福岡市議会広州市友好訪問団出張報告書

福岡市議会広州市友好訪問団出張報告書
1
目的
福岡市議会では,平成3年度から,友好都市である広州市の人民代表大会常
務委員会と相互交流事業を実施しており,平成23年度は,福岡市議会が広州
市を訪問する年であり,広州市人民代表大会常務委員会から招聘を受け,両市
議会の相互理解を深め,友好関係をさらに発展させるために訪問を行うととも
に,「都市景観」をテーマとして協議及び視察を行った。
また,1980 年に深圳,汕頭,アモイ市とともに中国初の経済特区に指定され,
進出する外国企業に対する優遇措置を実施することで外国投資を集め,中国の
経済発展を支えてきた珠海市を表敬し,視察を行った。
2
期間
平成 23 年 11 月 14 日(月)~11 月 18 日(金)
3
訪問団メンバー
団 長
森
団 員
冨 永
〃
今 林
〃
黒 子
〃
栃 木
〃
笠
〃
高 山
事務局
森
〃
浦
〃
中津留
通 訳
千 葉
4
日程等
別紙1のとおり
英 鷹 (議長)
計 久 (自由民主党福岡市議団)
ひであき(
〃
)
秀勇樹 (公明党福岡市議団)
義 博 (民主・市民クラブ)
康 雄 (みらい福岡市議団)
博 光 (みんなの党福岡市議団)
英 之 (議会事務局長)
茂 雄 (議会事務局総務課長)
智 行 (議会事務局総務課)
由紀子 (総務企画局国際部国際渉外担当員)
【広州市】
1
主な指標
・ 人口(2009年末)
1,033万人(常住人口)
・ 面積
7,434k㎡(福岡市341.32k㎡の約22倍)
・ GDP(2010年)
1兆604億元(約12兆7千億円※。福岡市は約6兆8千億円(2008年度))
(※1元を約12円で換算。以下同じ。)
・ 産業(2010年GDP構成比)
第一次産業 2%,第二次産業 37%,第三次産業 61%
2
概要
中国南部広東省人民政府が置かれる省都。華南最大の都市で,副省級市とし
て経済・財政と法制の面で省と同程度の権限を与えられている。
近隣に深圳,珠海,マカオ,香港などの大都市で形成される珠江デルタの北
部に位置し,華南地区の商業・交通・通信の中枢で,主要貿易港である。
気候は,亜熱帯に属し,年間平均気温は22.8℃,年間降水量は1,736.1㎜,
平均湿度は77%で,日照時間が長く,四季を通していつでも花が見られるこ
とから「花城」とも呼ばれている。
2,200年を超える歴史を持つ古都であり,中国24大歴史文化名城のひとつ。
秦・漢,唐の時代を通じて海外貿易の拠点として機能し,東アジアとヨーロッ
パをむすぶ海上の交易路である「海のシルクロード」の寄港地として栄えた。
中国政府の1978年以降の改革開放政策により,1984年に広州経済技術開発
区が設置され,周辺の深圳,珠海等の経済特区と共に,急速な経済的発展を遂
げた。
自動車産業,石油化学工業,IT等を重点産業としており,自動車産業につ
いては,「中国のデトロイト」を目指すとして,力を入れ,広州ホンダ,広州
トヨタ,東風日産など日系の合弁企業も進出している。
毎年春(4月)と秋(10月)の2回中国輸出商品交易会が開催され,世界各
国から数十万人のバイヤーが広州を訪れている。
2010年11月12日~27日には,第16回アジア競技大会が開催された。
【広州市人民代表大会常務委員会表敬訪問】
1 広州市側出席者
張桂芳
人大常務委員会
楊 武
人大常務委員会
周素勤
人大常務委員会
湯抗美
人大常務委員会
李兆宏
人大常務委員会
楊清蒲
人大常務委員会
劉保春
人大常務委員会
張連広
人大常務委員会
李良洲
人大常務委員会
主任
副主任
秘書長
副秘書長
華僑外事民族宗教工作委員会 主任
研究室 主任
外事弁公室 主任
城農建設環境保護委員会 副主任
華僑外事民族宗教工作委員会 副主任
2 懇談内容
〈広州市〉
○
広州市にとって涼しい季
節に,森英鷹議長を団長とす
る福岡市議会広州市訪問団
をお迎えすることができ,広
州市人民代表大会常務委員
会を代表して,また個人とし
ても,歓迎の意を表したい。
また,森議長については,5
月に議長に就任してまもな
く広州市に足を運んでいた
だき,改めて敬意を表したい。
(張桂芳主任ほかとの懇談の様子)
○
福岡市は歴史が長く,九州にお
ける経済・文化の中心地であるとともに,交通の結節点となっており,西日
本における商都と聞いている。また,福岡市は近代化が進み,特に自動車産
業,医療産業,物流産業が急速に発展し,日本における重要な技術基地であ
ると存じている。
○
広州市は,2200年の歴史があり,中国では早い段階から開放的な政策
を実施した都市で,中国の対外市場の窓口ともなっており,福岡市と似たと
ころがある。改革開放政策を実施して以来,近代化に力を入れて成長を遂げ
ており,特に,2010年のGDPは1兆748億人民元に達し,上海,北
京に次いで,3番目の都市となっている。
○
経済の発展とともに,市民のふれあいの場や居住に相応しい環境づくりに
も力を入れた。特に,2010年のアジア大会が広州市で開催されるという
チャンスを見逃さず,都市建設,都市環境,都市管理に力を入れたことによ
り,都市の姿が大きく変貌し,生活の質が飛躍的に高まった。
○
1979年に,広州市は福岡市と友好都市となり,1991年から広州市
人大と福岡市議会の相互交流が始まった。1999年には両都市の間で友好
都市の覚書きを締結し,隔年相互訪問を制度化した。以来32年間の歴史を
振り返ると,あらゆる分野での交流と協力が,両都市の友好関係をさらに深
め,また協力の成果も豊かになり,市民間の友情も深まりつつあると思って
いる。
○
今回の交流協議のテーマである「都市景観について」は,経済と社会の急
速な発展に伴う都市景観の建設と管理について,新しい考え方を交流するこ
とになると期待している。今後とも,この交流活動を通じて,広州市と福岡
市の友好関係を深め,両都市の市民の友情と福祉の向上のために尽くしたい。
〈福岡市〉
○
張桂芳主任をはじめ,広
州市人民代表大会常務委員
会のみなさんに盛大かつ温
かくお迎えいただき,心よ
りお礼申し上げる。
○
福岡市議会と広州市人民
代表大会常務委員会は19
91年から相互交流を重ね,
福岡市議会の訪問は今回で
11回目となる。広州市人
民代表大会常務委員会が設
(張桂芳主任ほかとの懇談の様子)
置されて30周年を迎えるその佳節に,広州市を訪問できたことはこの上に
ない喜びである。
○
広州市との交流は,教育,港湾,観光,文化・スポーツなどあらゆる分野
での交流が始まっており,行政交流から市民交流へと裾野を広げ,大変有意
義な交流となってきている。このような中,市民の代表である福岡市議会と
広州市人民代表大会常務委員会との友好交流は,ますます重要性を増してく
ると考えている。
○
この度の訪問では,昨年,大成功で閉幕したアジア大会を機に,更なる発
展を遂げている広州市の「都市景観行政」についてご教示いただくとともに,
関係施設を視察させていただき,今後の本市の発展の手がかりとさせていた
だきたい。
○
今後の日中両国,並びに福岡市議会と広州市人民代表大会常務委員会の末
永い交流が続くようお祈りする。
(記念品交換/広州市人大より)
(記念品交換/広州市人大へ)
【広州市人民政府表敬訪問】
1 広州市側出席者
陳明徳
副市長
李兆宏
人大常務委員会 華僑外事民族宗教工作委員会
李良洲
人大常務委員会 華僑外事民族宗教工作委員会
曾慶椿
人民政府外事弁公室 副主任
郭昊羽
人民政府規画局副局長
呉 敏
人民政府林業和園林局副局長
范瑞威
人民政府建設委員会総経済師
主任
副主任
2 懇談内容
〈広州市〉
○
対外交流を担当する副市長として,ここ数年,福岡市からの訪問団と会う
度にとても親しみを感じている。両都市の相互訪問がとても多いことは,単
に交流の歴史が長いだけではなく,両都市のいろんな分野での交流が活発で
あることによるものと考えている。
○
広州市は,世界中のいろ
んな都市と姉妹都市の関係
を結んでいるが,中でも一
番仲が良く,情の深いパー
トナーは,福岡市であると
思っている。
○
今回の福岡市議会の広州
訪問において,重要なテー
マである「都市景観行政」
について協議するのは,今
回の訪問が単なる友好訪問
(陳明徳副市長ほかとの懇談の様子)
ではなく,都市建設と管理について,先進地である福岡市の経験を私どもに
経験させてくれる有意義な訪問であると思っている。
○
第16回アジア大会という恵まれたチャンスをつかまえ広州市は,「空が
さらに青くなる」
「さらに水がきれいになる」
「道路がさらにスムーズに流れ,
渋滞がないようにする」「町全体が,さらにきれいになる」「市民の住宅が,
さらに住みやすくなる」の 5 つのスローガンを基に,数年間をかけて都市建
設と都市管理に力を入れた。中でも,特に「空」,
「水」に力を入れ,産業の
グレードアップとモデルチェンジを行い,環境基準を満たしていない 5,000
戸の工場を他の地域に移転させるなどした。その結果,きれいな空,きれい
な水が見られるようになり,アジア大会後も持続して環境保護のために力を
尽くしている。
○
交流協議の中では,広州市が直面している問題や経験について意見交換を
行うとともに,福岡市の都市管理に係る経験を教示していただければ幸いで
ある。
○
今回の森議長を団長とする福岡市議会の広州訪問を機に,両都市の友好関
係がさらに深まることを確信している。
〈福岡市〉
○
広州市人民政府の皆さんに温かくお迎えいただき,心よりお礼申し上げる。
○
福岡市と広州市は,1979年5月に友好都市の協定を締結以来,30年
を超える永きにわたり交流の歴史を重ねてきた。この間,1980年には,
友好都市締結の記念として,大変貴重なジャイアントパンダを福岡市動物園
に派遣していただき,また,1989年には,福岡市制100周年を記念し
て開催した「アジア太平洋博覧会」に「中国館」を出展する際,広州市には
尽力いただいた。
○
目覚ましい経済発展を遂
げている広州市だが,アジア
大会が開催された昨年は,
「中国で一番幸福感がある
都市」に選ばれ,都市生活の
品質指数は全国30の大・中
都市の中で第1位になった
と聞き及んでいる。
○
今回の交流テーマである
「都市景観行政」について,
アジア大会に向けて建設した
(記念品交換)
「都市建設成果」を強化し,都市管理に向けた長期的な体制確立や都市景観
形成に取り組んでいる広州市と意見交換を行い,本市の今後の都市づくりの
参考とさせていただきたい。
○
今後の日中両国,並びに福岡市と広州市の末永い交流が続くようお祈りす
る。
【交流協議】
1
広州市側出席者
周慶強 人大常務委員会副主任
湯抗美 人大常務委員会副秘書長
李兆宏 人大常務委員会華僑外事工委主任
張連廣 人大常務委員会城建環資工委副主任
聞曉明 人大常務委員会研究室巡視員
李良洲 人大常務委員会華僑外事工委主任
范瑞威 建設委員会総経済師
郭昊羽 規画局副局長
呉 敏 林業和園林局副局長
付鴻棟 人大常務委員会華僑外事工委辧公室主任
黄穗雯 政府外事辧公室国際交流処処長
2 協議内容
〈広州市説明〉
○ 都市建設と管理について(説明者 郭昊羽 規画局副局長)
広州市の都市景観の企画をするに当たっては,福岡市を含む全世界の都市
の経験を参考にした。この
場は,生徒である広州市が,
先生である福岡市に報告
する場であると考えてい
る。
広州市は 2000 年を超え
る歴史を有しているが,都
心部があまり変化してい
ないという,他の都市では
例を見ない姿を見せてい
(交流協議の様子)
た。しかしながら,1980
年代から30年をかけて,都心部の面積が20倍に達し,急速な変化・発展
が都心部の多くの場所で見受けられるようになった。
(注1)
特に 2000 年以降は,「八字方針」のテーマを基に,次のような都市拡大の
スローガンを掲げて都市建設を行った。
(1) 広州市南部(港部)に拡大する「南拓」
(2) 広州市北部(新白雲空港)に拡大する「北ゆう」
(3) 広州市西部(古い住宅地)を調整する「西躾」
(4) マレッジシティを建設している「東進」
広州市の都市景観法を策定する前に,広州市の全体企画の策定を行い,そ
れぞれの地域における都市景観の企画の策定を行った。広州市全体の企画を考
えるに当たっては,山-城(ダウンタウン)-農村部-海という都市構造を想
定し,町を大きく区分けし景観づくりの検討を行った。
(1) 様々な景観づくりの取り組み
① 小川の改造
広州市の都心部には,様々な川が流れており,川の改造と両岸の景観
づくりを考えた。明日視察予定の茘枝湾涌(ライチわんゆう)は,以前
は自動車の渋滞緩和のための道路だったが(その前は小川だったが,生
活排水が流れ込み,臭いがくさかったため,小川に蓋掛けをして道路に
変更した経緯がある。),昔のように川に戻した。住民の反発が大きかっ
たが,今では好評を博し,新しい観光スポットとなっている。
② 伝統建築物の維持
「陳家祠」などの伝統建築物の維持にも力を入れるとともに,環境整
備にも力を入れた。例えば,「聖心大教堂」の維持に関しては,周辺を
整備し,広場も作った。また,新たに建築する際は,「大学城博物館」
のような,中国南部の建築様式を活かして建造していく予定である。
一方で,「新広州」と言われるように,近代化した住宅も構築した。
2010 年の広州アジア大会後のタウンを作る際の周辺インフラの整備も,
周辺住居様式の特長を活かして建造した。また,各地区に住宅団地を建
設する際も,各地区の特徴を活かして建造した。
③ 緑道の建設
2010年の広州アジア大会を機に,市内各所に公園を作るとともに
緑道を作り,自転車道を全長 14km整備した。このことにより,市内
の公園が緑道で結ばれることとなった。この緑道の整備は,広州市だけ
ではなく,広東省全体で取り組んだ。広州市以外の都市では緑道が完成
していないので,完成すれば,広東省の各都市が緑道で結ばれることに
なる。
(2) 今後のまちづくり
今後のまちづくりは,広州市を縦に 2 つ,横に 1 つの中軸線に沿って
計画を立てている。広州市の西部を縦断する「旧中軸線」上には,昔な
がらの観光地としての整備に力を入れる予定である。広州市の東側を縦
断する「新中軸線」上には,近代建築物や広場を整備し,いわゆる「新
広州」を作る予定である。この「旧中軸線」と「新中軸線」を横断する
横線が「珠江」である。「新中軸線」のさらに南には,川を湖に変え,
人工湖(海珠湖)を作る予定である。
以上の説明は広州市全体の大まかな計画であり,今後は詳細な計画を作る予
定である。詳細な計画の策定に当たっては,以前福岡市に職員を派遣して勉強
したことがあるが,福岡市は詳細な都市建設の計画を作っていたので,これか
らも福岡市から学ぶべきことが多くあると考えている。
(注 2)
○「羊 城 十年」について(説明者
范瑞威
広州市建設委員会総経済師)
1998年7月に中国共産党の幹部から,広州を3年ごとに大きく変貌
させ,アジア大会が開催される2010年には新しい広州を造り上げるよう
指示があり,毎年200億人民元を投資してインフラの建設を行った。(国
からの補助金等はなく,広州市が自前で資金を調達した。
)
この10年間で「5つの『さらに』」を目標に都市建設を行った。
(5 つの
「さらに」は,先述の「空気がさらに美しくなる」「水をさらにきれいにす
る」
「道路がさらにスムーズに流れ,渋滞がないようにする」
「町全体をさら
にきれいにする」「市民の住宅が,さらに住み心地のよい住宅になる」の 5
つ。)
住民の居住環境の改善や環境づくりのための方策は,次の 4 つに区分する
ことができる。
(1) 建物の外装をきれいにし,周辺に緑を作り,また,道路をランクアッ
プさせ,汚水・雨を分離すること。
都市間の出入り口や広場の改造に力を入れ,この10年間で,道路
については延長500kmをランクアップさせ,建物については3万戸
の外装をきれいにした。
(2) 照明を通して,町の夜空をきれいにすること。
平日の照明と祭りの照明,また中核地域の照明と郊外地域の照明と
を融合させるとともに,周辺のまちづくりも併せて考えた。また,珠江
の南側の景観づくりに力を入れ,新中軸線の両側に新しい広州の観光ス
ポットを作った。
(3)市内の川を改造して,水のある景観を創出すること。
①汚水の改造……広州市全体の生活汚水は毎時465万トンに達し,
生活汚水の処理率は 85%となっている。特に,
都心部は,90%に達している。
②小川の改造……338kmの小川について改造を行った。小さな
ダムを作り,汚水をきれいにすると同時に,周
辺を緑化するなどの景観づくりを行った。
(4)3つの古いもの(古い農村,昔の工場,古い住宅)を改造すること。
ダウンタウンの住宅改造や古い建物の改造,使われていない建物の改
造を行い,計138の改造を行った。
以上の 4 つの方法により環境づくりを行ったが,道路を造成する際,次の4
つの点を一体的に整備した。
① 都心部の道路全体の建設
② その道路の両側の建物にペイントを施す
③ 周辺の緑化
④ 道路の両側に夜間照明を設置
また,住宅団地の建設に当たっては,次の5つのものが備わるような措置を
とった。すなわち,
(1)ショッピングセンターを備えていること(2)共用の緑
化広場を備えていること(3)人が集まって,余暇を楽しめる場所を備えている
こと(4)医療サービス機関を備えていること(5)住宅団地内を監視する機関
を備えていることの 5 つである。
こういった 5 つのサービスを備えた住宅団地は,現在全体の 66%ほどである
が,このような措置を担保するためには法律の整備とともに,行政の改革を行
うことが必要である。そのため,建設を担当する部署と管理を担当する部署を
別々の組織とした。また,責任の所在が明確になるよう,
「属人管理責任制」を
採用し,広州市はこの制度建設に力を入れた。さらには,請負工事に民間を活
用し,管理コストをさげるなど,アウトソーシングにより効率を高めた。
○ 広州の林業の企画と管理について(説明者 呉 敏 林業和園林局副局長)
広州市は花の町,緑の多い町と言われ,市民1人1人が緑の管理に関心が高い
町である。広州市としては“花ぞえ城”という目標に向け,広州市の園林づく
りのレベルアップに力を入れた。
広州の11月は,道の両側には緑の木がとても多く繁り,赤い花があちらこ
ちらで咲いている。これは,亜熱帯気候独特の風景であるが,園林を担当して
いる関係者の努力の成果でもある。
広州市の林業政策は,まず全体の企画を立て,企画に基づいて,中国南部地
域の亜熱帯気候独特の“花ぞえ城”の建設を目指している。2010年にアジ
ア大会が広州市で開催されたが,アジア大会開催に向けて5年にわたり,この
“花ぞえ城”の建設を目指して緑化事業を実施してきた。
具体的には,広州市を急激に発展させた「広州大道」の両側に緑を植え,緑
化区域を拡大するとともに,市民が散策できるような無料の公園を作った。広
州には283の都市公園や自然公園があり,78万㎡の面積を持つ花城広場と
いう公園もある。また,20万㎡の面積を持つ広州発展公園があるが,この公
園は一企業が出資して作った公園であり,企業の名前をとって公園の名前を付
けている。
次にとった措置としては,道路上の歩道橋などに花を飾る「空中花廊」という
施策を実施し,198の橋などの周辺を緑化した。また,1年前から各区に「緑
の道」という,市民生活にゆとりをもたせるための歩道,自転車道を整備して
いる。広州の花は一斉にたくさんの花が咲くが,季節毎に花を交換している。
こういった工事は,市民全体・
企業なども参加して行ってお
り,科学技術での研究にも力を
入れている。
最後に,管理体制についてで
あるが,維持・管理・保養をす
るためにチーム体制を敷き,景
観づくりのチェックを毎日実
施している。また,市民・ボラ
ンティアとをつなぐホットラ
インを設置し,町のすみずみに
(交流協議の様子)
わたる市民等の意見・要望をくみ取れるようにしており,そのための法整備も
行っている。
○ 広州市の都市建設と管理に係る法的対応について
(説明者 張連廣 人大常務委員会城建環資工委副主任)
広州市の都市建設と管理について,法律に従って実施されているかを監視す
るのが私どもの仕事である。
(1) 法的対応
広州市人大は,広州市政府の企画事業への監視を重要視しており,2007
年に「規制法」という各人大の単独法が制定されてはじめて,第一回目の検査
を行った。具体的には,広州市が行った都市建設と管理が,都市計画法(広州
市条例とも)に適合するかどうかの実施状況に関する検査を実施したが,検査
結果は大変良好であった。というのも,広州市人大は,広州市政府に対し,都
市建設に係る企画の牽引性,統括性を維持するよう要望し,また文化の保護に
ついて制度改革状況を報告するよう指示していた。このように最初から最後ま
で広州市政府の仕事を監督することができたことが,このような効果をもたら
したものと考えている。
検査後においても,広州市人大は広州市政府の都市建設に係る企画を重要視
しており,法によって,重大事項については広州市人大と協議して決める体制
をとり,併せて報告を求めることとした。今年も,広州市政府から都市建設に
係る企画案の報告を受け,年末には満足度を評価することとしている。
(2)空気,水環境を改造する広州市政府の仕事を監督
広州市は,都市経済の発展に伴い,外来者や車両が増加したことによって,
水,空気の環境の調整に当たって厳しい問題に直面している。
したがって,水,空気の環境を良くすることが広州市の都市景観に関わるこ
とになるし,社会経済の持続的発展に関わることになると考えている。
2010年のアジア大会及び第1回アジアパラリンピックスポーツ大会を契
機に,2009年から幅広くかつ詳細に,広州市政府の仕事の調査・監督を行
ってきた。広州市政府の,アジア大会中における大気の質量を保証する仕事の
報告を審査する際,広州市人大だけでなく広州市周辺都市の人大,広東省人大
及び共産党党務員も同席して審査した。
しかしながら,アジア大会を円滑に運営するために広州市人大は,広州市政
府に対して,アジア大会の期間中だけは法や規定の範囲内で,水や空気の質を
保証するための行政的な措置をとってもよいこととした。また,珠江の西側の
青江から引水する工事や,小川の水質を改善する工事などについて,広州市人
大はチームを作り,広州市政府の仕事のサポートを行った。
その結果,アジア大会終了後も水・空気の質は良好であり,2011年1月
から10月までの空気の優良率は99%に達しており,前年度比1.5%アッ
プしている。また,全市の121の小川,延長キロ388kmの小川の水質が
改善され,茘枝湾涌など市民の余暇を楽しむ場所となっている。
(3)緑化の建設と管理の強化―城(町)の美しさの創出
2011年に緑化条例の立法作業が行われており,年内に条例が成立する見
込みである。広州市人大及び広東省人大で,緑道づくりの現場を視察したとこ
ろである。
(4)ダウンタウン地区の改造
広州市人大は,昔のダウンタウン地区の改造について重要視し,中国南部地
域の歴史的・文化的な情緒を活かすことを考えており,特に,広州市政府に対
して,古い工場,ダウンタウン,住宅団地を改造する場合は,歴史的・文化的
な特長を活かすよう要望している。
(5)アジア大会後の都市管理
アジア大会後においても,広州市政府に対して,長期間にわたって都市管理
を適切に行うよう要望している。すなわち,都市建設,都市管理の経験を活か
すとともに,仕事のやり方を常に改善すること,また科学的な管理を行い,責
任を明確にすることなど都市管理の近代化を図ること,調和のとれた体制を構
築することなどを要望している。このことにより,多角的に都市を建設し,管
理することが可能になると考えている。
広州市側の説明終了後,資料により,福岡市の紹介と都市景観について説明
し,意見交換を行った。
(注1)
八字方針
調整,強化,充実,向上の八字で示された方針。1958 年から 1960 年の自然災害,その他の困難
な時期をへて,中国経済はこの八字方針の時期,すなわち,農業を基礎となし,工業を主導と
する時期に入った。この内容を言いかえると全力をあげて農業をつよめ,できるだけ早く農業
生産の回復と発展をはかり,同蒔に縮小する必要のある工業生産と基本建設を適正に縮小し,
強化する必要のある工業をつよめ,工業内部の比例関係を調整する。また,製品の種類をふや
し,製品の品質をたかめ,物資を節約し,中国にまったくないか,あるいは非常に欠けている
製品を大幅に増加することである。62 年にはその成果がかなりみられた。
(注2) 羊城
羊城とは「広州」のことであり,
「羊城十年」は,10年が経過して白雲山と珠江が新しい姿を
見せていることを表している。
【花城広場視察】
花城広場は黄埔大道の南,華夏
路の東,冼村路の西,臨江大道の
北に位置しており,最も広いとこ
ろが 250 メートルに達し,総面積
が約 78 万㎡,8~10 個の人民公園
に相当する広州で最も大きな市民
広場公園である。600 本ほどの大
木と古木を植え,約 2 キロの木製
歩道と敷地面積が 1.5 万㎡を超え
(花城広場視察の様子)
る浮島湖が設けられている。
広場の周辺には 39 棟の建築物を建てる予定であり,広州オペラハウス,広州
市第二少年宮,広東省博物館,広州市新図書館は広場の東側と西側に位置し,
新しい市民の憩いの場及び観光スポットとなっている。
広場は 4 階に分け,地上は大型緑化公園と開放式活動空間で,地下 1 階は歩
道,車道(トンネル),観光バス駐車場と地下商業城(約 15 万平米)となって
いる。また,地下 2 階は乗用車駐車場(約 3000 台のスペース)で,地下 3 階は旅
客自動輸送システムとなっている。
【茘枝湾涌視察】
昔は,ひなびた骨董街だった
茘枝湾路が改修されて茘枝湾
涌になったもので,もともと茘
枝湾路は川(水路)であったが,
生活廃水で悪臭を放つように
なったことから埋め立てられ
た。しかし,今回周辺の開発が
始まって,また水路を作り,昔
の西関の風情を再現するべく
(茘枝湾涌視察の様子)
観光用の小船も浮かべている。
また,茘枝湾涌の近くの泮塘路には広州の老舗を集めてお土産通りなどもで
きていてこれまで見たこともないような賑わいを見せ,新しい観光スポットと
なっている。夜は道の両脇の街路樹がライトアップされて美しいとのことであ
る。
【珠海市】
1
主な指標
・ 人口(2010年末)
149万人(常住人口)
・ 面積
1,653k㎡
・ GDP(2010年)
1,037億元(約1兆2,395億円)
・ 産業(2008年GDP構成比)
第一次産業 2%,第二次産業 28%,第三次産業 70%
2
概要
広州の南西約140キロ,香港から西へ約60キロメートルの珠江の西岸に位置
し,海岸線は690キロ,146の島を持つ。珠江東側の対岸は香港に接し,南側
はマカオ特別行政区に隣接する。
気候は,亜熱帯に属し,年間平均気温は23℃,年間降水量は1,996㎜である。
1980年に深圳,汕頭,アモイ市とともに中国初の経済特区に指定され,進
出する外国企業に対する優遇措置を実施することで外国投資を集め,中国の経
済発展を支えてきた。
1992年に珠海国家高新ハイテク産業開発区,96年に珠海保税区を設置する
など,経済発展を目的とした外資誘致が行われた。
日系企業の進出も多く,キャノン,パナソニック,キリンビール等が生産,
物流拠点を設立している。
2009年に中国政府国務院にて採択された「珠江デルタ地区改革発展計画要
綱」では,珠江デルタ九市(広東省の広州,深圳,珠海,仏山,江門,東莞,
中山,恵州,肇慶)の2020年までの発展戦略をまとめており,中国本土と香
港・マカオの経済連携を強化することとしている。計画において珠海市は珠江
西岸の中心と位置づけられ,港湾貨物運輸,航空業,観光リゾート等に注力す
るとされた。そのため,珠海と香港,マカオを結ぶ港珠澳大橋などの大型越境
インフラ建設と珠海市横琴島の開発を積極的に推進するとしている。
珠海市は商業地区と工業地区を区分した都市計画にもとづき整備されたこ
とから,周辺都市と比較して町並みは整然としていると言われている。
珠海市は環境との調和がとれた都市づくりが認められ,97年に国家環境保
護総局より「国家環境保護模範都市」の指定を受けている。
【珠海市人民代表大会常務委員会表敬訪問】
1
珠海市側出席者
張 萍 人民代表常務委員会副主任
高 平 人民代表常務委員会委員
頤栄和 人民政府市政管理所主任
周 宋 人民政府外事局副局長 ほか
2 懇談内容
〈珠海市〉
○
珠海市は,以前は漁
業を中心とした町であ
ったが,1980 年に深圳,
汕頭,アモイ市ととも
に中国初の経済特区に
指定されたことから,
進出する外国企業に対
する優遇措置を実施す
ることで外国投資を集
め,世界52ヶ国の企
業が進出し,そのうち
日系企業も130社余
(表敬訪問の様子)
りが進出している。
○
珠海市は,広東省の南部に位置し,珠江の河口の西岸で水域を隔てて,
東は香港,南はマカオと陸続きになっており,中国でも最も美しい海浜都
市の一つとなっている。また,気候は穏やかで心地よく,年間の平均気温
は24度で一年中が春のような陽気であることから,今では「観光」に力
を入れており,日本の熱海市は,2004年(平成16年)7月に国際友
好都市となっている。
○
今回このように,森英鷹議長を団長とする福岡市議会訪問団をお迎えす
ることができ,珠海市人民代表大会常務委員会を代表して,歓迎の意を表
したい。
○
これを機に,珠海市と福岡市の友好関係が深まることをお祈りする。
〈福岡市〉
○
福岡市議会は,1991年以来,広州市人民代表大会常務委員会と相互
交流を行っており,今回初めて珠海市を訪問させていただき,またこのよ
うに温かくお迎えいただきお礼申し上げる。
○
珠海市の人口は149万人で福岡市と同規模であり,商業地区と工業地
区を区分した都市計画に基づいて整備されたと伺っている。今回の訪問で
は,「都市景観行政」をテーマとしており,福岡市と同規模の人口を抱え
る珠海市の街並みや都市景観,都市の発展と環境の調和など,学ぶことが
多いと思っている。
○
今後,日中両国並びに福岡市議会と珠海市人民代表大会常務委員会の友
好が深まることをお祈りする。
【横琴経済開発新区視察】
広東省の南部,マカオ
の西側隣接地・珠海市横
琴島に誕生した中国の
国際的な産業開発区を
目指す「珠海横琴新区構
想」は,上海浦東新区に
はじまり,天津海浜新区
に次ぐ国家級開発新区
である。
横琴新区は面積
106.46 平方キロでマカ
オの 3 倍余りあり,以下
(横琴経済開発新区視察の様子)
の 4 大プロジェクトで構成
される。総投資額は環境関連施設も含めて 726 億元,工期は 2—3 年である。
①
②
③
新区都市基盤整備(全長 51.9 キロの幹線道路と 64.1 キロのサブ幹線道路
51.9 キロの防波堤および地下パイプラインなど,126 億元)
横琴マルチガスエネルギー供給ステーション(発電機 8 基,120 億元)
国際海洋リゾート(長隆地区,南極体験,野性北極,太平洋秘境,インド洋
探険の各エリア,100 億元)
十字門中央ビジネス地区(珠海東部市街区,西部市街区,横琴新区の中心部
から成る十字門区域に国際会議センター,国際展覧センター,オフィスビ
ル,国際ホテルなどを建設する,380 億元)。
④
以上のうち,十字門中央ビジネス地区の現地開発事務所において,説明を受
けるとともに,同地区において約1万人が入居する開発団地を視察した。開発
団地には,約100人の日本人も入居しているとのことであった。
また,珠海市は,中国国家発展改革委員会から珠江デルタ西岸の核心都市地
位置付けられており,横琴新区は広東省,香港,マカオが 2015 年完成をめどに
建設する「香港・珠海・マカオ大橋」(全長 39 キロ)の経済効果も期待されてい
る。
珠海市にはすでに 3 つの産業開発区があり,日系では住友化学,東洋インキ
製造,キヤノン,キリンビール,ダイキン,フジクラ,東芝,パナソニック,
日本通運,ジャスコなどが事業を展開している。
〈福岡市議会広州市友好訪問団訪問が広州日報にて報道される〉
広州市人民政府,人大常務委員会表敬,交流協議が行われた翌日(11月16日)
の広州日報に友好訪問団の様子,会見内容など,詳細記事が掲載された。
記事の内容は以下のとおり。
○張桂芳主任
日本福岡市議会代表団と会見
広州市人民代表大会常務委員会張桂
芳主任の招聘に応えて,日本福岡市議
会森英鷹議長を団長とする福岡市議会
代表団が広州への訪問を開始した。
昨日,張桂芳主任が代表団一行と会
見した。市人大常務委員会副主任の李
力,周慶強,秘書長の周素勤が会見に
同席した。
張桂芳主任は会見の中で人民代表大
会制度の性質,および 30 年来人大常務
委員会が法に則って職権を行使し,全
面的に職責を実行し,民主化と法制化
を大いに進めてきた状況を紹介した。
張桂芳主任は「中日両国は一衣帯水
の関係にあり,善隣友好の歴史は長い。
広州と福岡の友好往来を強めることは
世界平和の発展の流れに符合し,両国人民の根本的利益に符合する。広州市人
大は両市の友好関係が絶え間なく発展し,両市の友誼を代々伝えていき,永遠
に断絶しないことを希望する。」と述べた。
森議長は広州市人大常務委員会の温かい歓待に感謝を述べた。彼は「福岡市
議会と広州市人大常務委員会は隔年相互訪問を行い,共通の関心事をめぐって
交流しあっており,両市の友好関係を発展させる上で重要な意義がある」と述
べた。
昨日午後,市人大常務委員会と福岡市議会は“都市景観の形成と管理”をテ
ーマとする交流会を行った。
○市の指導者
日本福岡市議会議長と会見
昨日午前,広州市万慶良市長に代って,陳徳明副市長が日本福岡市議会森英
鷹議長一行と会見した。双方はいかにして両市人民の交流と協力を強めるか等
の話題について快い交流を行った。福岡市議会代表団の団員と広州市関係部門
の責任者が会見に同席した。
陳徳明副市長は先ず福岡市議会代表団一行の広州訪問に温かい歓迎を述べ,
併せて近年来広州市が経済社会面で収めた成果について大まかに紹介した。陳
副市長は「日本の福岡市は広州の第一番目の国際友好都市であり,両市が経済,
文化,産業等の各分野における協力を強め,両市共同して繁栄するよう希望す
る,と述べた。
森英鷹議長は広州市の温かい対応と周到な手配に感謝を述べ,広州市が経済
社会面で収めた大きな成果,特にアジア競技大会とアジアパラリンピック実施
の成功に敬意を表した。彼は,福岡市は引き続き広州市との交流,協力を強め,
両市の友誼を更に深めたいと述べた。
別紙1
平成23年度 広州市交流事業の日程
日付
都市
時間
11月
福岡
16:50
福岡空港 発
14日
・
(月)
広州
19:20
広州空港 着
午 前
人民代表大会常務委員会表敬訪問
15日
(火)
16日
(水)
広州市人民政府表敬訪問
広州
広州
・
内
午 後
交流協議「都市景観行政について」
午 前
花城広場視察
午 後
荔枝湾涌視察
広州市 発
珠海
珠海市 着
珠海市人大常務委員会表敬訪問
17日
(木)
18日
(金)
珠海
・
広州
広州
午 前
横琴経済開発新区視察
午 後
珠海市 発
広州市 着
11:50
広州空港 発
15:50
福岡空港 着
・
福岡
容