ヘリコバクターピロリ抗体価と胃カメラでの病態との関係 鹿児島県 1 久保

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ヘリコバクターピロリ抗体価と胃カメラでの病態との関係
◎久保 道徳 1)、松山 克江 1)、有村 義輝 1)、内園 均 2)、入佐 俊昭 3)
鹿児島市医師会病院 1)、消化器内科部長 2)、臨床検査担当医 3)
【はじめに】H ・ピロリ菌は胃癌発症の前病変である萎
縮性胃炎を起すことから、萎縮性胃炎の診断が早期胃癌
の発見に重要である。H26 年 10 月より抗 H ・ピロリ抗
体検査の院内検査を開始し、抗体価と病態の関係におい
て若干の知見を得たので報告する。
【検討内容】2014 年 10 月から当病院受診者で、抗 H ・
ピロリ抗体価 3.0 U/mL 以上の患者を対象とした。H ・ピ
ロリ抗体価と胃カメラ所見での萎縮性変化・びらん等の
各病態を比較した。今回の検討では、測定装置:
BM6010(日本電子株式会社)、試薬:LZ テスト ‘栄
研’H.ピロリ抗体(栄研化学株式会社)を用いた。
【結果】①胃カメラ受診者の陽性率:46.4%(168 名中
陽性者 78 名)②人間ドック受診者の陽性率:27.2%
(600 名中陽性者 163 名)③H ・ピロリ抗体価と胃カメ
ラ所見:陰性検体(3.0 U/mL 未満)の 53 例のうち全て
所見無し。陰性検体(3.0~9.9U/mL)の 22 例のうち約
50%に萎縮性変化、他びらん・潰瘍等の所見の患者あり。
陽性検体(10.0~99.9U/mL)の 56 例のうち約 70%に萎
縮性変化、他びらん・潰瘍等の所見の患者あり。陽性検
体(100.0U/mL 以上)の 17 例のうち約 65%に萎縮性変
化、約 20%に潰瘍所見の患者あり。
【考察】カットオフ値の 10.0U/mL 未満の抗体価は、陰
性と判断される。しかし 3.0~9.9U/mL の症例の中には重
篤な胃カメラ所見の患者も見受けられた。10U/mL 未満
の患者に対しても胃カメラ受診を推進するべきと判断さ
れる。
【まとめ】H ・ピロリ抗体価陰性患者でも胃カメラ所見
がみとめられる。今回の結果より、抗体陰性でも、3.0~
9.9U/mL の症例については、他方との併用によりさらに
精度が増すと思われる。今後ペプシノゲン検査も院内検
査予定である。『ABC 分類(胃癌リスク検診)』として、
血液検査による胃の健康度評価がなされるものとして、
その詳細は当日報告する。
連絡先:099-254-1125(内線 275)