卯 栗 林 浪 集 眞 知 子 選 芦枯れてをり真つすぐに真つすぐに 白鳥の胸反 ら したる 浦 日和 魞竹に陣取つてをり冬かもめ 湖の日の玻璃戸越えくる四温晴 ◎鴨の水 尾消し白鳥の 水尾通る みづうみの風の先々鴨のをり 湖空に比良連山の六つの花 遥かには比良の山影鴨浮寝 大琵琶の浦の賑はひ浮寝鳥 冬木立抜けて茅門楚々とあり 銀閣寺庭極まれり初句会 結界の青竹眩し御代の春 寒風やみどり児の頬真赤なる 古寺の竹垣青き松の内 受付のマスクの目から笑み溢る 水涸るる底に走り根あらはなり 送る門賀 客指さすオリ オン座 起立する 月は下弦の 七 日かな 奉納の舞 殿清し初謠 ザック掛け七福詣スニーカー 庭の隅忘れし水仙芽出づる 奈 奈 良 良 良 雑賀みどり 〃 星田久仁子 〃 藤田奈千巴 〃 竹澤 真理 福田ゆうこ 〃 藤井 惠子 〃 掃部裕紀子 〃 木 村 直子 竹 内 恵子 〃 土田みつゑ 〃 池田 紬子 〃 高木 悠 湖 会報第三 二号 二○一○年一月 奈 都 奈 良 奈 良 京 都 都 都 京 京 京 宮 宮 大 宮 大 大 綿雪を笠で受けたる露天の湯 冬晴に伸びゆく世界一の塔 寒雀首かしげつつ日の庭に 嫁ぐ娘の部屋に冬日の溢れをり 寒鯉やまろやかな背を沈めをり 幼子の重 さ驚く冬の宵 息白く友を待つ朝通学路 初富士に威儀を正して向かひけり 風止みて母と二人の日向ぼこ 頬赤き縄跳びする子息白し 雪晴に僧打つ鉦の響き行く 軒氷柱雫ひとつが襟足へ 雪合戦好きも嫌ひも強く当て 横抱きに赤子と沈む冬至の湯 人も家も古りて一輪寒椿 人影も十指に足らぬ寒の苑 街騒をトーンダウンに寒の雨 午後のお茶日脚伸び 尚 長くなり 大鷹に見られ食事す探鳥会 巫女秋沙皇居の濠を彩れり 機嫌よき切り口なるや根深汁 細き道まだ続くらし藪椿 子規庵を訪ふこともまた寒詣 ◎卒塔婆のからから鳴るや黄水仙 占ひに聞き入る背広冬深し 焼藷屋客去りて石均しをり 藁苞に蝶々 結 び冬牡 丹 善哉を食うて 探梅終 へ にけり 冬銀河一億年後はみんな星 空風にめ くれるやう に 足を出す 雪明りカレーの匂ひ広がりぬ ◎銀の空 に消えゆく冬 鴎 浜 浜 浜 浜 浜 浜 大 宮 大 宮 横 横 横 横 横 横 浜 横 浜 横 浜 横 横 浜 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 長畑 なみ 中 川 金時 〃 〃 小原 循 子 酒巻 和 桜井 さく 鈴木 鈴音 野上 充子 真壁 藤子 〃 〃 森 奈保 美 八木たみ女 〃 山岸 ふ み 〃 芳 垣 珠華 齊藤 好 司 〃 中里 三 句 中里 柚 子 〃 竹内はるか 〃 渡辺 光子 〃 〃 白辺いづみ 〃 〃 小林 含香 1 名探偵ポアロを見つつ寝正月 犬の餌を食べ丸々と寒雀 ひつそりと己に籠もる凍てし夜 大寒に金星ひとつ通勤路 カフェバーの灯りこぼれて寒昴 ぴんと張る空気を頬に初仕事 大寒や不思議に水の温き朝 隈取りの際立つ寒さトラの顔 尾羽から孔雀萎れて寒厳し 凍鶴に不忍池のしかかる ◎みづいろの影つくりたる深雪かな どこからか鶴の声する村にゐる 地上みな人間のもの冬灯 日脚伸ぶ散歩の人も少し増え アカギレの指先少し重くなり 歳時記に一月はらり現れり 吾子の手に太箸長くありにけり めでたくもなきと老父の初電話 山越えて来る人里黄水仙 寒紅を濃くひきたがる老の母 風向きを受けて並びて寒雀 嬰児の心音強し日向ぼこ 下 萌 を 踏 み 締め た く て 里 帰 り 眩しさに音消えてゆく日向ぼこ 冬灯マクドナルドは 寄 辺なる 初笑互ひの御籤見せ合ひて 顔ぶれの揃ひ挨拶初稽古 左義長の煙の太く立ち上る 北風の上に止まつてゐる鳶 境内のブランコ目差す初詣 寒雀端の一羽は斥候隊 戦闘機等間隔や冬の空 原 宿 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 宿 原 宿 原 原 原 原 宿 宿 宿 宿 原 宿 原 原 多 摩 多 摩 川 口 水木 〃 服部 萌子 鳶田 美 継 佐藤はじめ 三小田 宙 〃 駒井ゆきこ 〃 〃 加藤 ち え 〃 〃 井上 芙蓉 〃 宮田 珠子 〃 〃 纐纈 晶子 〃 〃 堀田 葵 〃 渡辺 檀 〃 白山 素風 〃 岸田 祐子 〃 大滝有終美 〃 能村みずき 大寒や夜の柱のコキリとす 摘みし菜の七草粥をおかはりす 初雪や積もれば子等が喜ぶに 大寒や小犬の肉球赤くなり 四温とて親と二カ月住みなれて ひとひらの雪に思ひ出積るほど 家々の窓清らかにお元日 裏木戸の把手隠して青木の実 臘梅の簪になり香りあり 難産の子牛横たふ冬日向 初寅や副住職の声かすれ 庭草のしどけなきまゝ凍てしかな 笹鳴や地蔵格子にお賽銭 お祓ひは大音声の一の寅 買初は散歩途中の洋菓子店 病む友の声の明るき寒見舞 初春や解かれしリボンのやうな雲 大寒の原つぱ膨らみ始めてる 初春の町膨らますチンドンや 寒晴や地図を片手の寺めぐり 愚痴ひとつ猫にこぼすや四温晴 里山を闇に沈めて霜の声 ◎鷽替や納めし鷽の少し老け 歌かるた い に しへ人の 恋模様 寒晴のき よう目覚めしか池の亀 会ひたくて会ひたくて走り息白く トラックの初荷の幟高らかに ◎鏡餅見上げて入りぬ芝居小屋 乳母車押 して行く街日 脚伸ぶ 日脚伸ぶベンチの上に猫二匹 待ち合はすロビーに女礼者の香 かじかんだ手に息かける母がゐて 多 多 多 多 多 多 多 深 深 深 深 深 深 深 〃 摩 田 中 きよ 〃 摩 宮西かりん 〃 摩 堀 洋海 〃 〃 摩 原山 惠 〃 摩 香 川 銀魚 〃 摩 園田あや女 〃 摩 渡辺美夜香 〃 川 瀧川 純 〃 川 平 井 輝子 〃 川 池垣真知子 〃 〃 川 秋 野 裕子 〃 川 山田 理恵 〃 川 堀江 惠 〃 川 植村 美明 〃 〃 2 枯山に火を 付け さう に夕日落つ ◎傘閉ぢて初雪の空眺めけり 屠蘇の香の 満 つる厨や 清々し 元日を全き月の照らしたる 霜焼の感触いつの間に忘れ 乾きたる風のかたちに枯葎 息そつと指に吹きかけ初稽古 カーテンの外は明るし日脚伸ぶ 冬晴や近づいてくる赤城山 鳰潜る首で勢ひつけてから 初雪や用事こしらへ出て行かむ ◎切る爪のあちこちに飛び寒夕焼 拍子木の 乾きし音の 寒 の夜 火の用心 声揃はずに 寒 の夜 人の良さ背 中 ま あ る き 日 向 ぼ こ 凩に大きく揺るる夜の闇 除夜の鐘撞きて夜道を帰りけり 順序変へ孫から始むお屠蘇かな 孫来たるオ オ タカ空 飛 ぶ日曜日 冬晴や一直線に飛行雲 冬耕の里山歩く人はゐず 破魔矢持ち帰る人あり路地の角 霜柱ダイヤモンドの隠れをり 食卓の瑕はそのまま雑煮椀 初釜の装ひ迷ふ母卒寿 極月の居酒屋の隅兄妹 大寒や解体現場の塵と音 願ひ事絵馬にあふれて寒詣 若者の大道芸や春隣 観覧車上れる先に冬の月 えり巻やビルの谷間に遊園地 初電話卒寿過ぎたる母の声 深 深 川 川 前 橋 前 橋 前 橋 前 橋 前 橋 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 海老澤希由 〃 神田美方子 〃 〃 戸所 理栄 〃 富所せつ子 〃 飯塚 柚花 〃 〃 吉田恵美子 〃 神子沢さくら 〃 高良 楽 水 〃 角田 卯の花 〃 吉 井 安里 〃 〃 高橋ときこ 〃 〃 久米 孝子 〃 伊藤ミヨ子 〃 〃 斉藤 久野 弾初や真新な楽譜賜りし ◎庭仕事四温のうちに切り上げる 鷲づかみみするかのごとく冬木の 根 老犬の吠ゆることなく日向ぼこ 戸を開けて一面霜が惜しみなく 嫁嫁へ伝はつていく雑煮かな 大寒の日と は 思へぬ日差しかな 初茜切り絵の如き竹の影 参道の幅は一間初詣 初春狂言小猿せし児も少年に ◎木の枝を借りて真白き大根干す 雪折れの竹音響く鎮守様 元日の満月仰ぐことも稀 追羽根や四人姉妹の声跳ぬる 分け入つて滝の氷柱や国境 母の句を 床 に 飾りし大 旦 七草のあと一菜は野に出でて 南国の雪の軽さを食べて見し 揺るぎなき城垣の反り初御空 せせらぎの音のみありて冬の里 峠より奥の山里木々芽吹く 冬川のただ音を聞くそば処 雪晴間厨の外の雀どち 窓の外風を騒げり寒雀 鈍色の空押しつけて寒の雨 八重咲きの水仙の香は傾いて 足音に耳を澄ませば寒の雨 荒れ庭に水仙ありて香を放つ 主なき庭を訪ねる冬の鳥 仲見世の 幟はためく切山椒 寝そびれて凍星のぞく窓に立つ ストトンと母の唄ひし七日粥 柏 柏 柏 柏 熊 本 熊 本 熊 本 熊 本 川 熊 本 田 田 川 富 山 富 山 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 〃 山口 雅 子 〃 大網ゆう子 樺島 祥 石井 恵 茶 〃 大藪恵美子 〃 〃 鎌田 順 子 〃 北村 睦子 〃 藤井 鴻 〃 楠本美奈子 〃 〃 野田 静香 〃 佐 藤 カヨ 藤井 靖人 藤井 佳乃 北見 由季 杉江 葉子 鈴木 鈴女 〃 〃 下元 夏乃 〃 古賀 文 子 3 木洩れ日と遊びし足湯春隣 色の無き庭寒禽の声高し 突風に頬嬲られし冬の 阿蘇 帽子から食み出す髪も凍てつきぬ 寒の雨日がな一日瞑想す 両袖のボタンの外れて 春隣 がらがらと開く雨戸や春隣 《特選句評》 大牟田 大牟田 大牟田 〃 〃 志岐 鈴恵 〃 海谷 育 男 前原八寿 之 〃 鴨の水尾消し白鳥の水尾通る 藤田奈千巴 湖 の 一 景 。 鴨 と 白 鳥 の 姿 を 「 水 尾」 の 情 景 と して 詠 ん だこと に 感 服 。 一 羽 の 鴨と 、 一 羽 の 白 鳥 の 背 景に は 、 沢 山 の 鴨 の 群 れ と 数 羽 の 白 鳥 が 見 え て く る 。 す べ て を 詠 ま な くて も 目 に 浮 か ぶ 景がある 俳 句 に は 、 好 感 が 持 て る 。 卒塔婆の からから鳴る や黄水仙 竹内はるか 情景と季題の取り合わ せが絶妙。実際の景色だったのかもし れ な い が 季 題 の 「 黄 水 仙」の 持 つ 明 る い イメ ー ジで 、作 者 の 心 情 まで 受け 取 るこ と が で き る 。 不 遜で は ある が 、 卒 塔婆 の 音 が 青空への讃歌とも受け取れる。 みづいろの影つくりたる深雪かな 加藤 ち え 旅 先 で の 一 句 で あろ う か 。 深 く積 も っ た 柔 ら か な 雪 に 浮 かぶ 影が 「 みづ いろ 」 と 見 え た 瞬 間、 作者 は 詩人と なっ た。 感 動の 深 雪の 中で 、 色々 な 詩 の フ レ ー ズ が 口を 衝 い て 出 た こ と で あろ う。そのフレーズの一つが、素直な俳句の一句となった。 鷽替や納めし鷽の少し老け 池垣真知子 いや いや、鷽替の鷽も年をとるのですね。一年を共に過ごし た鷽に 、 少 し 老け た自 分の姿 が 重なって いる のかも しれ な い。 自分の 手を 離れた鷽の姿・・・少 しの哀れと 、替え た新 しい鷽 に託す今年一年の希望が交差する、情の深い一句である。 奈 奈 良 良 雑賀みどり 〃 〃 星田久仁子 〃 今回の添削でつくづく文語体の「し」 の使い方と便利さを考えさせられた。俳 句は短いので「しましたよ」などとのん びり言えない。それを一語で表現できる 文語体の「し」。文語文法は勉強すると 奥が深く、色々悩ましいこ とが欠点だ が、やはり俳句には欠かせないものとつ くづく思う。 《ひとこと》 鏡餅見上げて入りぬ芝居小屋 堀江 惠 少 し着 飾って 出 かけ た初 芝居 の 華や か さが伝わ って くる 。神 棚のような少し高 いと ころ に置かれた鏡餅を 見上げ つつ、芝居 小屋(この 古めかしい表現も妙!)に入る瞬間、初 芝居への期 待 も 高 ま っ て き たの で あろ う 。 何 も大 袈 裟 な と こ を 言 わ ずと も 、 感動が伝わる俳句の良い例であると思う。 《近 詠》 栗林眞知子 摘草の籠を片手におくれ髪 籠蹴ればひよいと飛び出し羽抜鶏 正 樹 選 編み上げし籠の青きに桜餅 日 置 諍ひて睦みて鴨の陣なせり 鴨浮寝浦い つぱいの 日 差浴び 白鳥の胸反 ら したる 浦 日和 陸の鴨並んでこちら見てをりぬ 湖の日の玻璃戸越えくる四温晴 4 風音の消え浦は凪鴨浮寝 ◎鴨の水 尾消し白鳥の 水尾通る みづうみの風の先々鴨のをり 枯葦の深き向かうに凪の湖 ◎凪の浦靄の大琵琶春隣 遥かには比良の山影鴨浮寝 大琵琶の浦の賑はひ浮寝鳥 冬木立抜けて茅門楚々とあり 結界の青竹眩し御代の春 寒風やみどり児の頬真赤なる ぽつぽつと高き梢の冬芽かな 鈍色の山裾眩し冬菜畑 水涸るる底に走り根あらはなり 身嗜み少しお洒落に初句会 大根の塩漬の茎喉とほる 奉納の舞 殿清し初謠 庭の隅忘れし水仙芽出づる 綿雪を笠で受けたる露天の湯 冬晴に伸びゆく世界一の塔 嫁ぐ娘の部屋に冬日の溢れをり 去年今年繋がる命祝ひけり 寒風の向かうに白き富士が見え 息白く友を待つ朝通学路 早梅の咲 く順に行く散 歩道 風止みて母と二人の日向ぼこ 雪晴に僧打つ鉦の響き行く 雪合戦好きも嫌ひも強く当て 一山に冬夕焼の照り返し 小さき苗一ケース買ふ春隣 午後のお茶日脚伸び 尚 長くなり 大鷹に見られ食事す探鳥会 しばらくは重ね持ち行く古暦 良 都 都 奈 京 京 都 良 良 京 都 奈 奈 京 浜 浜 浜 浜 浜 浜 浜 浜 浜 浜 山 山 大 宮 大 宮 大 宮 大 宮 大 宮 横 横 横 横 横 横 横 横 横 横 青 青 藤田奈千巴 〃 〃 竹澤 真 理 福田ゆうこ 〃 〃 藤井 惠子 掃部裕紀子 〃 木村 直子 〃 竹内 恵 子 〃 土田みつゑ 池田 紬子 高木 悠 湖 長畑 なみ 中 川 金時 〃 小原 循 子 酒巻 和 桜井 さく 鈴木 鈴音 野上 充子 真壁 藤子 森 奈保 美 八木たみ女 山 岸 ふみ 芳 垣 珠華 齊藤 好 司 中 里 三句 機嫌よき切り口なるや根深汁 ◎細き道まだ続くらし藪椿 歳月を見しマリア像枯野道 子規庵を訪ふこともまた寒詣 卒塔婆のからから鳴るや黄水仙 ◎三寒の 一ト日は風の音の中 藁苞に蝶々 結 び冬牡 丹 善哉を食うて 探梅終 へ にけり 冬晴へ一直線のエレベーター 冬日向それぞれ影をもつ背中 臆せずに枝から枝へ笹子鳴く 犬の餌を食べ丸々と寒雀 たつぷりの日差しためこむ枯野かな 大寒に金星ひとつ通勤路 隙間風やかんの蓋が鳴つてゐる 梢から梢へ日影冬木立 ぴんと張る空気を頬に初仕事 尾羽から孔雀萎れて寒厳し ◎みづいろの影つくりたる深雪かな どこからか鶴の声する村にゐる ◎地上みな人間のもの冬灯 冴ゆる月追ひかけて行く家路かな 吾子の手に太箸長くありにけり 寒紅を濃くひきたがる老の母 嬰児の心音強し日向ぼこ 下萌を踏み締めたくて里帰り 眩しさに音消えてゆく日向ぼこ 水仙の花 まつすぐに伸び揺るる 左義長の煙の太く立ち上る 北風の上に止まつてゐる鳶 声援や冱てる箱根路駆け下る 戦闘機等間隔や冬の空 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 多 摩 多 摩 〃 中里 柚 子 〃 〃 竹内はるか 渡辺 光子 〃 〃 白辺いづみ 〃 小林 含 香 川口 水木 服部 萌子 鳶田 美 継 佐藤はじめ 〃 三小田 宙 駒井ゆきこ 加藤 ち え 〃 〃 井上 芙蓉 宮田 珠子 纐纈 晶子 堀田 葵 〃 渡辺 檀 白山 素風 岸田 祐子 〃 大滝有終美 能村みずき 5 摘みし菜の七草粥をおかはりす 探梅のそぞろ 歩き もな ほ楽し 家々の窓清らかにお元日 裏木戸の把手隠して青木の実 雪晴の目を射る雲の白さかな 難産の子牛横たふ冬日向 凍空や メ ロンパン 焼 く 香り立つ 笹鳴や地蔵格子にお賽銭 初夢の話などして暮れにけり 買初は散歩途中の洋菓子店 初春や解かれしリボンのやうな雲 初春の町膨らますチンドンや 寒晴や地図を片手の寺めぐり 里山を闇に沈めて霜の声 歌かるた い に しへ人の 恋模様 トラックの初荷の幟高らかに 乳母車押 して行く街日 脚伸ぶ 待ち合はすロビーに女礼者の香 かじかんだ手に息かける母がゐて 枯山に火を 付け さう に夕日落つ 元日を全き月の照らしたる 春隣ほころぶ蕾夫に見せ 乾きたる風のかたちに枯葎 息そつと指に吹きかけ初稽古 川面にも光集めて春近し 冬晴や近づいてくる赤城山 わが影の十も老ひたる寒さかな 初雪や用事こしらへ出て行かむ まだ枝の続きでありし冬木の芽 拍子木の 乾きし音の 寒 の夜 マフラーに隠れて風にむかひたる ◎北風の中に青空ありにけり 多 摩 田 中 きよ 多 摩 宮西かりん 多 摩 堀 洋海 〃 〃 多 摩 原山 惠 多 摩 香 川 銀魚 多 摩 園田あや女 多 摩 渡辺美夜香 〃 深 川 瀧川 純 深 川 平 井 輝子 〃 深 川 池垣真知子 深 川 秋 野 裕子 深 川 山田 理恵 深 川 堀江 惠 深 川 植村 美明 〃 深 川 海老澤希由 深 川 神田美方子 〃 前 橋 戸所 理栄 〃 前 橋 富所せつ子 〃 前 橋 飯塚 柚花 〃 〃 前 橋 吉田恵美子 前 橋 神子沢さくら 〃 凩に大き く揺るる夜の 闇 除夜の鐘撞いて平安祈りけり 冬晴や一直線に飛行雲 冬耕の里山歩く人はゐず ラグビーのボールに意志の宿りけり 極月の居酒屋の隅兄妹 願ひ事絵馬にあふれて寒詣 若者の大道芸や春隣 観覧車上れる先に冬の月 それぞれにラ ジオ聴き 入る寒夜かな 駆け登る箱根駅伝息白し 日溜まりを独り占めして野水仙 弾初や真新な楽譜賜りし 庭仕事四温のうちに切り上げる 鷲づかみみするかのごとく冬木の 根 老犬の吠ゆることなく日向ぼこ 言の葉の繋ぎさがして蜜柑むく 母一人すぐ読み終ふる年賀状 大寒の日とは思えぬ日差しかな 初茜切り絵の如き竹の影 参道の幅は一間初詣 冬光る流れ逆さに見ゆる川 木の枝を借りて真白き大根干す 元日の満月仰ぐことも稀 ◎追羽根や 四 人姉妹の 声跳ぬる 群れもせで川幅に添ふ寒の鯉 蝋梅や香りに薄き色のあり 分け入つて滝の氷柱や国境 七草のあと一菜は野に出でて 揺るぎなき城垣の反り初御空 せせらぎの音のみありて冬の里 峠より奥の山里木々芽吹く 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 熊 本 熊 本 熊 本 熊 本 川 熊 本 田 〃 高良 楽 水 角田卯の 花 吉 井 安里 高橋ときこ 〃 久米 孝子 伊藤ミヨ子 〃 〃 斉藤 久野 〃 〃 山口 雅 子 〃 大網ゆう子 〃 樺島 祥 石井 恵 茶 大藪恵美子 〃 鎌田 順子 〃 北村 睦子 〃 〃 藤井 鴻 〃 楠本美奈子 〃 野田 静香 〃 6 冬川のただ音を聞くそば処 着膨れてかたまつてをり長談義 お に ぎ り に 冬日 和 そ へ 馳 走 せ し 雪晴間厨の外の雀どち 雪が舞ふ白い手が舞ふ演奏会 かしは手を 打 つ手神 妙 初詣 鈍色の空押しつけて寒の雨 腕までも赤く凍えて雪遊 大寒に広がる星は震へてる 八重咲きの水仙の香は傾いて 足 音 に 耳 を 澄ま せ ば 寒 の 雨 冬薔薇日差しの中に揺れてをり ◎仲見世の幟はためく切山椒 まづ心よりほぐれゆく梅の花 蝋梅の庭まほろばのごとくあり 脱ぎてまた脱ぎてふくらむ冬芽かな 木洩れ日と遊びし足湯春隣 ◎色の無き庭寒禽の声高し 冬枯の山に落暉のあたりたる 蝋梅の水 弾きをる香 か な 寒の雨日がな一日瞑想す がらがらと開く雨戸や春隣 熱風に追ひかけられてどんど焼き 《特選句評》 田 川 富 山 富 山 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 大牟田 大牟田 大牟田 佐 藤 カヨ 〃 藤井 靖人 〃 藤井 佳乃 〃 北見 由季 〃 杉江 葉子 〃 鈴木 鈴女 〃 下元 夏乃 〃 〃 古賀 文子 〃 〃 志岐 鈴恵 〃 海谷 育 男 前原八寿 之 〃 「 鴨の水尾消し白鳥の水尾通る 藤田奈千巴 冬は渡りの季節。 北から鴨の 群れが飛来し、 白鳥がやって く る 。 池 を 狭 し と 水 鳥 た ち が 群 れ る 様 子 が 水 尾 を 重 ねて 上 手に 描かれている。 細き道まだ続くらし藪椿 中里 柚子 ど こ へ 続 く道 だろ う か。 藪 椿が咲 く細 く 暗い道 が 続 いて 、 先 が 分ら な い 作 者 の 心 の 様 子 が 「ら し」 に 見え る 。 細 道 の 所々 に 藪椿が赤く咲き、足元をその落椿が彩っている。「藪椿」が一景 に詩情を添えている。 三寒の一ト日は風の音の中 渡辺 光 子 数日の周期で繰り返される寒暖の日々「三寒四温」。冷え込む 三寒のうちの一日は風が吹き荒れて暮れた。句またがりで 「風 の音の中」と述べ、簡潔に一景を捉えた。 地上みな人間のもの冬灯 加藤 ち え 上 五 中 七を 抽 象 的 に 述 べ て 具 体 的 な 景 を 一 切 述 べ て い な い の だが、下五 「冬灯」で 景が一気に かつ自由に 開けて くる 。 都会 の夜景とみるか、夜の山里の景とみるか。「冬灯の地上はみな人 間のもの」と述べられて、闇に潜む 野生動物を思って し まうの は私だけだろうか。季題「冬灯」が効いている。 追羽根や四人姉妹の声跳ぬる 北村 睦 子 最近 は 見 る こ と が 少 な くな っ た 正 月 遊 び の 追 羽 根。 二 人で 羽 子を突き合 う情景は堅 い羽子の音と共に笑い 声が聞こえてき そ うだが、四人姉妹となるとこれは更に賑やかで楽しそう。「追羽 根」と 「四 人姉妹」で 情景を作り 「声跳ぬる」で 聴覚に 訴えて 美しい一句に仕立て上げられた。 「跳ねる」は古語表記は 跳ぬ となり連体止めにすると「跳ぬ る 」 と な り ます 。 も し 馴 染 め なけ れ ば 声 が 跳 ね 「 声 跳 ねて 」 としてもいいでしょうね。 7 」 「 」 「 」 山 《近 詠》 日 置 正 樹 《 ひ と こ と 》 」 奈 良 奈 奈 奈 都 良 良 良 良 京 都 奈 京 雑賀みどり 〃 〃 〃 星田久仁子 〃 〃 藤田奈千巴 〃 竹澤 真 理 〃 福田ゆうこ 〃 藤井 惠子 〃 掃部裕紀子 〃 これは大切なことなのでしょうね。 こと。句ができてもできなくても、 然と対峙することは自分と対峙する のが感じられてくると思います。自 できっと何か自分の心に響き合うも 五感を研ぎ澄まして「観る」こと 観る ことの大切さ 「 冬日押し分けて鐘の音渡り来る 寒行のいのち吐き出すごと読経 貴 子 選 風使ひ果して星の凍ててをり 崎 芦枯れてをり真つすぐに真つすぐに 諍ひて睦みて鴨の陣なせり 鴨浮寝浦い つぱいの 日 差浴び 白鳥の胸反 ら したる 浦 日和 日を受けて湖面を滑る鴨の群 日脚伸ぶ 帰途にゆと り の生まれを り 湖の日の玻璃戸越えくる四温晴 鴨の水尾消し白鳥の水尾通る ◎みづうみの風の先々鴨のをり 枯葦の深き向かうに凪の湖 鳰の海波の寛ぎ春隣 遥かには比良の山影鴨浮寝 大琵琶の浦の賑はひ浮寝鳥 熱を出 し あ り がたさ知 るなづ な 粥 銀閣寺庭極まれり初句会 結界の青竹眩し御代の春 寒風やみどり児の頬真赤なる 熱い汁悴んだ身を弛めゆく ぽつぽつと高き梢の冬芽かな 古寺の竹垣青き松の内 受付のマスクの目から笑み溢る 水涸るる底に走り根あらはなり 身嗜み少しお洒落に初句会 大根の塩漬の茎喉とほる 奉納の舞 殿清し初謠 庭の隅忘れし水仙芽出づる 大寺や普請最中の初詣 すずしろと名前が変はる粥の中 寒雀首かしげつつ日の庭に 鳥の声木々に畑に春近し ◎嫁ぐ娘の部屋に冬日の溢れをり 寒鯉やまろやかな背を沈めをり 寒風の向かうに白き富士が見え めざましとなりし寒風当たる朝 息白く友を待つ朝通学路 早梅の咲 く順に行く散 歩道 初富士に威儀を正して向かひけり 風止みて母と二人の日向ぼこ 頬赤き縄跳びする子息白し 雪晴に僧打つ鉦の響き行く 雪合戦好きも嫌ひも強く当て 人も家も古りて一輪寒椿 人影も十指に足らぬ寒の苑 街騒をトーンダウンに寒の雨 午後のお茶日脚伸び 尚 長くなり みひかりの良き日天皇誕生日 機嫌よき切り口なるや根深汁 細き道まだ続くらし藪椿 子規庵を訪ふこともまた寒詣 京 京 都 都 横 横 横 横 大 浜 浜 浜 浜 浜 浜 宮 大 宮 大 宮 大 宮 大 宮 横 横 横 浜 横 浜 横 浜 横 浜 青 山 青 山 青 山 木 村 直子 〃 〃 竹 内 恵子 〃 〃 土田みつゑ 池田 紬子 高木 悠 湖 長畑 なみ 〃 中川 金 時 〃 〃 小原 循 子 酒巻 和 桜井 さく 〃 鈴木 鈴音 〃 野上 充子 真壁 藤子 〃 森 奈保 美 八木たみ女 山岸 ふ み 〃 芳 垣 珠華 齊藤 好司 中里 三 句 中里 柚 子 〃 8 卒塔婆のからから鳴るや黄水仙 焼藷屋客去りて石均しをり 三寒の一ト日は風の音の中 ◎冬晴へ一直線のエレベーター 冬日向それぞれ影をもつ背中 枯蔦の垂れし壁にも薄日さす 着膨れて満員電車なほ狭し 陽だまりに皸なめる老いし犬 たつぷりの日差しためこむ枯野かな 老漁夫舟を操り若布採り 隙間風やかんの蓋が鳴つてゐる ごみを出す漢見下ろす寒鴉 ぴんと張る空気を頬に初仕事 尾羽から孔雀萎れて寒厳し どこからか鶴の声する村にゐる 地上みな人間のもの冬灯 皸や昭和生まれのをんなかな カーテンを開けて冬日をあつめけり 冬枯れの小さき庭や尚小さく 千両の実いつの間に啄ばまれ 冴ゆる月追いかけて行く家路かな ◎吾子の手に太箸長くありにけり 初鴉大空ゆ つくり周りけり 風向きを受けて並びて寒雀 下 萌 を 踏 み 締め た く て 里 帰 り 旅人へささやかな福冬の虹 眩しさに音消えてゆく日向ぼこ ベランダを我がもの顔に寒鴉 初笑互ひの御籤見せ合ひて 水仙の花 まつすぐに伸び揺るる じりじりと進む参道初詣 左義長の煙の太く立ち上る 青 山 青 山 青 山 青 山 宿 宿 宿 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 原 原 原 原 宿 宿 原 宿 原 宿 原 宿 宿 原 原 竹内はるか 渡辺 光子 〃 白辺いづみ 〃 小林 含 香 〃 川 口 水木 服部 萌子 鳶田 美 継 佐藤はじめ 〃 三小田 宙 駒井ゆきこ 加藤 ちえ 〃 〃 〃 井 上 芙蓉 〃 〃 宮田 珠子 纐纈 晶子 〃 堀田 葵 〃 渡辺 檀 〃 白山 素風 〃 〃 岸田 祐子 北風の上に止まつてゐる鳶 牡丹雪追ひ越す特急列車かな 注連古れる神社の庭や日脚伸ぶ 大寒や夜の柱のコキリとす 摘みし菜の七草粥をおかはりす 探梅のそぞろ 歩き もな ほ楽し ひとひらの雪に思ひ出積るほど 裏木戸の把手隠して青木の実 難産の子牛横たふ冬日向 庭草のしどけなきまゝ凍てしかな 早梅に古道 の 本を商 へ り 初夢の話などして暮れにけり 負けん気の孫に気圧されかるたとり 大寒の原つぱ膨らみ始めてる 黒づくめ女礼者の遠拝 年の瀬や夜回りの声通る窓 寒晴や地図を片手の寺めぐり 鷽替えや納めし鷽の少し老け 歌かるた い に しへ人の 恋模様 帰宅する道も明るし日脚伸ぶ ◎トラックの初荷の幟高らかに 鏡餅見上げて入りぬ芝居小屋 乳母車押 して行く街日 脚伸ぶ 待ち合はすロビーに女礼者の香 参道の賑はふ声や初不動 やさし味母の育てしはうれん草 元日を全き月の照らしたる 早梅に引き寄せられて遠回り 乾きたる風のかたちに枯葎 ◎息そつと指に吹きかけ初稽古 カーテンの外は明るし日脚伸ぶ 川面にも光集めて春近し 多 多 多 多 多 多 多 多 多 深 深 深 深 深 深 深 深 深 前 〃 〃 摩 大滝有終美 摩 能村みずき 摩 田 中 きよ 摩 宮西かりん 摩 堀 洋海 〃 摩 原山 惠 摩 香川 銀 魚 摩 園田あや女 摩 渡辺美夜香 〃 川 瀧川 純 〃 川 平 井 輝子 〃 川 池垣真知子 川 秋 野 裕子 川 山田 理恵 〃 川 堀江 惠 〃 川 植村 美明 〃 川 海老澤希由 川 神田美方子 〃 橋 戸所 理栄 〃 富所せつ子 〃 前 橋 9 鳰潜る首で勢ひつけてから ◎まだ枝の続きでありし冬木の芽 ちょっぴりと体伸ばして柚子湯かな マフラーに隠れて風にむかひたる 人の良さ背 中 ま あ る き 日 向 ぼ こ 北風の中に青空ありにけり 凩に大きく揺るる夜の闇 除夜の鐘撞いて平安祈りけり 冬晴や一直線に飛行雲 冬耕の里山歩く人はゐず 食卓の瑕はそのまま雑煮椀 ◎ラグビーのボールに意志の宿りけり 極月の居酒屋の隅兄妹 願ひ事絵馬にあふれて寒詣 若者の大道芸や春隣 観覧車上れる先に冬の月 それぞれにラ ジオ聴き 入る寒夜かな 日溜まりを独り占めして野水仙 弾初や真新な楽譜賜りし 枯木立空広くしてそり立ちぬ 空っ風暖簾丸めて過ぎ去りし 老犬の吠えることなく日向ぼこ 言の葉の繋ぎさがして蜜柑むく 戸を開けて一面霜が惜しみなく 嫁嫁へ伝はつていく雑煮かな 大寒の日と は 思へぬ日差しかな 初茜切り絵の如き竹の影 降り続く雪に足跡消されけり 追羽根や四人姉妹の声跳ぬる 蝋梅や香りに薄き色のあり 揺るぎなき城垣の反り初御空 せせらぎの音のみありて冬の里 本 本 本 本 本 川 〃 〃 〃 高良 楽 水 角田卯の 花 吉 井 安里 高橋ときこ 〃 〃 久米 孝子 伊藤ミヨ子 〃 〃 斉藤 久野 〃 山口 雅子 大網ゆう子 〃 〃 樺島 祥 石井 恵 茶 〃 大藪恵美子 鎌田 順子 北村 睦子 藤井 鴻 楠本美奈子 野田 静香 前 橋 飯塚 柚花 〃 前 橋 吉田恵美子 前 橋 神子沢さくら 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 熊 熊 熊 熊 熊 田 山里を赤く染めたる薮椿 凍滝の見上げし程の高さとて 雪晴間厨の外の雀どち かしは手を 打 つ手神 妙 初詣 葉のごとく鳥とまりたる冬木立 ◎鈍色の空押しつけて寒の雨 八重咲きの水仙の香は傾いて 冬薔薇日差しの中に揺れてをり まづ心よりほぐれゆく梅の花 菜の花や昨日二分咲き今日は五分 寝そびれて凍星のぞく窓に立つ 木洩れ日と遊びし足湯春隣 ◎色の無き庭寒禽の声高し 蝋梅の水 弾きをる香 か な 帽子から食み出す髪も凍てつきぬ 寒の雨日がな一日瞑想す がらがらと開く雨戸や春隣 熱風に追ひかけられてどんど焼き 《特選句評》 田 川 富 山 富 山 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 大牟田 大牟田 大牟田 〃 佐藤 カ ヨ 藤井 靖人 藤井 佳乃 北見 由季 〃 杉江 葉子 鈴木 鈴女 下元 夏乃 〃 〃 古賀 文 子 〃 志岐 鈴恵 〃 海谷 育男 前原八寿 之 〃 嫁ぐ娘の 部 屋に冬日の溢れをり 中川 金 時 春 に ご 結 婚 さ れ る の で し ょ う か 。 結 婚 の 準 備で 部 屋 が か たづ けて あるの か、 ま た荷 物が積 んで あるの か、 もうじき い な くな ると 思うと 少 し寂 しい 気もす るのですが、部 屋は冬 日で溢 れて おり、春を待つ雰囲気が漂います。 冬晴へ一直線のエレベーター 白辺いづみ 高層ビルでしょうか。景色が見渡されるガラス張りのエレ ベー ターな ので しょう 。外 から も エレベー ターの上 り下 りが見 えます。冬晴の青空に届きそうです。 10 吾子の手に太箸長くありにけり 宮田 珠子 普 段は 子 供用 の 短いお 箸を 使 って い る ので しょ う。 太 箸には 子供用はありません。 子供の小さい手には太 箸が長く感じられ ます。日本の伝統を守り家族でお正月をお祝いします。 まだ枝の続きでありし冬木の芽 飯塚 柚 花 よく見ると もう木の芽が膨らんで います。その小 ささを枝の 続きのようだと発見され、一句が生まれました。 味します。また「とて」がなんだか他人事のようで、感動が伝 わってきません。仮に、人から聞いた話にしても、その 人の感動 を もっとリ アル に 詠 ん で あげて 下 さい。 人の こ とで も自 分 が 見て きたように。俳句の表現はちょっと嘘をついても良いかもしれま せん・・・ 凍滝の見上ぐる程の高さかな ・帰り来る娘と年酒酌み交わす 原句はちょっと状況が掴めません・・・・娘さんを待って いる 気持ちで しょうか。 帰りくる娘 と「年酒酌み交わす」とが同時 進行していて、なんだか繋がらないのです。「帰り来し」と一字変 え ると 過 去 形に な り、 二 つの 事 柄 が上 手 く結 び 付き ます 。 こ れ が 文 語体 の ミソ です。この助動詞は文語体でも特殊です。乱用は 勧 め ま せ ん が 、 ち ょ っ と 過 去 を 表 現 す る の に は 便 利 な 助 動 詞で す。 「交わ す 」 も文 語体 を 遣 う 時は、 旧 仮 名遣 い に 統 一 し ま しょ う か 。 帰り来し娘と年酒酌み交はす 」 「 」 ・短日や諸味の匂い野田の駅 先 ず 、 原 句 は 五 七 五 が 三 つ に 切 れ て し ま っ て 、 調 べ が 良 く あり ませんね。 俳句は事柄の報告では ありません。 一句を 読んだ人が 情景を思い 浮かべ 、風も匂いも景色も感動も共有できなければ、 評 価 して く れ ませ ん。 その 為 には 調べ も大 事 。 また、 添 削 句 を 見 て 、 場 所 ( 地 名) がど こ かと い う こ と は 大 して 重 要で は な いこと も、わかっていただけますでしょうか。 短日の旅や諸味の匂ふ駅 【 以上 眞知子 】 ・駅伝のメロスのごとき若者ら 太 宰 治 ブ ー ムの せ い か な 、 と 思 い ます が 、 こ の 手の 俳 句 を 最近 何度か拝見しました。発想が似通っていることは、俳句の致命傷 で も あ り ま す 。 発 想 は ユ ニー クで な くて は ! 世 の 中 の 出 来 事に 流 されてはいけません・・・ね。 「 年齢、職業、地域を越えて知り合い になれるのが俳句会です。いい俳句が 作れたときの喜びは言うまでもありま せんが、俳句を通じて仲間が増え、美 しい自然に出会い、日本語のすばらし さを知ることができて、心豊かな毎日 を過ごしています。 《 ひ と こ と 》 ラグビーのボールに意志の宿りけり 高橋ときこ ラ グ ビー の ボー ル は 特 殊 な 形を して い ます ので 、 思わ な い方 向 へ 飛 んで し まい ます 。 選手 の 思 い が ボ ー ル に通 じ たの か、 う まく決めることができ ました。ボールに 意志が宿るとう まく表 現されました。 《近 詠》 山 崎 貴 子 靴の中悴む指がつき当たる 悴んでをられぬ主婦の朝が来る 行く先に合はせ冬帽替へにけり 添削のページ ・凍滝の見上げし程の高さとて 原句はど う も 人から 聞 いた話、 の ような気 が して なら な いので す。先ず、 見上げし の「し」が気になります。「し」は過去を意 11 「 」 ・ポケットに遺せし母の手袋はめり 亡くなったお母さんへの思慕が感じられる句ですね。「手袋はめ り」ですが字余りも気になりますが、「嵌める」の古語表現は終止 形が「嵌む 」連体形が 「嵌む る」で下二段活用し「嵌めり」はあ りません。「手袋嵌む」が正解なのですが、それでも字余りなので 「手袋す」でどうでしょうか。 ・早梅に古道の本を商へり こ の ま ま 読 み 取ろ う と す ると 「 早 梅 の 咲 く 所 で 「 古道 の 本」 を 人が売って いる」とな って しまい ます。この 句の言わ んとするこ とは多分「早梅の咲く古道に人が本を売って いる」のだと推測い たします。 そうで あれば 「早梅の古道に本を商へり」とすべき でしょう。 正樹】 ・覚悟決め冬山の風向かひをる 覚悟を決めて冬山の 風に向かって 登りだした景なので しょう。 この場合に 「冬山の風に」の助詞 「に」は省け ません。五七五に 収まらないからと言って必要な語を取ってしまわぬように。 「 覚 悟 決 め 冬 山 の 風 に 向 かひ を る 」 と な り ま す が 、 字 余 り に な り ますので「冬山の風に向かつていく覚悟」でどうでしょうか。 【以上 ・獅子舞の一団来る軽トラで 日常会話では軽トラと省略して言いますが、俳句ではトラック と言ったほうがいいのではないでしょうか。 ・岐阜いなか寒天造り干場は田 たくさんのことを言われましたね。 寒天を造り干場は田でありし でいいのでは?あまり言葉を詰めすぎないで。 ・アカギレの指先少し重くなり ・孫来たるオオタカ空 飛ぶ日曜 日 ・金粉の葉ボタン生けて整ひし 皸 、 大 鷹 、 葉 牡 丹 は 季 題 で すの で 、 漢 字 に し た ほ う が い い と 思 います。 だ 京 都 句 会 会 〉 よ り 【以上 貴子】 ・めでたさや孫の顔見て初笑ひ ・冬晴れや近づいてくる赤城山 ・参道の幅は一間初詣で この初笑、冬晴、初詣も季題ですので、送り仮名はいらないと 思います。 句 〈 平成二十二年一月九日 吟行 地・法然院 銀 閣 寺 句会場・白沙村荘 初句会・1月は銀閣寺近辺で した。 哲学の道から法然院、法然 院 では谷崎潤一郎氏のお墓を参り、脇道より銀閣寺へと歩みました。有 名観 光 地 の 一 つで す が 、 さす が に 冬 1 月の 観 光 客は 常 よ り も ず い ぶん 少 な く 、 手 帳 を 持 っ て 通 路 に 立 ち 止 ま っ て いて も さ ほ ど に 迷 惑 を かけ る こ と が な い 位で し た 。 近 年で は 住 宅 事 情 に よ る も の か お 正 月 飾 りを 省略なさる家々も多い中、お寺はもちろん、門前町・その周辺の住宅 にも様々なお正月飾りがたくさん見られ、松の内ら し さを味わえ まし た。 冬ら しい冷え もありながら、 風もな く雨雪の心配の無い穏や かな 吟行日和でした。 12 明の 春砂壇に 浮きし福寿の 字 冬木立抜けて名墓に手を合はせ 茅門と砂壇に 福寿今朝の 春 手水場の竹の青さや寒参 初句会銀閣寺道やや登り 凛として老樹見上ぐる藪椿 観音殿白き障子の花頭窓 冬芽守る径通行許されず 恵 直 裕紀子 慶 酔 博 貴 子 めぐむ 悦 子 代 雄 雀 子 子 句会場には日本画家・旧橋本関雪洋館のレストランにて 昼食に引き 続き行いました。 毎 回で は あ り ま せ ん が 、 昼 食処 は 吟 行 地を 決 める 折 に も、 当 日 の モ チ ベー シ ョ ン にお い て も 、 京 都 句 会 には 大 変 重 要な 点 と な って い ま す。 京都句会の吟行地は京都市内一円をあちこち行きます。時には近 隣 府県にも行きます。京都市内だけでも名所旧跡がたくさんあり、司 祭 ・ 行 事 もど こ か しら で して い る ので 、 句 材 に は 事 欠 か な い の か も知 れ な い ので す が 、 俳 句 に 詠 み た い 事 が 散 漫 して し ま い 、 集 中 す る よう によく指導をうけています。 京都句会は常 人強の人数で 年齢 幅 もありながら、そぞろ 歩 くこと も楽しみつつ元気に吟行しています。 今 日 は お 土 産 に 、 哲 学 の 道 近 くの 評 判 の 美 味 し い 蜜 豆 を 求 めて 、 寄 り道する人しない人でお別れして帰りました。 (木村 直子 記) 松の内らしくひつそり京の路地 『俳句入門』 (稲畑汀子)より 夢の中でも客観的になれ 九時に朝食、そのあと すぐ九時半締め切りということで 旅の夜のね む り に 就 い た 。 明 日 は 少 し 早 く 起 き て 句 を 作 ら な け れ ば と 思 い つ つ夢 を 見て い た。 着 い たば か り の 山 宿の窓 を 開け たら 網 戸の 間に 長 さ 二十 センチ、幅二センチ近い大百足蟲がぞろ りと動いて背筋に寒気が走り 声 を 立て そ う に な っ た こ と を 俳 句 に し よ う と 、 夢 の 中で 一 生 懸 命 考え ていた。いい句が出来た。 逃したるむかでの行方確めて 目 が 覚 めて 、 た し か 夢 の 中で い い 句 が 出 来 た は ず だ と 思っ た の に忘 れ て し まっ て い る 。 少 し ず つ 思 い 出 して そ の 句 も 句 帖 に 書 き 込 ん だ。 夢の中ですご くいい句だと 思って いたのが思い出した句は大したこと が な い 。 で も 出 す だ け は 出 し て み よ う と 思 っ て 、「 確 め て 」 を 「 確 む る 」 と 直 して 投 句 し た が 誰 の 選 に も 入 ら な か っ た 。 夢 の 中で 出 来 た句 はいい句が殆どないと夢博士松本巨草さんに聞いたことがある。独り よ が り で 客 観 的に な れ な い か ら で あろ う か 。 今 回 も ま た 失 敗で あ っ た。 日本伝統俳句協会 〒一○八ー○○七三 社団法人 - 東京都港区三田三 四 一一 三田三丁目ビル六階 (○三)三四五四 五一九一 13 10 -
© Copyright 2024 ExpyDoc