2015年入学者向けのリスト(クリックするとPDFファイルが開きます)

【読書案内】 人類文化学科の先生が入学前課題としてみなさんに推薦する図書です。 『探検!ことばの世界』 大津由紀雄(著)ひつじ書房 2004 年
われわれにとって最も身近なことばである日本語。身近であるがゆえにふだん意識すること
のない日本語に潜む「不思議」を豊富なイラストを用いて解説してくれる好著。 『日本語の系統』 服部四郎(著)岩波文庫 2007 年 「日本語○○起源説」という書名の本は巷に数多あるが、規則的な音韻対応が認められない
かぎり言語間の親近性は結論できないという著者の主張はたいへん明快。日本語の起源に関心
のある人には必読の書。
野矢茂樹『哲学の謎』 講談社現代新書
哲学とはどういう問題について考える学問なのか、ということを知るのに最適です。対話形
式なので、文章も読みやすいです。
E・H カー『歴史とは何か』 岩波新書
歴史とは何かということ考えさせる名著です。日中間で問題になっている最近の「歴史認識
の問題」などの今日的問題を考えるときにも、基礎となる本です。 永井均『倫理とは何か 猫のアインジヒトの挑戦』 ちくま学芸文庫 哲学の一部門としての倫理学について知りたい人のための格好の入門書。対話形式で書かれ
ているので読み易いが、内容は大変濃い。 中島義道『哲学の道場』 ちくま新書 哲学という学問はいかなるものであるかということについて、著者の実体験に即して明快に
述べられています。 熊野純彦『西洋哲学史 古代から中世へ』 岩波新書
それぞれの哲学者の考えの出発点となった経験を現在の私たちにも体験可能なように書かれ
た新鮮な哲学史入門。同著者による『西洋哲学史 近代から現代へ』もある。 スティーブン・ロー『考える力をつける哲学問題集』 ちくま学芸文庫 大昔から論じられているものから現代的なものまで、哲学の基本的な問題がわかりやすく紹
介されています。哲学はどのような問題を考える学問なのかを知りたい人に。 青野由利『生命科学の冒険』 ちくまプリマ―新書 生殖医療、クローンの作成、遺伝子診断など、人間を対象とした科学技術では、現在どれだ
けのことが可能で、それらを利用することで社会にどのような問題が生じるかが、わかりやす
く説明されています。 高田明典『世界をよくする現代思想入門』 筑摩書房
現在のような時代において「考える」ということが何のためにあるのかを、あらためて考え
させる本。
須藤健一(編)『フィールドワークを歩く−文科系研究者の知識と経験−』 嵯峨野書院
文化人類学だけでなく、地理学や社会学もふくめて、フィールドワーク研究がどのようなも
のかがよくわかる。
小田 亮『レヴィ=ストロース入門』 ちくま新書
20世紀の新たな潮流となった構造人類学を知る上で格好の入門書。レヴィ=ストロースの
研究の基本的なポイントがわかりやすく整理されている。
青木保『多文化世界』 岩波新書
様々な問題をかかえる現代世界において,真の相互理解や協調が可能かどうかを、文化人類
学の視点から説明したものである。
田中雅一・田辺明生編『南アジア社会を学ぶ人のために』 世界思想社 2010 年 カースト、ヒンドゥー教、トライブ、ヨーガなど基本的な項目について簡潔に分かりやすくまと
められています。インドに興味があり大学で勉強したいけれど、どんなテーマがあるのか分からな
い。そんな高校生、大学1・2年生向けにオススメの本です。 杉本良男編『キリスト教文明とナショナリズム:人類学的比較研究』 風響社 2014年 各地域の事例をもとに非西欧世界における「キリスト教文明」による「近代化」の歴史過程とそ
の帰結について検討、その功罪を人類学的視点から見直す論集です。 川田順造『「悲しき熱帯」の記憶』 中公文庫 文化人類学者レヴィ=ストロースの名著『悲しき熱帯』の訳者でもあり、レヴィ=ストロー
ス個人にも親しい文化人類学者川田順造氏が、21世紀の今、レヴィ=ストロースの足跡をた
どり、世界の民族が置かれている文化的、社会的あるいは政治的状況について卓越した文章で
つづったエッセーである。 村井吉敬『エビと日本人Ⅱ―暮らしのなかのグローバル化』 岩波新書
著者は人類学者ではないが、エビを通して日本とアジアの繋がりを見ている。 篠田謙一著『日本人になった祖先たち DNA から解明するその多元的構造』(NHK ブックス) 私たちは、みなホモ・サピエンスです。しかも、世界にはホモ・サピエンスしかいません。
そのホモ・サピエンスはどこから来たのでしょうか。答えはアフリカです。そして、アフリカ
を出たホモ・サピエンスがどのようにして日本列島に到達したのでしょうか。それらのことが
分かりやすく書かれたのが本書です 『古代メソアメリカ・アンデス文明への誘い』(杉山三郎・嘉幡茂・渡部森哉著)2011 年、風媒社 旧世界(アジア、アフリカ、ヨーロッパ)のいわゆる四大文明とは異なる、新世界(アメリ
カ大陸)の二つの文明についての平易な概説書。 鶴見良行『ナマコの眼』 ちくま学芸文庫
ナマコを通して世界を見る。現代のグローバリズムを見据えた名著。 足立紀尚『牛丼を変えたコメ 北海道「きらら 397」の挑戦』 新潮新書 日本人のコメへの執着は、熱帯の植物を寒冷地でも育つようにしてしまった。 宮本常一『民俗学の旅』講談社学術文庫 稀代の民俗学者で旅人でもあった宮本常一の自伝。研究と旅の作法を知ることができる。こ
の本の次には『忘れられた日本人』岩波文庫を読むことをお薦めします。 藤本強・菊地徹夫企画監修『世界の考古学①~⑩』 同成社 旧大陸、新大陸の考古学研究を地域別に論じたシリーズです。みなさんが興味のある地域を
選んで読んでみてはどうでしょうか。考古学の成果をわかりやすく学ぶことができます。 ① アンデスの考古学 ⑥中央ユーラシアの考古学 ② メソアメリカの考古学 ⑦中国の考古学 ③ ギリシアの考古学 ⑧東南アジアの考古学 ④ エジプトの考古学 ⑨東北アジアの考古学 ⑤ 西アジアの考古学 ⑩朝鮮半島の考古学 網野善彦『「日本」とは何か -日本の歴史 00』 講談社学術文庫 「日本」という国は悠久の昔から存在した、「日本」は他の世界から切り離された「島国」
だ、「日本」には稲作をする単一民族が住んでいた、あなたは漠然とこう思っていませんか。
そんな常識にとらわれず、柔軟な発想をもって、この国の成り立ちを考えてみましょう。 藤木久志『雑兵たちの戦場-中世の傭兵と奴隷狩り 新版』朝日選書 戦国時代、まともに生業に励んでも飢餓に苦しむ人々は沢山いました。かれらは、口減らし
のため雑兵となり、戦場で死と直面しながらも、人と物を掠奪してなんとか生きていきました。
やがて天下が統一されると、かれらは、城の普請場、あるいはアジアの別の戦場へと向かいま
す。武将や軍師からではなく、雑兵の立場から戦国社会を見てください。 小熊英二『単一民族の起源 <日本人>の自画像の系譜』 新曜社 「歴史」の物語は、現在の世界の見方や自分のアイデンティティーを保証するために創造さ
れるもの。「日本人単一民族」説は、さまざまな立場の人々にとって、それぞれに異なる意味
をもちました。この本で、歴史認識とは何か、考えてください。