「最近のドラッグストアのプライベートブランド」

「最近のドラッグストアのプライベートブランド」
Excell-K
(株)ドムス・インターナショナル
代表 松村 清
CDR 誌によると、2012 年米国チェーンドラッグにおけるプライベートブランド(PB)市場の
成長率は高く、ナショナルブランド(NB)市場が前年比 0.7%(金額ベース)しか伸びなかった
のに対して、PB は 5.5%も成長した。そして市場構成比で 15.9%を記録した。
【2012 年チェーンドラッグプライベートブランド売上】(金額ベース)
項目
プライベートブランド
ナショナルブランド
トータル
販売高億ドル)
79
418
497
前年比(%)
+5.5
+0.7
+1.4
構成比(%)
15.9
84.1
100.0
数量ベースで見てみると、NB も PB も前年割れを起こしている。それでも金額ベースで成長し
ているのは、単価アップが貢献していることがうかがわれる。
【2012 年チェーンドラッグプライベートブランド売上】(数量ベース)
項目
プライベートブランド
ナショナルブランド
トータル
販売数量(ユニッ
19 億
97 億
116 億
前年比(%)
-2.2
-3.6
‐3.4
構成比(%)
16.4
83.6
100.0
業態別でみると、PB 展開をいち早く実施したスーパーマーケットは PB 比率が 19.1%(金額)
を占め、ドラッグストアの 15.9%よりも多い。今後両業態も 30%を目指して開発に余念がない。
【2012 年業態別プライベートブランドシェア】
項目
スーパーマーケット
チェーンドラッグ
計
販売高(%)
19.1
15.9
17.3
販売数量(%)
23.1
16.6
21.0
商品別にみると OTC 分野の PB 開発が盛んで、PB 販売高トップ 4 は OTC が占めており、鎮痛
剤からビタミンと殆どのカテゴリーに PB がある状態だ。これはパテントが切れた OTC の PB
化を積極的に進めていることによる。また現在の消費者はウエルネスに対して大変関心が高く、
病気にならない身体作りをして軽い病気は OTC で治療する傾向が強くなっていることも OTC
の PB 化を促進させる要因となっている。
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【ドラッグストアプライベートブランドトップ 10 カテゴリー】
カテゴリー
PB 販売高
(億ドル)
カテゴリー販売高
(億ドル)
PB シェア
(%)
治療薬一般
風邪薬
ビタミン
鎮痛剤
ファーストエイド
紙製品
ナッツ
スキンケアプリパレーション
瓶入り飲料水
事務所&学校用品
17.0
9.8
6.6
6.0
5.3
3.5
2.2
2.2
1.8
1.7
54.0
30.0
28.0
13.0
12.0
12.0
4.0
19.0
6.2
6.1
32.2
33.0
23.8
46.3
44.0
29.4
56.0
11.7
28.7
20.8
【ドラッグストアプライベートブランドトップ 10 カテゴリー】(数量ベース)
カテゴリー
PB 販売高
(百万ユニット)
カテゴリー販売高
(百万ユニット)
212
156
151
130
126
108
100
91
85
69
615
376
386
229
1700
337
200
287
291
134
治療薬一般
紙製品
風邪薬
ファーストエイド
キャンディ
瓶入り飲料水
鎮痛剤
事務所&学校用品
ビタミン
ナッツ
PB シェア
(%)
34.5
41.5
39.1
56.7
7.6
32.1
50.2
31.6
29.1
51.3
最近ではコンシューマブル(食品及び消耗雑貨)の PB 開発が盛んだ。その結果、最も成長性が
高かったカテゴリーのトップ 10 全てをコンスーマブルが占めている。
【2012 年最も成長したプライベートカテゴリー】(百万ドル以上のカテゴリー対象)
カテゴリー
非炭酸飲料水
ペットフード
デザート
朝食食品
バター&オイル
冷凍野菜
砂糖&砂糖代替品
加工肉
惣菜
卵
成長率
(%)
245.0
220.1
187.0
135.6
126.
102.9
77.2
58.0
56.8
56.2
プライベートブランド
販売高(百万ドル)
2.0
15.9
3.0
4.3
1.6
1.1
7.4
4.2
19.6
6.5
PB シェア
(%)
5.8
7.1
14.5
3.5
14.1
35.8
23.4
9.4
26.9
18.0
この PB 市場躍進の要因は 1990 年代にある。米国の小売業は 1990 年代にプライベートブラン
ドを「プライドブランド」と位置付けし、質の良い商品を開発することを誓った。今までの安か
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ろう悪かろう品質からの決別だった。現在では「NB と同品質で低価格」という位置づけから、
低価格、品質、効能効果の 3 つを強力に訴求できる商品開発に努めている。PB の開発では、ス
ーパーマーケットの王者であるクローガーの 3 層構造方式(プレミアム PB、NB 対抗 PB、低
価格 PB)が有名だが、ウォルグリーンに代表される最近のドラッグストアも真似をし始めた。
例えば、ウォルグリーンはドラッグストアの中ではプライベートブランドをエントリーレベル、
メインストリーム、プレミアムと 3 層に分けて開発している先駆者だが、ヘルスケア、ビューテ
ィーケア、食品、家庭用品にまで及んでいる。また以前はウォルグリーンの名前が大きくパッケ
ージに載っていたが、最近では全く載せないケースも多く出てきている。例えば、食品では
「Delish」「Nice」、ビタミンでは「Finest」のブランド名を使い、ウォルグリーンの名前が表に
は全く出てこない。これには、ウォルグリーンの名前を外すことによって商品のイメージを上げ
る(人により PB は NB より下に見る人がまだ多い)、不良品などの回収問題が起きた時にもウ
ォルグリーン全体に影響が波及しない、将来的にウォルグリーン以外の小売店でも販売しても
らえる等の考え方がある。
ひと昔前までは PB は品質で劣るという評判であったが、現在では NB を凌駕するような品質
の高い商品も出てきている。また NB は消費者をマスでとらえ細かな商品開発をしない傾向が
あるが、PB ではそれを実現して NB にはない魅力を提供している。例えば、NB が開発してい
ない隙間市場にも PB は積極的に開発を進めてカテゴリーの品揃えの充実を図っている。ネイル
ソリューションペンという大ヒットした PB が良い例だ。指先の細かい個所まで水虫ケアが出来
るという NB にない隙間商品だ。PB の拡大により特徴が乏しくマーケットシェアの低いブラン
ドは市場から消えて行っている。
1946 年~1964 年の間に生まれたベビーブーマーの人々や 1965 年~1980 年の間に誕生したジ
ェネレーション X と呼ばれる人々は、PB 市場拡大の牽引車となっている。ベビーブーマーの
人々は戦前の人々より教育レベルが高く、NB と PB は品質においてそれほど差が無いというこ
とを分っている。またジェネレーション X の人々はテレビを余り見なくなり、NB 商品のテレビ
広告効果が減少したことも要因だ。またネットを通しての豊富な情報量で PB の品質に信頼を置
いていることも影響している。
消費者の 1/3 以上は、前年より PB 商品を購入していると答えている。さらにこれらの人々の
1/3 は今後 PB をもっと購入するとも答えている。調査対象の人々の 54%は、買い物において品
質が一番大切だと答えているが、NB の方が PB より品質が良いと答えたのは調査に答えた人々
のたった 29%だ。これは 2011 年の 36%、2010 年の 43%からの急激なる落ち込みだ。
このように消費者は NB の品質の優位性を以前ほど認めなくなった。そして PB 商品を使用し
て満足したお客の多くは、NB からスイッチして PB を使い続ける傾向が強い。専門家は、NB
の効果的差別化はパッケージングだろうと述べている。人々は魅力的なデザインのパッケージ
に影響されることが多いが、PB はコストの点からパッケージにそれほど力を入れられないから
だ。
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このように、小売業が今 PB に力を入れているのには、「他社との差別化」「利益率の向上」
「カテゴリーの充実」
「価格志向客への対応」などの要因があるが、最近ではアマゾンとの競争も
大きな要因になっている。現在米国小売業の 10%が無店舗販売だ。この無店舗販売がいずれア
マゾンを代表とする E コマースに引っ張られ、30%の小売シェアを取ると予測されている。小
売店舗を持たないアマゾンは販売経費を低く抑えられるため、リアル店舗の小売業より安く販
売できる。NB 商品だけの品揃えではアマゾンに客を取られるのは火を見るより明らかだ。そこ
で価格比較をされない自社ブランドの開発が求められていることも PB に力を入れる背景にあ
る。
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