担当:大谷 宗啓 2015年度 お知らせ • 現時点の座席状況 (前回までのPDF)⇒ http://www.re2.sakura.ne.jp/15dp/ 発達心理学 第 02回 『発達とは(2)―遺伝と環境・ヒトという種― 』 再配布版(2015.04.23更新) 前回の振り返り • 受講ガイダンス >前回スライド • 「心理学」と「発達」 >前回スライド • 本科目の構成,進行予定 • 精子微人(画像提示) >前回スライド >前回スライド Rカードから_1(自主提出課題,Rカード) • 「自主提出課題の内容は,講義と関係ないもので も点数をもらえますか?」 →それはダメです。 • 「調べてみたところ“確証バイアス”は社会心理学 の用語でしたが・・・」 →それはOK。 >前回スライド • 「心理学=文系といった先入観が大きかったので, 意外な発見だった」,「自分が理数系なので・・・」 • 「文を構成するのは苦手ですが,やってみようと考 えています」 • 「中学,高校と,作文やレポートの課題がほとんど 無かったので不安。積極的にがんばろう」 Rカードから_2(学んできたこと) • 「発達心理学と聞いて,専門的で小難しそうな印象 がとても強かったのですが・・・」,「知らないうちに, 関係している事柄を既に学んでいたかも・・・」 • 「生物と保健の間みたいな感じ・・・」,「生物や社会 を組み合わせたような・・・」 • 「1年の時,中・高の教科書を捨ててしまい・・・後悔 したことが多くあります」,「もったいないと・・・」 • 「弟の見た目の変化を思い出してみました。水分の 多いぷにぷにした肌が時と共に失われていくこと や,生理的微笑をしなくなったこと・・・」 1 Rカードから_3 • 「弟に算数を教えた時,過去の自分は今の自分と 全く違う解き方をしていたことに気付いた。文字式 や微分を使えず,思わず答えを見れば・・・ 」 • 「今,考えて書いていることも発達することに繋がっ ていると嬉しい」 • 「人というのは人それぞれ違うというのに発達する 時期を決められてもしかたがないし・・・あくまで資 料というふうに見させていただく」 • 「難しそうで,良い意味で苦労させられそうな授業」 一回一回の授業の進め方 第01回 (ガイダンス) 新規内容 Rカード 第02回 振り返り・発展 新規内容 Rカード 第03回 振り返り・発展 新規内容 Rカード ・ ・ ・ Rカードから_4(整理) • 「言葉自体が難しいものが多く,早速授業について いけなさそう」 • 「成熟のみによる変容は除外されると書いてありま したが,これも体の“発達”だと思うので,完全に除 外されるとは思えない」 →学習からは 学習からは,除外されます。 >前回スライド • 「幼い頃,サ行の発音が苦手であったが,今では ハッキリと発音できる。これは,顎の骨格・舌の発 達によるものと,何度も発音することによる学習に よるものと考える」 2 Rカードから_5(身近な例) • 「ソフトボール投げもそうですが,反復横跳びも。練 習していないのに回数が増えていくあたりが・・・」 • 「私は現在,学習によってある程度のプログラミン グができる。その私がゲームの企画でアイデア出 しをする際,“プログラムしやすいアイデアは何 か?”と考えたりするようになったのは・・・」 • 「私は小学3年から野球を始めました。やり始める までは足がとても遅かったのですが,野球をしてい たら足が速くなっていきました。これは成熟による 変化でしょうか?」 Rカードから_6(精子微人) 17世紀:“科学革命の世紀” • 「昔の人は今となってはありえないことを 技術の無さで仮定していて,あまい考え だったんだと思った」 • 「職種ごとのDNAなどないのは考えたら わかる事なのに,昔の人はなぜ分から なかったのか謎だ。― ―もし,昔の人の全てが親の職を継い だら別だけれども・・・」 • 「その当時の,階層階級という 考え方が・・・」 帰納法 『新オルガヌム』 (1620) 演繹法 『方法序説』 (1637) ・・・と同時に・・・ Hartsoeker(1664) 19世紀:“科学の世紀”~世界観の激変 1858年“進化論” 1865年“メンデルの法則” ・・・と同時に・・・ 帝国主義列強による覇権競争の時代 社会ダーウィニズム と 優生学 の隆盛 3 遺伝説(成熟説,生得説) 遺伝説(成熟説,生得説) “遺伝子の中にあらかじめプログラムされている” Goddard, H. H. (1866-1957) アメリカの心理学者,優生 学者 アメリカに知能検査を導入 『カリカック家族』(1912) Figure 1 カリカック一家の家系図(山上, 2006) 子孫5世代を調査。一方の家系では健常者が46/480名, 他方の家系では健常者が493/496名 環境説(学習説,経験説) Watson, J. B. (1878-1958) アメリカの心理学者 行動主義の提唱者 環境説(学習説,経験説) “人は白紙の状態で生まれ,経験によってのみ作 られる” Watson & Rayner(1920)の実験 被験者:アルバート坊や(仮名,生後9ヶ月) 【1】アルバート坊やに白ネズミと遊ばせる(2ヶ月間) →坊や,楽しく遊ぶ 「私に1ダースの健康な子どもと,私の望む環境と を与えよ。その子の才能・好み・性癖・能力・適性・ 家系に関係なく,医師・法律家・芸術家・社長・・・ 乞食や泥棒にさえ育ててみせる。」(Watson, 1924) 【2】アルバート坊やと白ネズミが近付いた瞬間に, 背後で大きな音を立てる →坊や,泣いて逃げる 【2】×7回 【3】アルバート坊やと白ネズミが近付いても,音は 立てない →坊や,泣いて逃げる 4 この実験から・・・ • 人間にも,古典的条件づけの手続きは有効 • 般化(generalization)も起きる(起こせる) Figure 2 恐怖の条件づけと汎化(Munn, N. L., 1956: 木村裕, 2001より抜粋) ⇒「経験によって,どんな人間でも作れる」と主張 しかし・・・ 遺伝と環境 • 遺伝説 ⇒ 本当に,遺伝子の違い だけを比較しているのか? • 環境説 ⇒ 本当に,経験のみ? ・・・“健康な子ども”って・・・ Figure 3 知能指数に及ぼす遺伝と環境の効果 (Erlen-meyer-kimling & Jarvik, 1963: 山上, 2006より) 輻輳説 Stern, W. (1871-1938) ドイツの心理学者 「知能指数」を開発 5 輻輳説 “発達は遺伝と環境の両方の影響を受けている。 その割合は,発達の側面によって異なる” Figure 4 遺伝と環境の輻輳説の図式化(高木, 1950) 成熟優位説 成熟優位説 “学習の効果は成熟の効果に及ばない” Gesell, A. L. (1880-1961) アメリカの心理学者,医師, 高校教員 発達診断学を確立 『乳児行動アトラス』(1934) Figure 5 双生児統制法による階段のぼりの実験(高橋, 2006) とはいえ・・・ • 輻輳説 ⇒ 加算的な関係なのか? • 成熟優位説 ⇒ 異なる週齢での 学習経験を,同じ経験と言えるのか? 6 環境閾値説 環境閾値説 “環境が過度に剥奪されると発達は抑制されるが, 一定水準以上であれば あまり影響しない” Jensen, A. R. (1923-2012) アメリカの心理学者 知能の個人差を研究 Figure 6 環境閾値(渡部, 2011) もしも・・・ 環境を無視 ⇒ 可能性を発揮できない虞 遺伝を無視 ⇒ 効果的な学習ができない虞 最近では,時間軸を入れて・・・ “発達の進行は環境に対して受動的ではなく,能 動的である” Figure 7 発達の相乗的相互作用モデル(Sameroff, 1975: 二宮, 2006より) 7 ヒトは? ヒトという種―就巣性と離巣性から― Table 1 就巣性と離巣性の特徴 就巣性 離巣性 例えばネズミ,猫, 例えば馬,牛,猿, 犬,ツバメ 鯨 該当例 妊娠期間 1回の産児数 誕生時の状態 進化上の段階 生理的早産説 非常に短い 例えば20~30日 多い 例えば5~20匹 「巣にすわって いるもの」 下等な段階 長い 50日以上 1~2匹 まれに4匹 「巣立つもの」 高等な段階 未成熟のまま生まれることによって・・・ • 脳のサイズを産道以下に抑えなくてもよい Portmann, A. (1897-1982) スイスの生物学者 『人間はどこまで動物か』 (1944) 約400gの状態で出生,一歳半で1000gに • 感覚器官は発達した状態であるため,外 界の情報を使った学習ができる • 運動能力は未熟なため,密接な親子関係 (養育)を要する ⇒学習機会が増える 次回 座席状況 時間 第 03回 「発達段階とは(1) ―発達段階とは何か―」 2時限クラス 11:10~ 3時限クラス 13:30~ 4時限クラス 15:10~ 4/15時点の 4/15のRカー 4/22時点の 仮登録者数 ド提出数 登録者数 285 221 209 211 285 113 101 125 285 42 35 46 座席数 8 Rカードから_7(※映写のみ) 【再配布版 注記】 ①当日出席した受講者に話を聞いて,ノート部分を 補完する手順を忘れないでください。 • 「発達と発生は英語にすると同じdevelopment なのに意味が違うのはびっくりしました」 ②以下は,当日映写のみで(配布資料には載せずに) 運用したスライドです。ただし,前回までのスライ ドを再参照する部分(リンク先)は省きました。 • 「発達も発生もdevelopmentになっています が・・・?」 ヒトは? Table 1 就巣性と離巣性の特徴 就巣性 離巣性 該当例 妊娠期間 1回の産児数 誕生時の状態 進化上の段階 例えばネズミ,猫, 例えば馬,牛,猿, 犬,ツバメ 鯨 非常に短い 例えば20~30日 多い 例えば5~20匹 「巣にすわって いるもの」 下等な段階 長い 50日以上 1~2匹 まれに4匹 「巣立つもの」 高等な段階 Figure Appendix 6 胎齢6ヶ月児(坂田, 胎齢6ヶ月児(坂田, 2008) 2008) 9
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