様式 1 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 お よ び 担 当 者 学 位 申 請 者 論 文 担 当 者 池尾 光一 主 査 笹子 三津留 印 ○ 副 査 廣田 誠一 印 ○ 副 査 藤元 治朗 印 ○ Junctional adhesion molecule-A promotes proliferation and 学 位 論 文 名 inhibits apoptosis of gastric cancer (JAM-A は胃癌の増殖を促進し、アポトーシスを抑制する) 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 細胞接着機構の一つであるタイトジャンクションに存在する JAM 蛋白の一つである JAM-A は消化 管粘膜にも広く存在し、生理的に重要な機能を持つのみならず、癌組織においてける浸潤などに も関与をしていると考えられている。しかし、これまでに JAMs の癌組織における機能について は相反する報告がなされており、また JAM-A の胃癌での機能は明らかとなっていない。本研究は 胃上皮細胞における JAM-A の機能と JAM-A が胃癌の増殖能、浸潤能とアポトーシスに与える影響 を検討したものである。正常ラット胃粘膜上皮細胞株(RGM1),RGM1 から樹立された胃癌様細胞 株(RGK1)およびヒト胃癌細胞株(NCI-N87)を用いてその存在の確認と浸潤能およびアポトーシス への影響をノックダウン細胞との比較で評価した純粋な in vitro 研究である。 RGM1 と RGK1 は、JAM-A 、オクルーディン、ZO-1 を発現していたが、クローディンを発現してお らず、RGK1 は RGM1 に比べて有意に強い浸潤能を認めている。JAM-A ノックダウンにより RGK1 で は浸潤能と増殖能の有意な低下が認められたが、RGM1 では浸潤能に変化は認められなかった。ま た NCI-N87 で JAM-A をノックダウンすると細胞増殖能は有意に低下し、抗アポトーシス蛋白であ る Bcl-xl の発現は有意に減少したが、AKT や Mcl-1 の発現は変化しない事を確認している。この 結果から、本研究では JAM-A が胃癌の増殖を促進するとともにアポトーシスを抑制していること を明らかとし、JAM-A が癌の進行に重要な役割を果たしている可能性が示した。 胃がんの浸潤や転移の形成初期における細胞間接着因子の破綻は既にいくつか研究されている が、タイトジャンクションに存在する JAMsの研究は無く、今後他の細胞接着因子との関係や組 織型による差違などを研究することで、組織型別の治療法の確立にもつながる研究であり、学位 授与に値する研究であると評価した。
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