Extravasationを伴う憩室出血に 対するバリウムパッキング2例 那須赤十字病院 放射線科 藤塚 進司 症 • • • • 例 ➀ 77歳 女性 主 訴:大量鮮血便 既往歴:冠攣縮性狭心症、高血圧、高脂血症 内服薬:バイアスピリン100mg1T メバロチン10mg1T パリエット10mg1T シグマート5mg3T Vital Sign:35.4℃ 117bpm 154/94mmhg 経 過 • 当院循環器通院中。5/9夜、大量の鮮血便で救 急外来に直来。Dynamic CTで結腸憩室からの extravasationあり。入院直後の未明に再度大量 下血。翌日主治医よりバリウムパッキング依頼。 5/9 5/10 WBC 8500 7500 Hb(g/dl) 14.8 11.4 Plt(✕10⁴) 39.5 32.1 PT-INR 1.0 - Dynamic CT 非造影 後期相 動脈相 バリウムパッキング施行 • 注腸検査用バリウム75%を経肛門的に800ml 注入。 • 右側臥位、半立位にし、上行結腸にバリウムの 貯留が十分と思われたところで、15分静置。 • 不要なバリウムを回収し、手技を終了した。 バリウムパッキング 経 過 • バリウムパッキング施行後、下血はみられず、 貧血進行なく、5/16(第8病日)で退院した。 以降再出血は確認されていない。 5/10 5/12 WBC 7500 9600 Hb(g/dl) 11.4 11.2 Plt(✕10⁴) 32.1 32.4 症 例 ② • 64歳 男性 •主 訴:鮮血便 • 既往歴:高血圧、高脂血症 • 内服薬:アテレック10mg1T タナトリル5mg1T プラバスタチン5mg1T Vital Sign:36.4℃ 120bpm 170/110mmhg 経 過 • 8/12朝から鮮血便5回みられ、当院紹介。 受診時も鮮血便は持続し、Dynamic CTで上行結 腸憩室からのextravasationあり、主治医よりバ リウムパッキング依頼。 8/12 WBC 11400 Hb(g/dl) 14.2 Plt(✕10⁴) 23.1 PT-INR 1.0 Dynamic CT 非造影 後期相 動脈相 バリウムパッキング施行 • 注腸検査用バリウム75%800mlをバルーンカテー テル24Frを用いて経肛門的に注入。 • バリウムは上行結腸まで到達し虫垂も描出された。 • 半立位且つ右側臥位にして15分静置。 • 直腸内の不要なバリウムを回収し手技を終了した。 バリウムパッキング 経 過 • バリウムパッキング施行後、下血はみられず、 有意な貧血進行なく、8/21(第10病日)で 退院した。以降再出血は確認されていない。 8/12 8/13 8/18 WBC 11400 7500 8300 Hb(g/dl) 14.2 11.3 13.1 Plt(✕10⁴) 23.1 19.6 26.1 考 察 • 憩室出血に対する治療的バリウム注腸は1970年 い J.T.Adams により初めて報告されている。 • Nagataらによる最近の報告では、自然止血群と の無作為比較試験で再入院率、輸血単位、CF率 が有意に低かったとされている。 考 察 • バリウムパッキングによる止血効果は ➀バリウムによるタンポナーデ効果 ②バリウム硫酸塩自体の止血効果 と2つの仮説が考えられているが、詳細不明。 考 察 • 最近の報告では、150~200W/V%と高濃 度でのバリウムパッキングが多い。 • 2014年9月に硫酸バリウムの添付文書に、憩室 のある患者には慎重投与の記載が追加された。 胃透視後に憩室炎の発症のため。 • 通常胃透視のバリウム濃度は200 W/V%前後。 考 察 • 当院では通常検査時と同濃度75 W/V%を使用。 • 2008/11月~現在で28例中23例で止血。 • 23例中10例はExtravasationあり。 ⇒高濃度でなくとも活動性出血を止血できる。 ⇒症例➀ではバリウムを溜めにくいS状結腸でも 成功 考 察 • バイタル不安定時にも有効かどうかは検証され ていない。 ⇒バリウムによりTAEは困難が予想される。 ⇒外科スタンバイで施行するか? ⇒そもそも施行不可能か? 結 論 • バリウムパッキングはExtravasationを伴う憩室 出血に対して有効な治療法と考える。 • 通常の検査用濃度で、動脈性出血も止血しうる。 • バイタル不安定時に有効かどうか慎重に検討が 必要。
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