れ ま で の 成 果 を 纏 め て 査 読 付 き 論 文 と し て 国 内 外 へ の 情
報発信をお願いしたい。
5.得られた成果から社会的
4.4
効果が期待されるか
・得られた成果の社会へのフィードバック方法についてご検討いただきたい。
○ 評価委員のその他コメント
・今後の国際基準調和の議論に資する有用なデータを提供している。エアコンの燃費への影
響についてはタイプや容量の大きさに配慮する必要がある。
・交通研らしい研究と思われる。
総合評価:4.1
Ⅲ.評価委員のコメントに対する意見、対応等
エ ア コ ン 使 用 時 の 燃 費 評 価 に 関 す る 成 果 や そ の 生 か し 方 に つ い て 十 分 と い え な い の で は 、と
い う コ メ ン ト を い た だ い て い る が 、走 行 抵 抗 関 連 を 優 先 す る 事 情 が あ っ た こ と と 、震 災 後 の
節 電 に よ る 影 響 で 制 約 が あ っ た こ と な ど に よ る も の で す 。そ の 一 方 で 、35℃ 日 射 あ り の 厳 し
い 条 件 で 行 う 米 国 の 試 験 方 法 や 、日 欧 で 検 討 さ れ て い る 25℃ の ま ま 実 施 す る 試 験 方 法 の い ず
れ で も 課 題 が あ る こ と を 示 し 、そ の 上 で 30℃ で 妥 当 性 の 高 い 評 価 が で き る と い っ た 従 来 に な
い 結 果 を 得 て い る こ と は 、今 後 試 験 法 等 の 議 論 の 場 で 提 案 で き る も の で あ り 、知 見 を 生 か し
ていきたい。
研究課題事後評価結果(平成25年度)
Ⅰ.評価対象研究課題の概要
1.研究課題名:自動車の電子制御の進展が安全性・信頼性に及ぼす影響に関する研究
2.研究代表者:伊藤紳一郎
3.研究期間:平成22年度~平成24年度
4 . 研 究 予 算 : (22年 度 )3,287千 円 、(23年 度 )2,516千 円 、(24年 度 )2,734千 円
5.研究の種類:特別研究、経常研究
6.研究の要旨
・自動車用電子機器の安全性について、ハードウェア、ソフトウェアの両面から課題の整理
・電子制御システムの信頼性評価についていくつかのケーススタディを実施する。
・自動車用電子機器の安全性について、ハードウェア、ソフトウェアの両面から総合的に検
証する手法について検討を実施する。
7.研究計画の変更等に関する説明
変更なし
8.得られた主な成果とその効果
・電子制御に関する課題の整理結果
→ ケーススタディ及び総合的安全対策のあり方の検討で活用
・ ABS と LKAS( 車 線 維 持 支 援 装 置 ) の ケ ー ス ス タ デ ィ 結 果
→ 総合的安全対策のあり方の検討で活用
・総合的安全対策のあり方に関する検討結果
→ 実 車 走 行 模 擬 装 置 が 「 走 る 」「 止 ま る 」 の 機 能 の 検 証 に 活 用 可 能
→ 「曲がる」の機能の検証に活用可能な方法の提示
Ⅱ.評価結果
1.これまでの研究の進め方
3.3
(手順、手段、手法)は適切であったか
・難しい研究テーマであるが、できるところをできる方法で行ったという感じであり、研
究手法自体にもっと検討が必要ではないか。
・ケーススタディがかなり限定されているが、より多くのケースに対応するためにはどの
ようにするのか?
・ABS,LKAS の ケ ー ス ス タ デ ィ そ の も の が 目 的 な の か 。電 子 制 御 シ ス テ ム の 信 頼 性 評 価 に
どう繋がるのか。
2.研究のレベルは
3.3
どうであったか
・1.とも関連するが、明確な成果というものが十分とは言えないように思われる。
・研究タイトルが広い対象を一般的に扱うような形のため3年間の作業で本来期待したア
ウトプットと比較してどれだけの成果が得られたか第三者として分からなかった。
3 .( 当 初 の 計 画 か ら の 変 更 が あ っ た
.
場 合 、) そ の 理 由 ・ 内 容 は 適 切 か
4.研究成果の発表状況は適切か
3.0
・交 通 研 主 催 と 思 わ れ る 会 合 で の 発 表 2 件 の み で あ り 、も っ と 積 極 的 な 対 外 発 表 を 期 待 す
る。
・研 究 の 直 接 的 成 果 が 外 部 に ど の よ う な 形 で 発 信 さ れ 、そ れ に 対 す る フ ィ ー ド バ ッ ク が ど
の よ う な 研 究 作 業 の 中 で 生 か さ れ た か が 資 料・口 頭 発 表 い ず れ の 内 容 か ら も 明 確 に 理 解
できなかった。
・成 果 を 公 表 し に く い 面 も あ る と 思 わ れ る が 、よ り 多 く の 発 表 が あ れ ば 成 果 が 評 価 で き る
と思われる。
5.得られた成果から社会的
3.6
効果が期待されるか
・成果の適用先が明確でない。
○ 評価委員のその他コメント
・市場でのトラブル事例を元にその再現を各種の手法で確認したもので、有用である。
総合評価:3.3
Ⅲ.評価委員のコメントに対する意見、対応等
1.
通 常 、信 頼 性 確 保 に 関 し て メ ー カ ー 等 で 実 施 さ れ て い る モ デ ル ベ ー ス 設 計 や HILS 検 証 等
は シ ス テ ム の 詳 細 情 報 を 把 握 し て い な い と 対 応 が 難 し い が 、我 々 は 第 3 者 の 立 場 か ら 検 証 す
る 方 法 を 検 討 し た も の で あ る 。車 は 道 路 上 を 走 行 す る も の で あ り 、路 上 走 行 で の 性 能 評 価 が
基 本 で あ る 。し か し な が ら 、路 上 走 行 で は 検 証 で き る 条 件 が 限 定 さ れ 、再 現 性 が 乏 し い 場 合
や 再 現 に は 危 険 が 伴 う 場 合 も あ り 得 る 。そ こ で 、路 上 走 行 を 模 擬 す る た め の 実 車 走 行 模 擬 装
置 を 考 案 し 、① 実 車 走 行 模 擬 装 置 が 路 上 走 行 を き ち ん と 再 現 で き て い る か ? ② 実 車 走 行 模 擬
装 置 を 使 う と 車 載 電 子 装 置 の 信 頼 性 に つ い て( 特 に ソ フ ト 上 の 変 更 を 物 理 現 象 と し て 捉 え る
こと)検証できるか?をケーススタディで確認したものである。
そ の 結 果 、 車 の 3 大 機 能 の う ち 「 走 る 」「 止 ま る 」 に つ い て は 、 ABS の ケ ー ス ス タ デ ィ で
検 証 可 能 で あ る こ と が わ か っ た が 、「 曲 が る 」 に つ い て は 、 現 状 の 技 術 レ ベ ル で は 実 車 走 行
模 擬 装 置 で は 再 現 が 困 難 で あ り 、 LKAS( レ ー ン キ ー プ ア シ ス ト 装 置 ) に つ い て は 、 路 上 走
行で評価せざるを得なかったということである。
2.
最 近 の 電 子 シ ス テ ム は ブ ラ ッ ク ボ ッ ク ス 化 し て お り 、そ の 信 頼 性 を 外 部 か ら 第 3 者 の 立 場
で 検 証 す る こ と は 非 常 に 難 し く な っ て き て い る が 、そ の 中 で 上 記 の 検 討 を 実 施 で き た と い う
ことである。
4.
実 車 走 行 模 擬 装 置 を 当 研 究 所 に 設 置 し て 測 定 を 実 施 し た わ け で は な く 、必 要 最 低 限 の デ ー
タ取得しかできなかったため、我々も十分なデータ量であったとは考えていない。
その中で取得できたデータをとりまとめたものを
http://www.ntsel.go.jp/forum/2011files/1109_1115.pdf
で発表したものである。
ご 指 摘 頂 い た 外 部 へ の 発 表 に つ い て は 、今 後 検 討 し て い き た い 。ま た 、自 動 車 の 安 全 性 を 考
え る 上 で 信 頼 性 評 価 は 重 要 な テ ー マ で あ る と 考 え ら れ 、本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 は 今 後 の 研 究
等において有効に活用していきたいと考えている。
5.及びその他のコメント
ま さ に 、ご 指 摘 の と お り 、市 場 で の ト ラ ブ ル が 報 告 さ れ た 時 の 検 証 に 有 効 活 用 で き る と 考
えており、実車走行模擬装置を当研究所に設置できれば、市場トラブルの検証のみならず、
新たな研究の発展性も考えられ、有効活用できると考えられる。
研究課題事後評価結果(平成25年度)
Ⅰ.評価対象研究課題の概要
1.研究課題名:電気自動車及び電気式ハイブリッド自動車の安全確保に関する研究
2.研究代表者:松村 英樹
3.研究期間:平成22年度~平成24年度
4 . 研 究 予 算 :( 22 年 度 ) 1,944 千 円 、( 23 年 度 ) 1,358 千 円 、( 24 年 度 ) 2,277 千 円
5.研究の種類:経常研究
6.研究の要旨
近 年 、普 及 がめざましいハイブリッド車 や電 気 自 動 車 (以 下 、「電 気 自 動 車 等 」という)に特 有 の安 全
性 (感 電 防 止 ・電 池 安 全 )に関 して研 究 を行 った。特 に安 全 性 が懸 念 されているリチウムイオン電 池 の
破 裂 ・発 火 リスクについて検 討 した。
その結 果 、リチウムイオン電 池 搭 載 車 両 について、車 両 火 災 時 に熱 暴 走 に至 る危 険 性 を示 した。ま
た、リチウムイオン電 池 が熱 暴 走 に至 った場 合 における電 池 の破 裂 の危 険 性 、可 燃 性 ガス・有 毒 ガス
の発 生 、過 充 電 防 止 機 能 の重 要 性 を把 握 した。
7.研究計画の変更等に関する説明
本 研 究 期 間 中 に電 池 安 全 を中 心 とした電 気 自 動 車 等 に関 する国 際 基 準 の検 討 が開 始 されたこと
もあり、行 政 ニーズとして電 池 安 全 への対 応 についての要 望 ・要 請 が高 まった。また、個 別 課 題 (1)の
電 気 自 動 車 等 の安 全 性 に関 する調 査 において、電 気 自 動 車 等 の特 有 の安 全 性 として電 池 安 全 に関
する課 題 の優 先 順 位 が非 常 に高 いことも明 らかになった。これらを受 けて、研 究 期 間 の途 中 から、マン
パワー、予 算 などを考 慮 して個 別 課 題 (1)~(4)のうち、(1)及 び(2)において電 池 安 全 を中 心 に調 査 及
び研 究 を行 った。
8.得られた主な成果とその効果
①松 村 , 田 中 , 伊 藤 , 松 島 , 細 川 , 松 井 ; 「駆 動 用 蓄 電 池 搭 載 車 の安 全 性 評 価 について-路 上 使
用 時 のアクシデントを想 定 した条 件 の検 討 -」, 交 通 安 全 環 境 研 究 所 フォーラム 2011, 11.2011
②H.matsumura, S.Itoh, K.Matsushima; “Temperature characteristics of a hybrid electric vehicle
fire”, SAE World congress 2012, 4.2012
③松 村 , 松 島 ; 「リチウムイオン電 池 の安 全 性 評 価 試 験 における発 生 事 象 について」, 交 通 安 全 環 境
研 究 所 フォーラム 2012, 11.2012
得 られた成 果 は、電 気 自 動 車 等 の安 全 基 準 ( 電 気 安 全 及 び電 池 安 全 )を議 論 する会 議 体 である
EVS gtr 及 び REESS インフォーマルグループにおいて活 用 する。
Ⅱ.評価結果
1.これまでの研究の進め方
3.7
(手順、手段、手法)は適切であったか
・常用条件下でなく事故想定条件を選んだ妥当性を説明した方が良い。
・例 え ば 衝 突 し た 場 合 と い う 自 動 車 特 有 の 安 全 性 に 着 目 し て い る 点 が 当 研 究 所 に 相 応 し い
研究と考える。
2.研究のレベルは
3.9
どうであったか
・加 熱 試 験 と し て は 興 味 深 い が 、安 全 性 確 保 の た め の 対 策 に ど う 繋 げ る か 検 討 し て 欲 し い 。
・実験映像は大変興味深い。
3 .( 当 初 の 計 画 か ら の 変 更 が あ っ た
場 合 、) そ の 理 由 ・ 内 容 は 適 切 か
4.0
4.研究成果の発表状況は適切か
3.6
・社会的な注目も高いので、積極的に対外発表を期待する。
5.得られた成果から社会的
4.4
効果が期待されるか
・電動車両が社会に受け入れられるためには中心となる安全課題である。
○ 評価委員のその他コメント
・国際基準調和の観点からの検討課題が多いのが実情であるが、ここでの結果が実際に起こ
り得る事故を想定したものとして活用されることが期待される。
・ 交 通 研 の テ ー マ と し て 適 切 で あ り 今 後 の 展 開 を 期 待 し た い 。 B787 の 事 故 例 も あ り 、 他 分
野への応用も期待できるのではないか。
・今後の研究の進展に期待する。ただし 電池の個体差の問題は残る。
総合評価:3.9
Ⅲ.評価委員のコメントに対する意見、対応等
・ 一般にリチウムイオン電池は、短絡、過熱、過充電時に発熱や発火などの異常事象に至
る特性を有しています。一方で、自動車の使用条件の範囲において、短絡、過熱に繋が
るクリティカルな状況としては、事故時の衝突や車両火災が想定されます。衝突につい
て は 、 平 成 22 年 に 約 66 万 件 (ITARDA デ ー タ よ り )発 生 し て お り 、 ま た 、 車 両 火 災 に つ
い て も 平 成 21 年 で 約 5000 件 (消 防 省 ホ ー ム ペ ー ジ よ り )発 生 す る な ど 発 生 件 数 も 多 く 、
優先的に取り組みました。
・ 今回の加熱試験により、車両火災時においてリチウムイオン電池が熱暴走に至る可能性
があることが分かりました。そのため、内燃機関車の車両火災との被害状況の比較、火
災試験の試験条件の検討などが今後の課題と考えます。
・ ご指摘の通り、リチウムイオン電池は、正極や負極材料、電解液などその電池材料の構
成により性能が様々であり電池の個体差は存在します。そのため、様々な種類のリチウ
ムイオン電池を勘案しつつ、包括した安全性の試験法として検討を進めております。設
備・予算等の問題もあり、すべての種類の電池をあらゆる条件で検討することはできま
せんが、発生し得る状況を可能な範囲で想定し、優先順位を定めて重要度の高い項目か
ら検討しました。
・ 他の分野への応用については、リチウムイオン電池としての共通の特性と使用用途に応
じた電池材料構成等による各電池個別の特性があると考えられます。これらを切り分け
つつ検討する必要があると考えます。
研究課題事後評価結果(平成25年度)
Ⅰ.評価対象研究課題の概要
1.研究課題名:子供乗員及び小柄乗員の衝突安全性に関する研究
2.研究代表者:細川成之
3.研究期間:平成22年度~平成24年度
4 . 研 究 予 算 :( 22 年 度 ) 1,841 千 円 、( 23 年 度 ) 2,132 千 円 、( 23 年 度 ) 3,039 千 円
5.研究の種類:経常研究
6.研究の要旨
現在の法規衝突試験法の多くは,これまで成人男性の平均サイズのダミーで評価されてき
た . 一 方 で , 子 供 乗 員 補 助 乗 車 装 置 ( 以 下 , CRS と い う ) で は , 前 面 衝 突 試 験 法 規 は あ る が
側面衝突法規は導入検討の途上にあり,さらに,幼児専用車(幼稚園バス)では,シートベ
ル ト 等 の 拘 束 装 置 の 規 定 が 無 く ,こ れ も 導 入 検 討 の 議 論 が さ れ て い る 状 況 で あ る .こ れ ま で ,
衝 突 安 全 法 規 で 十 分 フ ォ ロ ー さ れ て こ な か っ た 小 柄 乗 員 ・ 子 供 乗 員 に つ い て , CRS の 側 突 試
験方法の策定,幼児専用車の拘束装置の検討とその性能要件の策定並びに小柄な体格の乗員
の衝突安全性を向上させるのに必要なデータの取得と対策の可能性の検討を実施する.
7.研究計画の変更等に関する説明
8.得られた主な成果とその効果
・CRS 乗 員 の 側 面 衝 突 時 に お け る 傷 害 リ ス ク に つ い て 実 車 実 験 に よ り 確 認 で き た .結 果 に
ついては,今後の試験方法改正等に有用なデータとして活用が期待できる.
・幼児専用車の拘束装置について必要な性能要件について,実験及びシミュレーション
に よ っ て 有 用 な デ ー タ が 得 ら れ た .結 果 に つ い て は ,国 土 交 通 省 車 両 安 全 対 策 検 討 会 に
お い て ,「 幼 児 専 用 車 の 車 両 安 全 性 向 上 の た め の ガ イ ド ラ イ ン 」 策 定 の た め の 資 料 と し
て用いられた.
・体 格 違 い に よ る 保 護 性 能 の 効 果 差 に つ い て は ,交 通 事 故 調 査 結 果 か ら 分 析 を 実 施 し た .
交通事故データの分類項目を使った調査では明確な差異は見いだせなかった.ただし,
検討の過程で得られた知見は多く今後の研究につながるデータは得られた.
Ⅱ.評価結果
1.これまでの研究の進め方
4.1
(手順、手段、手法)は適切であったか
・欠けていた側面衝突という条件に対し研究を行った点が評価出来ると思う。
2.研究のレベルは
4.0
どうであったか
・数値シミュレーション等も併用するという方法もあるのではないか?
3 .( 当 初 の 計 画 か ら の 変 更 が あ っ た
.
場 合 、) そ の 理 由 ・ 内 容 は 適 切 か
4.研究成果の発表状況は適切か
4.3
・政府の検討への貢献も含め、積極的に成果公開がなされている。
・査読付き論文としての成果発表も今後、期待する。
5.得られた成果から社会的
4.4
効果が期待されるか
・ CRS へ の 信 頼 性 は 社 会 の 関 心 が 高 い 。
・詳細なモデルによるシミュレーションなども併用されて研究の深度化を期待する。
○ 評価委員のその他コメント
・小柄な乗員の安全性について有意な相違が見いだせなかったとの成果のまとめだと研究課
題 の 設 定 に 対 し て 論 理 的 な 分 析 が で き な か っ た と 言 っ て い る よ う に 見 え て し ま う の で 、よ
り 具 体 的 に わ か っ た こ と 、分 か ら な か っ た こ と に 対 し て は 次 の 段 階 で ど の よ う な 調 査 を す
べきかという戦略について記述する努力が必要かと愚考する。
総合評価:4.2
Ⅲ.評価委員のコメントに対する意見、対応等
現 在 の 衝 突 試 験 法 規 に 用 い ら れ て い る 傷 害 値 評 価 用 ダ ミ ー の 体 格 は ,米 国 人 男 性 の 平 均 値
を 基 に 規 定 さ れ て い ま す .一 方 で ,海 外 文 献 及 び 会 議 等 で 小 柄 乗 員 の 傷 害 を 問 題 視 す る 報 告
か ら 本 研 究 に 着 手 し ,国 内 の マ ク ロ 交 通 事 故 デ ー タ ベ ス を 用 い て 分 析 を 行 い ま し た .国 内 の
デ ー タ に は 体 格 の 項 目 が な い も の の ,一 般 的 に 男 性 に 比 べ て 女 性 の 体 格 が 小 柄 で あ る こ と か
ら性別により分析を進めました.
結 果 的 に は 男 性 乗 員 に 比 べ て 女 性 乗 員 で は 重 傷 死 亡 割 合 が 低 い 結 果 が 得 ら れ ま し た が ,こ
れは衝突直前速度の分析から,女性乗員では衝突直前速度が低いためと考えられます.
今後同様の研究を実施する場合には以下の方針で進める必要があると考えています.
・乗 員 の 対 象 を ,試 験 用 ダ ミ ー の 体 格 と 異 な る 小 柄 乗 員 及 び 衝 突 耐 性 値 の 低 い 高 齢 者 と す る
また,車いす乗員についても検討を行う.
・乗員の乗車姿勢やシートベルトの使用状況に関する市場調査
・車 両 の 乗 員 拘 束 装 置( エ ア バ ッ グ や シ ー ト ベ ル ト )が 衝 突 試 験 用 ダ ミ ー と 異 な る 体 格 の 乗
員に対してのどのように作用するかを検証.
→小柄なダミーを用いた衝突試験,コンピュータシミュレーション
結果の活用については以下について考えられます.
・衝突試験法の改定等
傷害値評価用ダミーの改定資料
傷害値評価項目及び規定値改定資料
研究課題事後評価結果(平成25年度)
Ⅰ.評価対象研究課題の概要
1.研究課題名:歩行者事故の防止および被害軽減に関する研究
2.研究代表者:安藤憲一
3 . 研 究 期 間 : 平 成 22 年 度 ~ 平 成 24 年 度
4 . 研 究 予 算 :( 22 年 度 ) 5,917 千 円 、( 23 年 度 ) 4,772 千 円 、( 24 年 度 ) 2,628 千 円
5.研究の種類:経常研究
6.研究の要旨
1. 歩 行 者 事 故 の 分 析 に 関 す る 調 査 ・ 研 究
・事故データ及びドライブレコーダのニアミスデータより歩行者事故の詳細な特徴を分
析.
2. 衝 突 条 件 が 歩 行 者 の 傷 害 に 及 ぼ す 影 響 の 調 査
・車両衝突速度が,傷害に及ぼす影響を把握する.
3. 歩 行 者 検 知 型 予 防 安 全 装 置 の 性 能 要 件 に 関 す る 調 査 ・ 研 究
・市販車両の性能を調査する.
7.研究計画の変更等に関する説明
8.得られた主な成果とその効果
・事 故 実 態 より歩 行 者 事 故 防 止 の性 能 要 件 を把 握 →今 後 の 国 際 的 な 基 準 等 の 策 定 に も 影 響 を 及
ぼ し う る Euro-NCAP へ 反 映
・車 両 衝 突 速 度 が低 下 したときの歩 行 者 被 害 を把 握 →評 価 試 験 の指 標 に反 映 予 定
・実 車 の性 能 限 界 を把 握
Ⅱ.評価結果
1.これまでの研究の進め方
4.1
(手順、手段、手法)は適切であったか
・評価対象の条件を適切に分類して整理している。
2.研究のレベルは
4.1
どうであったか
・条件をいろいろと変えて実験を行い説得力のある結果である。
3 .( 当 初 の 計 画 か ら の 変 更 が あ っ た
4.0
場 合 、) そ の 理 由 ・ 内 容 は 適 切 か
4.研究成果の発表状況は適切か
4.4
・知財の申請も含め積極的な成果公開がなされている。
・積極的な成果発表が認められる。
5.得られた成果から社会的
4.4
効果が期待されるか
・事故の減少や被害低減に今後役立つ研究である。
・今 後 市 場 投 入 さ れ る 予 防 安 全 の レ ベ ル を 高 い レ ベ ル に 保 つ た め に も 効 果 を 見 極 め る た め
の重要な視点である。
・非常に重要な研究であると思う。
○ 評価委員のその他コメント
・本評価法の客観性が確認された上で、確立され広く適用されることが望まれる。
・特別研究としての継続性が確保されているので今後の具体的成果への発展を期待したい。
・大変重要な研究と思われるが、得られた成果をどのように解釈して、どのように活用する
のかより成果の見える化ができればよいと思う。
総合評価:4.2
Ⅲ.評価委員のコメントに対する意見、対応等
・広 範 囲 な 適 用 を 目 指 す た め に も 欧 州 ,米 国 と 連 携 を 図 り ,評 価 法 の 客 観 性 を 確 認 し て い く
予定である.
・ 具 体 的 な 成 果 の 活 用 方 法 と し て , 我 が 国 の 自 動 車 ア セ ス メ ン ト ( J-NCAP) に お い て 歩 行
者検知型被害軽減装置を評価する際の手法の検討に活用される予定である.
・道路運送車両の保安基準への導入を目指す.