急性肝障害を呈したHHV-6 感染症の幼児例 〇尾上彰則、小沼俊一、阿部利夫、山田裕美、 清水亜妃、河口修子、土屋恭子、土屋喬義 土屋小児病院 human herpesvirus 6 (HHV-6) ・HHV-6は人が唯一の自然宿主である ・移行抗体が乳児の感染から守っている ・HHV-6A、HHV-6Bに分類され突発性発疹には HHV-6Bが関与している ・重症合併症として劇症肝炎、心筋炎、脳炎、血 球貪食症候群が挙げられ、解熱・発疹出現後に も重篤な合併症を起こしうる 症例 1歳0ヶ月 男児 【主訴】 発熱、嘔吐、下痢 【既往歴】 突発性発疹には未罹患 【現病歴】 4/19より6回の嘔吐が出現、経口摂取は保たれ ており自宅にて経過観察していたが、4/20より 38.7℃の発熱、水様性下痢を7回認め当院受 診、同日(第2病日)入院となった。 入院時現症 【一般所見】 身長 75cm、体重 11.3kg、体温 38.8℃ 意識清明、皮膚は乾燥しturgorは軽度低下 【局所所見】 咽頭発赤なし、koplik班は認めず 頚部リンパ節腫大なし 胸部聴診は清明 腹部は軟グル音の減弱を認める 肝は3cm触知、脾腫大は認めなかった 入院時検査所見 WBC 8700/μl AST 955U/l BUN 10mg/dl HBsAg - Hb 12.6g/dl ALT 282U/l Cr HCVAb - Plt 21.4×104/μl LDH 1564U/l 白血球分画 T.Bil 0.2mg/dl CMV IgM Glu 93mg/dl EBVVCA IgM - NH3 69μg/dl eos 0 baso 0 0.2mg/dl 便培養 有意菌なし CRP 0.17mg/dl PT 12.7/10.9sec ロタウイルスAg - stab 2 seg 60 Na 138mEq/l PT% 67.6% lymph 34 K 3.6mEq/l APTT 37.2sec mono 4 Cl 99mEq/l 腹部エコー未施行 PT% 67.6% LDH 250 PT% 100% 200 GPT 150 100 50 0 15000 60 WBC HHV-6 IgG 20倍 HHV-6 IgM 20倍 Hb 12000 WBC 300 GOT GPT 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 40 plt 9000 6000 20 3000 0 0 発熱 発疹 第8病日 第50病日 Hb・plt GOT/LDH 経過票 HHV-6による肝障害 ・突発性発疹には約4%に肝機能異常を合併、 ほとんどが一過性の経過をしめす ・まれに重症例(新生児期の劇症肝炎、臓器移 植後の再活性化による肝障害など)を来すこ とがしられている ・成人において伝染性単核球様疾患の報告が 散見される HHV-6の重症肝障害の報告 症例 AST/ALT (初診時) 治療 biopsy 経過 Takikawa T 1992 6m 274/572 female SNMC GCSF,IFN-α + Chronic hepatitis Tajiri H 1997 20m male 101/106 - + Chronic hepatitis Yoshizo A 1990 3m male -/- exchange Transfusions etc + Fulminant hepatitis Died on day 7 K Schmitt 1996 12m 1091/1300 PSL female azathioprin + Autoimmune hepatitis Chronic course 自験例 12m male - Chronic hepatitis? 955/282 SNMC:強力ネオミノファーゲンC SNMC 考察 1 HHV-6は軽度の肝障害を合併することが知られているが、本症 例は凝固異常も合併した重症型であった 2 他の報告例と異なりGOT/GPT比が3以上、軽度の骨髄抑制を 認め、肝障害は血球貪食症候群の一症状とも考えられたが、回 復も速やかであり、また今回は高サイトカイン血症は確認できな かった。 (2ヵ月後 ferritin 65.6、その他の臓器障害なし) 3 今回の肝障害は胃腸炎・脱水症の加療において偶然確認され たものであった 4 肝障害はその後も慢性的に経過、病像としては慢性肝炎を呈し ており、今後病理診断を含めた精査も検討すべきと考えられた まとめ 1 HHV-6が原因と思われる急性肝障害の乳 児例を経験した 2 AST/ALT比が高値であったことが既報と異 なっていた 3 HHV-6は重症・および慢性の肝障害を来し うる 4 小児期の遷延する肝障害の一因として HHV-6を念頭に置くべきである
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